インスタ映え必至の「キャンディバーソープ」は障がい者と健常者の垣根を超えた職人技の賜物だった!|マイナビストア“あなたに届くまで”
※マイナビストアは、2019年9月30日をもちまして閉店させていただきました。
マイナビストアの“あなたに届くまで” 第5弾の今回は、大手雑貨店でギフト商品として大人気で、マイナビストアでも贈り物として選ばれているキャンディバーソープのブランド「li'ili'i(リィリィ)」をご紹介します。
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今回はマイナビストアの“中の人”びやが、「li'ili'i」を製造している神奈川県小田原市の株式会社リンクラインさんを訪問! 併設されている製造所で石鹸が出来上がる工程も見学させていただきました。
マイナビストア学生の窓口 入学前から卒業後までを応援する「マイナビ学生の窓口」公認ウェブストア。パソコンや文房具などキャンパスライフの必需品から、テーブルやベッドなど一人暮らしをサポートするインテリアまで、約2,000アイテムを取り揃えている。 |
“中の人”びやのプロフィール
マイナビストアのバイヤー。日々、学生がどんな商品を求めているのか、学生にはどんな商品が刺さりそうかを考えている。趣味はサッカー観戦。元カメラマンという異色の経歴の持ち主。 |
ひと目で惹かれる「キャンディバーソープ」が生まれた経緯とは?
こんにちは! 株式会社リンクラインの代表取締役兼デザイナー・原型師をしております、神原と申します。宜しくお願いします!
マイナビストアバイヤーのびやです。本日は宜しくお願いいたします!
私たちはここ小田原の地で、固形石鹸を中心に作っている化粧品メーカーです。純国産であるというのが特徴の一つですが、それよりも他の化粧品メーカーと大きく違っているのが、工場で働いている職人が全員障がいを持っている子たちということです。
リンクラインの親会社は「コムテック株式会社」というIT系の企業でして、もともと私はそこの新卒採用などを担当していました。実は、日本で有限会社・株式会社という形で事業を営む50名以上の社員がいる企業は、全社員のうち2%を障がい者雇用とする義務があるんです。しかし、お恥ずかしながら当時のコムテックでは、その法定雇用率には全く届かない状態でした。
親会社はIT系の企業のため、基本的に社員はお客さま先に常駐をする形になります。そうすると、せっかく雇用した障がい者の方もポツン、ポツンとお客さま先に行くことになり、なかなかフォローも行き届かず、場合によっては常駐先のお客さまにも、受け皿を用意していただかなくてはいけません。そうした点からなかなか雇用が進まず、いつしか障がい者雇用が経営課題の一つになっていました。
僕が「それではいけない」と思い、福祉施設や障がい者雇用を推進されている企業など、もう本当に全国各地を回りました。そこでたまたまご縁があったのが、障がいを持った方が窯焚きの石鹸を作っているという静岡の社会福祉法人でした。
そこでは、今まで見てきたような、障がい者の方々が隅っこでダンボールを組み立てているだけといった光景と違い、障害のある方が石鹸作りのメインの仕事をやっていたんです。これにヒントを得て、その社会福祉法人の方に「石鹸作りを教えてください」とお願いしました。
でも、そこでは「師匠は長野県の『ねば塾』という会社にいるんだ」と言われ、今度は長野に飛びました。その『ねば塾』とは、創業40年を超える会社で、純白で真っ白な石鹸を作っています。従業員は50人ほどですが、その半分が障がいを持っている方で、そこはまさしく障がい者の方が「自立」できている会社でした。
そこで、私と当時グループ経営戦略を担当していた、現取締役の青野と2人で『ねば塾』に乗り込んだんです。障がい者の方が寝泊まりしているグループホームに住み込み、日中は障がい者の方に先生になってもらって、石鹸作りを2週間みっちり教わりました。
はい。すると、「障がいってなんだろうな」と思うくらい馴染んでいる自分に気づいて。これってすごいなぁと感じましたね。ここでは本当に、「障がい者が働く現場」と「石鹸作り」どちらも学ぶことができました。コムテックグループとして会社を作るのであれば、僕も『ねば塾』のような会社がいいなと思ったんです。
そうですね。これをきっかけに、初めてコムテックのオーナーに「障がい者のための会社を作ろうと思います」と伝えました。そこから2ヶ月で会社を立ち上げ、今ではもう毎日石鹸まみれになっている、というところです(笑)。
最初のころは油脂も原料も製造も純国産の、純白で究極な無添加石鹸を作ろうと言って「小春日和」というブランドでしばらくやっていました。『ねば塾』さんと共同開発で、これは今でも販売しています。
機械練りという石鹸なので、『ねば塾』さんが所有している機械がないと作れないんですね。とはいえ、機械の前後の工程は全部人間が動きますから、国内で作っていると1個800円という価格になるんです。
いくら「いい石鹸ですよ」と言っても、その背景についてはなかなかお客さまには伝わりきらないものです。ドラックストアに並べば、隣に3個入り300円の石鹸があって「何が違うの?」と思うわけで……。「小春日和」だけでは経営を続けていけないと思い、僕たちは機械メーカーさんができないことをやっていこう、と決めました。
もっぱら立ち上げから5年間くらいはOEMといって、他社さんの製造委託っていうのでやってきました。OEMだけでも800種類くらいは作ってきましたね。その中で一番の出世作がムーミンの石鹸です。現場の彼らが一生懸命技術力を付けてくれたおかげで、今ではムーミンの公式グッズとして販売できるまでになりました!
