将来困らないために今から考えよう、奨学金との賢い付き合い方 |学校では教えてくれない「お金の授業」
進学する際の高額な学費をまかなうために利用される奨学金ですが、多くの人が利用していることもあり、「自分も奨学金を利用しよう!」と気軽に考えがちです。
しかし、利用する前に理解しておいていただきたいのは、「奨学金は借金である」ということです。借金である以上、返還する必要があります。
今回は将来困らないためにも奨学金との賢い付き合い方をお伝えします。
奨学金は借金であることを理解しよう
進学する際の高額な学費をまかなうために利用される奨学金。「奨学金はもらえるものだと思っていた!」という方もいると思いますが、基本的には学生本人が借主となる借金なのです。
とは言え、奨学金には「給付型」と「貸与型」があり、「給付型」の奨学金は返還義務がありません。つまり、もらえるということですね。
しかし、「給付型」は成績が優秀であるなど細かい条件があるため、利用できる方はほんの少数です。そのため、一般的に奨学金を借りるとなると「貸与型」つまり、返還義務のある奨学金になります。
そしてさらに奨学金には、利息がかからない「第一種奨学金」と利息がかかる「第二種奨学金」があります。
利息がかかると返還が大変になるイメージがありますが、奨学金の利息は、教育支援の一環という立場から、年利3%が上限として設計されていますので、一般的な借入金よりも負担は低いです。
なお、金融機関にも教育ローンがありますが、三菱UFJ銀行の「教育ローン」の金利が3.975%、りそな銀行の「りそな教育ローン」が4.475%(住宅ローン優遇適用なしの場合)なので、奨学金の金利が低いことがわかりますね。
奨学金の返還はどれくらい大変?
奨学金の返還は、「貸与が終了した月の翌月から数えて7ヶ月目」から口座振替により返還が始まります。一般的に、多くの学生が3月に卒業するため、その後に就職し7ヶ月後の10月に返還が開始されます。
就職してお給料をもらえるようになれば、奨学金の返還もできるようになりますが、返還はどのくらい大変なのか気になるところですよね。
奨学金の返還には「月賦返還」と「月賦・半年賦併用返還」の2つがあり、それぞれ以下のような特徴があります。
返済方法 |
概要 |
月賦返還 |
毎月一定額を決められた期間返還する |
月賦・半年賦併用返還 |
返還金の半分は毎月返還(月賦)、残りの半分は半年に1回(1月と7月)に返還(半年賦) |
月賦・半年賦併用返還は、1月と7月にまとまった金額が引き落とされるので、いわゆる「ボーナス払い」に近い感覚といえますね。
ちなみに、「まとめて返還したい!」という場合には「繰り上げ返済」をすることができますが、詳しくは後ほどご紹介します。
このように、基本的には毎月返還をしていかなくてはならない奨学金ですが、実は近年、返還に苦しむ方が増加しており、社会問題となっています。
返還できなくなる原因として、次のことが考えられます。
・学費が値上がりして高額な借入をしたので返還しきれない
・卒業しても就職先が見つからず、収入がない
・就職できてもお給料が少なくて返還に回すお金がない
以前は、学校を卒業し就職すれば問題なく返還できるケースが多かったのですが、現在は学費の値上がりや就職難、お給料額の減少など、返還に苦しむ要因が出てきています。
奨学金の返還に困った方たちの中には、返還のために消費者金融から借入を、さらに借金を増やしてしまったり、うつ病になって仕事を辞めざるをえなくなったり、自己破産をしてしまうかたもいます。
このような事態は決して他人事ではありませんので、奨学金を借りる際は慎重に判断することが大切です。
奨学金を借りる前に考えるべきこと
奨学金は、低い金利で借入でき働き出してから返還すればいいので、気軽に借りてしまう方は少なくありません。
しかし、すでにご紹介したように返還に困ってその後の人生が苦しくなってしまうこともあるので、奨学金を借りる前にしっかりと考えておかなくてはならないことがあります。
それは以下の2点です。
・本当に奨学金を借りる必要があるか?
