歴史あるアール・デコ様式を堪能しよう! 大学生からのアートのはじめかた「東京都庭園美術館」編

編集部:いとり

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大学生のみなさんは、ふだんお出かけやデートで美術館に行くことはありますか? 興味はあっても、「アートってちょっとハードルが高いなぁ」と感じてしまう人も多いかもしれません。しかし、実は都内には初心者でも気軽にアートを楽しむことができる美術館がたくさんあるのです。そこで今回は、港区白金台の広大な敷地に立つ、歴史ある建築ときれいな庭が特徴の『東京都庭園美術館』をご紹介します!

1900年代前半のアール・デコ様式を堪能しよう

東京都庭園美術館は、1933年(昭和8年)に建てられた旧皇族の朝香宮(あさかのみや)家の邸宅をそのまま美術館とし、1983年(昭和58年)に開館しました。旧朝香宮邸は、アール・デコと呼ばれる当時フランスを中心にヨーロッパで流行した装飾様式を取り入れており、その美しさは建造から約80年経った今も変わりません。

その歴史ある建物の意匠は高く評価されており、2015年には国の重要文化財に指定されました。館内ではさまざまな展覧会が開催されていますが、東京都庭園美術館は建物自体が「美術品」でもあるのです。

今回は、大学生の平井こころさん、そして小林千晃さんと一緒に、学芸員の浜崎加織さんの案内で展覧会「こどもとファッション―小さい人たちへの眼差し」が開催されている東京都庭園美術館を巡り、その魅力や注目すべきポイントを学びました。



この美術館はどういった経緯で建てられたんですか?
朝香宮鳩彦王(やすひこおう)と允子(のぶこ)妃が、パリ滞在中の1925年に開催された「現代装飾美術・産業美術国際博覧会(通称アール・デコ博)」をご覧になり影響を受けられ、帰国後にアール・デコ様式を取り入れた邸宅を建設する計画を立てられました。そして1933年に建てられたのがこの旧朝香宮邸です。


シンプルですけど、独特な形をしていますね。


 外観は直線や曲線を使い、シンプルなデザインになっています。これはアール・デコ様式の特徴の1つです。



 あ、狛犬が立ってる!


狛犬がいるのはすごく日本的な感じがしますね!


アール・デコのデザインと和のデザインが同時に見られるのも本館の特徴なんです!

館内には当時の有名美術家によるデザインがいたるところに!

本館内部で大学生の2人がまず目を奪われたのは、玄関にあるこの美しいガラスレリーフ扉です。

正面玄関 ガラスレリーフ扉 ルネ・ラリック作



このガラスレリーフの扉は、フランスのガラス工芸家ルネ・ラリックの作品です。


ガラスなんですか!? すごく立体的で繊細なデザインですね……。


模様に見えるのはレリーフの女性像の花綱※なんですね!

※花、枝葉、果実、穀物等を帯状布で巻き,2点間に緩やかにつり下げた形を示す装飾。(「花綱」世界大百科事典より)



そうなんです。また、レリーフの女性像は、デザインの段階では服を着ていなかったのですが、「それはちょっと……」ということで現在のような服を着た像になったという話が残っています。


やっぱり裸だとちょっと問題だったのでしょうね(笑)


「こどもとファッション ―小さい人たちへの眼差し」の展示作品が並んでいる大広間
(撮影: 黒目写真館)



この1階大広間をはじめ、主な7室の内装はフランス人の装飾芸術家アンリ・ラパンによるものです。大広間の天井には同じ形のライトがいくつも並んでいまして……。


たしかに全部同じ型ですね。


この照明は全部で40個あるのですが、こうした1つのモチーフをくり返し何度も使用するのがアール・デコの特徴の1つです。この大広間では他にも同じデザインを使って左右対称を作るなど、アール・デコ様式の特徴がたくさん見ることができます。

香水塔



これは何ですか?

「香水塔」と呼ばれる磁器製のオブジェです。アンリ・ラパンがデザインし、セーヴル製陶所で作られました。水が循環して流れる噴水器なのですが、お客様をお迎えする際に上部に香水を垂らしてお客様をお迎えしたという逸話があり、香水塔と呼ばれるようになったようです。


とってもすてきな美術品ですね! 今も動くんですか?


