【お仕事図鑑】貝印を知っている人も知らない人も、就活生も、就活生じゃない人もチューモク! 遠藤浩彰新社長に貝印の魅力を聞いてみた! #貝印株式会社

編集部:ゆう

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遠藤浩彰さん
貝印株式会社、カイインダストリーズ株式会社 代表取締役社長兼最高執行責任者(COO)

1985年6月5日、刃物の町・岐阜県関市生まれ。貝印創業家の長男として生まれる。2008年に慶應義塾大学を卒業後、同社入社。生産部門のカイインダストリーズ株式会社や海外関連会社kai U.S.A. ltd. への出向を経て2014年に帰任。国内営業本部や経営管理本部の副本部長を経て、経営戦略本部、マーケティング本部、研究開発本部の3部門で本部長を歴任。2018年から取締役 副社長就任を務め、2021年5月25日付で貝印株式会社 および カイインダストリーズ株式会社 代表取締役社長 兼 最高執行責任者 (COO)に就任。

『貝印株式会社』は、カミソリや爪切り、包丁と身近な製品を製造・販売している企業です。大学生の皆さんの身の回りにも、貝印の製品が幾つもあるのではないでしょうか。貝印は創業113年目の2021年5月に、遠藤宏治社長が会長となり、新たに息子である遠藤浩彰氏が社長に就任しました。

今回は、就任して4カ月目(取材当時)の遠藤浩彰社長に、貝印という企業の魅力や今後の展望、また社長業の面白さを伺いました。

一人の百歩よりも百人の一歩を重視する企業姿勢

――貝印はどのような未来を目指しているのかを教えてください。

貝印は1908年創業のファミリーカンパニーで、今年で114年目を迎えます。弊社は2018年に、創業110年目という節目を大きな転換点と捉え、新たな付加価値を生むための大きな方針「Blue Ocean Wave」を発表しました。

ブルーオーシャンというのは、ビジネス用語では「競争相手のいない場所」を意味します。貝印は、これまでにも守るべきものは守りつつ、時代の変化に合わせて新しいものを取り入れてきました。現状維持は衰退につながりますから、今までの歴史に敬意を払いながらも、時代に合った新しい製品を生み出すことが求められます。

――新しい時代に踏み出す上で、遠藤社長が心掛けていることはなんでしょうか?

会社の経営をする上で、一人でできることは限られています。会社はチーム、グループで動いています。そのため、会社としても私自身としても「一人の百歩よりも百人の一歩」を大切にしています。全員が同じ方向を向いて歩みを進めないと新たな付加価値を生むことはできません。

また、新型コロナウイルスの蔓延など、これまでに予想できなかった社会状況になりました。これは社会の転換期ともいえます。不確実性の高い時代になっているからこそ、社長の交代を含め体制の見直しを行いました。私自身も、113年の歴史に甘んじることなく、次代へ一歩ずつ着実に歩んでいきたいと思います。

若い世代での認知度向上が課題

――「Blue Ocean Wave」を掲げた上で会社としてどのようなことに注力していますか?

われわれは中期経営方針のテーマとして、「『選択と集中』で筋肉質な企業に。持続可能な成長を、 信頼しあえるKAIファミリーとともに」を掲げています。弊社には1万点を超えるさまざまなアイテムがあり、事業も幅広く展開していますが、今後どこに注力するのかを見定め、一丸となって取り組むことが求められます。

――特に注力している製品、事業はありますか?

われわれは3つの注力事業を掲げています。まずは外科用のメスといった医療器事業。高付加価値が期待され、市場の成長が見込めるなど、今後の可能性を秘めています。

包丁事業」も、和食など日本の文化に対する世界的評価が高まり、またコロナ禍により在宅時間が増加して料理時間が増えています。貝印のDNAともいえるカミソリや爪切りといったビューティー・グルーミングに関する製品にも注力しています。身だしなみ全般を整える道具全般を、一つのメーカーで扱っているのが弊社の強みですので、その強みを生かしてブランドを展開していきます。

――乗り越えるべき課題はありますか?

やはり若い世代でのブランド認知です。年齢が上がるにつれて認知は上がっていきますが、まだまだ貝印の名前が浸透していない状況です。今後は、ビューティーケアやグルーミングの面で、日本国内だけでなくアジア圏など海外も含めてアピールしていきます。

世相も追い風となり高い評価を得た紙カミソリ

――遠藤社長の実績では、2021年4月にテスト発売されて注目を集めた「紙カミソリ」を誕生させたことが挙げられます。

貝印が110周年を迎えた2018年に、貝印のDNAでもあるカミソリに新しい付加価値、イノベーションを見い出す取り組みがありました。その際、快適なそり味を実現するべく「1 dayカミソリ」という発想が社内で生まれました。

しかし、従来のカミソリは持ち手がプラスチック素材なため、使い捨てでプラスチックを使うことは環境負荷が大きいことがネックでした。そこで、ハンドルを紙で作ることにしたのです。カミソリを使う場所が主に水場ということもあり、これまでも紙は避けてきた素材です。社内からも否定的な意見が出るなど、貝印としてもチャレンジングな試みでした。しかし、結果的に従来に比べて樹脂素材98%オフの、紙を使ったカミソリを生み出すことに成功しました。

――SDGsの面でも紙カミソリは注目されています。

実はもともとサステナビリティを意識した製品ではありませんでした。しかし、プロトタイプを発表したタイミングが、持続可能な社会を創造する取り組みが世界的に始まった時期でした。また、販売タイミングについても、ちょうど小泉進次郎大臣(当時)が「プラスチック資源循環促進法案」の発表をしたタイミングというのもあり、高い注目を得るに至りました。

