【カシオ計算機】趣味のサーフィンを仕事に活かす!G-SHOCKの価値を再定義するお仕事とは? #お仕事図鑑
ヒット商品やサービスを手掛ける企業のキーマンにお話しを伺う企画「#お仕事図鑑」。
今回は「カシオ計算機」の時計統轄部 ブランドマーケティング部 ライフスタイル戦略室に所属する先輩社会人、柳田航さんにインタビュー。コラボレーションの仕事内容や今後の目標にについて詳しくお話を伺いました!!
PROFILE
柳田 航
時計統轄部 ブランドマーケティング部 ライフスタイル戦略室の一員としてG-SHOCKと外部とのコラボレーションを通じてこれまでG-SHOCKが享受できていなかった新たな付加価値を創出。具体的には契約アスリートやアーティストを活用した映像・ビジュアル制作やG-SHOCKを題材としたアート作品のプロデュース、音楽イベントの企画や協賛、アパレルなど時計以外のプロダクトの企画など。
INDEX
▼G-SHOCKと外部とのコラボレーションを担当
――簡単に自己紹介をお願いします。
カシオ計算機の柳田航と申します。これまでの職歴をもとに自己紹介させていただきますが、実はカシオ計算機は5社目になります。新卒で新聞社に入社したあと、出版社でファッション雑誌やWebメディアなどを経験し、現在カシオ計算機におります。
新聞社、出版社では広告営業に従事しており、2年前の2023年6月にカシオに入社しました。それ以降、2年弱、ブランドマーケティング部の現在の部署でG-SHOCKのマーケティングを担当しています。
――広告業からカシオ計算機へ入社されたきっかけや経緯について教えてください。
もともと広告業では、自社の媒体に企業広告や、記事風の広告(タイアップ広告)を提案する仕事をしていました。その過程で企業について深く知ることが多く、彼らの売上をいかに上げるかを考えることが重要でした。つまり、マーケティング支援の一環だったんですね。
わたしは新聞や雑誌だけでなく、YouTubeをはじめとしたデジタル広告も扱ってきましたが、「自分ごと」としてひとつの商品に注力したときに、これまでの経験が活かせるのではないかと考えました。また、もともとG-SHOCKが好きだったこともあり、カシオ計算機への入社を決めました。
――現在は時計統轄部 ブランドマーケティング部 ライフスタイル戦略室に所属されていますが、転職時にこの部署を希望されたのでしょうか?
マーケティング部の募集があり、その中で応募しました。当時、時計のマーケティングを担当する部署の下に3つの組織がありましたが、現在は体制が変わっています。その中で自分の経験が活かせる部署に配置されました。自分の希望と会社の判断の両方が合致した形だったと思います。
――カシオの社風について教えてください。
これまでの経験と比較すると、カシオは非常に国際色が豊かだと感じます。グローバルに商品展開しているためか、社員の趣味やバックグラウンドも多種多様です。そういった個性が仕事に活かされているのが非常に面白いと思います。
わたしも自分の好きなサーフィンやファッションをマーケティングに活かせていますし、他の社員もそれぞれのバックグラウンドを仕事に反映させていますね。
――どのような部署の方々と一緒にお仕事をされているのでしょうか?
本当に多くの部署と関わりますね。例えば、アスリートとのパートナー契約に関しては法務部とやり取りが多くなりますし、コラボ商品の販売に関しては営業部と連携します。さらに、アートワークや動画制作ではWebチームや宣伝担当の方々と協力し、広報の方とも密接に連携します。
――ミュージック、スポーツ、アート、ファッションの分野で、具体的にどのようなコラボレーションをされてきたのか教えていただけますか?
