地方公務員になるには? 試験の種類や年収について解説
大学生のみなさんは、「地方公務員」になるにはどんなプロセスを経ないといけないのかご存じでしょうか。実は地方公務員の試験は範囲がとても幅広いため、もし目指すなら早めに対策をスタートしたいところ。そこで今回は、地方公務員になるにはどうすればいいのかについて解説します。
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地方公務員になるには?
「地方公務員」について、『広辞苑』には次のように記載されています。
“地方公共団体の公務に従事する職員”
※第6版1802ページより引用
つまり、都道府県や市町村などの地方自治体に所属する機関に勤務する人ということです。警察官や消防士も、地方自治体所属であれば地方公務員となります(国家公務員もいます)。
こうした地方公務員になるための方法はただ一つ。
「地方公務員試験」を受け、それに合格することです。
ただし警察官や消防士などの専門職には専門の採用試験があります。ここでは一般の地方公務員について解説していきますね。
公務員試験は地方自治体によって異なる
地方公務員試験は国が一括して実施するわけではなく、それぞれの自治体が主体となって実施されます。ここがまず注意したいポイント。そのため試験の詳細はそれぞれの自治体によって違いがあるのですが、おおむね次のように分けられます。
●公務員試験初級
試験内容は高卒程度
●公務員試験中級
試験内容は短大卒程度
●公務員試験上級
試験内容は大卒程度
このように大きく3つに分かれており、さらに職種別に細分化されます。ただしこの区分や試験内容、受験資格年齢などは自治体によって異なるため、個別によく確認するようにしましょう。例えば東京都の場合は、初級に相当する試験を「III類」、中級に相当する試験を「II類」、上級に相当する試験を「I類」としています。
公務員試験の受験資格について
公務員試験の受験資格は、基本的には年齢制限のみです。ただし、職種によってはその職務を遂行するために必要な資格や免許が必要になることもあります。
(例)保健師:保健師の資格
公務員試験の勉強法は?
公務員試験の勉強法には、自分でテキストなどを用意して独学する方法と、資格スクールに通う方法があります。
独学の方が費用は安く済みますが、スケジュールを自己コントロールしていく難しさがあります。一方資格スクールの方はカリキュラムが組まれているので安心感がありますが、コスト高になることは否めません。それぞれ自分に合った方法を選択してみましょう。
ちなみに勉強期間は受験する試験によっても異なりますし、もともと持っている教養知識によっても変わってきます。大まかな目安としては、6ヶ月〜1年くらいのイメージで考えておくといいでしょう。
公務員試験を受験するまでの流れ
まずは自分が希望する就職試験の日程、そして対象年齢や、必要な資格、免許などを確認します。それらをクリアしていれば、次は受験申し込みです。自治体ごとに申し込み方法は若干の差異があるのですが、基本的にはインターネットか郵送での申し込みとなります。
申し込みが完了すれば、あとは入念に準備して試験の日を待つ、という流れです。申し込み日や試験日も自治体ごとに異なり、例えば春に試験が実施される団体もあれば、秋に実施する団体もあります。
大卒から地方公務員になるには
大卒から地方公務員になるには、上記のうち「公務員試験上級」(試験内容:大卒程度)に相当する試験にチャレンジするのが一般的です。それ以外の「初級」「中級」の受験ができるケースもありますが、年齢制限が設けられていることに留意しなければなりません。
今回は東京都の「I類B」の採用試験の内容を例に挙げてみました。
※【一般方式】を例にとっていますが、このほかに【新方式】もあります。
●1次試験
・教養試験(一般教養についての五肢択一式)
・専門試験(職務に必要な専門知識についての記述式)
・論文(課題式)
●2次試験
・口述試験(人物についての個別面接)
