『二十五、二十一』『財閥家の末息子』など、韓国ドラマに共通する“引き込まれる”要素とは?『韓国ドラマ全史 なぜ世界的ヒットを連発できるのか?』#Z世代pickブック

こんにちは! 韓国・慶煕大学で学んでいた いと(東京外国語大学 4年生)です。
日本だけでなく世界でも多くのファンがいる韓流ドラマ。学生のみなさんの中にも好きな方も多いのでは?中には親や祖父母3世代で韓国ドラマ“沼”にハマっている、なんて方もいるでしょうか…?
今回は、そんな韓国ドラマが発展を遂げた25年間の歴史や背景を読み解くことができる書籍『韓国ドラマ全史 なぜ世界的ヒットを連発できるのか?』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)第1章 韓流の原動力と国際通貨危機(IMF)より、一部を抜粋してお届けします。
ドラマにみるIMF危機の韓国社会― 『二十五、二十一』、『財閥家の末息子~ Reborn Rich』
「韓国の映画やドラマを観ると“韓国社会”が見えるが、日本のものを観ると“人の生き方”が見える」
ある映像監督からこの話を聞いた時、反論する言葉が見つからず、思わず同意してしまったことが忘れられない。
ドラマは社会の変化を素早く解釈するためのメディアであり、時代の姿を映し出している。IMF危機の韓国社会を取り上げたドラマは数多くあるが、その中で私が最も印象的だった作品は『二十五、二十一』と『財閥家の末息子~ Reborn Rich』である。
『二十五、二十一』は、IMF救済を受ける中で、家族や友人、夢を失った若者たちの挫折と、それを乗り越えていく成長が描かれている。一方、『財閥家の末息子~ Reborn Rich』は、韓国を代表する財閥グループを舞台に、財閥総帥一家のオーナーリスクを管理する秘書が、財閥家の末息子として「2回目の人生」を生きるファンタジードラマである。
高校生の成長物語と財閥企業への復讐劇という異なる設定だが、どちらの作品もIMF危機が韓国社会や国民に与えた影響をリアルに描いている。
まず、『二十五、二十一』についてだが、フェンシング部で活躍する高校生の主人公は、フェンシング選手として生きることを決意している。しかし、IMF危機の影響で学校からの支援が打ち切られ、高校のフェンシング部は解散を余儀なくされる。
主人公は「夢を奪わないでください」と抵抗するものの、コーチはこう語る。「お前の夢を奪ったのは、俺ではなく時代だ」
その後、主人公はフェンシング部のある別の学校へと転校し、ある日、国家代表選手の選抜試合が開かれる。この試合は国内のランキング上位の選手が参加資格を持っているが、IMFの影響で上位二人が辞退したため、ランキング外の主人公に出場のチャンスが巡ってくる。その時、監督は主人公にこう伝える。
「時代があなたを助けたの」
時代に翻弄されながらも運命を受け入れた主人公の姿は、50代である私を含め、あの時代を知る韓国人に大きな共感を呼び起こした。ドラマの中で触れられていたように、外貨準備高を増やすために国民が自ら金を集めた経験も、忘れられない出来事だ。
一方、『財閥家の末息子~ Reborn Rich』では、韓国を代表する財閥であるスニャングループに忠誠を尽くし、オーナーリスクを管理してきた秘書役の主人公が、財閥一家に命を奪われた青年として一家の末息子に転生する。転生後、主人公は未来20年間の出来事を知っている立場となり、復讐を実行していく。
このドラマでIMF危機の影響が最もリアルに描かれたのは、主人公の父親のエピソードだ。父親は当時、国内最大の自動車グループに勤めていたが、IMF危機による経営悪化と莫大な負債のため、会社は破産に追い込まれる。強制リストラの対象となった父親は、諦めずにデモを行い声を上げ続けるが、武力による鎮圧で血を流し、最後には命を落としてしまう。国家経済が崩れていく中で現実と戦う父親の姿は、時代を象徴し、視聴者に深い没入感を与えた。
人生のすべてを会社に捧げ、家族を守ろうとしてきた父親。IMFの影響は会社だけでなく、家族さえも破産に追い込んでしまう。主人公の父親の設定には、韓国で実際に起こった事件が絶妙に織り込まれており、激動の韓国現代史をたどる硬派な社会派ドラマとしても見応えがある。
両作に描かれたIMF危機と韓国社会への影響は、国民一人ひとりの人生を根本から変え、時に人の命までも奪うほどの残酷さを示している。国家という組織の実体や、国家を構成する国民の弱さ、そして人の意志や努力だけでは耐えられず、乗り越えられない現実が、これらの作品を通して深く伝わってくる。
Z世代ブックピッカーのレビューコメント
「韓国の映画やドラマを観ると“韓国社会”が見えるが、日本のものを見ると“人の生き方”が見える」、本当にその通りだなと感じます。大学で「ドラマと韓国社会」という講義を受けたことがあります。その授業では、IMF危機真っ只中の1990年代後半に放送されたドラマを観る機会があったのですが、至る所にIMFの影響を示唆する要素が散りばめられており、ドラマが社会の鏡であることを実感しました。履修後に『二十五、二十一』を見返したのですが、解像度が上がってより楽しむことができたので、ドラマと一緒に韓国社会について少し学んでみることもおすすめします!
『韓国ドラマ全史 なぜ世界的ヒットを連発できるのか?』
「冬のソナタ」から「イカゲーム」まで25年間の挑戦と試行錯誤の軌跡!
韓国のコンテンツ発展の大きな転換点となったのは、1997年の通貨危機とIMF救済であったことはご存知でしょうか?
この時期、韓国ドラマは従来の華やかなトレンディドラマから、家族愛や絆を描くIMF型ドラマへと変化。これが後の「韓国ドラマらしさ」を形成する要因となったと言います。
近年では、Netflixなどのグローバルプラットフォームの台頭により、制作会社の立場が強化。従来の放送局主導の制作から、制作会社が企画・開発から権利管理まで一貫して手掛ける「スタジオシステム」への移行が進んでいる。また、若手クリエイターの育成や共同執筆システムの導入など、新たな試みも活発化しているそう。
韓国コンテンツの成功に日本のコンテンツビジネスは何を学ぶべきか?を読み解ける一冊です。
著者:黄仙惠
定価:1,650円(税込) 発行日:2025年3月21日
詳細ページ:https://d21.co.jp/book/detail/978-4-7993-3132-3
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