OEMは発注のロットも大きいですし、その分技術力も高まったので、5年目には黒字も達成しました。よかったと思う一方で、僕の中では一つ引っかかっていたことがありました。
OEMに関しては、商品を作るのはもちろん僕らなんですが、売るのはお客さまにお任せする形になってしまいます。そうすると、作っている彼らがなかなか日の目を浴びることができないんです。そのことが唯一の引っかかりでした。
そこで一昨年の春に、これからは製造だけではなくて、販売も僕たちがやっていこうということで、今までの技術の集大成として「li'ili'i(リィリィ)」という自社ブランドを作りました。
僕らが作ってきた数多くの石鹸の中で、どういう形にするのがいいかなと思ったとき、フルーツっていろいろな種類があるじゃないですか。そのフルーツを使った石鹸なら、カラフルでキャッチーだし、今で言うと「インスタ映え」もするので、じゃあそれをモチーフにしよう、ということでできたのが「キャンディバーソープ」です。
たしかに、いちごやオレンジ、ブルーベリーなど、フルーツによって大きさも色も形も全然違いますし、まさに技術力が試されますね。
li'ili'iを作ったときは、10年、20年とゆっくり育てていって、いつかみんなが知っているような店頭に並べばいいなぁなんて思っていたんです。でも、一番最初に仕入れていただいたのがPLAZAの銀座本店で! もうそこからは、こちらの想像に大いに反して、全く供給が追いつかないほどの反響をいただきました。
おかげで人手が足りなくなってしまったので、親会社の社員にも手伝いに来てもらいました。ただ、石鹸を作るのは技術が必要で、親会社の社員にはできないので、出来上がった製品を梱包する作業などをやってもらっていましたね。
そうなんです! こういう社会性のある会社というのは、親会社が与えた仕事をするということが多いですが、僕としてはそれで「真の自立」って言えるのかな? って思っています。今では親会社の新入社員は、配属前にリンクラインを体験することが研修の一環にまでなりました。
そうですね。でも、リンクラインで働いている子たちがものすごく仕事にひたむきで、待ってくださっているお客さまに1日でも早く届けたい、1個でもうまく作りたいという思いが強いので、親会社からきた新入社員もそれに触発されて「もっとできることない?」と聞くまでになるんです。親会社だけでなく、工場を訪れる全てのかたに対して、難しい言葉はしゃべれなくても、人の心を動かすことができるというのは、ある意味彼らの才能だなぁと思いますね。
僕自身も、最初はそういう思いで入社したな、と思い起こしてもらいました。今はOEMも継続しつつ、li'ili'iを中心にこの工場は回っているんですが、去年の春に創業以来初めてOEM以外の部分で営業利益が出ました。おかげで「いつかみんなで行きたいね」と夢に見ていたディズニーランドも、社員のみんなで行くことができました。
今も引き続き新商品を出していて、現在は70アイテムくらいまでになっています。昨年の夏には公式ショップも立ち上げることができました。
そんなにたくさんのアイテムがあるんですか! 全部神原さんがデザインを考えているんですよね。そのデザインの勉強ってどうされたんですか?
