「好きなことを仕事にする」ことほど幸せなことはない。俳優・志尊淳が伝えたい想い #好きなことで、生きていけるの?Vol.3

編集部:おもち

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「好きなことを仕事にする」ことほど幸せなことはない。俳優・志尊淳が伝えたい想い 

「“こうあるべき”な生き方じゃなくて、自分の好きなことで生きていきたい」。
そんな悩みや葛藤を持つ大学生のために、覚悟を決めて好きなことをして生きている人たちにお話を伺い、生き方のヒントやメッセージをもらう連載『好きなことで生きていけるの?』。

第3回目となる今回のゲストは、現在公開中の映画『走れ! T校バスケット部』で主演を務める俳優・志尊淳さん。名門校の元エースで、大好きなバスケを一度はあきらめたものの、新たな仲間たちと再び夢を追い始める高校生・田所陽一役を瑞々しく演じている志尊さんは、好きな仕事とどんな気持ちで向かい合っているのでしょうか。

取材・文/落合由希
撮影/島田香
編集/学生の窓口編集部

INDEX

1.リスクを上回る「好き」の気持ち
2.抑圧される必要もはみ出す必要もない
3.それぞれが持っているものを磨く
4.もし中学生に戻れるなら、恋をしてみたい
5.必要なのは、それ相応の覚悟

リスクを上回る「好きの気持ち」

「好きなことを仕事にする」ことほど幸せなことはない。俳優・志尊淳が伝えたい想い

ーー志尊さんは今、好きなことを仕事にしていらっしゃると思いますが、好きなことを仕事にすることについてどう思いますか?

僕の場合、やっていくうちにどんどん好きになっていったというパターンなんですが、「好きなことを仕事にする」ことほど幸せなことはないと思いますね。好きになっていけばいくほど視野もどんどん広がるんじゃないかと思うし。

でも、好きなことを仕事にすると、どうしても好きなことの嫌な部分も見えてくると思うんです。「そういう考え方をしないとビジネスにならない」とか。そういう面もあるけど、好きなことだったら続けられると思うし、やっぱり好きに越したことはないですよね。

ーー今のお仕事を好きになるきっかけはあったんですか?

特にこれというきっかけがあったわけではないのですが、日々やることで自然と好きになっていった感じなんですよね。

もちろん今も好きなことをやらせてもらってますし、好きだからやってるんですけど、だからといってひとつも弊害がないわけではないですし、いろんなリスクも背負ってると思います。そういったことを踏まえた上で、やるかやらないかを決めるのは個人の問題ですけど、それを上回る「好き」の気持ちがないとやれないだろうなと思います。逆を言うと「好き」を趣味にとっておく人もいるだろうし。

ーー確かにそういう選択肢もありますよね。でも、好きなことを仕事にする醍醐味もあると思うんですが、好きなことをして生きていくためには何が必要だと思いますか?

やっぱり自分が好きな分、リスクも背負わないといけないことですね。全部が全部好きなことばかりで、プラスしかない状態でやっていけるわけはないので、好きの気持ちとそのリスクを天秤にかけたときに好きの方が大きいと思えるのであれば、そのリスクを背負う覚悟を持つことが必要なんじゃないかと思います。

ーー役者のお仕事はだんだん好きになっていったそうですが、「この仕事を一生の仕事にしよう」と決められたのはいつ頃なのでしょうか?

決めてないですよ、今でも。今、目の前にあることを全力でやる、ということを大切にしているので、先のことはあまり具体的に決めていないんです。

ーーそうなんですか!? じゃあ、将来的にほかの仕事をする可能性もある?

あるかもしれないですね。

ーーちなみに、やってみたい仕事はありますか?

