「夏の恋は長続きしない」って本当? 恋愛学の教授に真相を聞いてみた #もやもや解決ゼミ
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「ひと夏の恋」という言葉があるように、夏に始まる恋愛は長続きせず、夏の終わりとともに恋も終わってしまうことが多いといわれています。では、本当に夏の恋は長続きしないものなのでしょうか。もし本当ならばそれはなぜなのでしょうか?
今回は「恋愛学」の研究者である早稲田大学 国際教養学部の森川友義教授に伺いました。
なぜ「夏の恋愛は短い」といわれるの?
なぜ「夏の恋愛は短命」だといわれるようになったのか、いつからいわれるようになったのかは明らかになっていません。しかし、日本には「ひと夏の恋」という言葉があり、また海外でも『One Summer Love』という映画があるくらいなので、世界的に見ても「夏の恋愛は短い」ということが文化としてあると考えられます。
夏に始まる恋は長続きしないといわれる社会的・文化的な背景は大きく分けて3つ考えられます。
1.夏は男女共に薄着になるため相手の体型が視覚的にはっきり理解できる
夏は男性も女性も薄着になるので、厚着になる冬よりも相手の体型が視覚的にはっきりと理解できます。つまり、自分の好みの体型なのか分かりやすいのです。また、薄着であるために、相手の体臭を容易に嗅ぐことができます。
恋愛のプロセスは視覚→聴覚→嗅覚→触覚→味覚という流れのため、体臭を嗅ぎやすい夏は恋愛までの距離が短くなります。出会ってから肉体関係になるまでの時間も短くなるということです。その場合、相手を十分に知らない間に体の関係という恋愛のピークに至ってしまうので、短い関係になりやすいのだと考えられます。
2.夏ならではの開放感が期間限定の恋を生み出している
夏になると多くの人は旅行をしたり、遠方まで出掛けてレジャーを楽しんだりします。そのため、旅行先で知り合う、海で知り合う、夏のアルバイトで知り合う、といったように非日常の出来事に遭遇する機会が多いため、恋愛が生まれやすいのです。夏になると開放的な気分になりますし、「旅の恥はかき捨て」というように住んでいる場所から遠く離れた場所に旅行した場合は、少し冒険したくなるものですからね。
特に学生は長い夏休みがあるため、そうした特異な状況が生まれやすいといえます。しかし、こうした恋愛は旅行から帰るなど、非日常から日常に戻ると終焉する可能性が高いのです。場合によっては遠距離恋愛になってしまうことから長続きしにくくなります。
3.ホルモンが影響している
夏から秋にかけて、性欲をもたらす男性ホルモンの「テストステロン」(女性にも存在する)が上昇していきます。テストステロンが上昇すると性欲が増すため、恋愛も生まれやすくなります。しかし、テストステロンは秋を過ぎると減少に転じるので、それに伴い恋愛も終わる可能性が高いといえます。
統計的にも、夏の恋は終わりやすいといえる
2016年に、株式会社Bluebirdが20~30代の女性に「夏の恋愛結果について」のアンケートを行いました(*1)。結果は恋人がいない126人のうち、79人(62.7%)が夏の間に恋人ができたと報告しています。この数は明らかに多く、夏では恋愛が生まれる可能性が高いと考えられます。また、夏の間に恋人ができたと回答した79人のうち35人、つまり44.3%の女性が「彼氏とは夏の間に別れた」としているので、たしかに「夏の恋愛は長続きしない」といえます。
また、別のアンケート調査でも、「ひと夏の恋」の経験はありますか? という問いに対して、20%の女性が「ある」と答えています(*2)。こうした結果を踏まえ、夏の恋愛は短命であることは統計的にもいえます。
夏の時期の特徴も、長続きしない原因に?
