変えるべきものと、守るべきもの。竜星涼が考える、SDGsと“未来”のカタチ。
9月4日公開の癒し系“純愛BL映画”『リスタートはただいまのあとで』で、“方言おっとり男子”熊井大和を演じている竜星涼さん。作品のテーマでもあるジェンダーに対する考え方は、未来に向けて私たちが今変えていくべき価値観のひとつとして、「SDGs」の目標にも加えられています。変化が求められている価値観、そしてそれが作り出すよりよい世界とは? 今回は、竜星涼さんが考えるSDGsと、そんな“未来”のカタチについてお話を伺いました。
竜星涼の目に映る、昔と、今と、未来。
ーーご自身について、昔と比べてここが変わった! と感じるところはありますか?
僕はわりと感情的というか、感情論で動くタイプの人間だったんですけど、俳優という仕事をしていくには「理論立てて考える」ということもすごく大事なことなのかな、と最近は思うようになりました、やっと(笑)。
ーー性格も少し変わられたのでしょうか。
性格はあんまり変わらないと思います(笑)。たぶんどこかで変わりたくないと思ってるんだと思います。社会に出ていろいろな方々と出会うと、やっぱりどうしても自分の中で妥協しなきゃいけないことにぶち当たると思うんですけど、自分の精神は曲げずにいきたいなって思っています。
ーーでは、昔と比べて「変わったな」と強く感じる日常生活での変化はありますか?
それはありますね。お仕事をしていても、この10年でコンプライアンスの面でもだいぶ変わったな、って。だから、芸術のあり方も少しずつ変わってきているのかなと感じています。
ーー自由さが減ってきている?
イマジネーションしたことをみんなが受け入れる世界が広がれば、もっと豊かにいろんなことができるのに、どうしてもそれが難しくなってしまうかなと思います。
竜星涼が考える、SDGsとの向き合い方。
新しい「当たり前」が、平和に繋がる
ーーいま、私たちの未来のための取り組みとして、SDGs(2015年に国連サミットで採択された「2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す17の国際目標」)が世界的に注目されていますが、その中で気になる目標はありますか?
(目標.1の)「貧困をなくそう」については特に気になりますね。今、コロナの影響下で特に思うこともありますし。でもやっぱり、今作のこともあってジェンダー系(目標5.ジェンダー平等を実現しよう)は気になります。たとえば僕なんかはファッションがすごく好きなんですけど、今はジェンダーレスにいろんな服装をみんなが普通にしていますし。
ーーメンズとレディースの区別もだんだんなくなってきていたり。
僕自身、女性のファッションも大好きなんですけど、レディースものを着ると周りから「奇抜だね」って言われることがあるんです。それがプラスの意味合いならいいんですけど、日本ではきっとマイナスの意味合いが強いと思うんですよ。
ーー世代によっても、受ける印象が違うかもしれないですね。
たしかにそうですね。もっとあたりまえになる必要があると思うんです。たとえば今回の作品のように外で男性同士がキスすることがあったとしても、それが当たり前のことになればもっと世の中が平和になるんじゃないかなとも思いますし。
そのためにはみんなが少しでも「こういうことは自分にも起こりうることなんだ」って感じてくれたり、理解を示すことが大事。それを物語っているのが今作なんじゃないかと思っているので、「人を好きになったけど、たまたまそれが異性じゃなくて同性だっただけなんじゃないの?」ってことを普通に話せる世の中になってくれたらいいなと思います。
自分が、発信していく。
ーー竜星さんがこれからの世界のために必要だと思うことはなんですか?
まずは「知る」ことかなと思います。たとえば、今の若い人たちはジェンダーに対してわりと許容範囲が広くなっていると思うんですけど、まだ理解が難しいっていう人もいるだろうし。でも、いろんなことを知ることで少しでもお互いが歩み寄れたらな、って。一人ひとりがそう思って行動することがまず大事なのかなって思いますね。
じゃあ誰が、今の世の中で起きていることについて伝えていくんだと言えば、やっぱり僕らみたいな表現者が知らない人たちのために、少しでも影響を与えていくことが必要なんだと思います。
竜星涼が映画で向き合う、ジェンダーという価値観
ーー原作・脚本を読まれた感想はいかがでしたか?
