「いい言葉についていけ」―現役大学生、萩本欽一さんが大学生に伝えたいこと 2ページ目
■先生との物語を作ることも一つの楽しみ方
萩本さん 俺はね、小学校も中学校も高校も「先生との物語がなかった」の。小学校はすごく勉強ができたから先生にほったらかしにされていたし、中学ではいたって「普通」だったから先生との物語が全くなかったんですよ。先生との物語って学校生活ではすごく大事で、勉強する意欲に一番つながるんじゃないかと思う。
――学校生活に張りが出るのでしょうね。
萩本さん だから大学の先生はどうなんだろうと思って「S」から「落第」までの成績を取ってみたの。そしたら「落第」こそに物語があった。やっぱりできの悪い子ほど気を使ってしまうんだろうね。大学の前期で落第をしたけど、2人の先生がすごく気に掛けてくれたよ。
――気に掛けてくれたことで物語が生まれると。
萩本さん そう。人生において「誰かに付いていきたいと思うこと」っていろいろあると思う。例えば「行動に付いて行く」こと。スポーツ選手の活躍を見て憧れたりするのはこれだね。もう一つね、「言葉に付いて行く」というのもある。「あの言葉にほれた」というもの。俺の人生は言葉にほれて付いていくのがずっとだった。コメディアンになりたいと思ってなったのではなく、そこに流れている言葉に引かれてコメディアンになったし、テレビの仕事をやる中でも惹かれた言葉に付いて行くとみんな成功した。素敵な言葉に付いて行くと、とてもいいことに巡り会うんだよ。
――大学でも先生の「言葉」が大切。
萩本さん その言葉もね、やっぱり「真ん中」にいるとなかなか出てこない。一生懸命やるかすごく悪いといったときに出てくる。そしてその出てきた言葉によって物語ができるからね。
――どんな言葉や物語がありましたか?
萩本さん 出席はしているけど試験に出なかった授業があって、先生が「何で出なかったの?」と聞いてくるのよ。その試験は辞書見てもいいんだけど、俺は辞書がよく見えないしすごく時間がかかるから、これはだめだと思って行かなかったと言ったの。そしたら先生が「だと思ったから欽ちゃん用に大きな眼鏡を用意しておいたよ」とバッグから眼鏡を出したんだよ。俺はそれを見て泣きそうになってね。「ああ、この先生のために必死こいて頑張ろう」と思ったね。
――そこで付いていきたいと思った言葉が出て、先生との物語ができたと。
萩本さん この物語が面白いんだよ。その言葉で先生が大好きになったから、次の年も同じ授業を受けたいと思ったけど「2年になるとないよ」って言われたよ(笑)。でも、単位とかは関係なくこの先生との時間をもっと過ごしたいとは思ったね。
――それが「言葉に付いて行く」ということなのですね。ただ、物語や付いていきたいと思う言葉がなかなか見付からず、またやりたいことさえもわからないという大学生も多くいます。
萩本さん うちの周りの学生もそれでのたうち回っているよ。だから言ってるんだよ「それを見付けるのも面白いことだ」と。大学には嫌なこともいっぱいあるけど、その嫌なことをどうしたら嫌じゃないようにできるかを考えるのも、大学の楽しみ方だと思う。最近だと俺の楽しみ方に影響されたやつも出てきて、それも面白いよね。