そうですね……なにかをプロデュースすることには興味があります。服とか、お店とか、あるいは人とか。どんな仕事をするにしても、プロデュースって必要じゃないですか。芸能界というところはやっぱり特殊で、それぞれが個として輝いていかなきゃいけないと思うんですけど、そういった意味では少なからず携わってきたことではあるので、もし、なにかをプロデュースすることができたらおもしろいかな? とは思います。

ーープロデュース業って、たとえば役者のお仕事をしながら洋服のブランドをプロデュースするという方もいらっしゃいますし、今のお仕事と並行しながらすることも可能なように思います。

でも、僕はあんまり副業とかできないタイプなんです。やっぱり、ひとつのことをやっていたら、そのことに集中したくて。なぜかというと「副業だから」ということが言い訳にできるというか、失敗してもそのせいにできちゃうんですよね。そういうことには絶対、僕はしたくないので。

抑圧される必要も、はみ出る必要もない

「好きなことを仕事にする」ことほど幸せなことはない。俳優・志尊淳が伝えたい想い

ーー志尊さんは学生時代から今のお仕事をされてきていますが、学校を卒業してお仕事1本になったとき、不安はありませんでしたか?

もちろんありました。この仕事でやっていける保証なんてないですし。でも僕、仕事を始めたのが16歳で、高校生だったので、この仕事がダメでも生きていけるという確信はあったんです。

だから「まだ大丈夫だろう」って。まだ若いんだし、挑戦しよう!って思えましたし、しかもこの世界の場合、成功しても失敗しても全部が自己責任になるというか、自分で責任をとれるので、そこは躊躇せずにいこうと思いました。

ーー若い人に限らず、今の日本には「周りと違う行動をする=変わっている(よくない)」という風潮があると思うのですが、そういった空気についてはどう思いますか?

どちらの意見もわかるんですよね。やっぱりそれぞれの文化があって、継承されているものがあって、それがその国の色だと思うので、ほかの国から見た場合、そこが日本のよさでもあると思うんです。

でも、表現に関しては別に足並み揃える必要はないと思います。表現を形にする過程で足並み揃えなきゃいけないっていうことはあるだろうし、順序を飛ばしちゃいけないとかは大切だと思うんです。

けど、表現とかアイデアとか、自分の才能から生まれるものというのは、むしろどんどん出していったほうがいいんじゃないかな。時代が変わるにつれて継承されるものも変わっていくし、これからもいろいろと変わっていくと思いますけど、時代の空気に抑圧される必要もないし、かといってわざわざそこからはみ出そうとする必要もないと思います。


それぞれが持っているものを磨く

「好きなことを仕事にする」ことほど幸せなことはない。俳優・志尊淳が伝えたい想い

ーー続いて、映画『走れ!T校バスケット部』のお話をお伺いします。最初に今作のオファーがあったときはどう思いましたか?

僕はスポーツ群像劇というものに憧れを持っていたので、すごく興味があって。そのあと原作と台本を読ませていただきました。この作品が実話に基づいたもので、原作をお父さまが書かれていたんですけど、最終回の途中でお父さまが亡くなられて、息子さんが継承して続きを書かれたんですね。そういう軌跡というか、描かれていなかったとしてもその気持ちを受け継いで、僕が作品を通して表現したいなと思って引き受けさせていただきました。

ーー撮影前に約3ヶ月間バスケを練習されたそうですが、どういった練習をされたのでしょうか

ひとりで練習することもあれば、みんな集まるときもあったんですけど、限られた時間の中で「うまく見せる」ことができるように練習しました。それぞれが持っている元々のポテンシャルの高いものを磨いていこうという方針でやっていました。

だから、全体で練習する横で、先生とマンツーマンでやる人たちが時間ごとに区切られて、それぞれのプレースタイルを磨きつつ、チームプレーも練習してました。ときにはボールを持たずにずっと基礎練という練習もあって、本当の部活のようでしたね。そういった練習を通じてみんなとコミュニケーションがとれていったのかなと思います。

(C)2018「走れ!T校バスケット部」製作委員会

ーー志尊さんが重点的にやった練習はなんでしたか?

声を出すことです。練習でスキルを磨くことも大事なんですけど、今回の作品はフェイクドキュメンタリーの要素があって、みんな経験がないところからうまくならなきゃいけないので、どうしても「仕事」って考えると小難しくなっちゃうじゃないですか。だからみんな楽しんでできたらいいなと思って「とりあえず声だけは出そう!」って。

ーー志尊さんが演じた陽一の魅力はどんなところだと思いますか?

