【寝台特急で旅してみたい…】はじめての「寝台列車おどおど」#あつまれ!_おどおど学生。 2ページ目
寝台特急がなくなったわけ
ロマンを感じずにはいられない寝台特急ですが、上記のとおり現在は「サンライズ出雲・瀬戸」しか定期運行されていません。
この理由について鉄道ライターの杉山淳一さんに聞いてみました。筆者(高橋モータース)と杉山さんはかつて寝台特急「カシオペア」で上野駅-札幌駅を一緒に旅したことがあります。筆者にとっては初めて乗った寝台特急が「カシオペア」でした。
以下杉山さんの回答です。
――高橋さん(筆者のこと)が初めて乗った寝台列車「カシオペア」は、寝台特急の究極進化形でした。あれを基準にしちゃうと、同じものはもう作れないでしょうね。
歴史をひもとくと、寝台特急または夜行列車は「仕方なく走っていた列車」です。
まだ新幹線も飛行機も、マイカーも発達していないころ、遠くに最も早く着く列車は、夜通し走ってくれる夜行列車しかなかったのです。
で、椅子だとツライというお客さまのために寝台車が作られました。当時は幅52cm・三段ベッドで高さは60cmでした。
しかし、便利な道具は、もっと便利な道具に置き換えられちゃう定め……。飛行機が普及し、新幹線ができ、5,000円で泊まれるビジネスホテルができるとB寝台は窮屈で高い。 そこで、国鉄は寝台幅を70cmにして、2段ベッドにし……とやって「楽しい」を押し出します。
そこにブルートレインブームが起きます。しかし、今度は定員が減って売り上げが減ります。もうかりません。人気を高めるために個室寝台も作ったけど、さらに定員が減ります。
それならもう「楽しい」に全振りして料金も上げよう、というのが「カシオペア」でした。さらに進化した列車が「TRAIN SUITE 四季島」とか「ななつ星in九州」です※。
これに対して、昔みたいに誰もが乗れる夜行列車を作ろう、ということできた列車が「WEST EXPRESS銀河」でした。イベント列車ですけど。
というわけで、寝台特急はもう「サンライズ出雲・瀬戸」しか残っていません。皆さんも今のうちに乗車しておいた方がいいのではないでしょうか――
⇒WEST EXPRESS 銀河:JRおでかけネット
https://www.jr-odekake.net/railroad/westexginga/
※両方とも定期運行ではない特別な列車です。
寝台特急に乗る際には……
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寝台特急に乗る際には、以下の点に注意しましょう。
1.荷物をコンパクトに!
座席クラスによって居住性に違いがあります。例えば、ソロ上段となると大きなスーツケースの置き場に困る、といったことになりかねません。自分の座席クラスに合わせて荷物をコンパクトにしておくようお勧めします。
2.アメニティーグッズを持っていく!
歯磨きセットなどのアメニティーグッズは、A寝台「シングルデラックス」にしか用意されていません。そのため自分が普段使い慣れたものを用意しておきましょう。
3.切符はすぐに出せるように!
乗車すると車掌さんが検札にやってきます。「あれ、どこにやったっけ?」といったことにならないよう切符はすぐに出せるようにしておきましょう。
4.まず設備の確認を!
乗車したら、まずどのようなファシリティーなのかを確認しましょう。例えば、スマホの充電に使う電源コンセントはどこにあるのか、などです。
5.シャワーカードは先に買う!
シャワーカード(330円)は枚数に限りがあります。もしシャワーを使うつもりがあるなら先に購入しておきます(東京駅を発車する前に行列ができます)。いざ使うという段になって「売り切れ」ということがあり得ます。シャワー室とシャワーカード販売機は3号車と10号車にあります。なお、最上級のA寝台個室(シングルデラックス)の場合は、シャワーカードが無料で用意されています。
杉山さんからは以下のようにアドバイスがありました。
6.ホームや隣の電車から丸見えなので身だしなみには気を付けて!
通勤の人々がこちらを見ています。その様子を見て、うれしいような申し訳ないような。正直、優越感もあります。が、向こうからこちらも丸見えです。身だしなみに気をつけましょう。リラックスしすぎて半裸状態とか、パンツ一丁とか、恥ずかしいですよ。眠るときはブラインドスクリーンを下ろしましょう。
7.個室寝台から景色を観るときは灯りを消そう
固執寝台から景色を観るときは、灯りを消して真っ暗にしましょう。夜空の星も見えます。「真っ暗にできる」は個室寝台ならではの体験です。開放寝台や、サンライズのノビノビ座席は、防犯のため真っ暗にならず、窓に室内が鏡のように映り込むので、車窓を存分に楽しめません。
8.早朝の途中駅で降りるときはアラームをセットしよう
寝過ごさないように、目覚まし時計やスマホのアラームを最大音量でセット。電車の音に慣れた状態ではアラームに気づかないかもしれません。念のため車掌さんにも声をかけておきましょう。
9.食事と飲み物を用意しよう!
寝台特急、臨時夜行列車とも、食堂車がありません。駅弁の車内販売もありません。お酒やおつまみも欠かせませんが、翌朝の朝食も買っておきましょう。水やお茶もペットボトル4本くらい。朝からそんなに食べないし、飲まない、という人も、スナック菓子とお水を買っておきます。深夜早朝に悪天候や踏切事故などで大幅に遅れることがあるからです。お水は飲むだけではなく、タオルで身体を拭くときにも使えます。
10.部屋着があるとよい!
ウエストゴムのスウェットパンツがあると便利です。寝台特急は室内にトイレがありません。狭い個室で、トイレに行くたびにベルトの着いたパンツやスカートに着替えるのはたいへんです。荷物がかさばるのが難点ですが、100円ショップの圧縮袋に入れて持っていきましょう。
11.使い捨ての洗顔タオルやボディケアタオル、電気式髭剃りを用意!
シャワーカードを買えなかったときのために、使い捨ての洗顔タオル・使い捨てのボディケアタオルを用意しておきます。シャワーカードを買えても、混んでいて待ち時間が長く、待ち時間がもったいないので、私はシャワー室を使いません。使い捨てボディタオルで清拭します。クドいようですが、ブラインドスクリーンを下ろしておきましょう。男性は電気式髭剃りが欠かせません。車内は揺れるので、カミソリは危険です。
解決!! 寝台列車おどおど
寝台特急おどおどを解消するためのアレコレをご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。実は日本に残された定期運行されている寝台特急は「サンライズ出雲・瀬戸」が唯一です。もし「寝台特急に乗りたい」という希望があるのなら、今回ご紹介したことを参考に早めに乗車することをお勧めします。
文:高橋モータース@dcp
編集:学生の窓口編集部
取材協力・監修:杉山淳一
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。
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