残念ながら、今は使われていません。


う~ん、残念! 実際に動いていたらさぞかしきれいだったんだろうなぁ……。


本館 大客室(撮影:黒目写真館)



この部屋は「大客室」といって、この建物の中で一番華やかな部屋です。この美しいシャンデリアは、先ほどのガラスレリーフの扉を作ったルネ・ラリックによるものです。


天井の模様も独特ですね。


ここも同じパターンが何度もくり返し使われているなど、アール・デコの特徴が見られます。

本館 大客室シャンデリア≪ブカレスト≫ ルネ・ラリック作


他にも、アンリ・ラパンが手掛けた壁画や、マックス・アングランという芸術家によるエッチング・ガラスをはめ込んだ扉などアール・デコのデザインをたくさん楽しむことができます! ぜひ探してみてください。



本館 大食堂



次の部屋にやってきましたけど、ここは何の部屋ですか?


ここは大食堂です。来客時の会食などで使用されていました。


食堂とは思えない豪華な部屋ですね!

でも、よく見ると、ラジエーター(暖房装置)の金属製のカバーに魚が描かれていたり、照明器具にフルーツが描かれているなど、食堂を意識したデザインになっているんです!

本館 大食堂 シャンデリア≪パイナップルとザクロ≫ ルネ・ラリック作

大食堂の照明。たくさんの食べ物がモチーフになっています。



 本当だ! こういうデザインはたしかに食堂っぽいですね。


先ほどの大客室とこの大食堂は、館内で最もアール・デコの特徴が見られる部屋です。

本館2階には偉人が愛した部屋も……

続いて、1階大広間の第一階段から、朝香宮殿下の書斎やご夫妻の寝室だった部屋が残る2階へと進みます。

本館 第一階段



この第一階段も独特の雰囲気がありますね。


ここでもアール・デコの特徴をいたるところに見ることができます。例えば階段手すりのジグザグはアール・デコの特徴の1つですし、天井にも同じパターンをくり返し使うなどしています。


壁もザラザラしてて独特な質感……!

この壁は日本の左官職人(※建物の壁や床、土塀などを、こてを使って塗り仕上げる職人)によるもので、わざとこうしたテクスチャーを付けています。こうした質感へのこだわりもアール・デコ独特のものなんです。


本館 書斎



ここは殿下の書斎だった部屋です。ここではアンリ・ラパンが室内だけでなく、じゅうたんや机、イスもデザインしています。


どことなく、書斎とは思えない高貴な雰囲気が漂っていますね!

1947年に皇籍離脱により朝香宮家がここから熱海へ移り、その後は吉田茂外相・首相公邸として使われた時期があり、吉田氏もこの部屋を特に気に入っていたと言われています。左側のカーテンを開けるとアプローチが見えるため、「誰が来たか一目でわかる」ことをに気に入っていたそう。


落ち着いた雰囲気ですし、仕事場としてはすてきかもしれませんね。



ここは殿下と妃殿下専用のベランダだった場所です。芝庭や庭園を一望する美しい景色が楽しめるスポットとなっています。



たしかに緑の庭が一面に広がって、すごくきれいな景色ですね。


ほんとだ! デートとかにもいいかも!

不思議な魅力を放つオブジェがたたずむ芝庭

ベランダから見えていた芝庭にも行ってみました。現在、庭園は整備工事中になっていますが、庭園の一部である芝庭は一般公開されています。



すごく芝がきれい!


ふかふかしていて、歩くのが楽しいですね。


 あのオブジェは何ですか?



彫刻家の安田侃(やすだ かん)氏が製作した「風」というオブジェです。


不思議な形をしていますね。


思わずのぞきこみたくなるようなデザイン!(笑)


芝生も気持ちいいし、オブジェもおもしろいし……ここでゆっくりしたくなっちゃいますね。


この芝庭は、いろいろなイベントが行われたり、散歩で訪れる人も多かったりと、庭園美術館でも人気のあるスポットなんですよ。




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