”いま、いちばん大人に心配されているバンドマン”が伝えたい就活術「面接ではなぞかけがオススメ」#就活逆転メソッド

編集部:いとり

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吉田靖直さんの就活逆転メソッド

―就活に、ほんとうに必要なものって、なんだろう?

「個性やキャラをアピールするのが大事」とされる一方で、「髪型はこうすべき」「履歴書はこう書くべき」などのルールやメソッド(っぽいもの)が多く存在するなど、就活自体が抱える矛盾に、とまどったり悩んだりする人も少なくないかもしれません。

そこで、(就活をちゃんとやっていなさそうな)いろんな業界で異彩を放つ方々に、あえて就活について伺えば、逆に「就活の本質」が見えてくるのでは?

……という仮説を、学生の窓口編集部が検証するのがこの連載『#就活逆転メソッド』。

トップバッターとしてお話を伺ったのは、いま、いちばんいろんな大人に心配されているミュージシャンこと、バンド「トリプルファイヤー」のボーカル吉田靖直さん。

インタビュー中の吉田さん

クールな演奏にダメ人間丸出しの歌詞をのせた楽曲が多くの音楽ファンをひきつけ、『FUJI ROCK FESTIVAL ‘17』への出演を果たす実力者ながらも、『タモリ倶楽部』では、居候生活から脱却するため、バイト先をタモリさんに探してもらう吉田さんの特集が組まれるほどの心配されっぷりを発揮。なんだか勝手に、就活を違う目線から捉えてくれそうな期待感が高まります。吉田さんの母校である早稲田大学の近くのカフェ「RETRO」で、当時を思い出していただきながら、お話を伺いました。

INDEX

「就活は、めちゃくちゃナメてましたね。」

―(編集部、以下編)いきなりですが、就活ってやってましたか?

就活は5年生の夏からやってて……遅いですよね。
文系(早稲田大学第一文学部卒業)だから、(就職先は)営業かSEが多いじゃないですか、でも、営業じゃないなって思って、消去法でSE受けてました。

基本、面接が1回しかない会社選んで受けてて……めちゃくちゃナメてましたね。心構えがマジでなってなくて。

就活って100人に1人とかしか受かんないじゃないですか。4回とか行って受かんなかったら最悪だなって思って。結局、卒業した後の4月に受かって、SEとして就職しました。

面接はぜんぜん受かんなかったんで、当時、なぞかけが流行ってたんでなぞかけをはじめたらすぐ受かりましたね。面接でパッと答えると「頭いいなこいつ」ってなるので、なぞかけはおすすめです。


インタビュー中の吉田さん

「サラリーマンに、世の中舐めんなよ、って言われた」

―内定を取るまでに何社くらい受けていたんですか?

20社くらい受けましたね。でも心構えがマジでなってなかったので、ふつうに説明会遅刻したり……。

面接で五反田から白金まで行かなきゃいけなくて、さまよってたときに、僕を見かけたサラリーマンが車で送ってくれたことがあったんです。

最初はやさしく接してくれたんですけど、「今日面接なんすよ。まぁ遅刻してるんですけどね(笑)」とか話してたら、車を降りるときに「世の中ナメんなよ」って言われて……ハッと言葉を失っているすきに、去っていってしまいました。

―大人に「ナメんなよ」って直接言われる経験って、なかなかないですよね。

それを言われて、特に変わったりしてないですけど、「ちゃんとしなきゃな」って思いは強まりました。

僕って、なんというかまともに見えないじゃないですか。人によっては、犬になら本音が言えるみたいな感じで本音を言ってるのかも……(笑)

独特のゆるい空気をまとう、インタビュー中の吉田さん。

―期間としては短いサラリーマン生活のなかで、印象的だった出来事はありますか?

当時の上司が飲み会で、「社会人に求められてるのはプラスを伸ばすんじゃなくてマイナスをなくしていくこと」って日本人のテンプレみたいなこと言ってて「じゃあ俺マイナス多すぎてダメじゃん」って。それも会社を辞めた理由のひとつですね。

―会社をやめようと思った理由は、やはりバンド?

