バイト先がまさかの給料未払い…(涙) トラブル解決策を弁護士の先生に聞いてみた!
新型コロナウイルスのパンデミックで多くの企業が影響を受けています。そのため、従業員に給料が払えないというケースも増えており、大学生の皆さんにも「アルバイト代を払ってもらえない」という事態が起こりかねません。では、もしそうした「給料未払い」が起こった場合、どのようにして解決すればいいのでしょうか?今回は「給料未払い」の解決方法を、弁護士法人『アディーレ法律事務所』の北川大裕(きたがわ もとひろ)弁護士に伺いました。
給料未払いが起きたとき、まずどうすればよい?
労働者が労務を提供した場合、使用者は労働者に対し賃金の全額を支払う必要があります(労働基準法24条1項)。たとえバイト先が不況に陥っていても、労働者は働いた分の給料を請求する権利があるのです。
また、バイト先に別にの債権者がいる場合でも、給料債権(給付義務を持つ者に対し、給料を支払うよう請求できる権利)は、他の債権者よりも優先されます(民法308条)。
それでは、給料を払ってもらうためにはどうしたらいいのでしょうか。未払い給料の請求が裁判で認められるためには、少なくとも下記の立証が必要です。
1.労働契約を締結したこと
2.労働契約における賃金の締日および支払日の定め
3.2の締日までの就労をしたこと
弁護士が交渉で請求をする場合にも、これら各事実の立証の可否を念頭に置きます。まずは事実の立証に役に立ちそうな証拠を集めましょう。
具体的には、タイムカード、出勤簿、業務日報、シフト表、給与明細、雇用契約書、就業規則、賃金規定、労働時間や業務内容を記録した手帳などです。
皆さんが不要であると考えた資料でも、弁護士から見ると大切な資料ということもあります。また友人やバイト先の上司とのLINEのやり取りも役に立つことも多いので、スクショなどで保存しておくことをお勧めします。
誰に、どこに、相談するべき?
1.自分で交渉する
「給料を支払わなければならないことは法律で決まっており、一般の債権よりも優先するため、働いた分の給料は払ってください」と言えば払ってくれるバイト先もあるでしょう。最近はスマホでの録音が容易になったので、会話を録音される方もいらっしゃいます。
ただし、交渉の方法や様態によっては恐喝罪(刑法249条1項)や威力業務妨害罪(刑法234条)に問われる可能性もあります。交渉する際は、注意しましょう。
バイト先がブラックであったり、こんな不況で払えないと言われたりと、請求しても対応してもらえない可能性も当然あります。
2.労働基準監督署に相談する
労働基準監督署は、給料未払いがあった場合にバイト先に給料を払うよう是正勧告を行うことができます。しかし、是正勧告には強制力はないので、確実に支払ってもらえるとは限りません。
3.社会保険労務士(社労士)に相談する
社会保険労務士は、労務問題を取り扱う国家資格者です。給料の未払いについては社労士に相談することもでき、あっせんという制度を用いて解決を図ることもできます。しかし、こちらも強制力はないため、必ず支払われるというものではありません。
4.弁護士に相談する
弁護士は、法の専門家であり、バイト先との交渉や裁判になった際の代理人としての出廷が可能です。また、報酬を得る目的で法律事件に関し相手方と交渉ができるのは、原則として弁護士だけです(弁護士法72条)。
未払い給料の額と費用の問題もありますが、実効的かつ抜本的な解決を目指すのであれば弁護士に相談するのが一番よい方法かもしれません。
なお、給料に関する請求権は「支払日から3年間」で時効消滅してしまいます(令和2年3月31日までに支払日が到来した請求権は支払日から2年間)。つまり令和2年4月末に支払われるはずであった給料は、令和5年4月末を経過すると請求権が消滅してしまいます。早めに相談することをお勧めします。