リオ経験者に聞いた、オリンピックボランティア参加の価値 | 「結局どうなの? 五輪ボランティア」第2回

編集部:ぱいん
2018/11/19
将来を考える
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世界最大級のお祭り「オリンピック・パラリンピック」。多くのアスリートがしのぎを削るアスリートの祭典であり、同時に平和を願う思いが込められた大イベントが2020年の東京を中心に開催されます。

“オリンピック・パラリンピックの成功は、 まさに「大会の顔」となるボランティアの皆さんの活躍にかかっています!”

こうした謳い文句で募集されているボランティアですが、世間では冷ややかな反応も目につき、参加に不安を感じている人も多いのではないでしょうか?

そこで、東京オリンピック・パラリンピックのボランティアとどう向き合っているのか、疑問を持つ人や前向きに参加したいと思っている人、運営に関わっている人など、さまざまな立場の人にお話しを伺いました。「結局どうなの? 五輪ボランティア」と題し、5回の連載でお送りします。

前回、さまざまな問題点を挙げ「参加したくない」という現役大学生の意見を聞いた第1回に続き、第2回では、既に参加を経験した人の意見を伺います。

2016年に開催されたリオデジャネイロ(以降、リオ)オリンピックにボランティアで参加した、東京外国語大学4年の新山美紗子さん。

当時の活動はどのようなものだったのか、今回の東京オリンピックボランティアについてどう考えているか、経験者ならではの意見を聞いてみましょう。

――東京オリンピックのボランティアには参加しようと思っていますか?

私は今のところ参加したいと思っています。ただ、卒業してしまうので、そのときに参加日程を確保できるかがネックですが、せっかくの自国開催なのでなんとかして参加したいとは思っています。

 

――文部科学省がオリンピックのボランティアのために、大学に授業や試験期間をずらすように対応を求めているのは、何も問題ないと思いますか?

せっかく一生に一度かもしれない機会なので、やりたい側からすると大学側が参加しやすいように整えてくれるのは良いことだと思います。ただ、必修でやらせるみたいな強制力のあるものになってしまったら、それはなしだと思いますね。

 

――世間で批判が集まっている、1日8時間、10日間以上の活動が必須という今回の募集要項については、厳しすぎるとは思わないですか?

東京がほかの開催地と違うわけではなく、以前参加したリオ大会と同じ条件だったので自分の感覚と合わない人が批判しているのではないかと思いました。

社会人の方からすると、10日間って日数を確保するは大変なのかなとは思います。

 

――前の東京オリンピックでは、暑すぎる7、8月を避けて11月で開催を提案していて、IOCと意見が合わず折衝して10月になったという歴史があります。今回はアスリートにも観客にも大変な環境で、当時より組織委員会の考えが後退しているとも言われていますが、真夏の開催についてはどう感じていますか?

50年前は10月でも開催できたようですけど、今はその時期にやると参加できなくなるアスリートが大勢いるから選手が集まらないと聞いたことがあります。真夏は多くのプロリーグがオフの期間になっているのと、4年に一度なので参加できるようで。

開催地によってはそこに合わせると気候的に厳しくなるのが難しいところですね。

※近代オリンピックは「アマチュアスポーツの祭典」として始まり、1964年の東京オリンピックではアマチュア選手のみ出場が許されていた。1974年にアマチュア規定がオリンピック憲章から外され、プロ選手が多く参加するようになっていく。加えてIOC(国際オリンピック委員会)は現在、開催都市に立候補する大前提として、最大の収入源である放映権料を稼ぐため、7月15日~8月31日の間での開催を条件にしている。

 

――過酷な環境で時間きっちり働かせるのだから、アルバイトのように有償での募集をすべきという声もあります。無償か有償かについてはどう考えていますか?

ボランティアとして参加することを選ぶかどうかはそれぞれの価値判断によるのかなと思うのと、アルバイトと比較するのは少し違うのではないかとも思います。

 

――ボランティアを労働と捉えている人が多いからでは?「ボランティア=無償労働」という言葉で認識している人が多いと感じています。

考えの出発点が異なるように思えるのですが、比べるなら学園祭実行委員会とか生徒会役員とかが合っているように思います。そういう直接的な利益を受け取っていないものと同じ部類だと思っています。

みんながやりたがっていたかって言うとそうじゃなかったですし、とはいえ生徒会役員の選挙をやると一定数は手が挙がるって考えると、その人たちにとっては魅力やプラスになるものを感じていたんだろうなって思っています。

私はリオでボランティアをやっていましたが、私個人の感想としては、お金をもらっていなかったからこそ、のびのび活動できていたなと思います。やりたいようにやっていて、自分なりに考えてもっとこうやりたいってことも言えたり、チームの中では純粋に助け合いの精神で活動できたりがあったと思うので、お金をもらうと逆に硬くなっちゃうかなと。やってみた経験として、労働とは違うと思いました。 

――リオオリンピックのボランティアはやった価値があったと思いますか?

日本では、今回担当した言語サポートのようなことができる機会がないので、そういった経験を求めて参加しましたし、一緒に参加した人もそういった経験を求めて参加した感じです。現地でいろいろな経験ができたので、とても良かったと思っています。

 

――言語サポートとはどのような活動なのでしょうか?

言語サポートボランティアという役割で私が担当したのは、主に紙媒体のメディア関係者が集うメインプレスセンター内での活動です。

具体的な活動内容としては2種類あって、英語版ニュースに載せる日本人選手のインタビュー原稿の翻訳チェックがひとつ。その選手が喋っているのを聞いて、誤った翻訳を訂正したり、よりよい翻訳案があれば提案したりという仕事です。

もうひとつはヘルプデスクという、困ったときの案内所のようなところの仕事です。国籍とか言語を問わず各国の記者が立ち寄るところで、建物内のWi-Fiに繋げないとか、記者用のポータルサイトへの入り方がわからない、取材場所までの行き方を教えてほしいとかの困りごとへの対応をしていました。日本人の方がいらしたら日本語で対応しましたし、そうでなければ英語で対応していました。

 

――インタビューの通訳のようなことはなかったのでしょうか?