“同性愛”というより、人間の葛藤や苦悩をお互い助け合い、導きあいながら恋に発展していくっていう、本当に人と人とのラブストーリーだな、って。だから、今日本で流行っているようなBL作品とはまたちょっと違うというか……。そういう作品って、同性が好きであるがゆえの気持ちの葛藤が強く描かれることが多いと思うんですけど、この作品は「どうやったら人間は自然とその人に惹かれて好きになって愛し合っていくのか」っていう根源的なものと同性愛が絡み合っているところが面白いなと思いました。
ーー熊井大和を演じることについてはどう思いましたか?
とても難しいと思いました。これが対異性だったらまた感覚が違うと思いますが、どんどん惹かれあって「これは恋なのかな?」って悩む大和の葛藤が描かれているので、それを表現することはすごく繊細で難しいなって。特に大和は小さい頃にあまり愛情を受けてこなかった役柄なので、そういった意味でも表現するのが難しいと感じました。
ーー大和は竜星さんのイメージとはかなり違う役だと思うのですが、役作りには苦労しませんでしたか?
僕の両親が山形出身で、おじいちゃんおばあちゃんは農家をやっていて、農作業を手伝ったりもしていたので、僕の中では田舎暮らしはあまり遠い存在ではなかったんです。なので役をイメージしづらいということはあまりなかったですね。どちらかというと、“愛情を受けてこなかった”という部分のイメージを膨らませるほうが難しかったです。
ーー大和は一見明るいけど複雑な内面を持っていますが、そんな大和に共感する部分や好きなところはありますか?
人に嫌われたくないという気持ちがあったり、人の気持ちを敏感に感じとるからだと思うんですけど、明るくて、誰にでもわけへだてなく優しいところは人として素敵なことだと思います。でも、それゆえ自分ひとりではなかなか“前に進む”ことができなかったりもします。そのとき、自分を受け止めてわかってくれる人がいると、これだけ前に進めるんだっていうところは、僕自身経験があることなので、すごく共感できました。
ーー光臣役の古川雄輝さんと共演された感想は?
クールでミステリアスな方なのかなって思ってたんですけど、一緒に撮影をしていく中で監督といろんなことをディスカッションされていて。作品に対する情熱をすごく感じたし、僕自身すごく勉強になりました。僕はその土地になじむにはその土地の人たちと仲良くしなければっていう意識があったので、撮影が終わったあとはひとりでお店に行ってそこの大将と仲良くなったりして、気づいたら地元の住民みたいになってました(笑)。
竜星涼が教える、目標実現のための向き合い方
ーー最後に、大学生へのメッセージとして「目標を実現するために大切なこと」について竜星さんの思うことをお聞かせください。
まず“アクションする”ってことですね。アクションしないことには始まらない。「ホントにこれでいいのかな」「この仕事でいいのかな」「これが自分のやりたいことなのかな」ってすごく悩むと思うんです。実は、僕もつい最近まで、ずっと悩んでいたことがありました。
ーーつい最近まで悩んでいたんですか?
そうなんです。でも、やっぱり悩むしかないんだと思います。自分で悩んで答えを導き出すことが大事だし、悩み抜いて出した答えには自信を持って行動できるだろうし。自分の人生ですから、後悔のないように、思ったらやってみることが大切。
僕にとっては、今回コロナの影響によって訪れた自粛期間がものすごくいい時間になりました。今までは“俳優であり続ける”理由をどこかで探していた自分がいたんです。でも時間ができたことでじっくり自問自答できたし、その結果いろんな雑念が取っ払えて、改めて心の底から「自分にはこれしかない」って思えるようになったんです。
文:落合由希
写真:島田香
編集:学生の窓口編集部
ヘアメイク:TAKAI
スタイリスト:山本隆司
『リスタートはただいまのあとで』
9月4日(金)よりシネ・リーブル池袋ほか全国順次公開
https://restart-movie.com
出演:古川雄輝 竜星 涼
村川 絵梨 佐野 岳 / 中島 ひろ子 螢 雪次朗 甲本 雅裕
監督:井上竜太
脚本:佐藤久美子
原作:ココミ著書「リスタートはただいまのあとで」(プランタン出版 刊)
企画:ホリプロ
制作プロダクション:キャンター/ホリプロ
宣伝:とこしえ
配給:キャンター
製作:映画「リスタートはただいまのあとで」製作委員会
©映画「リスタートはただいまのあとで」製作委員会
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