【連載】『あの人の学生時代。』 ♯10:株式会社タニタ 代表取締役社長 谷田千里「学生時間を楽しんで」 3ページ目
専門学校、短大、4大で経験したことが全て今に生きている
――専門学校、短大、4大と3つの時代を振り返ってみて、現在の仕事にどんなことが活かされていると思いますか?
調理師や栄養士の知識は、タニタ食堂の事業に役立っています。弊社ではバイオセンサーを使った「電子尿糖計」という商品があるのですが、ここでは化学の知識が生きていますね。
――余すことなく学校で得た知識が活かされているんですね。
ほぼほぼ無駄がないです。それに調理師の専門学校では、調理師としての技術・知識だけでなく、「調理師になれば飲食店も経営するから」ということで、飲食店経営についても教えてくれて、客席の回転数や客単価、競合調査などを学びました。その当時はそれほど深く考えて学んでいなかったのですが、後に経営コンサルタントの仕事をするようになって「これやったじゃないか!」と。基礎知識を学んでいたのは大きかったですね。
――後になって、これだけ役立つとは当時思わなかったのでは?
もちろん考えていませんでした。調理師や栄養士は親への反発から取ったもので、タニタで働くことを想定していたわけではないですし、尿糖計に関しては父が始めた事業ですので、別にそれをどうこうしたいと思って化学を学んだのではないですから。でも本当に隙なく生かせていますよ。
――今に生かせている経験ばかりをされていますが、学生時代を振り返って、「もっとこうしておけばよかったな」と思うことってありますか?
それはもう「もっと勉強しておけばよかった」ですね。やっぱりしっかりと勉強した人って、地頭もいいのですよ。いつだったか、「14×14のクッキングスケ-ル作ろう」って話したときに、ある人が「この部分って√2ですね」って。普通そんなのぱっと出ないですよね(笑)。そんな人と会っていると、もっと勉強しておけばよかったなって思います。
――後で後悔しないように、やれることをやりたいだけやっておけ、ってことですか。
なかなかそのときはわからないものなので、難しいのですけどね。
学生ならではの自由な時間を楽しめ!
――ご自身の経験を踏まえ、今の学生たちにアドバイスをお願いします。
地頭を鍛えろ……と言いたいところですけど、それよりも私が伝えたいのは、「学生時間を楽しめ」ですね。
――学生ならではの時間ということでしょうか。
そうです。社会人になると、時間を好きに使うことってなかなかできないじゃないですか。だから遠方に行くときも、とにかく短い時間で行こうとしますよね。途中下車してゆっくり景色を見たり、余分に時間をかけたりできなくなってしまいます。もちろん、そうしたことを趣味で楽しんでいる人もいますけど、普通は移動にもたっぷり時間を使って、旅先でもゆっくりとするなんて、そんな休暇の過ごし方は難しいですよね。有給を全部使うことも、リスクがありますから、なかなか踏ん切りがつきませんし。
――確かに社会人になると、学生時代のように「まとまった自由な時間」を作るのが難しいですよね。家族ができたりすると、なおさら難しくなりますし。
私も学生時代に自動車で遠方にのんびり出掛けたり、「青春18きっぷ」で時間をたっぷりかけて電車で旅したりしておけばよかったなと思います。今ではやりたくてもなかなかできませんから。無駄というのは語弊があるかもしれませんけど、学生時代は社会人と違って時間の組み立て方に融通が利きますから、学生のうちに「学生ならではの自由な時間」を楽しんでほしいです。
――ありがとうございました!
専門学校、短大、4年制大学を全て経験した谷田社長。普通はあまり経験することができないものですが、そこで得た経験は余すことなく現在の仕事に生きているようです。また、ご自身の学生時代を振り返って、学生のみなさんに伝えたいことは「学生時間を楽しめ」でした。自由な時間を使って経験したことは、谷田社長のように意図せずとも生きてくることもあります。みなさんも、後になってあれをやっておけばよかったと思わないように、自由な時間を目一杯使って、いろんな経験をしておくといいかもしれませんね!
<プロフィール>
谷田千里(たにだ せんり)
1972年大阪府生まれ。2001年株式会社タニタ入社。2008年に株式会社タニタ代表取締役社長に就任。
⇒株式会社タニタHP
http://www.tanita.co.jp/
(中田ボンベ@dcp)