「SDGsを他人事にしない!」芝浦工業大学「綾いと」が取り組むSDGs啓発活動
レジ袋が有料化され、エコバッグを持ち歩く人も増えてきました。
「SDGsは知っているけど、何をしていいかわからない」という人にとって、エコバッグの導入は最初の一歩に最適です。しかし、未だに「SDGsは知っているけど、自分には関係がない」と思っている人も少なくありません。
芝浦工業大学、大宮キャンパスの学生たちが設立した「SDGs学生委員会ー綾いとー」は、「ひとりでも多くの人に問題意識を持ってもらう」ことを目的に、SDGsに関する啓発活動を続ける学生団体。今回は代表の阿部汐里さんに「綾いと」が取り組んできた活動内容についてお話をうかがいました。
「SDGを他人事にしない」ための活動
――「綾いと」は、どんな活動をされている団体なのでしょう?
団体の活動目標は、「ひとりでも多くの人に、SDGsを他人事とせずに問題意識を持ってもらう」ことです。昨年5月から活動を始めました。今、世間的にSDGsへの関心は高まっていますが、統計上、学生のSDGsの認知度は他の年代より高いそうです。でも、SDGs達成のために行動したり、行動を変える人は決して多くありません。
――SDGsを知っていても、関心は持っていないということですね。
そうです。その要因は、当事者意識が足りない、という点にあると思うんです。だから私たちは「SDGを他人事にしない」ということに焦点を当てた活動に取り組んでいます。
――認知度を上げるために、どんな取り組みをされてきたのでしょう?
例えば、小学生の子どもたちとダンボールを使って財布づくりをしました。「これは、SDGsのゴール12『つくる責任、つかう責任』に繋がるんだよ」と伝えながら、実際に手を動かしてもらうことで理解を深めようという狙いです。他にも、大学の近くにある不動産業者と一緒に“うちわ”を作成して、お祭りで配ったこともあります。うちわは表面が不動産の広告、裏面がSDGsの紹介になっていて、素材もエシカルなものを選びました。
「自分たちの行動・活動がSDGsの17ゴールのうちの何につながっているか」を常に考えて伝えていく姿勢が印象的。
――財布もうちわも、実用性を兼ねているのがいいですね。
「コープみらいフェスタ in さいたまスーパーアリーナ」では、国産肉と外国産の輸入肉の模型を天秤にかけ、後者がどれくらい輸送の過程でCO2を排出しているか、重りを載せて比較するというパフォーマンスを実施しました。この活動はSDGsのゴール13「気候変動に具体的な対策を」などに繋がりますね。
普段私たちが何気なく買っている食材ひとつをとっても、「口にするまでに多くのCO2排出量がかかっているのか!」と気付かされるプログラム。
約350人を集めた「次世代SDGsフォーラム」
――これまでで最も力を入れた活動は?
昨年12月に大学で開催した「次世代SDGsフォーラム」です。全35の学生グループに加え、埼玉市内の企業やNPO、NGOなど計21団体に協力をお願いし、結果的に約350人の一般参加者が集まりました。
――それは大規模ですね。フォーラムはどんな内容だったのでしょう?
大きく分けると、基調講演、パネスディスカッション、ワークショップ、分科会、ブース出展の5つです。基調講演は内閣府参事官をゲストに招き、地方創生についてお話いただいて、 パネスディスカッションでは、さいたま市長や芝浦工業大学の学長、SDGsの第一人者である慶應義塾大学の蟹江憲史教授などが議論し、質疑応答にも応じていただきました。
コロナ感染が拡大する前の2019年12月に芝浦工業大学で開催した「次世代SDGsフォーラム」。学生だけではなく世代を超えて多くの参加者が集りSDGsについて考えるきっかけを与えた。
――すごい顔ぶれを集めましたね。
ブース出展や分科会では、SDGsに取り組む学生団体やNPOの方たちに、それぞれの活動や世界が抱える課題などをパネルで説明してもらいました。ワークショップでは、分科会に参加してくれた社会人の皆さんと学生が一緒になって、SDGsの課題をグループに分かれてディスカッションして発表しました。
――これだけ大掛かりだと、準備も大変だったでしょうね。
本当に大変でしたね(笑)。当時は私も1年生で、付いていくだけでも精一杯でした。でも、大きな成功体験になったと思います。学生だと社会人と話す機会もあまりないので、いろんなことを学べました。フォーラムの開催は、SDGsのゴール17番「パートナーシップで目標を達成しよう」にも当たると思います。
――というと?
