「洋楽の力」で教育課題を解決⁉ ユニバーサル ミュージックによる“教育×英語”の新プロジェクト「UM English Lab.」とは
こんにちは!学生ライターの近由梨子です!みなさんが英語を好きになったきっかけは何でしたか?「自分が幼い頃に親や周りが洋楽を聴いていて…」なんて方もいるかもしれません。
今回私は、2025年3月14日に行われたユニバーサル ミュージックによる教育×英語の新プロジェクト「UM English Lab.」(ユーエム イングリッシュ ラボ)のリリース発表会と実践授業の様子を取材してきました!
「UM English Lab.」が生まれたきっかけ
日本の英語教育、現場が抱える課題とは?

今回のプログラム企画にに携わった渋谷区立原宿外苑中学校の駒崎彰一校長先生
日本における「英語教育」には実は課題が山積み…。学校では長年英語教育が行われているにもかかわらず日本人の英語力は世界的に見ても低く、特に英語を「聴く力」「話す力」は読み書きの力に比べて不足しているんです。
その要因のひとつとして挙げられるのが、日本の教育現場での人員不足や時間外労働の問題。先生方は本当は「もっと生徒たちに英語を楽しみながら学んでほしい」と思っているものの、授業以外の雑務にはなかなか手が出せないのが現状だそう。自分たちの学校での英語学習を思い返しても、「受験勉強以外で英語を学ぶ機会は少なかった」という方も多いのではないでしょうか…?
コロナ禍で減ってしまった洋楽アーティストの来日。日本の若者の洋楽離れも顕著に…

ユニバーサル ミュージックの日本法人の社長兼CEO、藤倉尚さん
幅広い洋楽アーティストが所属し、長年 洋楽シーンをリードしてきたユニバーサル ミュージックですが、特にコロナ禍においては、海外アーティストの来日はもちろん、新作・新曲の発売も延期が相次ぎ、特に多感な学生世代が洋楽に触れられる機会が大幅に減ってしまったそう。
ユニバーサル ミュージックの日本法人の社長兼CEO、藤倉尚さんは「僕の入社当時は洋楽コンテンツが会社の売上の約40%を占めていましたが、今では約10%以下になっています。日本の若い世代の方々に洋楽に触れ、教養を深めるきっかけにしてほしいという想いで、このプロジェクトを始動しました。」と語りました。
教材に使われている洋楽は、ザ・ビートルズやカーペンターズといった往年のアーティストだけではなく、レディー・ガガやテイラー・スウィフトなど若い世代にも人気のアーティストの楽曲を積極的に使用。英語を楽しみながら学ぶことができるうえに、リアルな表現方法や、歌詞の背景にある文化や歴史、社会背景なども学ぶことができるそうです!
さらにこの教材は無料で提供されており、教える側の先生の負担も軽減され、すぐに授業に活用できるのも大きなポイントなんだとか。
「ヒット曲は世界共通の言語」- クリスタル・ケイさんの“洋楽×英語”体験談
歌手のクリスタル・ケイさんと、お笑い芸コンビ「トンツカタン」の森本晋太郎さん
リリース発表会後半では、幼い頃から英語を使う環境に身を置いてきた 歌手のクリスタル・ケイさんと、お笑いコンビ「トンツカタン」の森本晋太郎さんによる対談が行われました。
ご両親の影響で幼少期から英語に触れていたクリスタル・ケイさんにとっては、洋楽は英語を学ぶ最初のきっかけだったそう。「親が洋楽のレコードを聴いていて、最初はただ“音がかっこいい!”という理由で聴くようになりました。その後、歌詞カードを見ながら単語やフレーズを覚えて行き… その曲に込められた意味を知ることで“このアーティストはこんなことを言いたかったんだ!”と洋楽の世界にハマっていきました。」と語りました。
また、世界で愛されている洋楽のフレーズを歌えることで、海外の人たちと仲良くなるきっかけにできることもあるそう。「ヒット曲は世界共通の言葉になる。どこに行っても伝わるのが音楽の魅力」と語っていたのが印象的でした。
クリスタル・ケイさんたちから、英語を学ぶ学生たちへ向けて「20年前なら考えられなかったけど、今はもっと気軽に英語を学べる時代。英語が上手になる秘訣は、失敗しても良いからとりあえず知ってる単語を並べて話すことに“TRY”してみること!勇気を持って、楽しみながら、英語の輪を広げていってほしい」とエールが送られました。
レディー・ガガの「Born This Way」にはどんなメッセージが込められている? 実践授業の様子をご紹介

