「エバラ食品」の商品開発担当者が語る、新商品を消費者に選んでもらうための工夫とは? #お仕事図鑑
ヒット商品やサービスを手掛ける企業のキーマンにお話しを伺う企画「#お仕事図鑑」。
今回は「エバラ食品」の商品開発を担当する先輩社会人、石井敦史さんにインタビュー。商品開発の仕事内容や印象に残っているエピソードについて詳しくお話を伺いました!!
PROFILE
石井敦史
エバラ食品で「黄金の味」や「プチッと鍋」などの家庭用商品における新商品・リニューアルの企画開発、戦略立案、ブランド管理などを担う。
INDEX
消費者目線で考える商品開発
ーー簡単に自己紹介をお願いします。
エバラ食品の商品開発を担当している、石井敦史と申します。2005年に入社し、そろそろ20年が経とうとしています。「黄金の味」や「プチッと鍋」など、スーパーで販売されている家庭用商品の開発を担当しています。
ーー現在の商品開発部の前に他の部署でのご経験があれば教えてください。
2005年に新入社員として入社した際は、埼玉県や茨城県のスーパーを担当する営業に配属され、エバラ食品の商品を並べてもらうためにバイヤーと商談をしたり、実際に商品を陳列したりとさまざまな経験を積みました。
その後、商品開発部に異動し、家庭用商品の開発を行っていましたが、マーケティング部にも4年間所属した経験があり、市場データの分析や「黄金の味」ブランドのプロモーション戦略を担当しました。そして、再び商品開発部に戻り、現在は家庭用商品の開発マネージャーを務めています。
ーー現在の商品開発の業務では、どのようにアイデアを得ていますか?
わたし自身もスーパーで買い物をしながら消費者目線で考えています。「こんな商品があったらいいな」「こういう味がほしいな」といった自分の感覚がアイデアのスタート地点になります。
また、実際に商品化を進めていくときには、データ分析や市場環境の確認を通して、「この商品は売れる」という自信を持って提案できるようにしています。
ーー消費者の声や商品に対する気づきを共有する場はありますか?
商品発売前には社内でプレゼンを行い、消費者調査の声をまとめて報告します。発売が決定すると、今度はスーパーに対してプレゼンを行い、データやお客様の声をお伝えしながら、開発の裏話も交えて提案します。
ーー商品の開発やリニューアルにはどのくらいの期間がかかるのでしょうか?
商品によりますが、基本的には半年から1年程度かかります。新商品の発売は2月と8月で、2月は春夏向け、8月は秋冬向けです。そのため、2月に発売する商品は半年前の9月や10月には決まっていることが多いです。
学窓会員限定!今回のインタビュー動画はこちら!
新しい商品を消費者に届けるための工夫
ーー商品開発をされている中で、やりがいを感じるポイントがあれば教えていただきたいです。
いろいろな場面でプレゼンをする機会があるのですが、自分の考えに賛同してもらったり、褒めてもらえたりすると非常に嬉しいですね。 また、実際に商品が発売された後に、お客様や自分の家族、親戚、友人からよい反応をもらえると、大きな達成感があり、ときには自慢をすることもあります。そういったときに楽しさややりがいを強く感じます。
ーー実際のお客様の声は、どのように石井さんの元に届くのでしょうか?
当社には「お客様相談室」という部署があり、商品の裏面に電話番号を記載していますので、お客様から直接お電話をいただくこともあります。 また、商品が発売された後も発売後調査を行い、どのように使われているかのフィードバックを得ています。ポジティブな評価が得られると本当に嬉しく感じますね。
ーー新しい商品を消費者に届ける際に工夫していることがあれば教えてください。
商品のデザインも担当しているため、スーパーでお客様が歩いているときに目につきやすく、インパクトのあるデザインを意識しています。 例えば、「プチッと鍋」のパッケージには料理の写真を載せていますが、消費者が食べたくなるようなデザインにできるよう、実際の撮影にも参加しています。こうした工夫で、より多くの方に気づいてもらえる商品開発を心がけています。
前向きな姿勢で柔軟に対応する
ーーお仕事をする中で苦労した点や印象に残ったエピソードがあれば教えてください。
2017年に「黄金の味」を大幅にリニューアルしました。これまでは瓶入りだった商品をペットボトルにし、デザインも味も一新しました。「黄金の味」はエバラ食品を代表する商品ですので、社内の多くの部署と協力し、プロジェクトチームを組んで開発しました。
その際、さまざまな意見が飛び交い、かなり苦労しましたが、最終的に会社全体が一丸となり、成功に導くことができました。このプロジェクトは、とてもやりがいを感じた経験でした。
ーー開発の際にはさまざまな方と協力されているとのことですが、具体的にはどのような方々と関わりがありますか?
まず社内では、味づくりを担う「テクニカルセンター」のメンバーと話し合いをします。実際に製造する際には工場のスタッフとも調整し、発売に向けて営業のメンバーとも密に連携します。さらに最終的な承認をいただくために、役員や社長へのプレゼンも行います。発売後には「お客様相談室」のスタッフとも意見交換を行い、社内の多くの部署と関わりながら仕事を進めます。
一方で社外の方とも多く関わります。デザインに関してはデザイナーやデザイン会社と協力し、商品を評価する調査会社とも連携します。さらに、スーパーのバイヤーに対して、商品を陳列していただけるようにプレゼンします。また、テレビCMの制作時には制作会社や出演者とも連携することがあり、幅広い方々とのコミュニケーションが欠かせません。
ーー関わる方々の意見が食い違うこともあると思いますが、その際はどのように進めていらっしゃいますか?
わたし自身の意見はしっかり持ちながらも、他の方々の意見にも柔軟に対応するよう心がけています。全く違う意見でも否定せず、「そういう考えもありますね」と前向きな姿勢で軌道修正を図ることが、よいコミュニケーションを築くために重要だと感じています。
ーー開発秘話や、最近のエピソードで印象的なものがあれば教えてください。
2024年2月から発売している「焼肉ザクだれ」という商品があります。ザクザクとした食感を加える味変ならぬ「食感変調味料」という新しいカテゴリーとして命名しました。発売前から社内でも高評価を得ており、また「ザクザク食感」というのが焼肉に限らずさまざまなカテゴリーでトレンドとなっているため、発売後も多くの消費者から好評をいただいています。
ーーエバラ食品の魅力や、好きなところがあれば教えてください。
部署を越えて気さくに話せる社風で、社員同士の仲がよいところが魅力です。例えば趣味のマラソンで他部署の人と一緒に大会に出ることもあり、明るく協力的な雰囲気がエバラ食品のよいところだと感じています。
ーー最後に大学生に向けたメッセージをお願いします。
大学生の皆さん、就職活動はとても大変なイメージがあるかもしれませんが、多くの会社を知ることができるよい機会でもあります。採用してもらうという感覚ではなく、自分が働きたい場所を選ぶという前向きな気持ちで取り組んでみてください。 会社名や商品の知名度だけで会社を選ぶと、入社後にギャップを感じてしまうこともあるかもしれません。ぜひ、自分らしく働ける場を見つけ出してもらえたらと思います。
取材:秋保 柚月(ガクラボメンバー)
執筆:田中 妃音(ガクラボメンバー)
編集:学生の窓口編集部
取材協力:エバラ食品