「女性とウェルネス」から「誰もが等身大で輝ける社会」を考える。津田塾大学「苗ぷろ。」代表・江連千佳さんの目指す社会とは? 2ページ目
苗ぷろ。は自分の理想を実現するための「実験場」
「女性とウェルネス」の課題に向き合う学生たち。やりたいことが決まっている人もいれば、苗ぷろ。に入ってから探す人も。みんなとてもやさしく、落ち込んでいるメンバーがいればみんなで励まし合える雰囲気で話すと前向きになれるそう。
――苗ぷろ。にはどんなメンバーが集まっているのでしょう?
みんなジェンダー問題に関心を持ってがいるのは共通していますが、まだ明確に何かをやりたい、と決めていない人もいます。でも、それでいいし、苗ぷろ。を通じて見つけてほしいなって思います。苗ぷろ。には、生物学的に女性か、性自認が女性であれば誰でも入れます。学生なら中高生でもOKですよ。いろんな意見を聞きたいし、やりたいことが多すぎて、実現するのに人が足りない状況ですね。
――目標としているものはありますか?
苗ぷろ。にいるメンバーには、人生をデザインできる人になってほしいと思っています。私の周りには、女子高から男女共学の大学に行ったことをキッカケに、自信を失ってしまった子もいます。苗ぷろ。は女性が安心して活躍できる環境ですから、しっかり自信を醸成してほしいと考えています。
――「女性」というだけで自信喪失することがあるんですか?
例えば、ビジネスコンテストでも女性は参加率が低いというデータもあります。でも、その気持もわかるんですよね。なんとなく、自信が持てなくて参加しづらいんですよ。ドイツのメルケル首相でさえ、会議前はすごく緊張してしまうそうです。世界で活躍する女性リーダーたちも、女性であることで漠然とした不安を抱える傾向があるらしいんですよ。
――それは知りませんでした…。
100万円の賞金が出るようなビジコンとは規模が違いますけど、苗ぷろ。もちゃんと企画には予算をつけます。だから、自分のやりたいことを実現するための実験場のように捉えて成功体験をたくさん積んでほしいって思いますね。
NZ留学で価値観に変化。注目の女性首相から受けた影響
――江連さんが女性とウェルネスの課題に関心を持つようになったキッカケは?
ベースになっているのは、中学3年生のときに友人が自殺したことです。自殺の原因は今もわかりません。毎年30〜40人が東京大学に入るような学校でトップを獲っていた子だし、部活でも部長を務めていました。きちんとした家庭で、傍から見ればとても順風満帆だったんですよ。 1位のプレッシャーもあっただろうし、ある日、先生に怒られたこともあったんですよね。もしかしたら、そこで「もう無理」ってなったのかもしれません。私はそのときに思ったんです。「教育って、人を育てるものなのに、殺された。教育や社会に殺されたんじゃないか?」って。そのときから社会に怒りを感じるようになりました。
――そんな悲しいできごとがあったのですね…。その後はどうされたんですか?
私が最初に起こしたアクションは、テストを“ノー勉”で受けて、ほぼ白紙で答案を提出したことです(笑)。でも、先生にめちゃくちゃ怒られて、すぐに改心しました。「人にわからないやり方じゃただの反抗だな」って。それで「じゃあ海外の教育を受けて、日本の教育と比べてみよう」と思い立ちました。実際に、高2でニュージーランドへ留学して、みんなが自分に自信を持って生きていることにすごくビックリしたんです。
友人の自死をきっかけに日本の教育や社会の事象について考えるようになった江連さん。多様性を認め合える文化が根付くニュージーランドへの留学は、今の苗ぷろ。での活動の原点になっている。
――ニュージーランドと言えば、まさに今、女性首相のジャシンダ・アーダーンがコロナ対策に成功して、称賛を集めていますね。
私も、彼女に考え方を変えてもらったひとりです。私の留学は、ちょうど彼女が首相になったタイミングだったんですよ。首相なのにいきなり産休をとったことにも衝撃を受けました。私は「お嫁さんになるのが女の幸せだ」と祖母に言われて育ったんです。嫁になるか、仕事をするか、女性にはその二択しかないと思っていた。それなのに、アーダーンは首相という立場でキャリアプランとライフスタイルを両立しているわけですから、本当に驚きました。
――実にいいタイミングで留学しましたね。
ニュージーランド特有の歴史的背景もあるとは思います。でも、私だって同じことができると思ったし、同時に「日本の常識ってヤバくない!?」と危機感も持ちました。ジェンダーやウェルネスに関する考え方も、ニュージーランドで多くを学んだと思っています。
――江連さんたちの先進的な考え方が、日本にも好影響を及ぼしてくれることを願っています。最後に、学生のみなさんにメッセージをお願いします。
日々の選択に疑問を持ってほしい、と思っています。当たり前だと思っていることも、一度疑ってみてほしいですね。私の場合、留学のときにキャリーバッグの半分が生理用品で埋まりました。もしそのとき疑問に思っていれば、もっと早く月経カップの優秀さに気付いていたかもしれません。常識を疑い、選択肢が制限されていないか、じっくり考えてほしいです。そしてもちろん、苗ぷろ。の仲間になってくれたらうれしいですね。いつでも大歓迎です!
サークルプロフィール
苗ぷろ(なえぷろ):代表 江連千佳さん
女子大生のココロとカラダの調和をサポートする学生団体。『誰もが等身大で輝ける社会』を目指し、『女性とウェルネス』の観点から頑張る女子大生のよりどころになる場として活動している。
文:猿川佑
編集:マイナビ学生の窓口編集
他のSDGs特集記事もチェック!