本教材の監修・制作を担当した元英語教師で合同会社いい教材製作所代表社員である吉川佳佑さん
後半は、今回のプログラム企画にに携わった渋谷区立原宿外苑中学校の生徒たちへの実践授業が行われました。授業ではレディー・ガガのヒット曲「Born This Way」 を使い、英語のリスニング力・スピーキング力を鍛える授業の様子をお届けします。
「歌を楽しむ」だけじゃない!洋楽を使った英語学習でできることは、こんなにも!
渋谷区立原宿外苑中学校の生徒たちへの実践授業の様子
洋楽を使った英語学習の目的は、単に「歌を楽しむ」ことではなく、生きた英語を身につけることだそう。
✅ネイティブの発音に触れる(教科書の音声とは違う、リアルな英語のリズムを感じる)
✅英語の文化的背景を学ぶ(単語の意味だけでなく、歌詞のメッセージや時代背景を知る)
✅英語をアウトプットする機会を増やす(スピーキング力を鍛える)
英語を「勉強」として覚えるのではなく、音楽を通して自然に吸収できるのが、このプログラムの魅力です。
Part 1:まずは曲を聴く—第一印象を書き出す
授業ではまず最初に、曲を一度通して聴くことからスタート。生徒たちは配布されたワークシートに、以下の2点について書き込んでいました。
✅この曲を聴いてどんな印象を受けたか?
✅聞き取れたフレーズは何か?
歌詞の意味を考える前に、英語の音に耳を慣れさせることがリスニング力向上につながるのだそう。
Part 2:歌詞の意味を深掘りする—直訳と意訳の違い
次のステップでは、歌詞をフレーズごとに分解。英語の歌詞は、直訳すると意味が分かりにくいことも多いのですが、学生たちは曲のメッセージを理解しながら、「どのように意訳すると自然な日本語になるのか」を考えていました。
また、歌詞の中で特に難しい部分にはヒント付きのワークシートが用意されており、生徒たちは自分の考えをもとに「このフレーズはどういう意味か?」をグループで話し合ったりしていました。
Part 3:文化的背景を学ぶ—「he」は誰を指すのか?
「Born This Way」の歌詞には、宗教的な要素も含まれています。例えば、歌詞の中に登場する “he” という表現について、「この “he” は誰を指しているのか?」 というディスカッションが行われました。生徒からは「彼氏」「父」などの声も上がっていました。
✅キリスト教では、God(神)を “he” と表現することが多い
✅一部のアーティストの楽曲には、聖書の引用が含まれることがある
というポイントが伝えられ、「なるほど!」と理解を深めた様子の生徒たち。確かに、この“he”はレディー・ガガが生まれ育った文化背景を理解できないと、わからないフレーズになってしまいますね。
このように、英語の歌詞には文化的な背景が深く関わっていることを学び、単なる単語の意味を覚えるのではなく、英語の奥深さを感じることができました。
Part 4:発音のルールを学ぶ—ネイティブの発音に近づくには?
次に、歌の中での独特な発音や音のつながりについて学びました。英語のリスニングが難しい理由のひとつは、単語がつながって発音されること。ここでは、リダクション(音の省略) や エリジョン(音の脱落) などの発音ルールを、実際の歌詞を使って解説。
<例>
✅“Born this way” → 「ボーン ディス ウェイ」ではなく「ボーン ニスウェイ」に近い発音になる
✅“’cause God makes no mistakes” → “because” の省略形 “‘cause” は「コーズ」と発音される
生徒たちは、ネイティブの英語がなぜ聞き取れないのかを理解し、リスニングのコツを学ぶことができた。
Part 5:歌うことでリスニング力を強化—「英語のリズムを体感する」
リスニングが難しい理由のひとつは、フレーズのまとまりが分からず、音を正しく認識できないことなのだそう。そこで、リズムに合わせて歌詞を口に出す練習が行われました。
生徒たちは、実際に歌うことで、英語のリズムやイントネーションを自然に身につけられるだけでなく、単語のつながりも理解しやすくなったようでした!
Part 6:この曲でアーティストが伝えたかったメッセージとは?
レディー・ガガさんは、この「Born This Way」という楽曲を通してLGBTQやマイノリティの人たちへの応援メッセージを伝えているのだそう。みなさんもぜひ、歌詞カードを手に聴いてみてくださいね。
取材を終えて
洋楽で生きた英語を楽しく学ぶことができるだけでなく、教える先生方の負担軽減まで考えられている「UM English Lab.」。英語教育に関心のある学生さん、これから英語教員を目指す学生さんにもぜひチェックいただきたいと思いました。音楽を通して言語を学び始めることで、今より世界がもっと近くなるのでは⁉と感じました。
ライター:近由梨子(ガクラボメンバー)
編集:ろみ(学窓編集部)