「みんなに幸せを」現役大学生が投げかけるオリンピックへの疑問 |「結局どうなの? 五輪ボランティア」 第1回

編集部:ぱいん
2018/11/16
将来を考える
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世界最大級のお祭り「オリンピック・パラリンピック」。多くのアスリートがしのぎを削るアスリートの祭典であり、同時に平和を願う思いが込められた大イベントが2020年の東京を中心に開催されます。

“オリンピック・パラリンピックの成功は、 まさに「大会の顔」となるボランティアの皆さんの活躍にかかっています!”

こうした謳い文句で募集されているボランティアですが、世間では冷ややかな反応も目につき、参加に不安を感じている人も多いのではないでしょうか?

そこで、東京オリンピック・パラリンピックのボランティアとどう向き合っているのか、疑問を持つ人や前向きに参加したいと思っている人、運営に関わっている人など、さまざまな立場の人にお話しを伺い生の声を集めました。「結局どうなの? 五輪ボランティア」と題し、5回の連載でお送りします。

第1回は、東京五輪学生ボランティア応援団(https://2020volunteers.netlify.com/)というサイトを公開し、

やりがい先進国・日本で「美しい五輪」が実現することを大変心待ちにしています”

という強烈な風刺で世間を賑わせ、東京オリンピックのボランティア参加に大学生の立場から疑問の声を挙げた、早稲田大学2年の松本海月さんです。

ーーなぜ東京オリンピックボランティアを批判するような風刺サイトを作ったのか、まずはその経緯を教えてください。

そもそもの根本は、ボランティアって奉仕の精神に基づいてやりたい人がやるもののはずなのに、文部科学省から大学に授業日程をずらすようにという通知があったと聞いて「それはおかしい」と思ったのがきっかけです。

オリンピックの組織委員会はだいたいの大学と連携していて、うちの大学にもオリンピック・パラリンピック事務室みたいなものがあり、今後はそういうところを通して、けっこう強いアピールが来るんじゃないかと思っています。ボランティアをすると単位を出すみたいにはなりそうな気がしています。

 

――ボランティアと言いながら強制力を持ちそうな懸念を感じたわけですね。

僕は都立高校出身なんですけど、今の都立高校は強制的にボランティアをさせられる「奉仕」の授業があるんですよね。ボランティアなのにやらなきゃいけないって、その時点でおかしいんですけど。そのときは東京マラソンのボランティアに参加しました。

そんな具合に、高校で奉仕が必修だったので、東京オリンピックでも似たようなことになるのを心配しています。

 

――サイトに反響があったことについてはどう感じましたか?

思ったより反響が大きかったですね。もともとは友達に見せる程度の気持ちで作って公開したものなので、予想外の反響があって「やべぇな」って思ったりもしました。

オリンピックが誰にとっても大きくて関わりが強いものだから、自分事として捉えている人が多くて今回のように盛り上がってしまったのかなと思います。

実際バズって顔も知られるようになって、大学の中でもけっこういじられるようになったり、中学の友達から連絡来たりしました。ちょっと有名になる程度ならいいですけど、大学内でだれでも知ってる存在みたいになるのは嫌だなって思います。

今回の件で、メディアのインタビューに対応したり、顔出し記事が出たりしたけど、別に有名になりたかったわけじゃないです。本当に実在する人物なのか疑問を持たれていたので、それに反発して「本当にいるんだぞ」ってアピールしたかったというところです。

 

――社会に対してアクションを起こせた感覚みたいなものはありますか?

そこまでの自負はないですけど。ボランティアに関するニュースは増えたのかなって思います。

 

――松本さんはオリンピックのボランティアそのものについてはどう感じていますか?

オリンピックのボランティアに魅力がないわけじゃないと思うんですよね。だからやりたいと思っている人はいるだろうと思っています。ただ、僕は日本のオリンピックボランティアにあんまり希望が持てない感じがあります。

 

――ボランティアの申込者を増やすならどうしたらいいと思いますか? 組織委員会に言いたいことはありますか?

お金出せよと。そうしたらすぐ人が集まると思います。それが難しいのであれば、10日間は長すぎますね。1日2日くらいでやれればもっといろんな人が参加しやすくなると思います。

しかも事前研修への参加が必須もあって、参加のためのハードルが高いですよね。ボランティアなんだからもっと柔軟にしてほしい。奉仕の精神を求めてって言いながら縛りがきつすぎますね。 

――なぜ、日当などのお金を出さないんだと思いますか?

