2019年08月02日 更新

「鉄骨」と「鉄筋」の意味の違いは?構造ごとの住み心地やメリット・デメリットを一級建築士が解説

物件選びの際、賃貸サイトでよく見かける「鉄骨」や「鉄筋」などの言葉。木造は安い、鉄骨造は安心のようなイメージがあるかもしれません。建物構造の「木造」「鉄骨造」「鉄筋コンクリート造」「鉄骨鉄筋コンクリート造」は、それぞれどのような違いがあるでしょうか? この記事では、失敗しないお部屋選びで押さえておきたい建物構造の基礎知識やメリット・デメリット、防音性性に優れた建物構造などをご紹介します!

知っておきたい建物構造の基礎知識

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建築には大きさや用途にあった構造が選ばれます。まずは賃貸物件でよく使われている代表的なものを紹介します。

木造(W造)

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木造は柱や梁、その他の骨組みに木材を使用する構造です。小規模な建物ではとても多い構造ですね。構造の骨組みに木材を使用していますが、外装や内装には木の部分は見えてはきませんので、外観だけでは木造とわかりにくいものです。

鉄骨造(S造)

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鉄骨造は柱や梁に鉄骨を用いた構造です。鉄骨造には大きく分けて2種類あり、材料の厚みの薄い「軽量鉄骨造」と厚みの厚い「重量鉄骨造」があります。低層の物件では「軽量鉄骨造」、中~高層の物件では「重量鉄骨造」が用いられることが多くあります。

鉄筋コンクリート造(RC造)

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鉄筋コンクリートとは、鉄筋を網目に組んだ型枠の中にコンクリートを流し込んで造られるものを指します。RC造は柱や梁、床、壁といった部材が鉄筋コンクリートでできており、強度の高い構造です。低層から高層まで、幅広く対応できる構造といえます。

鉄骨鉄筋コンクリート造 (SRC造)

SRC造は、鉄筋コンクリートの柱や梁の中に鉄骨が入っている構造です。工程はRC造とほぼ同じではありますが、鉄骨造の要素が組み込まれることになります。高層建築や大規模建築に用いられる構造ですね。
その他にも、上の部分をS造でつくる RS造、柱や梁がなく、床や壁、天井で建物を支えるWRC造等、さまざまな方法が存在しますが、大きくは上記の4つを覚えておけばよいでしょう。

建物構造別に見るメリットとデメリット

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建物構造の基礎知識を覚えたところで、次にそれぞれのメリット・デメリットをご説明します。

木造(W造)のメリットとデメリット

・メリット
木材というのは、保湿や通気、断熱の効果があり、季節にあわせて湿度を調節してくれる機能がありますので、日本の気候に適した構造だといえますね。また、木材は加工しやすく、材料も安定して流通しているため、木造では建築コストを低く抑えられることから、家賃が比較的安くなることもメリットです。
・デメリット
木材は燃えやすい材料であるため、耐火性は劣ります。そのため、耐火構造が必要になるような規模の大きな建物には不向きとなります。一般的な構造でも、防火対策として木材部分はすべて被覆することになりますので、木材が見えなくなってしまいます。ほかにも、腐食や虫がつくといった弱点もあり、防腐処理や防蟻処理が必要になります。

鉄骨造(S造)のメリットとデメリット

・メリット
鉄骨造は柱や梁といった各構造部材を工場で製作するため、工期が比較的短くすることができ、低コストで仕上げることができます。その分、家賃が抑えられている傾向があります。建築コストは、木造と同等か少し高い程度ですので、家賃も木造と比べてさほど変わらないといえるでしょう。
・デメリット
鉄骨は錆びてしまうことが弱点ですので、錆び止め塗装できっちりと防錆対策をする必要があります。また、耐火性はさほど良くなく、火災で高温になると一気に構造耐力がなくなり倒壊することがあります。そのため、耐火構造が必要な規模の場合は、「耐火被覆」を施す必要があります。さらに、耐火性や防音性についても、鉄筋コンクリートと比べるとかなり劣ってしまいます。

