【連載】『あの人の学生時代。』#23:佐伯大地「旅をしよう」

学生の窓口編集部

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著名人の方々に大学在学中のエピソードを伺うとともに、今の現役大学生に熱いエールを贈ってもらおうという本連載。今回は現在好評放送中のドラマ『崖っぷちホテル!』(日本テレビ系 毎週日曜22:30~)に、神出鬼没のウエイター・服部要蔵役で出演している佐伯大地さん。ドラマでは常に忍びのように気配を消し、その存在感のなさゆえに時に誰よりも際立つというユニークなキャラクターを演じている佐伯さんの、立教大学での学生生活とは?

映画俳優になりたい思いから選択した「映像身体学科」

――佐伯さんは立教大学に行かれていたそうですが、大学・学部選びの理由は?

僕が通っていたのは、現代心理学部の「映像身体学科」というちょっと変わった学科でした。映像身体学科というのは、映像を撮る方法や、映像と身体の関わりが学べて、役者やダンサーなどの表現者を育てる学科なのですが、僕が入学する3〜4年前に、立教大学にその学科が新設されたんですよね。

――名前からしておもしろそうな学部・学科ですね!

そうなんです。僕は昔から映画の世界にすごく興味があって、ずっと映画俳優になりたいと思っていたんですけど、どうすれば俳優になれるのかが全然わからなかったんです。

イメージとしては、まずは劇団に入って、劇団で演劇をやって、経験を積んでから映画の世界に入れるのかな? とか、どこかの芸能事務所に所属してから映画やドラマ、舞台などのお仕事をいただいて、そこから経験を積んでいくのかな……? とか、いろいろ考えてみたんですけど。とにかく「どういう道をたどればいいのだろう?」と悩んでいたときに、ちょうどその学科のことを耳にしたんです。

心理学もおもしろそうで興味があったこともあり、映像身体学科のことを調べてみたら、立派な舞台セットがあったり、高価なカメラが何台もあったりと、設備も充実していたんですよね。しかも、その機材を使って、ショートフィルムみたいなものをみんなで作る授業のプログラムなどもあったので、「これは俳優になりたい自分には最適だな」と思い、その学科を選びました。

――昔から「俳優になりたい」という思いがあって、そこから選ばれた学部・学科だったんですね。実際には在学中に芸能界デビューされたわけですが、大学生活とお仕事の両立は大変でしたか?

そうですね、やっぱり芸能界の仕事のスケジュールの都合で途中から全然大学に行けなくなってしまいました。そこで、芸能活動はちょっと休んで、1年間ぐらいは単位をとるために大学に戻ったりしていました。

――そんな大学時代の一番の思い出といえばなんですか?

どちらかというと、僕は学校の授業から学んだことよりも、大学以外で学んだことの方が多かったタイプなんです。学校の授業から学ぶ人もいれば、授業以外の部活動やサークルで学ぶ人もいたり、それ以外のアルバイトや旅行などの経験から学ぶ人がいたり……いろんなタイプの人がいますよね。

僕は後者のタイプで、部活動が印象的でしたね。大学時代はダンス部に所属していたんですが、そこでのメンバーから人間関係を学びました。あとはいろんなアルバイトを経験したので、その思い出も大きいです。たとえば焼肉店や配達などのバイトをしていました。社会に出る前に、社会勉強としていろんなアルバイトを経験したいと思っていたこともあり、大学に通っている間に大体10種類のバイトを経験しました。時にはバイトの掛け持ちもありましたね。結局、ダンス部やバイトでの経験が一番の思い出になっているかもしれません。

あっという間に過ぎ去ってしまう大学時代
「何もしないのはもったいない」


――大学時代にアルバイトもたくさん経験し、芸能活動もスタートしたりと、かなり忙しくされていたんですね。今の現役大学生を見て、佐伯さんが思うところがあれば教えてください。

海外の大学は、入学するのは簡単だけど卒業するまでがすごく難しいところが多いので、みんな大学で必死になって勉強しますよね。だからこそ、結果として社会に出てから役立つ即戦力につながるんじゃないかと思います。

