会社が奨学金を払ってくれる? 就職後の企業による奨学金支援制度とは?
昨今、奨学金を利用している学生が増加傾向にあり、それに伴って奨学金の返還に苦しんでいる学生も多くなっているようです。こうした中で、奨学金返還を肩代わりする企業が増えてきています。ここでは、そうした奨学金返還の企業支援について解説をしていきます。
(監修協力:FP 鈴木幸子)
企業による奨学金支援とは?
企業による奨学金の返還支援が増えている背景の一つに、年々、奨学金利用者が増えていることが挙げられます。
1996年の奨学金利用者は大学生全体の5%でしたが、2016年には約50%にまで増加しています。つまり現在、大学生の2人に1人は奨学金を利用しているということになります。
また、そのうちの9割近くが、返還が必要な貸与型を利用しています。返還の必要のない給付型は一部に限られているようです。
奨学金利用者が増え、貸与型奨学金が増えていることと同時に、奨学金の返還に苦しむ若者が増えています。返還困難な若者が増えている理由として、学費の高騰と有利子奨学金を利用する学生の増加の2つが挙げられます。
前述した通り、貸与型の奨学金の利用は9割を占めています。貸与型奨学金には、無利子奨学金(第一種)と有利子奨学金(第二種)がありますが、現状では後者が増加しているのです。
こうした中、企業が奨学金支援に注目している理由として、多くの企業にとって新入社員として学生を獲得することが困難であることが挙げられます。こうした売り手市場と転職率の増加により、企業は若手社員の獲得・維持に向けて、奨学金の肩代わりに力を入れ始めたというわけです。
奨学金支援を導入している企業
実際に奨学金支援制度を取り入れている企業の一つに、トヨタ自動車を筆頭とするトヨタグループが挙げられます。
理系女子学生対象の奨学金制度として「トヨタ女性技術者育成基金」を創設しました。グループ企業10社のいずれかに入社すると奨学金の全額を、その他の製造業関連企業では奨学金の半額を、同基金が肩代わりして返済します。
そのほかに大和証券グループ、ITのUTテクノロジーなども同様の制度を設けています。
奨学金支援の利用に関する注意点
奨学金を利用している学生にとって、企業が奨学金を肩代わりする制度は、大変ありがたい制度であることは言うまでもありません。しかし、企業が奨学金を肩代わりしてくれる代わりに、該当社員に数年間、会社に在籍することが求めている場合があります。
その場合には、会社を途中で退職する際に、思わぬトラブルが発生する可能性もゼロではありません。こうした在籍に関する具体的な記載や説明がない場合、念のために人事に確認を取っておくのが良いでしょう。
また、「支援制度」と名称が付いていても、実は奨学金の返済分が給料から天引きされていたというケースもあるようです。このような点を確認して、安心して制度を利用するよう努めましょう。
まとめ
長期にわたる奨学金の返還を、企業が肩代わりしてくれるという取り組みは、奨学金を利用している学生にとっては、非常にありがたい制度です。就職先選びの選択肢になりますし、こういった傾向がさらに高まるようになると学生のみなさんにとっても安心ですね。
(学生の窓口編集部)
監修協力:鈴木幸子
2010年よりFP活動を始め、子育てファミリーの家計相談、住宅購入相談を実施。フジテレビ「Live News it!」でコメンテーターを務めるなど、地元金融機関、住宅メーカーでの講演実績を持つ。保有資格AFP・証券外務員2種・相続診断士。
https://www.gyl-h.com/