学園祭で売り上げナンバーワンの出店になるためには? #もやもや解決ゼミ
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学園祭のシーズンですが、読者のみなさんの中には「学園祭にはサークルで出店する」なんて人もいらっしゃるでしょう。お店を出すからには繁盛する店にしたい!と思いますよね。

では「学園祭で売り上げナンバーワンの出店」になるためには、どんな努力をすればよいのでしょうか?
神戸大学大学院 経営学研究科の栗木契教授にアドバイスを頂きました。栗木教授は戦略的マーケティングの専門家で日本マーケティング学会理事も務めていらっしゃいます。
リピーター狙いはやめよう!
ありがちなのが「いいものを作ろう」と一生懸命になり過ぎることです。例えば、焼きそばのお店を出すとして、おいしい焼きそばを作ることにばかり集中してしまう。
おいしいものを提供するのは当然ですが、学園祭というのは1~2日、長くても3日ほどのイベントです。これは、おいしいから売れるという市場ではないのです。
学園祭で「この焼きそばはおいしい! もう1回食べよう」とリピーターがつくことは、まず期待できません。あなたが顧客の側ならどうですか。「焼きそばは食べたから次は別のものを食べよう」となるでしょう。
ですから売り上げを増やしたいのであれば、リピーターを増やす努力ではなく、別の努力をしたほうがいいですね。毎年恒例になっている「有名サークルの出店」など、のれんやブランドがあれば別ですが。
顧客第一に考えよう!
顧客のニーズに応える出店を考えるのが第一です。例えば、食べ物の出店を考えるなら、学園祭に来る人たちはあちこち見て回りますから、「片手に持って食べられるもの」「歩きながら食べられるもの」のニーズが高いはずですよね。
まず顧客がどのようなものを求めているかを考え、それに合った出店をしましょう。
学園祭というと飲食系の出店が多いですが、物販から離れて考えてみるのも一つの方法です。
例えば、私が感心したのは「カップル占い」という出店です。学園祭ではにわかカップルができたりしますが、意外と二人きりになれる場所はないですよね。二人でブースに入って占い師の話を聞くという企画は、カップルのニーズをうまく満たしています。
他にも、例えば「うちの学園祭に来るのは親子連れが多い」と分かっているなら、ターゲットを子供に絞った出店などを考えてみてもいいでしょう。
出店の場所は重要である!
学園祭の出店が繁盛するかどうかは「場所」が重要です。出店が並ぶ島があったら、角の場所に出店できるようにしましょう。角は一番目立ち、人が足を止めやすいところです。
私のゼミの学生が、バス停が横にある大学正門すぐの場所で、大判焼き屋を出店したことがあります。なかなか繁盛していました。帰りのバスを待っている間にちょっと買うニーズが大きかったと聞いています。バス待ちの時間での利用ですから、焼きそばやおでんをがっつりではすべります。場所の良し悪しだけではなく、場所とニーズの相性も考えるようにしてください。
抽選などでいい場所が取れなかったら、他よりも目立つための工夫を凝らしましょう。手書きのポップなどでは負けてしまいます。大きな赤ちょうちんが一つあるだけでもずいぶん違います。最近では、業務用品をウェブで買い、利用後すぐにメルカリなどで転売すれば、配送費の負担程度で済んでしまったりします。
場所とプロモーションで、他の出店よりもいかに目立つかに注力しましょう。
利益を大きくしたいなら原価を抑えよう!
利益を大きくしたいのであれば「原価」についても気を付けるべきですね。先ほどの大判焼きであれば、たね・あんこと材料も限られていますし、あとはお客さんに手渡すときの小さな紙の袋があればいいだけで、原価の管理が容易です。
これが焼きそばになると、そば・キャベツ・ブタ肉・紅ショウガなど材料も多くなり、お皿・割り箸とお客さんに渡すものも増えます。管理は難しくなります。
先の「カップル占い」のケースでは、自分たちが占い師をするので原価は0円。顧客のニーズを満たしながらリスクはほぼないという出店です。うまいこと考えたなぁと思いました(笑)。
「学園祭ナンバーワン売り上げの出店」を目指すのなら、「顧客第一」を念頭に企画を考え、「いい場所」を確保することが最重要のようです。さらに原価管理を怠らなければ利益も伸ばすことができるでしょう。
売上ナンバーワンを目指しつつも、仲間達との学園祭をおもいっきり楽しんでくださいね♪
イラスト:小駒冬
文:高橋モータース@dcp
教えてくれた先生
栗木契 先生
神戸大学大学院 経営学研究科 教授
1966年米国フィラデルフィア生まれ。1991年、神戸大学経営学部卒。1997年、神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了。1997年、岡山大学経済学部講師。1999年、岡山大学経済学部助教授。2003年、神戸大学大学院経営学研究科助教授を経て2012年より現職。
著作に『マーケティングを読む:創生とシフトの時代に挑む』(碩学舎,2019年)、『デジタル・ワークシフトーマーケティングを変えるキーワード30』(産学社,2018年,共著編)などがある。
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