「女傑とは?」歴史を変えた偉大な女性達20人を紹介
女傑とは、女性でありながら男性並みに活躍する人たちのことです。
女傑という言葉自体がジェンダーレス社会になりつつある現代では少し感覚がズレているようにも思います。歴史に名を残すような女性のことと考えておけばいいでしょう。
ここでは、女傑という言葉の意味と日本史・世界史で有名な女傑達を紹介します。
女傑とは?
『広辞苑』によれば「女傑」とは「女子で傑出した者。男まさりの女丈夫」となっています。(第六版:P.1410より引用)
「男まさり」というのは、
- ・気性がはっきりしていて気分屋でなく
- ・知恵に優れており
- ・行動力があり活発
- ・実行力がある
のようなことです。かつては男性像としてこのようなイメージがあったのでしょう。
女傑の使い方
ジェンダーレス社会になりつつある現代、女傑という言葉を使う人はあまり見なくなりました。女傑の使い方には、
- ・彼女はなかなかの女傑だ
- ・女傑だよね
- ・ほんと女傑キャラだよね
などがあります。
女傑という言葉が「女性としては〜〜」のように「女性のくせに」のようなニュアンスを持ちます。褒め言葉としては、馴染まないですね。
自分で使うというよりは、誰かが使ったときに意味がわかる程度でいいでしょう。
女傑の類義語・言い換え表現は「しっかりした女性」など
女傑の類義語の代表格に「女丈夫(おんなじょうぶ)」がありますが、こちらも現代の価値観にはあまり馴染みません。
日本史や世界史に登場する偉人のような輝いた女性に対して使うのであれば、
- ・しっかりした女性
- ・たくましい女性
- ・行動力がある女性
- ・意思力がある女性
のように、具体的な部分を褒める形で言い換えるといいでしょう。
思い浮かべた女性の偉人の名前を使って「まるでジャンヌ・ダルクのような女性だよね」のように言い換えてもいいです。ただし、例えに出す女性偉人が悲惨な運命を辿っていたりすると褒めているのか貶しているのがわからなくなりますので注意してください。
日本史上に名を残す女傑達!
先進国の中でもジェンダーレス化が遅れていると言われている日本ですが、そんな日本の歴史の中でも女傑と呼ばれる女性達がいます。
ここでは、日本史上で有名な女傑を10人紹介します。
神功皇后
第14代天皇・仲哀天皇の奥さんですが、この方は気合の入った女性でした。
『日本書紀』によれば仲哀天皇の熊襲(くまそ)征伐に同道していますし、仲哀天皇が亡くなった後には熊襲征伐に成功。その後、身重の体なのに朝鮮半島に三韓征伐に赴きます。
玄界灘を渡ってまず新羅を攻め、新羅・高句麗・百済を屈服させたとされています。渡海の際には石をおなかに当ててさらしを巻き、出産を遅らせたそうです。
参考になる本
神功皇后の謎を解く: 伝承地探訪録 単行本 河村 哲夫 (著)
日野富子
日野富子は「日本史上の三悪女」の一人に挙げられます。
室町幕府の8代将軍・足利義政の正妻ですが、自分の息子・義尚を9代将軍の地位に就けるため画策し、これが武士団の対立を生み応仁の乱につながりました。
京に7カ所の関所を設けて税を徴収し、また金貸しをするなどして莫大な富を手に入れました。その総額は現在の価値で70億円に達するといわれます。希代の女傑であったことは確かです。
参考になる本
日野富子:政道の事、輔佐の力を合をこなひ給はん事 (ミネルヴァ日本評伝選222) 田端泰子 (著)
巴御前
源平の戦いに登場する源義仲(木曽義仲)に仕えた女武者ですが、その実像はよく分かっていません。架空の人物という説もありますが、美貌を備えた非常に強い女性だったとされます。
『平家物語』によると、宇治川の戦いに敗れて逃げる義仲に付き従い、その際左右から襲ってきた武士の頭を抱えて締め、その頭をもいだそうです。怪力もすごい一騎当千の強者(つわもの)と描写されています。
参考になる本
巴御前 単行本 鈴木 輝一郎 (著), 村上 豊 (イラスト)
