持続的なクリーンエネルギーの供給に向けて、廃熱を電気にする材料の開発
廃熱を電気にするとは?
普段、私たちの身の回りには温度(熱)が存在します。そして、熱には熱い(hot)とき、冷たい(cool)ときがあります。この状態を感じるのは、世の中に温度差があるからです。そして、温度差というものはどこにでもあります。
例えば、図01のように夏場の室内ではエアコンがついていて涼しくなっていますが外は暑いままの状態です。そして、家の中では涼しい状態・外では暑い状態とありますが、そこに家の壁には温度差が生じています。このようにどこにでも生じる温度差を利用して発電できる仕組みが熱電発電素子です。
この熱電発電素子は、図02のように二種類の金属又は半導体を組み合わせ、温度差を設けることで二種類の金属間に電気が発生するゼーベック効果という現象により電気が発生します。
この現象を活用することで図03のように身の回りで発生する無駄な熱(廃熱)から熱電発電素子内に温度差を設けることで、熱を電気に変えて利用できるクリーンエネルギーの有効活用できる技術とされています。
材料の問題
Topic(1) 現状の材料(希少金属)
熱電発電素子は、図のようなものが一般的に流通しています。そして、この熱電発電素子の材料は、現状として希少金属材料ともいわれるTe、Sb、Biが性能や安定性などの面から主流となっています。
しかし、この材料は、希少金属と名がつく通り、希少なものです。そのため、熱電発電素子として世の中に普及させるのに材料の値段が壁となっています。さらに、これらの材料には毒性もあることから使用できる場面が限られています。
Topic(2) 期待される材料(カーボンナノチューブ)
Topic(1)の問題点の解決策として期待されるのが、炭素の集まりであるカーボンナノチューブ(CNT)です。このCNTは、炭素からできていることもあり希少金属材料より持続的に活用できる材料です。さらに、毒性も少なく柔軟性も優れていることから、廃熱利用の他、様々な場面で利用可能な熱電発電素子として期待されています。
しかし、CNTを活用した熱電発電素子は、まだ性能の安定性まで確立が至らないことが現在の課題となっています。
今後の展望
希少金属を用いた熱電発電素子の性能向上はもちろんのこと、希少金属の代わりになる材料の模索は、クリーンエネルギーである熱電発電素子を安定的に供給するうえで必要です。そして、熱電発電素子に欠かせない熱の流れについて仕組みの解明は、より効率的に熱エネルギーを電気エネルギーに変換する上で欠かせない研究です。
私は、これからも安定的な電気供給・クリーンな環境を未来に届けるためにも、これらの研究は欠かせないと考えます。
さいごに
研究室紹介
環境エネルギー材料研究室として、2012年の発足から9年が経ちました。発足当初からエネルギー問題に対して身近な熱エネルギーを電気エネルギーへ効率的な変換、熱電発電素子の効率的な製造方法の模索や熱についての仕組みの解明を目標としてきました。
私たちはこれらの目標実現に向け、日々研究に励み、得られた研究成果はこれまで数多くの海外学術誌に投稿し掲載されています。これからは、熱エネルギーの効率的な変換はもちろんのこと、持続的な熱電発電素子の利用に向けて代替え材料の模索にも注力したいと考えています。
是非、ホームページにて研究成果を掲載していますので見てください。
執筆者紹介
東海大学 工学研究科応用理化学専攻 安間有輝
東海大学 工学研究科応用理化学専攻 千葉知志
告知
本年度を目標にホームページのデザイン変更を予定しております。是非、見てください。そして、研究室についての質問や訪問希望などありましたら、下記の連絡先より気軽に連絡をしてください。
連絡先
●ホームページ
http://www.er.u-tokai.ac.jp/takashiri/index.html
●メール
(高尻雅之 教授) takashiri@tokai-u.jp
(安間有輝 学生) amma608@fuji.tokai-u.jp
●住所
〒257-0000 神奈川県平塚市北金目4-1-1
東海大学 工学部 材料科学科 環境エネルギー材料研究室(高尻 研究室)
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