【あなたは何「恐怖症」ですか?】◯◯恐怖症って一体いくつくらいあるの? #あつまれ!_おどおど学生。
「◯◯恐怖症」という言葉は一般でもよく使われます。例えば、「私は高所恐怖症で……」などと言う人が、大学生読者の皆さんの周りにもいるのではないでしょうか。
自分自身も何かの恐怖症だと思ってる人もいらしゃるかもしれません。
では、この「◯◯恐怖症」というのはいくつくらいあるのでしょうか。
「これが怖い」という「極限性恐怖症」
『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』という本があります。精神疾患(mental disorder)の診断に使われるもので、精神科の先生方用の文献です。
「◯◯恐怖症」は、『DSM-5-TR』によると「極限性恐怖症(Specific Phobia)」といいます。
すごく簡単にいうと「特定のもの」または「特定の状況」によって恐怖と不安を感じる精神疾患のことです。
誤解してはいけないのは、精神疾患と判断される恐怖症は、一般にいわれる「◯◯恐怖症」とは違います。例えば、高層ビルの屋上から下を見て恐怖を感じても、それを「高所恐怖症」とはいいません。誰でも怖いからです。
高所恐怖症と診断される人は、ほんの数十センチの脚立の段に上るだけで耐え難い恐怖を感じたりします(あくまで例です)。
一般に使われている「◯◯恐怖症」という言葉は「◯◯が怖いね」ぐらいのニュアンスで、実際に精神疾患とされるものとはずいぶん違いがあります。そのため『DSM-5-TR』のような診断基準を示すマニュアルがあるわけです。
『DSM-5-TR』によると「極限性恐怖症」の診断基準は、
A.特定の対象または状況(例:飛行すること,高所,動物,注射されること,血を見ること)への顕著な恐怖と不安
B.その恐怖の対象または状況がほとんどいつも,即時,恐怖や不安を誘発する
C.その恐怖の対象または状況は,積極的に避けられる,または,強い恐怖や不安を感じながらも耐え忍ばれている.
D.その恐怖の対象または不安は,特定の対象や状況によって引き起こされる実際の危険性や社会的文化状況に釣り合わない。
E.その恐怖,不安,または回避は持続的であり,典型的には6カ月以上続いている.
F.その恐怖,不安,または回避が,臨床的に意味のある苦痛,または社会的,職業的,または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている.
(後略)
⇒参照・引用元:『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院,2023年6月15日第1版第1刷,p216
といったものになります。
精神疾患に挙げられる「◯◯恐怖症」何がある?
今回のお題となっている「◯◯恐怖症はいくつあるか?」ですが、これは人間が恐怖や不安を感じ(あるいは回避行動をとってしまい)、上掲の診断基準に照らして適合するのであれば、恐怖刺激の数だけいくつでもあることになります。
ちなみに恐怖症は「phobia(フォビア)」ですが、前に単語「◯◯」をくっつけると「◯◯恐怖症」になります。例えば高所恐怖症は「acro(アクロ)」(高い、頂上の)を前に付けて「Acrophobia(アクロフォビア)」です。
代表的なものを挙げてみると、以下のようになります。
●高所恐怖症(アクロフォビア)
高いところに上ることが怖い恐怖症です。
●飛行機恐怖症(アビオフォビア)
飛行機に搭乗することが怖い恐怖症です。
●閉所恐怖症(クローストロフォビア)
閉ざされた空間、狭い空間にいることが怖い恐怖症です。
●暗闇恐怖症(ニクトフォビア)
暗所、暗闇を極端に恐れ、怖がる恐怖症です。
●先端恐怖症(ベロネフォビア)
針の先、ペン先など鋭利にとがったもの、先端が怖い恐怖症です。
●花恐怖症(アンソフォビア)
花が怖い恐怖症です。
●ピエロ恐怖症(クラウンフォビア)
「ピエロ(道化)」が怖いという恐怖症です。
●クモ恐怖症(アラクノフォビア)
クモが極端に怖い恐怖症です。
●雷恐怖症(アストラフォビア)
雷が怖い恐怖症です。雷鳴を予期して外出できないなとの症状が現れることがあります。
●火炎恐怖症(パイロフォビア)
火や煙を見たり、あるいは想像するだけでも恐怖や不安を感じる恐怖症です。
●嘔吐(おうと)恐怖症(エメトフォビア)
自分に限らず他人でも「吐くのが怖い}という恐怖症です。
●血液恐怖症(ブラッドフォビア)
血液を見るのが怖い恐怖症です。
解決!!「◯◯恐怖症」おどおど
というわけで「◯◯恐怖症」についてご紹介しました。「◯◯恐怖症」と一般的に使われますが、精神疾患と呼べるものであるかどうかは診断が必要になりますし、その診断基準はマニュアルになっていたりするのです。
文:高橋モータース@dcp
編集:学生の窓口編集部