過去のオリンピックと同じようにやっているだけだと思います。前例がないから。ボランティアじゃなく、短期職員とかに形を変えて募集すればいいのにって思います。

 

――組織委員会に松本さんが一番望むことはなんでしょう?

ほっといてくれることですね。やりたい人がやればいいだけなので、それでたとえ集まらなくても、やりたくない人を無理に巻き込まないでくれって言いたいです。

 

――松本さんが考えるに、オリンピックとはなんなのでしょうか?

多数派のお祭りだと思います。お祭り自体は嫌いじゃなくて、大学では学園祭の実行委員をやってるくらいなんですけど。ただ、どうしてもそういうのって押し付けがちになっちゃうんですよね。「お前この日行かないの?」とかそういう側面がありますし。

あと東京オリンピックは日本の華やかな時代の終わりかなって感じています。開催に向かってみんなで盛り上がっているけど、オリンピックが終わるとそうしたムードも止まって、一気に日本が盛り下がるんじゃないかなと。

 

――それはなぜそう思うんですか?

終わったら絶対一回は景気が落ち込むと思うんですよ。オリンピックの前って駆け込みで道路とか競技場とかいろんなところの整備がされると思うんですけど、終わったらもうしないですよね。それで景気が落ち込んで、建てたものは放置されて整備なんて二度と行われないって考えると、華やかな時代の終わりって感じがします。 

――見出せそうな希望はありますか?

オリンピックに向かって観光は盛り上がっていますよね。海外から大勢の観光客が来ているので、これを期に多くの外国人が日本に興味を持ってくれて、そして日本を好きになってくれたらいいなって思います。

それとオリンピックを期に日本の悪い習慣が消えてくれたらいいなって思います。それは例えば今回のボランティアとか。やりがいで人を集めるって、そんな余裕のある時代じゃないと思います。そういうのがちゃんと認識されたらいいなって思います。

 

――余裕がないとは具体的にどんなことを指していますか?

大学に進学する人が増えていますけど、大学の学費は上がっていますし、その逆に家庭の平均年収は下がっています。今すごく困窮している人はいないかもしれないけど、毎日の食事をまかなうだけでいっぱいな人もいるし、仕送りが全然ない人もいます。

そうすると余暇の時間は全部アルバイトに費やさないといけないような人が、今後はもっと増えてくると思うんです。

お金がなくて時間にも余裕がないってなると、大学の生活って授業とアルバイトと、ちょっとのサークルとかで全部になっちゃうのかなって。ほかに何か自分でしようにも、お金も時間も余裕がなくなっていくと思います。

 

――若者のエネルギーが”生活すること”に全部吸い取られているように感じますね。

若者からの声が弱いのも、考えて社会に発信するほどの余裕がないんです。僕は授業をあんまり真面目に受けてないからそれなりに時間はあるんですけど、最近は出席も厳しくなっていると感じます。真面目な学生が多いので、社会と戦うみたいな、そういうことに時間使う暇がない人が多いんじゃないかなって思います。

そんな中、ボランティア10日間は厳しいと思います。10日もあれば10万円は稼げますし、それが惜しい人はけっこういるんじゃないでしょうか。

 

――松本さんから同じ学生たちに伝えたい言葉ってありますか?

“みんな”幸せに頑張れって言いたいです。

多様性って考え方はとてもいいと思うんですが、多様性って言葉を使う人って、実際は多様性がなくて、自分以外のマイノリティを殺してしまっているように感じています。

インターネットって本当はそんなマイノリティをサポートできるものだと思っています。将来はエンジニアになりたいと思っていて、IT技術でサポートができたらなと。

みんなが幸せになってほしいなと思います。

 

――ありがとうございました。

 

若者の現状や今後の日本のことなど、さまざまな思慮があり、若者の声を代弁してという思いがあったように感じられた松本さん。

参加したいと思っても参加しにくいハードルの高さがある、東京オリンピック・パラリンピックボランティア。そして、それを学生に強制するような気配を発しているように捉えられている組織委員会のやり方には、改善の余地がまだまだあるでしょう。

参加する人が希望を持てる要素はどこにあるのでしょうか? それを追って次回、リオデジャネイロオリンピックで、日本からボランティアに参加した、東京外国語大学の新山美紗子さんにお話しを伺います。

取材・文・撮影/学生の窓口編集部
イラスト/オカヤマ(@okayama1002

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