もう独学ですね。未だに休日にはいろんな雑貨屋さんに出向いて、トレンドの商品を見てはごそっと買って帰りますよ。そもそも私は情報システムの会社に入りましたし、美大卒なわけでもないですから(笑)。
自社商品の企画開発については、製造している彼らにも意見を聞いていますね。そのアイディアをヒントに、次はこんな商品がいいかなぁと考えています。
例えば最近発売したカップケーキソープは、彼らの声からアイディアを得て完成した商品の一つです。
実は彼らって、小学生と同じような価値観を失わずに世の中の物事を見られるんです。その中で「キャンディバーは1個1,000円で高くて買えないよ!」ということを、li'ili'iが生まれた頃からずっと言っていたんですね。
たしかに小学生の頃の気持ちを考えると、1,000円は出せないですね。
そんな中、このカップケーキソープは1個460円。小学生のお小遣い500円くらいで買えるものを作ってほしい、という彼らの声を実現することができた商品なんです。
彼らの声があったから生まれたんですね! キャンディバーもこのカップケーキもそうなんですが、見た目がかわいくて、なんだか使うのがもったいないくらいに感じてしまいます。
そうですよね。でも、飾るだけじゃなくて安心して使っていただきたいんです。だからここにあるすべての石鹸は、全部植物由来の原料で、環境にも肌にも優しい石鹸になっています。
あと、li'ili'iでは香りにもこだわっています。調香師さんにオリジナルでブレンドしていただいているので、既製の香りが一個もないんです!
そのため、li'ili'iのブランドのサブタイトルには「ボタニカル」つまり植物由来というのに加えて、「フレグランス」という言葉が入っています。それはやっぱり、香りも楽しんでいただきたいという思いがありますね。
石鹸を選ぶときには、香りも結構大事なポイントになりますもんね。
はい。香りにこだわっているせいで、僕は香料屋さんにすごい無理難題を言ってしまうんですよ。「甘酸っぱい思い出を感じられるような匂いで……」みたいな(笑)。
匂いって人によっても感じ方が違いますし、言葉で伝えにくいですもんね(笑)。
キャンディバーはうちのマイナビストアでも扱わせていただいているので、袋に入った状態ではもちろん見たことはあったのですが、実は香りをきちんと嗅いだことがなくて……。
そうなんですね。じゃあ、今から工場見学をして、ぜひ実際に見て、嗅いでみてください!
本当に障がいを持ってるの? 仕事にひたむきな社員さんたちの製造所に潜入!
こんにちは! 宜しくお願いします! 入った瞬間すごいいい香り!
ご覧頂いてわかる通り、ここには大きな機械は置いておらず、基本的に「人の手」しかありません。
キャンディバーを作るにあたっては、まずパーツと呼ばれるフルーツを一つひとつ、丸々一個完成品まで作ります。
これでも十分本物みたいだと思うのですが、例えばレモンなんかは質感にこだわって、外側の皮まで手で塗って再現しているんです。そのため、同じフルーツだとしても、一枚一枚違う仕上がりになるんですよ。
そして、一度まるごと作ったフルーツを、調理をするようにカットしていき、盛り付けをしていきます。それぞれ入れるべきフルーツの数の決まりなどはありますが、それ以外の見栄えは彼らにお任せしています。
ケーキに関しても、まずはパイ生地を作って、ホイップやスポンジに見たてた石鹸を流して層を作り、それを本当に8分の1等分にカットします。そのカットした生地の上に、作ったフルーツを盛り付けていく流れになります。
え、一個一個盛り付けるとか本当にケーキ屋さんじゃないですか!
そうですね。出来上がったものは最後にきちんとコーティングして、パーツがすぐに取れたりしないようになっています。ちなみにコーティングするための液の香料も、何に使うのかによって全て分けているんです
匂いにはこだわっているとお伺いしましたが、まさかそこまでとは!
ここまで手間暇を惜しまないのは「メイド・イン・ジャパン」「日本品質」の特徴ではないでしょうか。
こちらはショートケーキ型のものです。クリームのパーツも一つひとつ付けています。彼は性格が几帳面なので、本当ならデザインを変えてしまってもいいところを、全部きちんと同じように作ってくれるんです。性格が出ますね(笑)。
糊みたいに見えますが、これも全部石鹸になっています。だからこそ全部丸ごと使い切ることができるんです。
こちらは真空包装機です。数年前まではこういった包装も、彼らが手で一生懸命やってくれていましたが、今は機械を使用しています。
▲真空包装後のショートケーキソープ。
スポンジの間にもちゃんといちご風の石鹸が挟まれているこだわりよう。
真空包装機が強いのは、彼らがハンドメイドで作り、一個一個味があって、形が違う石鹸の細かいディテールを損なわず、そのままパックすることができるところです。この包装は人間の手じゃできないことですよね。
これならハンドメイドのよさを引き立てる機械の使い方になりますね。
はい。ハンドメイドのこだわりは残しながらも、機械化して生産性がよくなり品質も上がるのならば、こういうところには機械を使っていきたいと思っています。
こちらでは完成後のフルーツをストックしています。フルーツのパーツを作るというのが、私たちの商品の一番大切な心臓部になりますね。
すごい数がありますね! 普通においしそうと思ってしまう(笑)。
この作業をどこかで妥協してしまうと、それが商品の品質として決まってしまうじゃないですか。なので、ここまでこだわってやっています。フルーツのパーツ作りは、他社さんや海外メーカーさんには真似できないようなところまで、特に突き詰めてやっていますね。
こちらは包装作業をするスペースです。私たちの石鹸というのはもっぱらギフトになりますから、買ってすぐプレゼントできるようにかわいいリボンをかけたり、ラッピングをしたりというところまでやっています。
もちろん彼らも、この仕事だけを毎日続けているわけではなくて、明日になったら石鹸作りに回ったりします。シフトについては自分の持ち場をホワイトボードで確認することになっているので、そこで「今日の自分の仕事はこれか」とわかるようになっているんです。
アイディア一つで端材までもが贅沢な石鹸に変身!
