東京オリンピックを「放送」で盛り上げるってどういうこと!?エラい人に直接聞きに行ってみた #大学生の社会見学
2020年東京オリンピック!公式団体が学生インターンを1,500人募集!?
「オリンピック放送機構」という、国際オリンピック委員会に所属するなんかスゴそうな組織が、オリンピックへのインターン学生を1,500人募集しているらしい。これは気になる……!と思ってネット検索してみたが、公式サイトの情報(全文英語)しかみつからない。うーん、英語よくわかんなくて困った!
ということで、今回は、オリンピック放送機構のCEO(一番エラい人)に直接いろいろ聞いてくることにしました!
AM 9:30、都内某高級ホテルにて
放送業界に興味をもつ学生2名(宮澤さん・石川くん)が取材に同行してくれた。すべて英語取材、しかも対談相手が国際的組織のCEOということで緊張気味のようだ。
\Nice to meet you! /オリンピック放送機構 CEO
ヤニスエクサルホス 氏
プロフィール: アテネ生まれ。国際スポーツ大会のマネジメントや放送に携わり、2004 年アテネ大会からすべてのオリンピック大会においてホストブロードキャスター機構のトップエグゼクティブを務める。2012 年ロンドン大会後に IOC によって設立された OBS の CEO に就任。放送や新技術、デジタルメディアに関する国際会議やイベントでも定期的に講演。
なんか優しそうな人で良かった・・・!
そもそもオリンピック放送機構(OBS)って、なに?
――オリンピック放送機構について、ざっくり教えてください!
OBSは、オリンピックを主催するIOC(国際オリンピック委員会)の組織に所属する、オリンピック・パラリンピック放送のホストブロードキャスターです。テレビ・ラジオによるオリンピック放送の国際信号(音声と映像)を制作し、オリンピック中継を行う権利を持つ各国の放送事業者に向けて配信する組織です。
2020年東京オリンピックでは、我々OBSが中心となり、世界で放送されるオリンピックの映像制作を行います。全競技で合計9,000時間以上分の映像制作を予定しており、80の国と地域から7,000人の放送に関わるプロフェッショナルを集結させ、制作に取り組みます。
――過去のオリンピックの映像は、ほとんどOBSが制作しているものということなんですか?
そうです。OBSで制作した映像を国際信号といいますが、この国際信号を全世界の放送権を持つライツホルダーに提供しています。
日本の場合ですと、日本の主な放送局6社で構成されたJC(ジャパンコンソーシアム)がライツホルダーで、私たちがJCに提供した映像に日本語の実況をつけたり、競技に応じて独自の映像を足したりしたものが日本で放送されます。
OBSの制作する映像は、世界中で放送されるため、世界最高の品質を提供する必要があります。私たちは競技の面白さや独特さを伝えるクオリティの高い映像を制作する義務があると思っています。そのため、OBSでは常に新しいやり方で競技を紹介する努力をしてきました。
OBS、それは世界最高の映像を提供する組織!
――具体的には、どんな撮影技術があるんですか?
例えば、陸上競技場のトラックに沿って動いている無人カメラがありますよね。あれはトラックカムといいます。ほかにも飛び込み競技で選手にカメラがついてゆくダイブカム、選手を追いかけて撮影しても映像が揺れないステディカム。これらの技術はすべて1996年のアトランタ大会で紹介されて、いまや全世界共通のものになっています。
アーティスティックスイミングの水面の上と下の映像を両方見せるツインズカムというカメラシステムは、NHKがオリンピック用に開発したものです。日本の放送局は技術革新の面で非常に優れているんですよ!東京大会でもアイデアがいくつか出ていて、皆さんに新しいものをお見せすることができると思いますので、楽しみにしていてください!
――オリンピックの映像技術は常に世界最先端なんですね! ちなみに人気がある競技や選手を集中して撮ったりすることはあるんですか?
非常に面白い質問ですね!私たちは、ある特定の競技だけではなくすべてのスポーツに一貫性を持たせなければならないと考えています。中継のレベルはもちろん、各競技の面白さや独特な部分も伝えなければならない。そのために、新しい競技の面白さをどうアピールするかを常に研究しています。
例えば2020年東京オリンピックから追加される新競技のサーフィンは、単なるスポーツではなく、環境にもやさしい競技ですし、音楽などのカルチャーとの関係性も深く、一つのライフスタイルとしても捉えることができます。そういった魅力も放送でみなさんにお見せしたいと考えており、競技と同時進行でカルチャーを伝えるサーフィンフェスティバルを行うことを検討しています。
【※募集中!】世界最先端の映像技術を学ぶチャンスを大学生1500人に!
――東京オリンピックに向けて学生のインターンを募集していますが、具体的にはどういう内容なんですか?