鉄筋コンクリート造(RC造)のメリットとデメリット

・メリット
RC造は、柱や梁、壁、床といった各部材が高い強度を持っていますので、安全性が高い構造です。また、鉄筋コンクリートは耐火性能が非常に優れていることに加え、材料密度の高さにより遮音性があり、防音性が高い構造といえます。木造や鉄骨造と比べても耐久性が高く、非常に長く使える構造であるといえます。
・デメリット
一般的なRC造は工場加工といった工程が少なく、現場作業が主になるため、品質にばらつきが出てしまう傾向があります。現場の作業が多く、作業工程も多い工法ですので、工期が長くなってしまうことや建築コストもかかることから、木造や鉄骨造りと比べても、さらに家賃が高くなる傾向があります。

鉄骨鉄筋コンクリート造 (SRC造)のメリットとデメリット

・メリット
柱や梁の中に鉄骨が入っていることで、強度に加え鉄骨のしなやかさがプラスされた構造となります。そのため、RC造と同等かそれ以上に安全性があり、RC造と同様に耐火性、防音性も優れています。
・デメリット
RC造に鉄骨造を加えた構造となるため、RC造以上に工期やコストがかかってしまいます。そのため、家賃もさらに高くなってしまうデメリットもあります。また、高層や大規模な建物が多いため、賃貸物件は比較的少ないといえるでしょう。

ここが違う、鉄骨造(S造)と鉄筋コンクリート造(RC造)

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ここからは、似たように感じて紛らわしい、鉄骨と鉄筋の違いについて詳しく紹介していきます。

鉄骨造(S造)

建物の骨組みに使われる鋼材をH形、山形などに加工した部材のことです。鉄骨は鋼材の厚さ6mm以下のものを軽量鉄骨、6mmを超えるものを重量鉄骨といいます。

鉄骨造は、住宅やアパートに使われる軽量鉄骨造と、大型建築のような頑丈な骨組みで造られている重量鉄骨造とに分かれ、建物の大きさ・目的に合わせて使い分けられています。物件情報には鉄骨造かS造と書かれていて、親切な場合は軽量鉄骨造、重量鉄骨造と書かれている場合もあります。

鉄骨造は骨組みを鉄骨で作っているだけなので、遮音性や断熱性といった住性能は、木造と比べてさほど変わりません。住み心地に関する部分は壁や床材にどういったものを使っているか、どういった作り方をしているかによります。たとえば防音性は壁の厚さによって変化するため、一概に高いとは言えませが、場合によっては木造より防音性の優れている物件になっていることもあります。

耐久性・耐震性に関しても、木造とさして変わりなく、鉄筋コンクリート造と比べると劣ると言った立ち位置。家賃に関しても、木造と同程度、鉄筋コンクリート造より安いといったところです。

広い空間を作ることには適しているため、大きな窓がある部屋などには向いています。

鉄筋コンクリート造(RC造)

鉄筋とは、引張力が弱いコンクリートの弱点を補うため、コンクリートの中に埋め込む鋼製の棒を指します。鉄筋と一言で言った場合、建築物においては鉄筋コンクリート造の略です。物件情報には鉄筋コンクリ―ト造と記載されていたり、RC造と書かれていたりすることが多いです。

鉄筋とコンクリートを組み合わせることで、お互いに補強しあって耐震性の高い構造となり、加えて、耐火・断熱・耐久性にも秀でた性能を発揮します。
また、優れた遮音性をもつので、防音性に重きをおく人におすすめです。自室の音漏れや隣の騒音も気にならず、快適な生活を送れます。楽器可、ペット可の物件はこのタイプがほとんど。安全性や遮音性に加え、楽器やペットのような特別な条件がある人は、鉄筋コンクリート造が真っ先に候補に上がるでしょう。その代わり家賃は高くなります。