一方で日本の大学は「社会に出る前の準備期間」という位置づけというか、そんな甘さのようなものが少しあると思うんです。たしかに入学するのは難しいけど、大学で学んだことが直接社会人になったときに役に立つのか、わかりにくいところもあるのかなと思います。

日本の大学のように、社会に出る前の準備期間として大学時代があると考えると、自分がその4年間をどう使うかっていうことがすごく重要だと思います。何もしなかったら、本当に大学生活の4年間はあっという間にすぎちゃうんですよね。だから、今の大学生には「何もしないのは「もったいないぞ!」っていうことをすごく言いたい。ダラダラ遊んでしまったり、くだらないことに時間を使ってしまうことって本当に多いと思うんです。

――大学時代は何かと周りの友達や環境に影響されてしまうこともあり、とにかく楽な方向に流されがちの大学生も多いかもしれませんね。

そうなんですよね。こんなことを今、大学生に言っている僕ですが、学生時代に芸能界の仕事があったからある程度「やらなきゃ!」と思えましたが、もし仕事がなかったらぐうたらしちゃっていたかもしれないです(笑)。だからこそ、大学生のみなさんには時間を有効に使ってほしいなと思いますね。

最初は戸惑いもあった
「何もしないことに徹する」服部の役作り


――出演中のドラマ『崖っぷちホテル!』では、ウエイター・服部要蔵役を演じている佐伯さん。服部を演じてみての役作りで意識されていることを教えてください。

服部のように、世に言うちょっと間が悪い人というか「なんでそんなところにいるの?」とか「なんで今そんなこと言っちゃうの?」って思われてしまうような人は、誰の身の回りにもいると思うんです。だからこそ服部は「存在感ゼロ」というか、神出鬼没な登場の仕方でホテルで働く面々に驚かれてしまうことが多いというか。そんな彼の個性をデフォルメして描いているところがこのドラマのおもしろいところだと思うんですが、最初はやっぱり役作りにちょっと戸惑いもありましたね。

――どんな戸惑いですか?

服部は感情をあまり表に出せないようなキャラクターなので、なるべく気持ちを出さないようにした方がおもしろく見えるんじゃないかなと思ってそう演じていたつもりだったんですが、演出の方から「もっと淡々と演じてください」みたいな指示があったときは「これ以上淡々と? 大丈夫かな?」って(笑)。

――たしかに佐伯さんって、かなり淡々と演じないと存在感が出てしまいそうですもんね(笑)。存在感をなくすというか、気配を消す工夫などもされたんですか?

直接に存在感をなくすことにつながるかどうかはわからないんですけど、登場するときに「きれいに立つ」ということは意識しています。服部を演じているうちに、「体が大きい人が突然スッと立って現れるとおもしろいかな」と思い、姿勢よく立つ意識をするようになりました。

作品の中では存在感ゼロの人物なんですが、画面に現れた瞬間、どれだけ見ている人にインパクトを残せるかというか、現れた瞬間だけはある意味誰よりも存在感があるようにと意識しています。登場する瞬間を印象的にすることで、その前の存在感をよりなくすというか……。

――感情をあまり出さないキャラクターだからこそ、言葉以外のところで表現するのが難しそうですよね。具体的にどのような工夫で登場シーンを印象的にしているんですか?

「この柱に隠れてみようかな」とか(笑)。「見切れないようにここにいようかな」とか、僕の方から提案することもあります。現れ方にもいろいろあるじゃないですか。突然ガッと出てくるときもあれば、人の肩のあたりからぬっと現れたり、パッとこっちを向いて驚かせたり。

――さすが、考えつくされていますね! ドラマを見るときに服部の登場シーンも次からさらに細かくチェックしたくなります。

でも、ただインパクトのある登場をすればいいと思っているわけではなくて、たとえば「違う方向を向いている」という彼の行動ひとつとってみても「話すときに人の目を見れない人っているよな」とか、「そういう部分がみんなから存在感がないと思われて、『あいつ,
いた?』とか言われちゃうのかな」とか、彼なりのそういった行動になってしまう理由というか、動機みたいなものをまずは考えてから、必然性のある「現れ方」をひとつひとつ考えて探していく、という作業をしています。