・借りる金額は適切か?
まずは、本当に奨学金を借りる必要があるのかを考えてみてください。借りている友だちが多いので、「もらわなくちゃ損!」なんて思っている方もいるかもしれないですよね。
しかし、何度もお伝えしているように奨学金は借金です。不要な借入は極力控えて、借金のない社会人生活を送れないか考えてみましょう。
とは言え、やはり奨学金を借りなくては学費が支払えないということも十分に考えられます。その場合は、借りる金額を最小限に抑えて、いざ返還するとなったときの負担をできるだけ減らしておきましょう。
「せっかく借りるのだから多めに借りておこう。」などということは考えないようにしましょうね。
奨学金との賢い付き合い方
奨学金の返還をどのようにすすめていけばいいのか、悩んでしまうこともあると思います。奨学金と賢く付き合うためには、「具体的な返還プランをたてる」ことが大切です。返還プランをたて、返還が終るまでの道筋を確認してみましょう。
以下は、返済プランの例ですので、参考にしてみてください。
奨学金の種類 |
第二種 |
借入期間 |
2020年4月~2024年3月(48か月) |
貸与月額 |
70,000円 |
貸与利率 |
0.02% |
機関保証制度 |
なし |
入学時特別増額貸与奨学金 |
なし |
借入総額 |
3,360,000円 |
このような条件で奨学金を借りた場合の返還期間や返還総額は以下のようになります。
・貸与総額:3,360,000円
・返還期間:2024年10月~2043年9月
・貸付利率:0.02%
そして、気になる返還額ですが、月賦返還と月賦半年賦併用返還とで異なります。
返還方法 | 返還額 | 返還回数 | 返還総額 |
月賦返還 | 14,765円/月 (最終:14,977円) | 228回 | 3,366,632円 |
月賦・半年賦併用返還 | 7,382円/月 (最終:7,544円) | 228回 | 3,366,625円 |
44,298円/半年 (最終:44,341円) | 38回 |
奨学金で336万円を借りた方が月賦返還をする場合は、毎月14,765円を返還することになります。一方、月賦・半年賦併用返還をする場合、毎月返還額は7,382円ですが、1月と7月の年2回は44,298円をプラスして返還することになります。
このように、具体的な返還額がわかると「返還できそうだ」と思えてきませんか?毎月のお給料から決められた金額が口座引き落としで返還されていくのであれば、お金のやりくりもうまくいきそうですよね。
しかし、返還期間は基本的に20年であるため、「この先ずっと借金を返還していく生活はいや」と思う方もいると思います。そのような方のために、もちろん返還を早める方法も用意されています。
それが「繰上(くりあげ)返還」いわゆる繰り上げ返還です。 繰上返還は、奨学金の全額または一部をまとめて支払うことができる制度で、返還した分はそれだけ早く返還を終わらせることができますし、支払う利息を減らすこともできます。
全額ではなく一部の繰上返還にも対応していますので、ボーナスなどまとまったお金があるときには積極的に返還に回して、早めに完済することをおすすめします。
申込方法は、「スカラネット・パーソナル」を利用したインターネット上での手続きです。ネット環境が整っていない場合のみ、郵送やFAXでも受け付けてもらえます。
なお、今回ご紹介した奨学金返還シミュレーションをご自分の条件で試したい方は、こちらからお試しください。
まとめ
奨学金はもらえるものと思っている方も少なくありませんが、あくまでも借金です。学校を卒業してから基本的に20年間は返還を続けていかなくてはなりません。
今後、安定した収入が得られるという保障がないご時世ですので、本当に奨学金を借りる必要があるのかをしっかりと検討するとともに、借りる場合でも必要最小限の金額にとどめるなど、上手に活用していくようにしましょう。
文:金子 賢司
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。 以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、 年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はジャザサイズ。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP、住宅ローンアドバイザー、生命保険協会認定FP、損保プランナー 公式HP
制作:Media Beats
編集:マイナビ学生の窓口編集部
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