我々はこの4つのカルチャーを「FAMS(ファッション、アート、ミュージック、スポーツ)」と総称しています。
例えばミュージック分野では、一昨年からフジロック・フェスティバルに協賛しています。フジロックには「パレス・オブ・ワンダー」という、チケットがなくても入れるエリアがあるのですが、コロナ禍で一時休止していたこのエリアの復活をG-SHOCKがサポートする形で協賛しました。
ここでは、「NEIGHBORHOOD」や「UNDERCOVER」、「Wasted Youth」などの人気のファッションブランドさんと「パレス・オブ・ワンダー」をイメージしたオリジナルTシャツを制作しプレゼントキャンペーンを実施しました。
また、パレス内でもG-SHOCKの大型クロックを設置し、待ち合わせスポットとして活用してもらったり、若年層から支持の高いヒップホップのアーティストをお呼びしてゲリラライブを実施したりしました。
スポーツの分野では、サーフィンの五十嵐カノア選手、ブレイキン(ブレイクダンス)で昨年大ブレイクしたシゲキックス選手、オリンピック銀メダリストの開心那選手など、総勢21名のアスリートとしてアンバサダー契約を結んでいます。
挑戦と挫折を繰り返しながら各分野でトップクラスの実績を残すタフなマインドを持つ彼らと連携して、イベントや映像制作などを通じて彼らの魅力を発信することで、G-SHOCKにとっても強力なブランドリフトに繋がる、というwin-winな関係を築くことを意識しています。
契約しているアスリートの皆さんには、お陰様で日常的にG-SHOCKをつけてSNSに登場していただくなど、ブランドとの自然な結びつきを大切にしています。
ファッション分野では、G-SHOCKを単なる時計ブランドではなく、ライフスタイルブランドとして価値変換していただくことを目的に、「G-SHOCKPRODUCTS」というプロジェクトを担当しています。
具体的にはTシャツやフーディの他、G-SHOCK 40周年の際には10金のゴールドリングやグラフィティアーティストのエリック・ヘイズ氏にロゴをデザインしていただいたアワードジャケットを数量限定で発売しました。
共に高額商品でしたが、発売後即完売するほどの人気でした。
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▼相手との信頼関係を築く
――多岐にわたるコラボレーションはどのような経緯で決まるのでしょうか?
コラボレーションのきっかけはいろいろありますが、もともとG-SHOCKがFAMSカルチャー自体と非常に深い関係にあることが大きいと思います。
1990年代後半にG-SHOCKが流行したのは、アメリカが発端でした。1980年代のアメリカで放送されたカシオのCMでは、アイスホッケーの選手がパックの代わりにG-SHOCKを打つシーンが話題になりました。「誇大広告では?」と疑われたものの、バラエティ番組の検証で本当に壊れないことが証明され、「タフな時計」として軍関係者やスケーターに支持されていきました。このブームが日本に逆輸入され、スケーターやアーミースタイルを好むファッション好感度層に広がったと言われています
このようにG-SHOCKはもともとカルチャーとの親和性が高いため、「一緒にやろう」と自然にコラボが生まれやすいんですよね。そうした文化の土壌があるからこそ、多くのコラボが生まれているのだと思います。
――さまざまなアーティストやスポーツ選手と関わる中で、大切にされていることはありますか?
信頼関係は非常に重要ですね。アーティストさんやアスリートの皆さんとG-SHOCKのアートワークやクリエイティブを制作する際には、とにかく彼らのクリエイティブを尊重しながら、適度なバランスで関わることを意識しています。特に「相手をいかにリスペクトするか」という点は、常に意識しているところです。
――ご自身が今まで触れてこなかった業界やブランドと仕事する際に、どのように情報収集をして理解を深めていますか?
やはりマーケティングの仕事なので、実際に現場を見ることが最も大事だと思っています。例えば、知らないスポーツの競技であれば、実際に大会を観戦し、「どんなお客さんが来ているのか?」を意識しながら見るようにしています。現場に足を運んだり、実際に体験してみたりすることで、よりリアルな感覚を持つことができるんですよね。もちろん、最低限の事前勉強も必要ですが、机上の情報だけではなく、リアルな空気感を知ることが大切だと思っています。
ただ、プライベートを犠牲にしているという感覚はあまりないです。例えば、外出した際に新しいお店があれば立ち寄ってみるとか、ブレイキンの大会があればちょっと顔を出してみるとか。そういった小さな行動の積み重ねが、自分の引き出しを広げることに繋がるので、むしろ楽しんでやっていますね。
▼G-SHOCKの価値を再定義する
――G-SHOCKというブランドの価値を広げ、高めるお仕事をされてきた中で、ご自身が「成長したな」と感じることはありますか?
