美容院で手話!?SNSで話題の美容師・YAMATOさんが大切にする意思疎通のヒント #つながる体験部

おしゃれや生活において欠かせない「美容院」。美容の現場でも、意思疎通のヒントが溢れています。
そこで今回の #つながる体験部 は、SNSでの動画が話題の、手話を使って接客をする美容師・YAMATOさんに、発信を始めたきっかけや、意思疎通のコツについて伺いました。
INDEX:
#つながる体験部とは?
「#つながる体験部」は、聴覚・言語機能・音声機能・視覚・盲ろう・失語など、障害や難病によって意思疎通に困難を抱える人と、その周りの人との“伝える・伝わる”を支える「意思疎通支援」をテーマに、実際の現場を取材・体験しながら学んでいく企画です。身近な体験を通じて、“つながる社会”について考えていきます。
美容師の両親と聞こえないきょうだいとの生活で、自然と身についた手話

今日はよろしくお願いします。まず、YAMATOさんの普段のお仕事について教えてください。
今はアシスタントで、スタイリストにつきながら、カット以外のカラーやパーマ、縮毛矯正などサポート的な役割をしています。お客さまは10代から30代が多くて、男女比は半々くらいですね。
美容師を目指したきっかけは何だったんですか?

両親が美容師で、実家も美容室なんです。小さい頃は手話通訳士や料理人などの専門職に興味があったんですけど、高校生の時に父親の手伝いをしている時に、お客さまを笑顔にしている父の仕事姿を見て「美容師ってかっこいいな」と思って美容師を目指そうと決めました。
手話通訳士を目指したこともあったのですね。手話はなぜ始めたのでしょうか?
僕は三人きょうだいの真ん中なのですが、姉と弟は耳が聞こえません。だから物心ついた時から、ずっと家族で手話を使うのが当たり前の環境で生活をしていました。
じゃあ、どこかで学んだというより、生活の中で身についたんですね。
そうですね。今は一人暮らしですが、新しい言葉などわからない手話表現は、姉や母と会った時に教えてもらっています。
相手の状況を把握して、伝わりやすく。手話でおしゃれの可能性も広がる!
手話を美容院の仕事と組み合わせようと思ったのは、どんなきっかけがあったのですか?
美容師として就職する時に、それまでは当たり前だと思っていたことでしたが、『手話ができること』が自分の強みだと気づきました。周囲から「手話ができることをSNSで発信してみたら」と勧められ、手話を使ったカウンセリング動画をSNSにアップロードしてみたんです。そうしたら、たくさんの方に動画を見てもらえたんです。そこで、耳の聞こえない人は、手話を使ったカウンセリングを必要としているんだということに気づき、SNSでの発信を始めるようになりました。
実際に手話を使って接客する中で、意識していることはありますか?
まず、その人の耳の聞こえ方や補聴器の使用の有無、あとは家庭環境も伺って、障害の程度や手話レベルを探るようにしています。生まれつき耳が聞こえない方もいれば、途中から聞こえなくなった方もいます。手話が必要か、口話がどれくらいできるか、どの程度唇を読めるかも人それぞれなので、最初に確認しています。
難しそうですが、コミュニケーションを取る上で必要な情報なんですね。手話をする時に気を付けていることはありますか?

手話では表情や体の動きがすごく大事です。体をオーバーに動かしたり、口を大きく動かしたり。また、視線や目力でも伝わり方は変わります。体をオーバーに動かすのは、きっと“伝えたい”という気持ちがあるから、自然と動きが大きくなっちゃうところもあるのかなと思います(笑)。
SNSを拝見していると、耳の聞こえない方や聞こえにくいお客さまも多くいらっしゃる印象があります。そういったお客さまとのやりとりの中で、印象に残っているエピソードはありますか?
そうですね、カラーの相談で「明るくしたい」というご要望に対して、手話で赤みの有無や色味のイメージをヒアリングして、どのように髪色が変わるかを一つずつ説明したら「そんなにいろんなカラーがあるんだ。おしゃれの可能性が広がりました」と言われた時はうれしかったですね。最終的に紫系のカラーを選ばれて、すごく喜んでくれました。

