ケースワーカーとはどんな職業?どうしたらなれる?気になる給料も解説
「ケースワーカー」のお仕事というと、みなさんはどんなイメージでしょうか。漠然と「相談員みたいな仕事」と思うかもしれませんね。最近では「社会福祉士」という国家資格もメジャーになっていますが、それとも違うのです。今回はケースワーカーとはどんな仕事か?ケースワーカーになるには?そして気になるお給料や待遇面についても解説していきます。
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ケースワーカーとは?
ケースワーカーとは一般には「福祉事務所で働く現業員のこと」を指します。「現業員」というのもあまり聞き慣れない言葉ですね。現業員は、元々は「官署・工場の現場で働く人のこと」を意味する言葉。しかし、『大辞林 第3版』では下のように定義されています。
【現業員】
福祉事務所において、家庭訪問・面接・生活指導などの現業を行う所員。面接員・ケースワーカー。(P.807より引用)
つまり現在では「福祉事務所で、相談者・クライアントの家庭訪問・面接・生活指導といった現場の仕事にあたる人」のことをケースワーカーと呼んでいるのです。
ケースワーカーは忙しい?仕事内容は?
ケースワーカーは、とかく話題になりがちな「生活保護」についても、相談者・クライアント一人一人に向き合う仕事です。具体的な仕事内容は以下の通り。
・相談に来た人の窓口となり、生活保護申請の受付
・生活保護費の公正な支給のための調査・情報収集
・仕事探しなど、クライアントが自立するための支援
・生活保護以外にも高齢者や障がい者などに福祉サポートを行う
・実際に家庭や入院先などを訪問し、生活状況を確認する
・さまざまな生活改善のためのアドバイス
生活保護を受けている世帯は、2018年4月には163万5,280世帯となっており、1人のケースワーカーが担当する世帯が100を超えることもあります。扱う問題もセンシティブ(繊細)なものですし、精神的にも肉体的にもかなりハードなお仕事と言えるのではないでしょうか。
⇒データ引用元:厚生労働省「生活保護の被保護者調査(平成30年4月分概数)」
ケースワーカーは国民の生活を守るお仕事
決して楽とはいえないケースワーカー。ですが国民のセーフティーネットをつかさどる、とても大切なお仕事です。
日本の憲法には「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」(憲法第25条)という基本原則があります。生活に困窮している国民がいれば、行政が生活保護でサポートするという制度が整っているのです。
この制度の中で、実際に現場の窓口を担っているのが、まさにケースワーカー。すべての国民の生活を守るために欠かせない、とても大切なお仕事なのです。
※現業を行う所員の人数は社会福祉法第16条に決められています。これが「標準数」といわれます。
⇒参考:e-Govポータル『社会福祉法』
ケースワーカーになるには?
ケースワーカーになるには、「社会福祉主事」を目指すことが必要です。
そもそも福祉事務所の職種は以下の3種類。これは社会福祉法第15条で定められています。
1.指導監督を行う所員
2.現業を行う所員
3.事務を行う所員
上記2の「現業を行う所員」がケースワーカーに当たります。そして現業を行う所員・ケースワーカーは「社会福祉主事」でなければならない、とされているのです(1.指導監督を行う所員も同様です)。
社会福祉主事って何?
「社会福祉主事」とはあまり聞き慣れない言葉でしょう。これは正確には試験を受けて得られる「資格」というよりも、公的な「職名」のこと。具体的には社会福祉法の第19条に規定されています。正確を期すためにその部分を引用します。
第十九条 社会福祉主事は、都道府県知事又は市町村長の補助機関である職員とし、年齢二十年以上の者であつて、人格が高潔で、思慮が円熟し、社会福祉の増進に熱意があり、かつ、次の各号のいずれかに該当するもののうちから任用しなければならない。
一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に基づく大学、旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)に基づく大学、旧高等学校令(大正七年勅令第三百八十九号)に基づく高等学校又は旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)に基づく専門学校において、厚生労働大臣の指定する社会福祉に関する科目を修めて卒業した者(当該科目を修めて同法に基づく専門職大学の前期課程を修了した者を含む。)
二 都道府県知事の指定する養成機関又は講習会の課程を修了した者
三 社会福祉士
四 厚生労働大臣の指定する社会福祉事業従事者試験に合格した者
五 前各号に掲げる者と同等以上の能力を有すると認められる者として厚生労働省令で定めるもの
1から5号のうちどれかに該当すればいいわけですから、主には1と2に当たる
●大学等で社会福祉に関する科目を一定数修めて卒業
●指定の養成機関・講習会の課程を修了
このどちらかを選択されるケースが多いのではないでしょうか。つまり社会福祉主事とは誰でもなれるわけではなく、まず専門的な科目をしっかり勉強することで第一関門クリアとなります。ここをクリアすると「任用資格を得た」ことになります。
ちなみに3の「社会福祉士」(国家資格です)を持っている人も増えていますね。社会福祉士の免許を持って働く人は、最近では「ソーシャルワーカー」と呼ばれることが一般的です。ややこしいですね。
さて、「任用資格を得た」だけではまだ社会福祉主事ではありません。社会福祉主事は職名ですから、福祉事務所に雇用される必要があります。そのためには、地方公務員試験を突破しなければなりません!ここではじめて「試験」が出てきます。
地方公務員試験を受験して合格する
↓
福祉事務所に配属される
↓
晴れて社会福祉主事になった!(ケースワーカーとして従事)
ところで自治体によっては採用区分を「福祉職」と分けているところと、分けていないところがあります。分けている自治体では福祉職で採用されることが必要ですし、分けていない場合には、(行政職で合格して)福祉職に配属されることが必要です。
ケースワーカーのお給料はどのくらい?
ここまで見てきましたように、ケースワーカーとは基本は地方公務員ですので、お給料は各地方自治体によってきちんと決められています。大まかな目安としては、地方公務員の平均年収は440〜450万円と言われています。もちろん各自治体により実態は異なるものの、一つの目安にはなりそうです。
初任給に関しては、例えば4年制の大学を卒業して東京都行政職1類Bに合格すれば初任給は約22万400円[2020年(令和2年)4月1日現在の給料月額に地域手当(20%地域勤務の場合)を加えたもの]となっています。
⇒データ出典:東京都「人材育成・人事制度 勤務条件」
その他の待遇面について
その他の待遇面についても同様で、地方公務員としての各種待遇が適用されます。休日や、残業などの手当もきちんと決められているため安心して働くことができますね。
ただし近年の傾向として、ケースワーカーはとかくハードワークになりがち。抱える案件が多く、また家庭訪問などでさまざまな問題に直面すれば、その対策に多くの時間を費やすこともあります。
そのため勤務時間は長めの傾向にあります。ケースワーカーはいつも定時に帰ることは難しいと考えておいた方が良いでしょう。
まとめ
今回はケースワーカーというお仕事について解説してきました。ケースワーカーというのは不思議な職業名といえるかもしれません。クライアントの個別相談に乗る人は、何であれ「ケースワークに携わる人=ケースワーカー」と呼んでも良さそうなものですが、日本では、一般的には福祉事務所で働く現業員のことを指しているのです。
今回お伝えしてきたように、ケースワーカーは非常に重要なお仕事。福祉に興味があり、社会的意義の高いお仕事を目指す方に向いている職業といえるのではないでしょうか。