――結果的に持続可能な社会に貢献できる製品として高い評価を得ました。

必ずしもサステナビリティを目的にして作ったわけではありませんが、固定概念を覆し、果敢にチャレンジした結果、時代に合致する製品を生み出すことができたと感じています。新しい何かを生み出すには必ず「壁」が立ちはだかります。それでも「挑戦する姿勢」が大事なのだと改めて感じました。会社としても、挑戦を称賛する姿勢を大事にしたいと思います。

社長は決断することが仕事

――学生だと「社長はどんな仕事をするのか」が分からない人も多いと思います。遠藤社長の仕事について教えてください。

あくまで私の場合ですが、社長は「する・しない」といった「決断」が仕事だと思っています。とはいえ、社長だから偉い、決断をする仕事だから偉いというわけではありません。あくまで社長は何かを決める役割。社長一人でなんでもできるわけではありません。会社にとって働く社員一人一人が大切です。

――社内のさまざまな部署を視察することはあるのでしょうか?

企業は製造のプロフェッショナル、販売のプロフェッショナルと組織が分かれています。そのため、現場を知らずに判断すると、個々の部署が部分最適になること可能性もあります。そうならないよう、時には細かい部分まで見て判断をします。小さなところに会社全体を良くするヒントがあるかもしれませんから、社員一人一人にも目を向ける必要があります。しかし、全体のビジョンも外してはいけません。俯瞰(ふかん)と個の視点を組み合わせながら会社を見ることが、社長には求められるのではないでしょうか。

――仕事をする上で大切にしていることはありますか?

「誠実な姿勢で向き合うこと」です。会社 というものはお客さまはもちろん、社員一人一人やパートナー企業で成り立っています。また、一つの会社でできることには限界があります。複数の企業や人が協力しあって社会ができています。人に、会社に、社会に対しても誠実であることが未来につながると考えています。

身近な製品だからこそ誠実に取り組む姿勢が大事

――社長という仕事の面白い点はなんでしょうか?

社長業は、何が正解かは誰も分からない中でさまざまな決断が迫られる仕事です。パズルのピースは手元にあるが、それをどのように組み合わせればうまくはまるかは分からない状況です。そんな中、パズルのピースが合致した瞬間、例えば、取り組んだ施策が「社員からの期待に応えられるもの」であった場合はうれしいですね。

また、弊社はサービスにしろ、製品にしろ、身近な物が多いのが特徴です。そのため、自身の家族や友人がユーザーになり得ます。それだけ評価を耳にしやすい環境なのです。そこで「良かった」という声が聞けると会社のトップとしてうれしいですね。その一方で、身近な製品だからこそ、誠実に仕事に取り組まないといけないとも感じています。

――社長業の中で「楽しい」と思える瞬間を教えてください。

社長になると、これまでよりもさらにいろんな経験ができます。普段接することのできない業界や会社の人とも出会えますし、さまざまな話を耳にできます。その経験は自分の引き出しを増やし、人生の幅を広げることにもつながります。貴重な経験ができると、人生を豊かにできていると感じて楽しいですね。

他の人が選べない道だからこその選択

――遠藤社長は中学生のころにはすでに「社長を継ぐ」と決心したそうですね。

父からは特に継ぐようには言われていなかったのですが、社長として会社を切り盛りしている父の背中を見て、社長になりたいと思うようになりました。世界を股にかけて仕事をする姿、スケールの大きな仕事に取り組んでいる姿勢に惹かれたのだと思います。また、会社を継ぐという、他の人が選べない道が目の前にあることも、せっかくならチャレンジしてみたいと思った理由です。

――中学から実際に社長になるまでの約20年、その意思は変わらなかったのですか?

父も私の会社を継ぐという意思をくんでくれて、早いうちから私を海外出張に同行させました。そこで社長として働くことのすごさ、楽しさをわずかながらに感じました。早いうちから、分からないながらも経験を積んだことで、自分の中の「会社を継ぐ」という意思は強くなり、長年変わることはありませんでした。

今回、新しく社長に就任しましたが、引き継ぐ以上は何かしら会社を良くしたいと考えています。会社の伸びしろはまだまだあります。今の伸びしろがなくなるまで会社を成長させてから、次代につなげるのが私の使命かなと思っています。

仕事を人生を豊かにする手段と捉える

――最後に学生へのメッセージをお願いします。 

ひと昔前は24時間働けるかといった、自分を犠牲にして会社に尽くすことが美学でした。しかし、今は異なり、仕事も大事ですが、自身の人生を豊かにすることも大事な時代です。そのため、若い世代にはぜひそうした働き方を目指してほしいです。

お金を得るだけが仕事の目的、人生を豊かにすることではないと私は思います。仕事をすることによって自分自身の成長、人としての幅を広げることが、人生を豊かにしてくれるのだと思います。仕事で得たものがプライベートで生きることもあり、プライベートでの気付きが仕事に生かせることもあります。仕事を「人生を豊かにする上での一手段」として位置付けると、また違った働き方、楽しい方ができるのではないでしょうか。

また、自分の人生を豊かにするのは、ほかならぬ皆さん自身です。誰かに用意された道ではなく、自分自身の手で道を選んでほしいですね。

 ――ありがとうございました! 

※記事内容及び社員の所属は取材当時のものです。

編集後記

「社長」がどんな仕事をするのか分からない人は、今回のインタビューでその一端を知ることができたのではないでしょうか。日本だけでなく世界からも注目を集めている貝印だけに、遠藤社長が今後どのような決断の下、会社を引っ張っていくのか注目ですね。

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文:高橋モータース@dcp

編集:学生の窓口編集部

取材協力:貝印株式会社
https://www.kai-group.com/

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