北条政子
鎌倉幕府を開いた源頼朝の奥さんです。嫉妬深く気の強い女性だったようで、頼朝の愛妾であった「亀の前」の住んでいた家を打ち壊し、住まわせていた伏見広綱を流罪にさせています。
また息子・頼家が巻狩りでシカを射たのを喜んだ夫・頼朝は、その旨を政子に伝えるのですが、その際に「武家の跡取りがシカを取るなど当たり前」と使者を追い返しました。
頼朝亡き後、出家して尼となりますが、幕府に影響力を発揮し続けたため「尼将軍」と呼ばれました。
参考になる本
小松姫
NHK大河ドラマ『真田丸』の主人公である真田信繁の兄・真田信之の奥さんです。小松姫の父親は徳川四天王といわれた本多忠勝。
本多忠勝といえば、その勇猛な戦いぶりで有名な武将ですが、その血は娘・小松姫にも受け継がれたようです。関ヶ原の戦いの際、西軍についた舅の真田昌幸が小松姫のいた沼田城に立ち寄ります。
小松姫は、舅の「孫の顔を見たい」という要請をぴしゃりとはねのけ開城しませんでした。この態度には昌幸も感じ入ったそうです。
参考になる本
井伊直虎
井伊直盛の娘です。直盛には息子がいなかったため、彼女は婿養子を迎える予定でした。しかし、仕えていた今川家で政変があり、彼女は出家して「次郎法師」という名前を名乗ることになります。
その後、桶狭間の戦いで父・直盛が戦死し、今川氏の勢力が衰退。家督を継ぐ者が次々と死に、井伊家の当主の座が彼女に回ってきたのです。
直虎と名乗った彼女は井伊家の存続を懸けて生きました。数奇な運命で誕生した珍しい女性領主で、2017年のNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』の主人公です。
参考になる本
菊姫
菊姫は、武田信玄の娘で上杉景勝の奥さんです。『藤林年表』という資料によれば、慶長伏見地震(1596年発生)の際に、菊姫は梁(はり)を怪力で支え、大音声で「女中ども、出でよ、出でよ」と呼ばわったそうです。仕える女中たちは菊姫が支える梁の下をくぐり脱出。景勝の伏見屋敷では死者が一人も出なかったと伝わります。
菊姫の怪力話はこれだけではなく、景勝と碁を打った際のエピソードが残っています。景勝が悪手を打ってしまい、盤面をよく見せてくれ、いや見せないと喧嘩になりました。
そのとき菊姫は重い碁盤を左手だけで軽々と持ち上げたそうです。地震のときの落ち着きといい、さすが「信玄の娘」ですね。
広岡浅子
広岡浅子はNHKの朝ドラ「あさが来た」のヒロインのモデルになった人です。明治期の女性実業家でもあります。広岡浅子の嫁ぎ先の加島屋は、江戸時代からの有数の豪商。その家勢が傾いた際に立ち上がったのが広岡浅子でした。
炭鉱開発に乗り出した際は、護身用のピストルを懐に隠した上で単身で炭鉱に乗り込み、坑夫の説得にあたったというエピソードが残っています。
参考になる本
文庫版 小説 土佐堀川 広岡浅子の生涯 (潮文庫)古川智映子 (著)
麻生イト
麻生イトは、明治9年生まれの女性実業家。因島の麻生旅館主です。勝新太郎主演のヒット映画『悪名シリーズ』で侠客「因島の女親分」として実名で出てくることで有名です。
稼いだお金は地元に還元し、生名島に三秀園を作るなど文化事業やインフラ整備を実施しました。
麻生イトのエピソードには、日本刀を持った刺客に襲われるも犯人としっかり対峙し、犯人出所後は身元引受人となり犯人を心腹させたというものがあります。
参考になる本
平塚らいてう
平塚らいてうは明治19年生まれの女性解放運動家。市川房枝らと新婦人協会を結成し、婦人参政権運動に尽力し、婦人参政権などの女性の権利獲得に奔走した一人です。
歴史の教科書では「元始、女性は太陽であった」の一言とともに必ず登場する方ですが、森田草平との心中未遂というスキャンダラスな事件で一躍有名になった人でもあります。
参考になる本
平塚らいてう: その思想と孫から見た素顔 奥村 直史 (著)
女帝から女騎士まで勢揃い!世界の女傑10選!