東京都の「I類B」の採用試験はこのような内容になっています。試験時間はそれぞれの科目ごとに1時間30分〜2時間30分ほど。それだけ時間のかかる問題が出題されるわけで、じっくり時間をかけて適正をみていこうという採用側の意図がうかがえます。
試験問題の傾向としては、一般教養の問題は国語や社会、数学など幅広い範囲の問題が出題されます。そのほか社会問題や行政に関わるものなどみなさんがこれまで受けてきた一般的な学力試験とは少し毛色の異なる出題も。そして専門試験では、その職務に重要となる知識を測るための、より専門的な問題が出題されます。
高卒から地方公務員になるには
高卒から地方公務員になるには、先の3つの公務員試験のうち「公務員試験初級」(高卒程度)あるいは「公務員試験中級」(短大卒程度)に相当する試験にチャレンジするのが一般的です。ただし公務員試験は学歴そのものを問わないことが多いため、年齢などの条件さえ合えば「上級」にチャレンジすることも可能です。
今回は東京都の「III類」の採用試験の内容を例に挙げてみました。
●1次試験
・教養試験(一般教養についての五肢択一式)
・【事務の場合】作文(課題式)
・【技術の場合】専門試験(職務に必要な専門知識についての記述式)
●2次試験
・口述試験(人物についての個別面接)
東京都の「III類」の採用試験はこのような内容になっています。試験時間はそれぞれの科目で1時間20分〜2時間ほど。前項の「I類B」と比較すると科目が減る上に、時間もやや短くなるようです。
試験問題の傾向としては、一般教養の問題は国語・数学・英語・理科・社会といった内容が高卒程度で出題されます。特に順序立てて考える「論理的思考」や、グラフを読み取る力などが問われる内容になっています。技術職向けの専門試験の方は、土木・建築・機械などそれぞれの分野での専門知識が求められます。
中途採用から地方公務員になるには
ここではいわゆる中途採用、つまり大学等を卒業してから年月が経っている人が地方公務員になるルートをご紹介します。中途で地方公務員になるためのルートは主に次の2つです。
1.上級枠(大卒程度)から採用試験を受ける
2.社会人採用枠から採用試験を受ける
1つ目の上級枠(大卒程度)ですが、公務員試験上級の試験は新卒のみと決められているわけではありません。よって、まだ年齢が若いうちはこの上級枠から試験を受けることが可能です。目安として、20代のうちはこの上級枠で受験できることが多いようです。
2つ目の社会人採用枠ですが、こちらは「中途採用」「キャリア採用」などと呼ばれます。この社会人採用枠は最近になって年齢制限などが大幅に緩和される動きが出てきています。30代から場合によっては50代まで幅広く受験をすることが可能となってきているのです。
ちなみに社会人採用枠の試験内容もやはりそれぞれの自治体や職種により異なります。一例として神奈川県の「キャリアフリー採用」では、
第1次試験:経験小論文(記述式)
第2次試験:個別面接(プレゼンテーション含む)
となっています。
▶︎引用:神奈川県「中途採用試験」
地方公務員の平均年収は?
「令和2年地方公務員給与実態調査結果等の概要」によると、地方公務員(一般行政職)の諸手当を合計した給与の平均は40万860円となっています。
(注)諸手当は時間外勤務手当を含む。
この平均給与をふまえボーナスなどを試算すると、平均年収はおおよそ600万円とサラリーマンの平均年収を大きく上回っています。こうした収入面を考えると、やはり地方公務員は魅力的な部分が多いと言えそうです。
▶︎引用:総務省「令和2年地方公務員給与実態調査結果等の概要」
まとめ
今回は「地方公務員になるには」と題して、公務員試験の種類や試験科目などをご紹介してきました。ポイントは、地方公務員試験は各自治体が主体となっているため詳細がそれぞれ異なること、そして「上級」「中級」「初級」といった種類があることです。
地方公務員になるには年齢制限に注意しなければなりませんが、最近は中途採用の年齢制限などが大幅に緩和されてきていることも分かりました。幅広い年齢層でキャリアチェンジが可能になってきているのですね。
地方公務員を目指す方は、悔いのないように入念に勉強して、ぜひ合格を勝ち取って下さい!
▶︎参考資料:東京都職員採用ページ