住性能としてのデメリットとしては、コンクリートの蓄熱性により夏は部屋が冷えにくく、冬は温まりにくいという点があります。最上階や角部屋だとこうした季節の影響を受けやすいので、電気代を気にする人は中部屋を選ぶことをおすすめします。

防音性に優れた建物構造

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防音性の高さは、一般的に「木造や鉄骨造」よりも「RC造やSRC造」の方が優れています。
これは、厚くて密度の高い鉄筋コンクリートの壁や床によって遮音性が高くなることによりますね。
また、鉄骨造でも壁や床にALCパネル(軽量気泡コンクリート板)を用いた構造は遮音性が高くなります(ALCパネルは木造でも使用することがあります)。

防音性に優れた賃貸物件の条件

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  • 分譲賃貸
  • 角部屋、最上階
  • 部屋数の少ない物件
  • 鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造
  • 隣の部屋との間にお風呂やトイレのある物件
RC造やSRC造のコンクリートなど防音性に優れた構造の物件を選びましょう。
また、賃貸物件よりも分譲賃貸の方が防音対策や管理面においても行き届いていることが多く、入居者同士の音のトラブルを未然に防ぐことができるといえます。部屋と部屋の間にお風呂やトイレ、収納などがあればそこで音が緩衝され、部屋の音が直接聞こえにくくなるため間取りも配慮しましょう。

また、角部屋、最上階の部屋や、部屋数が少ない物件を選ぶなど、気を使う人が少ないほうがよいですね。しかし、角部屋や最上階の物件などは家賃が高くなることもありますので、注意して選ぶことが必要です。

防音性の調べ方や防音対策

防音性の調べ方

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  • 部屋の中央で手を叩く
  • 壁を軽く叩く
内見をすることによっても、ある程度の防音性の判断は可能です。
部屋の中央付近で手を叩いたり、声を出したりすると、ホールにいるように「音が響く」場合はあまり遮音ができていない可能性があります。

また、壁を指先で「コンコン」と叩いてみて軽い音がする場合は遮音性が低いかもしれません。ただし、これらの方法はいくつか物件を回ってみて比較してみないとわかりづらいことと、確実なものではありませんので注意してくださいね。

防音対策をしてトラブルを回避しよう

  • 壁に吸音シートを貼る
  • 窓に吸音カーテンをかけておく
  • 床に防音マットを敷く
  • 壁に段ボールを貼るのも有効
  • 音の出る機器は壁から離す
吸音シートは、壁一面に貼ることで最大限の効果が発揮されますが、部分的でもある程度の効果は期待できます。また、壁には段ボールでも多少の効果はあります。また、テレビやオーディオ機器のスピーカーはできるだけ壁から離して設置することも多少の効果があります。

窓への対策では吸音カーテンで窓全体を内側からしっかり覆うことで、部屋の中からの音を吸収してくれるため、生活音が外へ漏れにくくなります。床に敷く防音マットは歩く音をはじめ、楽器の音の振動なども軽減できます。




まとめ

まぎらわしい鉄骨と鉄筋について、鉄筋には必ず後にコンクリートがつくと覚えれば、自然と覚えられるのではないでしょうか?
建物の構造はそれぞれ一長一短。初めての一人暮らしでは、家賃の安さで木造を選ぶことが多いかもしれませんが、なぜその価格なのかという部分に目を向けてみて、自分の中での家賃と設備のバランスを考えながら、自分にあった部屋を見つけられるとよいですね。
監修:zuna
一級建築士
建築コンサルティングを生業とする一級建築士。ゼネコンでマンション等の現場管理をした後、某県庁の建築職として確認申請をはじめ建築系の書類審査や現場検査、開発工事の許認可、公共建築の設計・工事の監督員をしてきた。一級建築士であり、建築基準適合判定資格を所持している。
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