マンゴー農家と会社員、二足の草鞋で農業に携わる。「沖縄ゴールデンマンゴーファーム」の八谷耕平さんが語る、農業の魅力

学生の窓口編集部

PR 提供:農林水産省
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現在、国際的な農薬メーカーで働きながら、沖縄県のマンゴー農園の経営に携わる八谷さん。会社員と農家という二足の草鞋を履く彼は、どんなキャリアを歩んできたのでしょうか? 学生時代から振り返っていただきました。

プロフィール

PROFILE

八谷耕平さん

1981年生まれ。大学卒業後は、フリーターを経て冷凍食品メーカーに就職。営業職を経験した後に退職し、1年間カナダ、アメリカで生活をする。帰国後は語学力を活かし、塗料メーカーに4年間勤務。現在は国際的な農薬メーカーで南九州地方を担当。コロナ禍の観光客減少でマンゴー価格が暴落している現状を目にし、2年前より妻の実家のマンゴー園経営に携わる。会社員と農家という二足の草鞋を両立させている。

沖縄ゴールデンマンゴーファーム https://goldenmango-farm.com/

半年間のフリーターを経て冷凍食品メーカーの営業職に

2年前に「沖縄ゴールデンマンゴーファーム」の経営を開始した八谷さんですが、大学時代には、海の生物について学んだそうです。

「高校生の頃は全然勉強していなくて、一浪して東海大学海洋学部に入学したんですよ。昔から魚や自然が好きだったので、海関係ということで、この学部を選びました」。

「誰もやっていないことをしたい」という気持ちを強く持っていた八谷さん。大学時代には、世界で誰も研究をしていないクダヤガラを研究テーマに選び、勉学に勤しむ4年間を過ごしました。

研究に打ち込む八谷さん

八谷さんが大学生の頃は、ちょうど就職氷河期と呼ばれる時代。就職活動をして、1社内定をもらったものの、やりたいことと思えずにフリーターの道を歩むことにしました。

「大学卒業後、半年くらいは役所でアルバイトしていました。だけどこのままではダメだなと思いまして……。魚にも関係する仕事ということで『ケーオー産業』という冷凍食品メーカーに就職しました」。

入社後は、営業のノウハウを学びながら仕事に邁進したそうです。

「その頃ってまだ、冷凍のおはぎがメジャーではなかったんですよね。惣菜コーナーに冷蔵品が並び始めた頃くらいで、冷凍食品としてはほとんどスーパーで売っていなかった。昔から一つのことに取り組むのが好きだったので、とにかくそれだけやり遂げようと思って頑張ったら、1年で全国で売り上げ1位の成績を取ることができました」。

仕事にやりがいを感じていたものの、徐々に違う世界をみたいと思うように。八谷さんは1年で会社を退職し、海外へと旅立ちました。

1年間の海外生活が人生の転機に。帰国後は塗料メーカーに就職

会社を辞めて、わずか10日後には海外生活をスタートさせた八谷さん。観光ビザでカナダに行き、その後ビザを延ばしながら1年ほど滞在したそうです。

「最初の一週間だけ宿を取って行ったのですが、あとは新聞の見出しでホームステイ先を探して、点々としました。滞在中は公共機関だけを使って、アメリカとカナダ一周にも挑戦しましたね」。

鈍行列車でひたすら電車に揺られること4日半。とにかくすることがないため、その時間で自分の人生について考えていたと八谷さんは話します。

海外放浪時代の八谷さん

「今思えば、何もしないで自分のこの先を考えることができたあのひとときが、大切だったのかもしれません。帰国前にインターネットで就職活動をし、帰国後1週間ほどで最終面接を受けて、武蔵塗料という塗料メーカーに就職しました」。

武蔵塗料では、携帯電話やカメラなどを扱う大手企業の営業を担当。海外で学んだ英語を活かし、国内のみならず海外の工場へも行き来する日々を過ごしたそうです。

「その頃、折りたたみ式のクラムシェルの携帯が流行っており、武蔵塗料がトップメーカーでした。新作発売のタイミングは各社一緒。だから繁忙期はほとんど自宅には帰れないんですよね。中国の工場で塗装していると、現地に行かなければならない。出張先から午前中服だけ自宅に取りに行って、そのまま海外に行くなんてこともよくありました」。