世界にも歴史に名を残す女傑が数多くいます。全てを紹介することはできないのですが、有名な世界の女傑を10人紹介します。
「この女帝の名前は聞いたことがある」「映画のモチーフになっていた人だ」という人ばかりですよ。
エカチェリーナ2世(帝政ロシア)
エカチェリーナ2世アレクセーエヴナは、ロマノフ朝第8代ロシア皇帝です。啓蒙専制君主の代表とされ、ロシア帝国の領土をウクライナやポーランドにまで拡張した女帝でもあります。
1761年のクーデターでは、軍服を身に纏い男装、自ら指揮を取り、ほぼ無血でクーデターを成功させています。
参考になる本
エカチェリーナ大帝(上): ある女の肖像 ロバート・K・マッシー (著), 北代 美和子 (翻訳)
エリザベス1世(イギリス)
エリザベス1世は、イングランドの黄金期(エリザベス朝)のイングランドとアイルランドの女王です。生涯結婚せず「処女王」とも呼ばれました。
スペイン無敵艦隊に勝利したことから、勝利者としてのイメージが強く、「私は国家と結婚した」という名言も残しています。
参考になる本
カテリーナ・スフォルツァ(イタリア)
ミラノ公ガレアッツォ・マリーア・スフォルツァは、イタリアの女傑(ヴィラゴ・ディタリア)として知られる女性です。15世紀イタリアのフォルリを領地としていました。
反乱軍に子供と一緒に捕らえられた際のエピソードが有名です。それは、反乱軍に「城の守備隊を説得する」と告げ城に入ったスフォルツァが、守備隊を説得するどころか「子どもなどここからいくらでも出てくる」と子供を見捨て、反乱鎮圧のための援軍を待ったというものです。
参考になる本
チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷 (新潮文庫) 塩野 七生 (著)
カラミティ・ジェーン(アメリカ)
カラミティ・ジェーン(マーサ・ジェーン・カナリー)は、アメリカの西部開拓自体の女性開拓者であり斥候です。軍人の制服を纏い男装して、斥候として働いたとされています。
数々の功績が伝承として残っていますが、多少の誇張があるようです。
参考になる本
日本語の書籍はほぼありません。カラミティ・ジェーンをモデルにした映画やゲームキャラなどは多数あります。
クレオパトラ(古代エジプト)
クレオパトラ7世フィロパトル(以下、クレオパトラ)は、古代エジプト、プトレマイオス朝最後の女王です。絶世の美女としても知られる女性です。
父王の死後、弟の妻になり共同王位に就きますが後に追放されます。追放後、ユリウス・カエサルと出会い、共に弟を討ちました。
参考になる本
ジャンヌ・ダルク(フランス)
ジャンヌ・ダルクは、15世紀フランスの軍人です。「オルレアンの乙女」とも呼ばれ、カトリック教会の聖人にもなっています。
最後は異端裁判にかけられてしまいますが、ジャンヌ・ダルク従軍中のフランス軍は、快進撃を続けたことは間違いなく、イングランドとの戦況を変えるきっかけとなった女性です。
参考になる本(小説)
ジャンヌ・ダルク (中公文庫)ジュール ミシュレ (著), 森井 真 (翻訳), 田代 葆 (翻訳)
ゼノビア(シリア)
パルミラ帝国の女王とされる女性です。パルミラ帝国は、3世紀頃に現在のシリア近郊にあった国になります。
ローマとの戦争には敗れましたが、優れた騎馬術を持ち、「最も傑出した敬虔なる女王」とも記されています。
参考になる本
武則天(中国)
武則天は中国史上唯一の女帝です。唐に代わり武周朝を建てました。則天武后(そくてんぶこう)の呼び名の方で知っている人も多いかもしれませんね。
自身の寵臣や親族を重用し、ライバルに関しては密告政治により徹底的に排除していきました。女傑としても有名ですが、残虐な政治を行ったとして西太后と一緒に比較されることが多い方です。
参考になる本
ユディト(旧約聖書外典)
ユディトは、旧約聖書外典に登場する女性です。ベトリアに住んでおり、アッシリア軍に町が包囲された際、住民を励まし、計略により司令官ホロフェルネスの首を討ち取りました。
そのエピソードは、着飾った姿でホロフェルネスの元を訪れたユディトは、ホロフェルネスを泥酔させ寝込んだところを首を切り落とします。司令官を失い動揺するアッシリア軍は打ち破られるというものです。
カラヴァッジオの「ホロフェルネスの首を斬るユーディット」という絵画も有名ですね。
参考になる本
中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇 中野 京子 (著)
ペンテシレイア(ギリシア神話)
ペンテシレイアはギリシア神話に登場する女性です。神話の登場人物なので実在はしません。
戦闘の神アーレースとアマゾーン族の女王オトレーレーの娘でトロイア戦争の際にアキレウスと一対一で戦い敗れた女性です。
参考になる本
ギリシア・ローマ神話 (岩波文庫) ブルフィンチ (著), Thomas Bulfinch (原著), 野上 弥生子 (翻訳)
女傑のエピソードには歴史を学ぶ面白さが満載!
歴史を勉強するというと年表の丸暗記を思い浮かべる人もいるかと思いますが、歴史上の人物のエピソードは面白いものが多いです。
英雄を陰で支えた女性や自らが英雄になった女傑の歴史にも触れることができます。大学受験の勉強とは違った歴史の一面を知ることもできるので、有名な女性達のエピソードも調べてみてくださいね。