やはり、見識が広がったと感じます。FAMSのカルチャーと日常的に接することで、例えば高校生の頃に憧れていたストリートブランドのディレクターと20年越しにお会いする機会や、サポートしているスポーツのトップアスリートから直接お話を伺う機会をたまにいただくことがあるのですが、そうした方々からはやはり一つのカルチャーを第一線から引っ張っていく、そんなマインドを深く感じます。
そうした経験を通じて、彼らの考え方、そしてカルチャーそのものに寄り添う存在であることが結果的にG-SHOCKのブランド価値を高めることに繋がるのかなと感じています。そういう意味でも自身の成長、というよりもカルチャーに対するリスペクトの気持ちは以前にも増して強くなりました。
――モットーや座右の銘があれば教えてください。
「SURF IS WHERE YOU FIND IT.(あなたが見つけた波がサーフィンだ)」というサーフィンのレジェンド、ジェリー・ロペス氏の言葉です。意訳するならば、「理想的な波が来ずに自分の思い通りにならないとしても、その時々に自らが選んだ波を楽しむことがサーフィンそのものだ」、ということだと解釈していますが、このマインドは日常生活や仕事の場でも当てはまるのではないかと思っています。
例え辛い仕事でも「この仕事は何のためにやっているのか?」という自身の幹をしっかりと持っていれば、「これは必要な苦労なんだ」とプラス思考に捉えられるようになります。
あと、これは僕が20代の頃に先輩から言われたことなんですが、「たかが仕事だから。仕事で失敗しても死にゃしねえよ」って(笑)。これ、一見すごく適当な言葉に聞こえるかもしれませんが、実は結構心に残っていて、落ち込んだ時に「まあ、なんとかなるか」と思えるようになりました。あまり深刻になりすぎず、なるようになるさ、という気持ちでいることも大事かなと思います。
――現在、課題に感じていることはありますか?
直近の課題としては語学力の向上です。現在、時計統轄部 ブランドマーケティング部 ライフスタイル戦略室では国内だけでなく海外とのやり取りも増えています。
先日、海外での撮影がありましたが、ビデオグラファーがプエルトリコ人でした。テキストでのやり取りは問題なくできましたが、ビジネスの場で的確に自分の意図を伝えるのが難しいと感じました。今後は語学力をさらに伸ばしていきたいと思っています。
――今後挑戦したいことはありますか?
現在、時計を身につける習慣が徐々に減少していると感じています。スマートフォンがあればすぐに時間を確認できるため、G-SHOCKの価値をどのように再定義するかが大きな課題です。そのため、これまで試みたことのない新しいアプローチに挑戦したいと考えています。
――G-SHOCKの現在のターゲット層はどのような方々ですか?
最も親和性が高いのは40代以上の層です。日本でG-SHOCKが大ブームになった頃に中高生だった方々が、今でも愛用してくださっています。一方で、30代以下の若い層はまだ開拓の余地があると感じているため、今後は若い層にも響くようなコラボレーションを増やしていきたいと考えています。
――最後に大学生に向けたメッセージをいただけますか?
「好きこそものの上手なれ」と言いますが、大学生のうちに好きなことをとことん突き詰めてほしいですね。それが仕事に活かせると、より充実したキャリアになると思います。今を精一杯楽しんでください!
取材:秋保 柚月(ガクラボメンバー)
執筆:田中 妃音(ガクラボメンバー)
編集:学生の窓口編集部
取材協力:カシオ計算機