忙しかったものの大きな規模の仕事を任され、やりがいを感じていたという八谷さん。そんな彼の転機になったのが2011年の東日本大震災でした。

「2、3週間出張で家に帰れないほど忙しくなってしまい、妻と過ごす時間が全然なかったんです。家族との時間を大切にするために転職することにしました」。

農薬メーカー社員とマンゴー農家の二足の草鞋を履くことに

その後八谷さんは、2012年に国際的な農薬メーカー「ダウ・ケミカル(現Corteva Agriscience)」に転職。7年間、和歌山や大阪、奈良など関西地方を担当した後、東京に移り、2年間全国の殺菌剤の全国マネージャーを経験しました。

現在は南九州地方のエリアマーケティングマネージャーになり、自社農薬について農家やJA、農業法人等への指導や研究機関と協力しての商品開発に携わっています。

そしてメーカーという立場で農業に触れるようになったことが就農に興味を持つきっかけになったそうです。

「農業をするには農薬も買わなきゃいけませんし、肥料も撒かなければならない、発送用の段ボールだって手配しなければなりませんよね。いろんな悩み事がある中で、農家の人はどういう考えで仕事をしているのだろうと。メーカーとして指導するだけでなく、農家の立場で農業を考えてみたくなったんです」。

その後、八谷さんはコロナ禍を契機に、妻の実家である沖縄県の「沖縄ゴールデンマンゴーファーム」の経営、栽培に携わることになりました。

「コロナで観光客が減ってしまい、今まで道の駅やファーマーズマーケットで売っていたマンゴーの収益がほとんどなくなってしまったんです。そこで、私が経営からマンゴー農園に携わることにしました。いまの仕事に就いたことで就農してみたいという気持ちもありましたし、マンゴーにも興味があったので始めました」。

八谷さんは、積極的に営業活動をし、マンゴーの販売経路を拡大。2年間で当初の売り上げを約1.8倍に伸ばすことに成功。

「農業は“農”と“業”と自分で作ったマンゴーを売るところまでやらなければなりません。自分で営業もやっていますが、採用してもらえた時はとても嬉しいです。うちは世界自然遺産に登録された東村で、湧き水を使ってマンゴーを作っているんです。そういうストーリーもいろんな人に伝えたいし、知ってもらいたいという気持ちが強いですね」。

経営に携わるようになってからは、無駄をなくす改革にも力を入れたといいます。

「経営1年目から、食品ロスを減らすために加工用や廃棄寸前のマンゴーでピューレを作って売ることにしました。無駄を省いて、適正な価格でマンゴーを売りたいという気持ちで改革をしています」。

「沖縄ゴールデンマンゴーファーム」は2年間で名護から東村にまで農地を拡大。現在は32棟、2400坪の農園でマンゴーを栽培しています。

「農薬メーカー社員と農家という両面から農業をみられるのも面白い」と八谷さんはいいます。

「自分の会社の商品を、農家のコミュニティで『効果がとてもよかった』と言ってもらえるのはうれしいですね。また、同じ人にメーカー、農家と違う立場で会いに行くことができるのも面白い。農林振興局や農家の困りごとを解決する組織に、農薬メーカーとしては『いま問題になっている虫や病気はありますか?』と聞きに行き、農家としては『こんな病気があるから解決してくれ』と相談に行く。いろんな立場で同じ担当者に会いに行くことで、両面から農業を見ることができます」。

八谷さんが語る、農業の魅力

就農からわずか2年とは思えないほど、さまざまな改革を進める八谷さん。「やりたいことが多くて追いついていないんです」と話す彼に、農業の魅力を伺いました。

「農業人口はこれからどんどん減っていきます。2020年には230万人位いた農業人口は、2030年には40万人ほどにまで減ると予測されています。作る人が減れば、競争力は減っていきますよね。実際に近所の農園のおじいちゃん・おばあちゃんがマンゴー作りを辞めるけどハウスをどうしようという話も聞こえてきます。もちろん気軽には農地を拡大などできませんが、農業人口が減っているということはそれだけチャンスでもある仕事とも言えます。マンゴーって作るのにすごく手間がかかるんです。ほとんど機械化が進んでいないので、大手企業が参入しにくい作物でもあります。小さい規模で始めても、大手企業と十分勝負ができると思います。それはマンゴー作りならではの魅力だと思いますね」。

また、八谷さんは将来の大きな目標も語ります。


「実は沖縄のマンゴーは、全国でトップシェアを誇っています。ですがマンゴーというと皆が口を揃えて宮崎県が産地と答えるんですよね。それって悔しいじゃないですか。マンゴー=沖縄というイメージがつくようにしたいというのも一つの目標になっています」。

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取材・文/安藤茉耶
編集:学生の窓口編集部

提供:農業の魅力発信コンソーシアム


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