手話ができることで、より深いコミュニケーションがとれるようになるんですね。
そうですね。希望のイメージなど、他の美容師さんだとうまく伝わらないのではないかという不安から、僕のところに来られる方が多くいらっしゃるので、お客さまに安心感を持ってもらえるよう、できるだけ丁寧にカウンセリングするように心がけています。
障害の有無に関係なく認知が広がり、周囲のコミュニケーションにも変化が
SNSの発信を始めて、何か変化はありましたか?
耳の聞こえない、聞こえにくいお客さまが増えたのもありますが、聞こえる方からも「手話美容師の方ですか?」って声をかけられるようになりました。カリスマ美容師と呼ばれるような著名な美容師さんにもフォローいただいて、耳の聞こえない、聞こえにくい方だけでなく、いろいろな方にSNSの発信が届いているんだなと思うとうれしいですね。
手話をしながらのカウンセリングってインパクトがあるからSNSでも目に留まりますよね。所属されている美容室でも、聞こえない、聞こえにくいお客さまが多く来られるようになったと思いますが、美容室やスタッフの方にとって何か変化はありましたか?

所属する美容室のスタッフからも、「どう対応したらいい?」と相談してくれるようになりましたね。みなさん、各々がボディランゲージやスマホを使って自然にコミュニケーションを取っています。
特別な知識がなくても意思疎通のためにできることはあるんですね。
はい、大事なのは「伝えようとする気持ち」だと思います。
聞こえない人をつなぐ架け橋に。真心を持って接すれば伝わる!
私たちのように手話ができなくても、耳の聞こえない、聞こえにくい人とコミュニケーションを図るには、どんなことを工夫すればいいでしょうか?
困っている人に出会ったら、逃げずにまずは関わってみることですね。僕も英語を話せないのですが、外国のお客さまが来た時は、つたない英語やジェスチャー、スマホの翻訳機能を使って、どんどんコミュニケーションを取っています。シンプルに真心を持って接すれば、ちゃんと思いは伝わりますよ。
伝えたい気持ちと行動があれば、その思いは伝わるんですね。今後目指したい目標はありますか?

これからもSNSによる発信を続けつつ、手話を通して聞こえる人と聞こえない人たちをつなげる役割になれればと思っています。伝えたい気持ちと行動があれば誰でもコミュニケーションは取れるということを発信して、聞こえる人と聞こえない人の間にある壁を壊すような存在になりたいですね。
聞こえる人と聞こえない人たちをつなぐ架け橋になるって、素晴らしいですね。私も手話に興味を持ちました。ありがとうございました。
Q:今日の感想は?
今回の取材を通して、「意思疎通」は特別なスキルではなく、伝えたいという気持ちから始まるものだと感じました。言葉が通じなくても、表情や身ぶり、スマホなど、方法はいくらでもある。その一生懸命伝えたいという姿勢があるかどうかが大切なのだということを、YAMATOさんの話から学びました。私は将来、接客業を志望していますが、相手に寄り添い、伝えようとする姿勢はどんな仕事にも共通する力だと思います。手話を学ぶことも含め、「できることから一歩踏み出す」意識を、これからの進路選択や日常生活の中で大切にしていきたいです。
手話ができる美容師・YAMATOさんの取り組みは、特別な資格や肩書きがなくても、意思疎通の壁を越えられることを教えてくれました。大切なのは、完璧な言語力よりも「伝えたい」、「知ろうとする」気持ち。表情や身ぶり、スマホなど、身近な手段でもコミュニケーションは生まれます。誰かの困りごとに気づいたとき、少し勇気を出して関わってみる。その一歩が、相手の選択肢を広げ、自分自身の視野も広げてくれるはずです。















