「いい言葉についていけ」―現役大学生、萩本欽一さんが大学生に伝えたいこと
欽ちゃんことコメディアンの萩本欽一さんが、2015年に駒澤大学の社会人入試に挑戦し、見事に合学。同年の4月から大学に通われています。入学からまもなく1年が経ちますが、さて大学生活はどうなのでしょうか。今回は、ご本人に大学に1年通ってみて学んだこと、また感じたことなどを伺いました。
■大学は「学びたい人が行く場所」だと知る
――実際に大学に通ってみて、率直にどんな感想を抱かれましたか?
萩本さん 「社会人枠」というので入ったからどんな扱いをされるんだろうと思っていたんだけど、普通の学生となんら変わらない扱いだったね。普通に授業に出て、128の単位を取らないとだめよっての。まあ普通の学生と一緒。
――大学に入る前は、「大学」に対してどんなイメージをお持ちでしたか?
萩本さん 大学に入る前は「大学はお勉強ができる人だけが行くところ」って思ってた。実際に通ってみるとそうではなくて、「勉強をしたいと思う人が行くところ」だと感じたね。何かを学びたいから行く、そんな場所なんだと気づいたよ。
――賢い人が行くのではなく、何かを学びたい人が行く場所であると……
萩本さん そう! 大学にいるみんながみんな勉強ができるわけじゃないの。なかには危なっかしいのもいるけど、そんな子たちも自分が何かするために学ぶ必要があったりするから大学にいるんだなと、そう思った。
――大学に通う中でさまざまなものが見えてきた、ということですね。
萩本さん 大学に入った当初は「大学って何だろう」「大学ってどういった所なんだろう」と疑問を持ちながら通ってたけど、1年通ってみて「なるほど大学ってこうなのか!」といろいろわかってきたよ。
■勉強の仕方がわからず戸惑う
――他に大学に入ってみて「これは難しいな」と思ったことはありますか?
萩本さん 一番悩んだのは勉強の仕方。大学に入っても勉強の仕方までは教えてくれないから何をどうすればいいのかわからない。だから「大学って透明人間だな」と思いました。どんな試験になるのかもわからないし、何をどうすれば単位が取れるのかわからない。「姿が見えない」って感じがするの。透明人間を相手しているように、どこを攻撃すればいいかわからないし、どこから攻撃してくるのかもわからない。
――大学の勉強に対して、どう準備していいのかがわからないということですね。
萩本さん そうなの。でも1年間通ってみて少しずつ見えてきた。ようやく透明人間から「忍者」くらいにまでなったよ。でも相変わらずどこから突いてくるのかはわからないね。
――例えばどんなことが見えてきましたか?
萩本さん 授業でも、最初は先生の言っていることは何のことだかわからないし退屈だなと思ったけど、やっと「先生の言葉が質問で、その答えが黒板に書かれている」ということを理解したよ。「先生の話はちゃんと聞かないといけない」と思ったね。そうやってわかってくると「これは面白い!」となるの。だって透明人間や忍者だよ。敵としては面白い。
――そう考えると攻略のし甲斐がありますね。
萩本さん 攻略方法を知っている状態でもう一度同じ授業を受けるのは絶対に楽しいし面白い。だからダブらせてもう一度同じ一年を過ごしたいと思ったよ。それに大学の授業は面白いけど難しい。「高級な学問である」と思い知った。こんなに難しくて面白いものを1年やそこら学んでクリアーだと言うのは何だか勉強に対して失礼だと思ったね。
――学べば学ぶほど面白いと。
萩本さん だからこの1年は予行演習だと思って、8年かけてじっくりと大学生活を楽しんでやろうと。俺はね、「俺以上に大学生活を楽しんでいるやつはいない!」と思えるくらいの大学生活を過ごそうと決めているからね。ただ学校からは「一応ルールには従ってください」と怒られたけど(笑)。
――萩本さんご自身は大学生活を楽しまれていますが、他の学生さんはどうですか?
萩本さん みんな「単位を取りに来ている」って感じがするね。単位を取らないと先に進めないし、卒業という形に行き着かないから仕方ないかもしれないけど、単位のことだけが目的で大学を楽しめていない感じがするの。
――単位だけに躍起になっていると……。
萩本さん ある先生から聞いた話でね、「全く授業に出ない学生がいて呼び出して怒ったこと」というのよ。そしたら学生が「座っているだけじゃなく体で学ぶ勉強がしたかったから1年間九州のお寺巡りをしていた」と言うんですよ。それで先生はその学生をえらく気に入ったそうなんだけど、その話を聞いて「大学は中学や高校のようにただ与えられたものを消化するのではなく、それぞれが考えて学ぶ場所である」と感じたね。
――ただ漫然と学生生活を送っているのではもったいないですよね。
萩本さん だから自分の満足する形で授業を受けて、単位を取り、大学生活を送るのがいいんだと思うよ。