――だからあんなに迫力があるというか、説得力ある登場ができるんですね! そんな撮影が行われている現場の様子はどのような雰囲気なんですか?わきあいあいとした空気なのでは……と思うのですが。

そうですね。みなさん本当に素晴らしい方ばかりで……僕は現場ではみなさんのお話に乗っかっている感じです。お芝居のときもそうなんですけど、基本的に自分から何かをやるというよりも、みなさんに転がしていただくというか、いい意味でいじられ役として素直にいられるので、何もしないことに徹することができている部分はあります。

――共演者の方からアドバイスをもらったりすることもあるんですか?

あります。みなさん、リハーサルでいろんなことにチャレンジして演じていらっしゃるんですよね。リハーサルでいろいろ表情やセリフを試してから、本番でベストなものを演じられるんですけど、そこでついつい自分もリハーサルの段階で何かしようとしてしまったことがあって。

そうしたら、渡辺いっけいさんに、「服部は何もしないことに徹した方がいいんじゃない? その方がたぶん活きると思うから」って言っていただいたりしました。

――宮川大輔さんやくっきーさんなど、お笑い芸人の方も多く出演されていらっしゃいますよね。

そうですね。僕は現場で、くっきーさんとチャド・マレーンさんと3人で並ぶことが多いんですけど、くっきーさんに「いつものスリーだね」って話しかけていただいたりしています。

くっきーさんは常におもしろいんですよ。何か特別おもしろい話をしているわけでもないのに、とにかくずっとおもしろい。いい意味でずっとふざけているので、現場ではみんなくっきーさんの奇怪な表情や行動を見てクスクス笑わせてもらっています(笑)。

――これからクライマックスに向けてますます展開が気になりますが、今後の服部の見どころを教えてください。

今のところ、服部は感情のこもったセリフがないんですよね。簡単な報告のセリフだったり、「了解!」とか「承知」などの受け答えだったり……。でも、ドラマの回が進むにつれて、一見これまでと同じ報告でも、時貞さんに対しては「心配してるのかな?」とか、無感情に見えて、実はちょっと「何か思ってるのかな?」みたいな、感情がちょっとずつ漏れ出すようなシーンも出てきていると思うんです。

服部は「もしかしてこの人たちを好きなんじゃないのか」とか「ホテルに対しても前向きにがんばっているんだなぁ」みたいな、そんな彼の人間味あふれる部分が最終話までにちょっとでも出せたらなって思っているので、そこに注目していただけたら嬉しいです。「人間味なんて出しちゃダメ!」なんて言われるかもしれないですけど(笑)。

* * * * * * *

最後に、今の大学生に一言メッセージをお願いすると、「旅をしよう」と書いてくださった佐伯さん。大学最後の卒業旅行として、貯めたアルバイト代を使って、男友達3人で1ヶ月近くアメリカ縦断旅行に挑戦したという佐伯さんが、そんな自身の経験を踏まえ、大学生におすすめしたいのが旅行なんだそう。「何にも縛られず自分の時間を自由に使うことって大学時代の4年間しかできません。大学を出て仕事を始めると、なかなか長期の休みは取れないですし、旅行に行かないと絶対『大学時代に行っておけばよかった!』って後悔すると思うので、ぜひ!」と、今演じる服部との役柄とは真逆に、感情を込めて熱く語ってくれた佐伯さんでした。

(プロフィール)

さえき・だいち●1990年7月19日生まれ。東京都出身。『ミスター立教コンテスト2009』準グランプリに選ばれた翌年、ホリプロ主催のオーディションをきっかけに芸能界入り。2015年、ミュージカル『刀剣乱舞』の岩融(いわとおし)役で人気を博す。おもな出演作は、映画『少女椿』『アヤメくんののんびり肉食日誌』、ドラマ『愛してたって、秘密はある。』(日本テレビ系)など。7月15日にはミュージカル「『刀剣乱舞』阿津賀志山異聞2018~巴里~」のパリ公演、8月3日~19日には東京公演が控えている。

文:落合由希
写真:島田香

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