我々の使命の一つは、ズバリ「Education」!OBSは、次世代の放送関係者の育成を重要視しています。過去の大会でも、トレーニングプログラムを実施した上で、学生がオリンピックの放送現場で実際に働く機会を提供してきました。ボランティアではなく、有償のプロとして仕事を任せることは非常に意義があることだと思います。
このプログラムはロサンゼルス大会から始まって、いまや1万人以上の卒業生がいますが、現在実際に放送やメディア関係で活躍している人もたくさんいますよ!東京大会では約1,500人前後の学生を募集しています。すでに現時点で約1,000人からの申し込みがあり、今年10月にトレーニングプログラムが始まるまでにはもっと増えると思っています。現在の放送業界では男性が多いのですが、うれしいことに、東京オリンピックのインターンに申し込んでいる約70%が女性です!これは、男女平等を基本的な価値としている私たちにとって非常に喜ばしいことです。日本の将来の放送業界に、いい影響を与えるのではないかと思っています。
――インターンでは具体的にどんな仕事を任せてくれるんですか?
競技が始まった時間や放送内容の記録、放送機器のサポート、全世界から集まる放送局の方のサポートなど、さまざまな仕事内容があります。いちばん人気が高いのは、中継カメラのアシスタントですね。競技エリアの近くで作業することになるので、ウサイン・ボルト選手などスーパースターの近くで作業できることができます。私自身もやりたいくらいうらやましい仕事です(笑)。
――オリンピックの決定的瞬間を間近で体験できるんですね!でも、みんな希望したポジションで働けるんですか?
申し込んだ特定のポジションに関するトレーニングを受けるので、基本的には本人が希望したポジションになりますよ。
――トレーニングプログラムの内容がハードだったりしますか?
トレーニングには、「放送とは何か」という基本的な部分の説明もありますし、カメラのケーブルの巻き方などの実地研修もあります。おそらく今年の10~11月くらいにそれぞれの部門のプロフェッショナルを世界中から招いて行われる予定です。期間は約2~6日間で、ほとんどは土日に行うので学業への影響はないと思いますよ。研修のあと日本の人材派遣会社による最終選考がありますが、日本の学生は優秀だと聞いているので、ほとんどの方が実際に仕事をしていただくことになると思います。
――お話を聞いて、とても興味が湧きました。まだ募集はしているんですか?
はい、大丈夫です。まだ応募できますよ。
――(よっしゃ!)
――最後に、インターンに興味を持っている大学生に向けてメッセージをお願いします。
OBSのトレーニングプログラムは、正直言うと、私自身もこういう形で放送業界の仕事を始めたかったと思うほど、いいプログラムです。世界最大で最高のスポーツ競技の場で、放送業界の仕事を始められる学生のみなさんがうらやましいと思います。ぜひこの機会を楽しんでいただきたいですし、一生忘れられない経験になるでしょう!将来、放送業界、メディア業界へ就くことになれば、最高のアプローチのひとつになるのではないかと思っています。皆さんのチャレンジ、お待ちしてます!
編集後記(取材を終えた感想)
▼宮沢さんの感想
すごく気さくな方でしゃべりやすかったです! テレビ業界に入りたいと思っているので、カメラの撮り方の工夫とか、全部の競技を平等に撮ってるっていう話が特に面白かったです。インターンは興味あるけどちょっと難しそうだな…と思ってましたが、話を聞いたらやってみたくなりました。ちょっと本気でこれから英語の勉強を始めてみようかなぁ…!
▼石川くんの感想
オリンピックの映像がどういう思いで作られているのかが知れたので、オリンピックの見方が変わりそうです。僕は技術的な面に興味があったので、ツインズカムやトラックカメラの話が面白かったです。インターンに参加するとそういうカメラが間近で見られるんだってわかって、興味が増しました。一生に一度か二度あるかないかの自分の国でのオリンピックに、作る側として関われるチャンスはなかなかないんだなという実感も沸いたので、話を聞けてよかったです。
最後に、東京オリンピックは、「若い世代が楽しめる大会になると思うよ」と笑顔で語っていたヤニスさん。競技種目そのものを若い世代にアピールするために、東京オリンピックでは、スケートボードやサーフィン、スポーツクライミング、3人制バスケの3×3など、若者が好むような種目を数多く組まれているそう。制作の立場でも、若い世代の気持ちがつかめるため、モバイルなどで見られるデジタルコンテンツに注力するそうで、VR(仮想現実)のプログラムも制作予定だとか!
ただでさえ、日本でのオリンピック開催は一生に一度あるかないかといった貴重な経験なのに、世界最先端の映像技術を学びながら、自分自身もオリンピックを盛り上げられる体験だなんて、
超スーパー貴重な体験じゃないでしょうか!?
1500人の学生よ、世界は君を待っている!
文章:加治屋真美
撮影:河野辺彬文
編集:ナベコ