バンド一本にしようと思ったというより、とにかく仕事をやめたかったっすね。ずっと昼にオフィスいて気づいたら夜になってたり季節も感じられなかったりとか、すげーやだなって。そうじゃない仕事もあると思いますけど……とにかくお金よりも時間がほしかった。生きていければなんとかなるし……あと早起きとかしたくなかったんで。

会社を辞めたとき、解放感しかなかったですね。まぁおすすめはしないですけど。やりたいことにつながる仕事だったらつづけたらいいと思うし、自分を基準にしたらいいと思う。

「グループディスカッションって、マジでムカつきますよね」

―やっぱりいい会社に入らなくちゃ! と思っている大学生も多いと思いますが、そんな大学生にエールを送るとしたら、なんと声をかけますか?

「そういうのよくないよ」って言いたい。学生のときもそういう人キライで。就職ランキング上位のどこに受かったかとか、マウントの取り合いですよね。まあ、今になって思えば福利厚生とかはあったほうがいいとは思いますけど……。

やりたいことより、人が決めた価値観だけでどんな仕事に就くか判断するのってくだらないなって思います。いい会社に就職して偉くなった気でいるけど、会社作った人が偉いだけだから……みたいな。
あと、就活といえば、グループディスカッションってマジむかつきますよね。

―どんなことがムカついたんですか?

僕、話が流暢じゃないんで言いくるめられる対象にされるんですけど、よく聞くとたいしたこと言ってないのに負けた感あって……あと議論に負けた人を諭すことでポイントあげようとする人とかいて。ちょっと鼓動が早くなるくらいむかつきましたね。

グループディスカッションはみんなで協力してやろうよって言いたいです。会社の人が見ても、自然と上に立とうとする人って、いやだと思いますし。

「自分を過信してはいけない」と学んだパチンコの打ち子詐欺

学生時代の少し幼さの残る吉田さん (当時、地元香川の進学塾のパンフレットに掲載された)

―吉田さんの話を伺っていると、自然体というか、ポジティブな意味で身の丈にあったことをやられている印象があります。こういった価値観につながる、大学時代の経験などはありますか?

パチンコの打ち子※のバイト詐欺に引っかかりそうになったことですね。

早稲田大学の入り口で配ってたバイト情報のチラシで見て、(大学で配っているし)信頼度高いと思って電話したら「欲しいものありますか? 車とか欲しくないですか? 儲かりますよ」って言われて……。

別に車ほしくなかったんですけど、とにかく楽して金が欲しかったんで信じちゃって、友達にも教えて二人で「俺たちこれからどうなるんだろうな」って夢を語りました……(笑)

―すごい青春っぽいですね

次の日ネットで検索してみたら詐欺だって出てきて……でもそれでも本当なんじゃないかって信じたくて。自分はそういう詐欺には引っかからないタイプだと思ってたんですけど、そういう状況になると人は信じたいものを無理しても信じるんだなって思いましたね。結局、攻略法教えるには10万円払えとかそういう詐欺話だったんですけど。

―この事件を経て、感じたことなどありますか?

騙される人を馬鹿にできないなって発見はありましたね。いろいろマルチ商法とかあるじゃないですか。それ以降、ニュースの見方とかも変わってきて、自分を過信しないよう気をつけるようになったと思います。

※打ち子…店や人に雇われてパチンコする人のこと。詐欺が多い。

「無駄なことをやめなかったこと」がいまのバンド生活の糧に

―今の仕事のやりがいは?

バンドは自分がやりたいことをやれる範囲が広いのがいいですね。新曲やって、自分も見てる人も楽しくなれたらうれしいです。尊敬してるバンドの人と、ライブとかで話せるのもうれしいっちゃうれしいですし。

大学時代、家でだらだらしている時間を何か役に立てたくて、それがネタになってることもありますね。常識で考えたら無駄なことしてるんで……それをなんとか無駄じゃなかったことにしたい、みたいな。まぁ普通に勉強とかしたほうがいいと思いますけど。

―そういえば、大学時代は何を専攻していたのですか?

