【連載】『あの人の学生時代。』#15:映画プロデューサー/博報堂DYミュージック&ピクチャーズ 取締役:春名慶「“生意気力”を蓄えろ」
著名人の方々に大学時代のエピソードを伺うとともに、今の現役大学生に熱いエールを送ってもらおうという本連載。今回のゲストは『世界の中心で、愛をさけぶ』や『いま、会いにゆきます』などの作品で社会現象的な人気を集め、最近では『君の膵臓をたべたい』の仕掛人としても注目を集めた春名慶さん。深夜ドラマとの連動で話題の『伊藤くん A to E』の公開(1月12日(金)公開)を控えた今、その発想や手腕が育まれた下地を探るため、学生時代の体験を振り返っていただきました。
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映画には一切興味を持たなかった学生時代
――もともとは大阪のご出身。東京で大学生活を送ることになったのは、どのような思いがあってのことでしょうか。
これは何か明確な目的意識があってのことではないんです。僕自身もてっきり関西圏の大学へ進むものだと当時は思っていたのですが、たまたま予備校で早大コースに入り、早慶を目指す人たちに囲まれて勉強しているうちに、なんとなくその気になってしまい、自然と志望校が早稲田大学になっていました。つくづく、人間とは環境に染まる生き物なのだと思い知らされましたね。
――その当時、将来の夢は何でしたか?
大学時代は漠然とメディアやエンターテインメントの世界に進みたいとは思っていました。というより、僕はちょっと生意気な学生だったので、「自分はそういう仕事に就くに違いない」と思い込んでいた気がします。結果、マスコミに強い早稲田に進んだことでそうしたイメージはどんどん強くなり、やがては「仕事をするなら、やはり全国ネットのメディアをフィールドにしたい」とまで思うようになっていました。……やはり生意気ですよね(笑)。
――つまり、学生時代にはまだ、映画というジャンルへの強いこだわりはなかったわけですね。
そうなんです。よく誤解されるのですが、僕は熱心な映画青年だったわけではなく、むしろ今も昔もほとんど映画を観ないんですよ。もし、映画プロデューサーの中で、映画や小説に触れていないワーストランキングを作ったら、かなり上のほうに名を連ねることになるでしょう。
ただ、こうして長くこの業界でお仕事をさせていただいていると、たとえば出版社のほうから「この作品、春名さん好みだと思うからぜひ読んでみて」とおすすめされることが多いんです。『県庁の星』や『神様のカルテ』などはまさにそのパターンでした。このあたりは、僕の"作品調理法"をよく理解してくれている周囲のおかげでしょう。この業界のみなさんは僕がどういうタイプの原作に関心を持ち、それを映画作品としてどう咀嚼するか、わかってくれているので助かっています。