実は身近だったSDGs。大学生の1日に見た「SDGsと学生の関係」
文:猿川佑
編集:学生の窓口編集部
みなさんは「SDGs」という言葉をご存知でしょうか?
最近、何かと話題になるワードですが、これは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称。簡単に言うと、地球上の人間や動物がこの先も暮らしていけるように、目の前にある課題をみんなで解決しよう、というものです。
SDGs はアフリカなどの貧困地域や中東などの紛争国だけに限った話ではなく、日本に住む私たちにも大きく関わる課題です。しかし、いまいち“自分事化”できない人も少なくないと思います。
そこで今回は、とある大学生Aさんの1日の生活を例に、みなさんがSDGsをより身近に感じることができるポイントを高木先生にご紹介していただきました。
高木超(たかぎこすも)先生
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任助教。ミレニアル世代を中心にSDGs 達成に向けて取り組む「SDGs-SWY」の共同代表も務める。
大学生の1日とSDGsの関係
大学2年経済学部のA子さん、女性、地方都市にあるT大学にいる、一人暮らし、カフェでアルバイト中。
AM 7:00〜 起床
1限目から授業がある日は7時に目覚ましをセット。眠い目をこすりながらテレビを点け、朝のニュースをぼんやりと眺めながら簡単な朝食を済ませるのがAさんのルーティンです。その後は顔を洗って歯を磨き、ヘアスタイルをセットするのがいつもの流れですが……
「ここで気にかけたいのが、歯磨き粉(練り歯磨き)や洗顔料の成分です。歯磨き粉や洗顔料に含まれるザラザラした『スクラブ』は、微細なプラスチック粒子『マイクロビーズ』でできています。この粒子が排水処理施設を通り抜けて川や海に流れ、深刻な環境汚染につながっていると言われているのです。『スクラブ』と聞くと、汚れが落ちそうなイメージがあるかもしれませんが、実は別の場所を汚してしまう原因になっているかもしれません」
AM 8:00〜 通学
一人暮らしのアパートから大学まではバスで約15分、距離にして5kmほど離れています。家の最寄りのバス停から大学までは直通で一本なので毎日例外なくバスを利用しているのですが……
「もちろん、自家用車を使うより公共交通機関を使ったほうが、地球温暖化を引き起こす温室効果ガスの排出量を削減できるので、環境に優しいと言えます。ただ、自転車を使って通学すれば、環境に優しいだけでなく、適度に運動もできるので、生活習慣病の予防にもなります。お出かけの際には、お気に入りのマイボトルを持ち歩いてはいかがでしょうか。最近では、地域の給水機を探せるアプリも登場していますので、新しいお店や場所を探す楽しみにもつながります」
AM 9:00〜 授業
この日の1限目の授業は経済学。大教室で約200人が参加する規模の大きい授業ですが、その分、学校側の出欠確認も甘く、なかには居眠りしている学生の姿もチラホラ。昨夜遅くまでバイトしていたAさんも、集中力を欠きながら机に座っていたようで……
「『ノートテイカー』という役割があるのをご存知でしょうか? 授業中に聴覚障がいを抱える学生の隣に座り、先生の話している内容を、手書きやパソコンで文字通訳するボランティアのことです。授業1コマごとに、ボランティア学生2名1組となって交代でノートテイクを行います。何らかの障がいを抱える人も、平等に質の高い教育を受けられる環境整備をSDGsは求めています。ぜひみなさんの大学でも、ノートテイカーの募集をしていないか確認してみてください」
PM12:00〜 ランチ
2限目までの授業を終え、ようやく昼休み。ランチの時間です。いろんな飲食店が入った学食で昼食を取ることもあれば、構内のコンビニで簡単に済ませることもあるAさん。この日は友達と一緒に学食へ行こうという話になり、何を食べようかと考えていると、何やら見慣れないTFTという文字のマークが……
「それは『TABLE FOR TWO(テーブルフォーツー)』のマークです。NPO法人『TABLE FOR TWO International』が実施する取り組みで、その名の通り、加盟店で1食のご飯を食べると、世界の貧困地域に1食分(=20円)の食料支援を行えるというもの。大学や企業や官公庁、病院などが参加していて、その輪はどんどん広がっています。SDGsは飢餓の解消も掲げているので、加盟店を見かけたら積極的に利用しましょう」
PM5:00〜 アルバイト
1日の授業を終え、友達と小一時間ほど談笑したAさんは、そのままアルバイト先へ直行。Aさんが働くのは駅前にある大衆居酒屋で、サラリーマンや大学生も利用する人気店です。週3〜4日ペースで働くAさんは、ここの賄い制度にとても助けられているのですが、できれば余った賄いも持ち帰りたいと思ったり……
「まだ食べられるのに捨てられてしまう『食品ロス』の削減は大きな課題です。そこで、食べ残した料理を持ち帰るための容器『ドギーバッグ』が活躍します。SDGsでは、世界全体の一人あたりの食品廃棄物を半減することも掲げられています。まだ食べられるのに廃棄されそうな料理などは、責任者に聞いたうえで、衛生面に配慮しながら持ち帰りましょう。また、お客さんも食べ残しを持ち帰ることができるよう、店長に提案してはいかがでしょうか」
PM8:00〜 コンビニに寄り道
アルバイトを終え、帰路についたAさん。夜のリラックスタイムに備え、家の近所にあるコンビニでお菓子やジュースを適当に購入。レジ袋を引っさげて家へと歩き始めたのですが……
「7月からはレジ袋も有料化になりました。お金をかけたくないという気持ちもあるとは思いますが、そもそもレジ袋をもらわないほうが資源を使わずに済みます。そこで、節約も兼ねてマイバッグを持ち歩いてはどうでしょう。レジ袋やペットボトルのような『使い捨てプラスチック』が、適切に処理されず、海に流出して『海洋プラスチックごみ問題』にもつながっています。オシャレなデザインのマイバッグを使えば、気分も上がりますし、さらにお金の節約にもなるなら一石二鳥ですよね。」
PM9:00〜 帰宅
長い1日を終え、家でようやく一息。リビングで少しくつろいだら、早めにシャワーを浴びて汗を洗い流すのがAさんの日課となっています。
「シャワーはできるだけ短時間で済ませましょう。地球温暖化や人口増加などの影響もあって、世界ではますます水不足が深刻になってきます。お風呂やトイレの節水を心がけることでエネルギーや資源も節約できます。また、ごみを削減するためにもシャンプーやコンディショナーは詰め替え用を使いましょう。価格もボトルで買うより詰め替え用のほうが安いですよね。もちろんシャワー中は、使っていない部屋の電気を消すことも忘れずに」
SDGsのヒントは身近に転がっている!
Aさんの1日を追ってみて、何気ない日常のなかにSDGsとの接点があふれていることがわかりました。
試してみると気づくことも多く、バスの乗車時間と自転車の移動時間にはあまり差がなかったり、レジ袋よりもお気に入りのマイバッグのほうが買い物が楽しくなったりするものです。食べ物やプラスチック問題など、一人ひとりが少し意識するだけで、大きな違いが生まれます。
すべてを一気に実践しようすると大変かもしれませんが、ひとつひとつのハードル自体は決して高くありません。自分のできるところからSDGsに触れ、少しずつ地球や社会に優しい行動をとれるようになれば、きっと明るい未来にもつながるはずです。
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