私は担当が違いましたが、競技会場で選手とメディアの間に立つことがあったメンバーもいました。ただ、それにプロとしてのスキルはまったく求められていなので、通訳というよりは、あくまで言語サポートと言いたいです。

 

――通訳と言語サポートとの違いとはどのようなものなのでしょうか?

通訳って聞くとプロフェッショナルな感じを与えてしまう気がしています。

プロほどの仕事ではなくて、インタビューで言えば、競技が終った後すぐは質問がだいたい決まってるんですよね。勝った人に対しては「勝ってどうでしたか?」といったように、質問がほぼ決まっているので準備ができているんです。インタビューの現場で記者から何を聞かれているのかを選手本人に伝えて、選手本人は自分の言語で答えるっていう感じです。

 

――聞かれていることが限定されていて、プロが行うような通訳とは異なるということなんですね。

オリンピック・パラリンピックでは、もちろんプロの通訳の方もご活躍されていて、公式会見の同時通訳などを担当されています。それに対して、ボランティアは試合直後の取材をサポートするというポジションで逐語通訳を行います。

どのくらいの難易度のものに対応させるかについては、マネージャーが一人ひとりの言語レベルをしっかりと把握していたようで、その人のレベルに合うようなものがあれば「やってみない?」って声をかけているようでした。あとは本人のやる気次第って感じで、能力があって挑戦したいって言えば、選手のコメントを世界中に発信するお手伝いができたと思います。

 

――英語をはじめとした語学力には自信があったのでしょうか?

私はメインで英語ができて、それ以外には当時勉強中だったフランス語が簡単な会話ならできる程度でした。

英語は大学入試のときの得意科目ではありましたけど、当時からよくしゃべれたかっていうとそんなことはなく、大学に入ったら周りに海外経験豊富な人がいたので、感化されてスピーキングの練習に取り組んで上達した感じです。私自身は海外経験があるわけじゃなかったので、自分の英語力を試してみたくて、リオのボランティアにチャレンジしました。 

――リオオリンピックのボランティアをやってみて、それまでと考えが変わったり、将来のことで考えたりしたことはありますか?

留学先を英語圏にしようって思うきっかけになりましたね。

大学にはフランス語専攻で入っていたので、最初は留学先もそっちにしようかと考えていました。けれど、オリンピックではみんなが話せる共通言語として英語があって、それプラスなにか別の言語をもっている感じで活躍されている人が多かったんです。

そういう姿を見て、私もまずは英語で頑張ってみたいなって思って、それで留学先をイギリスに決めました。 

――リオオリンピックのボランティアは楽しかったですか?

今まで出会ったことないような国の人が一緒にいて、その年代もバラバラだったので、いろいろな人の話を聞くのが面白かったです。シフトで活動時間が決まっていましたが、その間ずっと忙しく仕事をしているわけじゃないんですよね。

活動場所の近くにテレビがあったので、一緒に競技を見るのも楽しかったです。日本が映っていたらみんな日本を応援してくれるし、ブラジルが映っていたらみんなで応援してという感じでチームは和気あいあいとしていました。

シフトが休みのときは、一緒に観戦に行くこともありました。そういう時間が楽しかったです。

 

<リオオリンピックのボランティアIDにつけられた記念ピンバッジ。メディアや組織員会など各国の団体が用意したピンバッジが何かのお礼にもらえることもあり、それを交換して集めるのもオリンピック参加者の楽しみのひとつ>

――リオの経験を踏まえて、東京オリンピックのボランティアに参加するか悩んでいる人に伝えたいメッセージはありますか?

 オリンピック・パラリンピックを楽しむ手段のひとつとしてボランティアを楽しんでいただけたらっていう希望はあります。社会に貢献するって言うよりは、その場所に当事者として参加するからこその楽しさを味わってもらえたら良いなって思います。

私はリオに行って一番それを感じました。

それまではテレビで日本人の活躍をちょっと見る程度でしたが、一緒に活動する周りの人にいろんな国の人がいて、自分の国だけじゃなくていろんな国のメダルの話で盛り上がれました。そういうオリンピックのリアリティをより近くに感じられるのが醍醐味だと思います。ボランティアに参加してくれる人にはそういうところを感じてもらえたら、と、そういう期待をしています。

参加している人は、みんなやりたいって手を上げて参加してくださる人だと思うので、非日常を共有する仲間同士の連帯感とか、一緒になってなにかを達成できたっていう喜びとかを感じてもらえたらなって思います。

当時のメンバー達とは、フェイスブックでつながっていて、今も集まったら思い出話になります。リオでの最後も「次は東京だね」って言って別れたので、また会いたいですね。そういう出会いを見つけてほしいです。

――ありがとうございました。


 

現状、東京オリンピックに対して湧き上がっている問題について考えながらも、経験者ならではの理解を示し、参加に価値があると感じている新山さん。

「それぞれの価値判断で選んだら良い」その言葉の通りのオリンピックボランティアではありますが、まだ考えがまとまらない。そんな人のために、さらにインタビューを進めていきます。 次回は、日頃からスポーツボランティアに積極的に親しんでいる、順天堂大学スポーツ健康科学部の学生からのお話をお届けします。

取材・文・撮影/学生の窓口編集部
イラスト/オカヤマ(@okayama1002

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