ずっと前を向いているところと、穏やかなところですね。僕が今回心がけたのは、しっかりと周りを見るということ。それと、勝手に自分に課していたルールがあって、それは「作品中でそれぞれに1度はさわる」ということなんです。たとえば落ち込んでいる人に「大丈夫だよ」と声をかけるシーンでは背中に触れるとか、ゴールを決めたらハイタッチをするとか。陽一って周りを気遣うことのできる人だと思うので、そういうディテールを入れるように心がけました。

もし中学生に戻れるなら、恋をしてみたい

「好きなことを仕事にする」ことほど幸せなことはない。俳優・志尊淳が伝えたい想い

ーー映画のハイライトといえばやはり最後の決勝試合のシーンだと思うのですが、撮影で大変だったことや印象深かったことを教えてください。

まず、決勝シーンの前日に3on3のシーンを撮ってるんです。だから2日連続でバスケシーンを撮っていて……3on3でもみんな、かなりクタクタで。バスケって、短時間に全力疾走するんですけど、カット割りによってはカメラに映らないシーンでも僕らが全力疾走してるということもあるので、そういうシーンも含めると相当走ってるんです。

だからやっぱり、だんだんみんな普段の練習では決められたことが決められなくなってくるし、時間の限りもある。エキストラさんもたくさん見ているし、プレッシャーもありました。でも、だからこそ団結しましたね。気持ちが重なったなという感覚がありました。なので、試合が終わったあとのシーンではみんなほんとに感極まって泣いちゃってました。

ーー撮影中、このメンバーでよかったなと感じる瞬間はありましたか?

みんなが穏やかだったことがT校の色になってるなということは最初に感じました。いい意味でそこまで貪欲さがないというか。普段から貪欲さをあまり出さないタイプの人が多かったんですよ。それはなんか、T校に合ってるんじゃないかなと思って。でも、ついさっきまで爆笑しながらしゃべってても、いったんカメラが回るとスイッチが入って、すごく熱くなれるところもいいなと思いました。

ーー陽一がバスケに熱中していたように、志尊さんが中高時代に熱中していたことはありますか?

高校時代からこの仕事を始めていたので、高校は仕事に熱中していたということになるんですけど、中学時代は勉強と部活ですね。野球部で、4番でキャッチャーだったので、ドカベンみたいな感じというか、体もデカくて70kgぐらいあって、やめるにあたって18kg絞ったんですけど。中高時代、唯一心残りがあるとすれば、ちゃんと恋ができなかったことですね。男子校だったので、出会いがなくて。だから、もし中学時代に戻れるなら恋をしてみたいです。

必要なのは、それ相応の覚悟。

「好きなことを仕事にする」ことほど幸せなことはない。俳優・志尊淳が伝えたい想い

ーーこれまでいろんなスポーツを経験されていますが、スポーツをやっていたことが役者の仕事に生かされてるなと思うことはありますか?

役者という仕事をしている以上ムダな経験はないと思ってるんですけど、その中でも身体的な部分というのはやってないと身につかないと思うんですね。僕は昔からずっと体を動かすことが好きだったので、役者を始めて、いろんな役を演じる中で、絶対に今までやってきたスポーツが糧になっているということは確信を持てますし、この仕事をしていなかったとしても絶対プラスになってたと思います。

精神面で実感することはそんなにないんですけど、今の自分の幹となっているものは、小学校や中学校の頃にスポーツをやっていたときの考え方だと思うんです。「何かをやりとげる」とか「あきらめない」とか「負けたくない」とか、そういう気持ちってスポーツをやることでより芽生えやすいと思うので、そういうことを学ばせてもらったなと思います。

ーーでは最後に、今進路や将来について悩んでいる大学生に向けて、好きなことを仕事にするためのメッセージをお願いします!

好きなことだけをしてお金をもらうというのは幸せなことですが、それだけじゃ長続きしない。「好きなこと」とひと口に言っても、その中にいろんなことがあると思います。どれだけ割り切ってできるかも大切になってきますし、それ相応の覚悟を持つことも必要だと思います。みなさん、是非がんばってください!

志尊淳オフィシャルサイト
https://www.watanabepro.co.jp/...

『走れ! T校バスケット部』オフィシャルサイト
http://tkoubaske.jp/http://tkoubaske.jp/

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