前述の通り、夏の恋が短命で終わってしまうとされる理由には「出会ってから肉体関係に至るまでの時間が短いこと」「非日常から日常に戻ること」「テストステロンが下降すること」が挙げられます。
相手を見極めないで肉体関係になれば(特に男性にとって肉体関係は最大の目的であり、肉体関係後は恋愛バブルが減少してゆく傾向にあるため)、それだけ早く別れることになります。また、夏から冬になるサイクルでは、薄着から厚着へ、日照時間も徐々に短くなり気温も下降していくことから、相手との距離が徐々に離れるため、これも恋愛が終わりやすい要因だといえます。
夏が終われば、旅行先から自宅に戻る、開放的な場所から普段の場所に戻るなど、非日常から日常に戻ります。ひと夏のアバンチュールから現実に逆もどりすると、一時的な熱が冷めて、恋愛が終わる可能性が高いのです。テストステロンは10月にピークを迎えそこから下降していくので、それに伴って性欲も下降。これらの理由から、夏の恋愛はどうしても短命にならざるを得ないといえます。
また、アイブリッジ株式会社が全国1,000人を対象に、2014年に夏の恋愛に関する調査を実施しています(*3)。このアンケートでは夏の恋愛が終わった理由に「別の魅力的な男性に出会った」「開放的になりすぎた」といった回答が多く、性欲や非日常から日常への回帰など、前述の私の答えと共通していると考えられます。
夏の恋を長続きさせるには?
恋愛で大事なのはギブアンドテイク。自分が相手に何を与えるのか、相手から何を与えられるのかが重要です。肉体関係に至るまでの時間が短いと別れやすいのは、十分にギブアンドテイクができないまま恋愛のピークに達するからです。言い方は悪いですが、すぐに肉体関係に至ってしまうと「軽い相手」だと思われやすいのです。従って、すてきな相手と出会ったら、安易に距離を詰めるのではなく、じっくりと恋愛を育んでいくことが重要だといえます。
また、秋はイベントがそこまで多くないため、恋人関係の維持が難しいシーズンです。 しかし、冬が近づくと、冬のイベント(クリスマス、大晦日、新年、バレンタイン)が目前になるので、そこまで引き延ばせれば恋愛関係も継続しやすいと考えられます。
旅先で恋人ができた場合は遠距離恋愛になりやすいですが、現在はオンラインなどで容易に連絡を取ることが可能で、ビデオ通話も手軽に行えます。昔と異なり交通網も整備されており、実際に会うハードルも低くなりました。恋愛を継続したいという意志があれば、長続きしやすい環境になっていると思います。
とはいえ、学生の間はいろいろな恋愛の経験があってよいと思います。いろいろな経験をしておけば、それが後々役立つので、社会人になる将来に向けて、今は恋愛を楽しむといいかもしれません。
(*1)~アンケート調査で「夏の女性の恋愛像」を明らかに~「堅実」な恋愛観を持つ一方で、夏の熱気に乗せられ、「刹那的」な恋を「屋外」で楽しむ恋愛結婚学研究所による調査結果
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000016411.html
(*2)『ゼクシィ』「“ひと夏の恋”ってどんな恋!?」
https://zexy.net/contents/lovenews/article.php?d=20100804
(*3)『アイブリッジ株式会社』「リサーチプラス 夏の恋愛に関する調査(ランキング)」
http://www.research-plus.net/html/investigation/report/index73.html
夏に生まれた恋は、「短い期間で恋愛のピークを迎える」「非日常から現実に戻る」「テストステロンが減少する」といった理由から、短命に終わる可能性が高いとのこと。夏の恋が短いのは本当のようですね。もし今年の夏の間に恋をして、すぐに終わらせたくないという人は、森川先生のアドバイスにあるようにじっくりと恋を育むといいですね。また、彼氏・彼女がいる方は、恋が生まれやすい季節のため、旅行や遠方のレジャーに行く際は注意しておきたいところです。
イラスト:小駒冬
文:高橋モータース@dcp
教えてくれた先生
森川友義 Profile
早稲田大学 国際教養学部教授。Ph.D.
1955年群馬県生まれ。1979年、早稲田大学政治経済学部卒。1984年、ボストン大学政治学修士号取得。1993年、オレゴン大学政治学博士号(Ph.D.)取得。外資系銀行、総合商社、国連専門機関(UNDP、IFAD等)、外務省国連代表部、米国アイダホ州立ルイスクラーク大学助教、オレゴン大学客員准教授、早稲田大学国際教育センター准教授等を経て、2004年より現職。『改訂版 大学4年間で絶対やっておくべきこと』(KADOKAWA、2019年)、『入社3年目までに絶対に知っておきたいこと』(ディスカヴァー・トゥエンテイワン、2018年)、『黄昏流星群学~54歳からの恋愛聖書~』(小学館、2018年/弘兼憲史さんとの共著)など著書多数。