このフォーラムは「綾いと」の力だけでは実現できませんでした。他の学生団体やNPO、NGO、企業、大学職員たちとの「パートナーシップ」があっての成功です。もともと「綾いと」は、SDGsのゴール17に最も力を入れています。SDGsのゴールは全部で17個ありますが、他のゴール同士が関り合ってきますよね。だからこそ横とつなり合っていかなければいけません。「綾いと」という名前には、そういう思いも込められているんです。
活動方針に掲げる「三本柱」
――SDGsの周知活動をしながら、横の連携を広めるハブ役も担っているんですね。
「綾いと」の活動には三本柱があります。「連携した活動を積極的に行う」は、まさにそのうちのひとつです。他には「大学キャンパスを持続可能な環境にする」と掲げていて、昨年はキャンパスのエネルギーシフトも検討しました。電力会社と連携し、キャンパスのエネルギーをクリーンにできないかと検討したんです。ただ、試算した結果、「不安定な電気だと導入が難しいから」という理由で実現できず…。でも、不安定ではないですし、せっかく提案段階までは行けたので、またチャレンジしたいと思っています。
――実現したら、他大学にもいい影響を与えそうですね。もう一本の柱は?
「私たちの変革を図る」です。例えば「ecocon(全国大学生環境活動コンテスト)」や、滋賀県立大学で行われた「キャンパスSDGsびわ湖大会」に参加して活動内容を発表したことがありますが、そのたびに資料やポスターを作成したり、人前に立って話してきました。おかげで人前に立っても緊張しなくなったし、色んな場面で自分から前に出られるようになりました。こうして、活動を通じて成長することが三本目の柱ですね。
自分と、自分の未来の子孫のために行動を
――阿部さんがSDGsに関心を持つようになったキッカケは?
もともと、環境問題に関心があったんです。幼い頃から生き物が好きだったので、生態系を守るためにも「環境を守りたい、環境について勉強したい」と思っていました。犬や猫はもちろん、幼い頃は虫が好きで、虫取りや観察が大好きでした。バッタやカマキリに始まって、高学年に上がるとトカゲを捕まえていましたね。(笑)
――爬虫類もイケちゃうんですね!(笑) 他メンバーも環境問題に関心を持つ人が多いんですか?
環境に関わらず、SDGs全体に問題意識を持っています。メンバーは全員で17人。4年生はもうサポートに回っているから、中心になっているのは1〜3年生の12人ですね。メンバーが増えれば、もっとやれることも多くなってきますし、芝浦工業大学の学生でSDGsに取り組みたいという人はぜひご連絡をください!
――今後の目標はありますか?
「次世代SDGsフォーラム」は、今年も12月に開催予定です。コロナ禍なのでオンラインの開催となりますが、「次世代SDGs月間」と名前を変え、週1ペースで実施予定です。あと、まだSDGsを知らない人にリーチしていくことも大切な目標ですね。これが一番難しいんですけど、例えばみんなが関心を持つ“就活”の話題とSDGsを絡めたイベントなども行っていきたいと思っています。
――最後に、同世代のみなさんにメッセージをいただけますか?
まずはSDGsに興味持ってもらいたい、ということですね。次世代を担うのは私たち世代です。自分の未来のために、そして自分の子孫の未来のために、自分が何をしなければいけないのか――そういう視点で物事を考えて、行動に移してもらいたいですね。
サークルプロフィール
SDGs学生委員会ー綾いとー:代表 阿部汐里さん
一人でも多くの人にSDGsを他人事とせずに『問題意識』をもってもらう」ことを目的に活動する学生団体。メンバーは主に芝浦工業大学、大宮キャンパス在学の学生で構成。SDGsを知識として理解するだけでなく、アクションに繋がる機会を提供している。
文:猿川佑
編集:マイナビ学生の窓口編集
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