【脳波で物を動かせますか?】#もやもや解決ゼミ

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脳波で物を動かせますか?(pixta)

日常に潜む「お悩み・ギモン」=「もやもや」を学術的に解決するもやもや解決ゼミ。

今回はいささかSFチックなお題です。「人間が考えたことを脳波から読み取って、思ったとおり物を動かすことができるか」です。

今回は、『大阪大学大学院医学系研究科』の平田雅之特任教授に答えていただきました。平田先生は、世界的なBMI(ブレイン・マシン・インターフェース)の研究者。すでに人間の脳波を解析してロボットアームを動かすことに成功していらっしゃいます。

せんせいのかいせつ

研究者の間では「できる」という認識

例えば、脳波から「人間が手をこのように動かしたい」という思考を読み取って、それをロボット・アームに伝え、思いどおりに動くようにする――といったことは、研究者の間では「できる」と認識されています。

実際に私たちの研究グループが成功しています(論文は2012年)。

人間が手を動かすときには、脳がどのような信号を発しているかを計測し、特定します。脳が手を動かすという信号を発したことを捉えたら、ロボットアームを動かすのです。

これを実現するには、脳の活動を捉えるデバイスが必要です。人間の考えを脳から読み取るための装置で、私たちの研究グループでは、脳の運動野の表面に活動を検知する電極を載せ、捉えた電気信号を外界にデバイス送出するという方法を用いています(下掲写真)。

この体内埋込みデバイスは、数ミリ間隔で電極が埋め込まれたシリコン製の電極シートで脳の電位を捉え、小型のチタンケースの中にある電子回路で、脳信号を体外の処理装置に送ります。

海外の方法では、脳に多数の針電極を刺して電位を測定するといった方法が取られてきましたが、これは人体への負担が大きく、手術も大変です。われわれの方法は電極シートを脳の表面に載せるだけですので、脳を傷つけることもありません。

デバイスの開発がブレイクスルーになる

技術の進化が「実現」への後押しをしています。

私たちがロボットアームを動かすことに成功した当時には、「ディープラーニングを行うAI技術」などありませんでした。

脳の働きをもっと正確に、より大量に観測することができれば、現在の最新のAI技術を使って、そのデータを精査し、脳の活動をより正確に解釈することが可能です。つまり、このような電位が測定されたときは「手をこういうふうに動かしたい」ということなんだ、と精度を上げることができます。

ですので、現在求められているのはデバイスの進歩です。

2024年1月29日に、イーロン・マスクさん自身が設立した企業で、脳にチップを埋め込んでコンピューターと直接つなぐための診療試験を開始したと発表していました。これなども一つの試みですが、やはり被験者の皆さんの負担は大きいものです。

私たちが使用しているデバイスはより人体に優しいアプローチで、間もなく臨床試験に入る予定です。

埋め込まなくてもウェアラブルで簡単に正確な脳の活動をリアルタイムに測定できるデバイスができれば、誰もが「脳波を使って物を動かす」ということが実現に近づきます。次のブレイクスルーもデバイスの進化によってもたらされるでしょう。


◇けつろん!

「人間が考えたことを脳波から読み取って、思ったとおり物を動かすことができるか?」については、超能力「テレキネシス」みたいなことはできませんが、脳波を使ってロボットアームを動かすといったことは「できる」とのこと。

平田先生の研究がさらに進んで実用化となれば、ALS(筋萎縮性側索硬化症)や頚髄損傷の患者さんなど、四肢が自由に動かせなくて困っている方々が「新たな手足」を得ることができるかもしれないのです。

脳の働きの解明、デバイスの進歩、コンピューティング技術の進化などが、これまでは「SFか」と思われたようなことを可能にしようとしています。

おしえてくれた先生

平田雅之 
Profile

大阪大学大学院医学系研究科 特任教授。
1987年 東京大学大学院工学系研究科 修了(精密機械工学専攻) 工学修士
1987年 マツダ株式会社 車両設計部にてシャシー開発に従事
1994年 大阪大学医学部医学科 卒業
2001年 大阪大学大学院医学系研究科 修了(脳神経外科学専攻) 医学博士
2003年 大阪大学大学院医学系研究科 機能診断科学 助教
2009年 大阪大学大学院医学系研究科 脳神経外科学 特任准教授
2016年 大阪大学国際医工情報センター 臨床神経医工学 寄附研究部門 教授
2019年 大阪大学大学院医学系研究科 脳機能診断再建学共同研究講座 特任教授
2019年 大阪大学大学院医学系研究科 脳神経外科学 特任教授
2019年 大阪大学国際医工情報センター 特任教授
2019年 大阪大学・NICT 脳情報通信融合研究センター Principle Investigator

文:高橋モータース@dcp
編集:学生の窓口編集部

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株式会社デジタル・コンテンツ・パブリッシング
編集プロダクション。コンテンツを制作する「よろず屋」です。取材をして原稿を書き、編集、校正を行って多くのWebメディアに納品しています。https://dcp.jp.net/

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