こちらは、全ての工程でどうしてもでてきてしまう端材です。今までは捨ててしまっていたんですが、端材といえども植物由来ですし、ましてや香りも付いていてきちんとこだわっているものなので、もったいなかったんですよ。どうぞ匂いも嗅いでみてください。
うわ、普通にいい匂いがする! これを捨てるのはもったいないですね。
そこで、li'ili'iが生まれたときに、この端材をもう一回きれいな色に溶かし直して、それをハート型や星型に抜いて商品にしようと思い至りました。そして完成したものがこちらです。
端材を使用しているとはいえ、こだわった材料であることに変わりはないですし、全て香りが違うものが入れられているので、これはむしろ贅沢な商品ですよ。1日1個使っていけば、毎日違う香りが楽しめますしね。
なるほど! 色も香りも形の並びも決まってないので、どれにしようか選ぶのも楽しいですね!
そうですね。今はこの商品のおかげで、工場内の廃材も出なくなりました。
みなさんからのサプライズプレゼント! 世界に一つだけの石鹸!
今日はリンクラインに来てくださってありがとうございます! 私たちが作った石鹸は植物性なので、赤ちゃんから高齢者まで使うことができますよ。ぜひ試してみてくださいね。
全部手で作っていますので、世界でこの2つしかないですからね!
夢は壮大に! これからも障がい者雇用促進のために歩み続ける!
びやさん、ここで一つ聞いてもいいですか? 見学に来る方にはいつもお伺いするんですが……びやさんは先程の工場の中で、管理者がどこにいたかおわかりでしたか?
え……管理者……? 管理者っ!? 全っ然わからなかったです!
実は3名いたんですよ。僕が目指していた光景というのは、まさにこれなんです。7年前は毎日のように大泣きしちゃって仕事に手がつかない子もいましたし、どっかでケンカは起きるし、走って逃げ出しちゃう子もいました。そんな中、やっとの思いで作れたのが月に200個。
正直200個全部買っていただいたとしても、一人分の給料もまかなえないんですよね。そのため、立ち上げから3年間は赤字経営が続いていました。当時は本当に大変だ、と思っていたんです。でも、今では月に2万個の生産を実現しています。
そうなんです。なので、みなさんに管理者がどこにいたか聞いても、口を揃えて「わからない」とおっしゃるんですよね。健常者か障がい者か、ということは関係なく、一人ひとりが石鹸作りの職人として動けているという証明です。
本当に驚きました……。管理者がいたことすらもわからなかったです……!
彼らに「今日もわからないって言ってたよ」と報告すると、みんな喜びますよ!
いや~ぜひ伝えていただきたいです! では、最後に神原さん含めリンクラインさんの今後の目標はなんですか?
おお、目標は壮大ですよ(笑)。創業以来の夢として、「売上1億円・営業利益出す・100人の障がい者を雇用する」というのを決めていたので、今は最後の1つがまだ達成できていない状況です。100人を雇用するには、まだまだ課題が山積みですから、これからはその実現に向けて頑張りたいです。そして、障がいがあろうが、なかろうが、お客さまに「ほしい!」と思ってもらえ、買って喜んでいただける商品開発をこれからも追求し続けます。
ぜひ神原さんの夢を実現させてください! 本日は手作りの石鹸までいただいて、本当に感動しました! ありがとうございました!
神原さんが『ねば塾』を見て憧れた「障がい者・健常者の垣根のない世界」は、すでにここ、リンクラインでも実現されているようでした。現在は、リンクラインを福祉施設としての利用する活動も進めているとのこと。障がい者100人雇用という夢の実現も、そう遠くないかもしれません。
文:マイナビ学生の窓口編集部
写真:中邨誠
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