哲学専攻で。哲学は、けっこう考え方とか歌詞とかに影響受けてると思います。

いちばん影響を受けたのは永井均さんの『ルサンチマンの哲学』で、「金持ちは心が汚い」みたいに弱者が強者に勝つために嫉妬して価値を作り変えちゃう、とか……そういうことが書いてあって。それを読んで、ニュースへの書き込みとか見ていても、これって嫉妬じゃんって思うことがあるし、自分はそうならないぞ、と思いましたね。そういう「ものを見る角度」を教えてもらったと思います。

―バイトなどもやっていたんですか?

ピザ屋で3年間バイトしてたんですけど……先輩に暴力を振るわれてましたね。空手経験者の先輩に蹴られてました。

―それはつらい……。

吉田さんインタビュー中お写真3

基本、僕って仕事できないじゃないですか。すごい頑張らないと人と同じにならない。バイトやめようと思っても「やめたらお前の家乗り込んでボコボコにするからな」って言われてやめられなかったんですけど、いまは結局、その先輩の家に居候させてもらっています。まあ、切ろうと思った人間関係に助けられているところはありますね。

―大学には5年間在学されていたそうですね。

そうですね、留年して。大学時代は軽音学部だったんですけど周りにも留年してる人が多かったです。軽音サークルは「人と同じことしたくない」と思ってる人多くて、でも何もできないから結局留年するっていう……。


―留年で何か見つかるかもしれないですもんね。

そうですね。まぁ何も見つからない可能性が高いですけど(笑)

いい会社に入らなくても、生きていける

―吉田さんはご実家が神社ということですが、神社を継ぐ予定はあるんでしょうか?

のらりくらりかわしてたんですけど、こないだ実家帰ったら氏子さんにとにかく今年中に車の免許と神主の資格を取るのを約束させられました。

でも、前はただのフリーターだったんですけど、若干メディアとかにも出始めて、バンドを続けたいって言ったときの説得力が増して来たのかなって思います。父親的にはもともと大学卒業したら継いでほしいと思ってたみたいなんですけど……。

やっぱり好きなことをやるっていうだけじゃ通用しないなって。納得する材料がないとだめなんだと思いました。

―この先のキャリアビジョンはありますか?

就活のときにも聞かれたんですけど……先が見えない……(笑)。将来のことはあんまり考えてないんですが、漠然と今の創作とか仕事を金銭的な面でもちゃんとやりたいですね。自分じゃないとダメな仕事がしたいとはずっと思ってたので。


―最後に、就活に不安を抱える大学生にメッセージをお願いします。

「失敗しても生きていけるし、生きてりゃいいじゃん」って。就活ダメだったらもう終わり、ってなんか宗教くさいっすよね。

まぁ「いい会社入らなくても生きていける」……ですかね。

いい会社入らなくても生きていける

まとめ

トリプルファイヤー吉田さんの #就活逆転メソッド

✔就活面接には「なぞかけ」がおすすめ
✔仕事は周りが決めた価値観ではなく自分の価値観で判断しよう
✔就活失敗しても、いい会社に入らなくても、生きていける

大学生の当時、就活はめちゃくちゃナメてかかっていたという吉田さん。それでも、いま活躍の場を着実に広げているのは学生時代からブレずに持っていた「自分じゃないとダメな仕事がしたい」という思いの賜物なのかもしれません。

「いい会社入らなくても生きていける」……
就活で思い悩みすぎたときには、吉田さんのこの一言を思い出してみてはいかがでしょうか。


取材・文/学生の窓口編集部
撮影/中邨誠
撮影協力/早稲田大学、
Le Cafe RETRO(http://lecaferetro.jp/wp/

トリプルファイヤー公式サイト 
http://triplefirefirefire.tumblr.com/

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