写真だけじゃない、生まれ変わった美術館をまるごと楽しむ! 大学生からのアートのはじめかた「東京都写真美術館」編 2ページ目
3階の展示とは一転。鮮烈なまでに白く輝くスクリーンの数々が登場!
次は、2階展示室で展示が行われている<廃墟劇場>と<仏の海>を鑑賞しました。
<廃墟劇場>より《パラマウント・シアター、ニューアーク》(スタンリー・クレイマー『渚にて』1959)2015年 ⓒHiroshi Sugimoto/Courtesy of Gallery Koyanagi
<廃墟劇場>は、アメリカの廃墟になった劇場にスクリーンを張って映画を上映し、その映画1本分の光量のみで長時間露光した作品です。杉本氏が1970年代から制作している<劇場>シリーズの最新版で、今回が世界初公開となります。
白と黒との対比がものすごくきれい! 劇場の形がくっきりと陰影で映し出されていて、劇場ごとの特徴や魅力がすごく出ていますね。
真っ白に見える四角が、実際に映画が上映されていたスクリーンです。撮影時に上映された映画のタイトルも記載されているので、ここで上映されている姿を想像しながら見ていただきたいですね。
得もいわれぬ不思議な気持ちになる<仏の海>
<仏の海>1995年(展示風景) ⓒSugimoto Studio
そうです。京都にある蓮華王院本堂(三十三間堂)の千手観音です。この<仏の海>は、杉本氏が長い時間をかけて取り組んできたシリーズで、本展の締めくくりを飾る展示として構成されました。
こちらも独特の雰囲気がありますね。厳かというか、幻想的というか……。
3階の展示から一変してこの静かな空間で写真と向き合うと、すごく不思議な感覚を体感できるので、あまり美術館に来ないという人にもぜひ体験していただきたいです。
世界の「真実の美しさ」を垣間見る写真展
また、東京都写真美術館の地下1階展示室では「世界報道写真展2016」も開催中。「世界報道写真コンテスト」はオランダで毎年開催され、世界中のフォトグラファーが8万点以上にもおよぶ作品を応募する世界的なイベントです。
【世界報道写真大賞】 ウォーレン・リチャードソン(オーストラリア)
2015年8月28日 レスケ(ハンガリー南部)
ここでは世界報道写真の8つの部門で入賞した、41人のフォトグラファーの写真を展示しています。中でも注目なのが、大賞に選ばれたオーストラリアのウォーレン・リチャードソン氏の写真です。
迫力というか、緊迫感を感じる写真ですね……。
この写真はセルビアとハンガリーの国境を越えようとするシリア難民の男性と子供を撮影したものです。警備に見付からないように、月明かりの下、子供を有刺鉄線付きのフェンスの下を通して渡している模様です。昨年は、難民が世界的に大きな問題となった年でもあり、今回は「難民」をテーマにした作品が多くなっています。
あ、日本人フォトグラファーの写真もある!
人々の部 組写真1位 小原一真(日本) 2015年6月30日 キエフ(ウクライナ)
なかなか日本人が受賞することが少ないのですが、今回、日本人写真家の小原一真氏が「人々の部」で1位を受賞しました。この写真は、原発事故が起きたチェルノブイリを取材し、原発近くで見付かったという期限切れのフィルムを用いて撮影したものです。
報道写真というとやはり悲惨な瞬間を切り取ったものをイメージしますが、それだけではなくて、「写真としての美しさがあること」も大きな選定の理由になっています。
他にも動物の写真や火山など、さまざまな写真が展示されていますね。