みんなに居場所を。『京都大学サークル退会者の会』が目指すもの #なぞサークル調査隊
大学のサークルの中には、一見した限りではどんな活動をしているのかわからないような謎めいたサークルがあります。特に京都大学にはそうした「謎のサークル」が数多くあるようです。
例えば『京都大学サークル退会者の会』もその一つ。そこで今回は『京都大学サークル退会者の会』に取材し、活動内容や設立のきっかけなどを聞いてみました!
サークル活動になじめなかった者同士が集まる場
『京都大学サークル退会者の会』の会長・ちろきしんさんに、活動内容や設立の経緯などを伺いました。
――面白いサークル名ですが、そもそもどんなサークルなのですか?
ちろきしんさん 『京都大学サークル退会者の会』は、サークルなど集団になじめないという人で集まり、交流を行うサークルです。去年(2018年)の11月に私が設立しました。
ちょうどその頃に京大の学祭があり、そこで看板を立てて宣伝したのが始まりです。翌12月には第1回の例会を開き、学祭での宣伝のかいもあり、25人もの人に来ていただきました。
――なぜこうしたサークルをつくろうと思ったのでしょうか?
ちろきしんさん 会をつくったきっかけは、私が当時所属していたサークルに行かなくなってしまったことです。最初は新しいサークルに入ろうとしたのですが、なかなかいいサークルが見つからず、途方に暮れていました。
そんなとき、私と同じように「新しくサークルに入りたいけど見つからない」という人が多くいて、他にも似たような人がいるのではないかと、「サークル退会者の会」というアイデアを思いつきました。
交流会や遊びを通して、新たな人間関係を作る
――普段の活動内容を教えてください。
ちろきしんさん 活動の柱は、2週間に1回の「当事者研究会」と週に1回行うボードゲーム会です。当事者研究とは、2001年に「社会福祉法人 浦河べてるの家」で始まった、「精神障害を持つ当事者自身が、自分たちが抱える問題を研究する」という活動です。
現在では、精神障害の有無にかかわらず、メンタルケア活動の一環としていろいろなところで行われています。
当事者研究会の模様
――当事者研究会は、具体的にどんなことをするのですか?
ちろきしんさん 当事者研究会では、まずテーマ(自尊心、自分の悩みなど……)を決め、それについて語る中で、自らの性格的な特性や悩みの原因を会員みんなで考えます。
他人と同じところ、違うところを発見することを通じて、自らや他者の「こころ」について理解を深め、今後の生活に生かすのが目的です。
――ボードゲーム会は?
ちろきしんさん ボードゲーム会は会員同士の交流を深めるために行っているものです。さまざまなボードゲーム・カードゲームの中から、初めてでも入り込みやすい、ルールが簡単で運要素が強いものを選んで行っています。
その他の活動は、会員の希望に応じて決めています。先日はコーラとポテトチップス、チョコの飲み比べ・食べ比べを行いました。あらかじめ違いを調べてから、どの会社の商品かを当てるクイズをしましたが、かなり盛り上がって面白かったですよ。
――普段はどのくらいの会員が活動に参加していますか?
ちろきしんさん LINEのグループメンバーは現在は28人です。毎回2~6人くらいの会員が参加しています。
サークルのモットーは「共通点のない人をつなぐ」こと
――サークルのモットーやこだわっていることはありますか?
ちろきしんさん 大学ではクラスメート同士の関係が高校より薄れるため、人間関係を構築するにはサークル活動が重要になります。ところが、サークルを途中で抜けたり、新歓期に入らなかったりすると、新しいサークルに入るハードルが高くなってしまいます。また、何もしたいことがない場合や、明確な目的がない場合も、新しいサークルに入りにくいですよね。
――確かに「もうこのままでいい」と思ってしまいます。
ちろきしんさん そのため、「共通のやりたいことや趣味がなくても集まれる場をつくること」を意識しています。また、人間関係の構築を苦手に感じていたり、人とのつながりだけがほしかったりという人でも比較的入りやすいよう、サークル名も「サークル退会者の会」とわかりやすくしました。
加えて、活動内容も初めてでも参加しやすいものにすることを心掛けています。
気軽に楽しんで新しい人間関係をつくる
――ちろきしんさん個人が、代表としてこだわっていることはありますか?
ちろきしんさん 私は会場の予約や広報を行っているだけなので、あまり自分が会長・代表だという意識はありません。上には立つつもりはないですが、責任者・広報係という意味で代表と名乗ることにしています。
――サークルになじめなかった人の駆け込み寺のようなサークルですが、どんな人におすすめのサークルですか?
ちろきしんさん 大ざっぱな回答になりますが、「新しい人間関係をつくりたい人」に入ってもらいたいです。京都大学の学生だけではなく、他大学の学生だったり、高校生や社会人だったりと、いろいろな人に来てほしいですね。実際に社会人が参加したこともありますが、高校生はまだ参加したことがないので、ぜひ来てみてください。
同様のサークルのモデルケースを目指す
――最後に、今後の目標や展望を教えてください。
ちろきしんさん ものすごく現実的な話になってしまいますが「会の維持」が当面の目標です。人間関係の構築が苦手な人にアピールする「ぼっちサークル」は過去にもあったのですが、なかなか継続が難しく、閉会するケースが多いと聞いています。
ですから、「会の維持」が大きな目標です。また、例会に来る人はまだ少ないので、なんとかして増やしたいところです。
活動内容と広報の在り方にはまだ改良の余地があると思うので、それもこれから変えていきたいです。長期的な視点では、会の維持には雑用や広報が必要なので、私がそれらを全てできなくなったときにどう仕事を割り振るか、それについても考える必要があると思います。
――今後も長く続けるためには、今のうちに基礎的な部分をしっかり固めておくといいかもしれませんね。
ちろきしんさん そうですね。もう一つ私の希望の話をすると、他の大学にも同じようなサークルが増えてほしいと思っています。ただし、先ほども話しましたが、このようなサークルは維持させるのが難しいので、似たサークルをつくりたいと思っている人の参考になるよう、なんとかこの会を成功させたいです。
――ありがとうございました。
『京都大学サークル退会者の会』は、何らかの理由でサークルを辞めてしまった学生が集まり、個々のメンタルケアや交流を図るという、あたたかいサークルでした。同じ思いをした者同士で交流を深めることで、新たな交友関係も育まれ、充実した学生生活が送れるかもしれませんね。
京大生以外や社会人、高校生でも参加できるサークルなので、活動内容に魅力を感じた人は、Twitterアカウントからコンタクトを取ってみてはいかがでしょうか。
⇒『京都大学サークル退会者の会』Twitterアカウント:@taicir_kyoto
(中田ボンベ@dcp)