【季節の変わり目のだるさ、なぜ起こる?】医師が教える「気象病」の正体と、今日からできる自律神経ケア #もやもや解決ゼミ

朝晩はぐっと涼しくなったのに、日中はまだ汗ばむ日も。そんな季節の変わり目に、「なんとなく体がだるい」「朝起きられない」「雨の日は頭が痛くなる」と感じていませんか?
忙しい時期に限って調子が出ない……というのは、もしかすると「気象病」のサインかもしれません。
今回は、気象病・天気病外来を立ち上げ、7,000名を超える患者を診察してきた、せたがや内科・神経内科クリニック院長の久手堅 司(くでけん つかさ)先生に、気象病が起こる仕組みと、自宅や学校ですぐに取り入れられる対策について伺いました。

秋は「気温ジェットコースター」の季節
気象庁が公開している東京の観測データを見ると、秋の気温は夏から一直線に下がっていくのではなく、上がったり下がったりを繰り返しながら、段階的に下がっていくという特徴があります。 (※)
※2025年8月~12月末 東京の気温推移〈日別〉 出典:気象庁
近年は、1日の最高気温と最低気温の差が10℃以上になる日も珍しくなくなってきました。体はこの乱高下に合わせようと働き続けるため、自分で思っている以上に負担がかかっていると言われています。気温差が10℃前後変化すると、血圧が10mmHg前後変動しうるという報告(※)もあります。 ※出典:オムロン ヘルスケア株式会社 ニュースリリース(2015年4月21日)
先生に聞いた「気象病」のこと
Q. そもそも「気象病」とは何ですか?
久手堅先生:気象病は「自律神経の乱れ」と深く関係しています。自律神経は、呼吸・心拍・血圧・体温・消化・汗などを、意識とは関係なく24時間コントロールしている神経の総称です。体を活動モードにする「交感神経」と、休ませるモードにする「副交感神経」の2つがあり、このバランスで体の調子が保たれています。
ところが季節の変わり目は、「気圧」「気温」「湿度」の3つが激しく変化します。その変化に対応しようと自律神経がフル稼働し、負担がかかることで、バランスを保つのが難しくなるのです。
Q. 自律神経が乱れると、なぜ体調が悪くなるのですか?
久手堅先生:気圧・気温・湿度が変化すると、いずれも交感神経のスイッチが入ります。本来はそのあと副交感神経に切り替わってバランスが取れるのですが、変化が急だったり長く続いたりすると、その切り替えがうまくいかず、体が“緊張モード”から抜け出せなくなってしまいます。
交感神経が過剰に優位な状態では血管が収縮し、血流が低下します。すると酸素や栄養が全身に届きにくくなり、頭痛・肩こり・倦怠感・胃腸の不調などが起きやすくなります。また、自律神経は感情とも密接に関わっているため、気分の落ち込みや不安感、睡眠の乱れにもつながります。
Q. 「気圧・気温・湿度」は、それぞれどう影響するのですか?
久手堅先生:
●気温の変化
寒暖差は自律神経を乱す大きな要因です。一般的に、気温差が7℃以上になると自律神経に負担がかかりやすいとされています。急な温度差に対応するため、交感神経と副交感神経を頻繁に切り替える必要があり、これが続くと自律神経が疲れて体温調節がうまくいかなくなります。
特に冷え症の人は「冷えのぼせ」に注意。手足が冷えると体の熱が体幹や頭部に集中し、手足は冷たいのに汗をかく、ほてる、だるいといった、一見矛盾した症状が出ることがあります。
●気圧の変化
気圧の変化は、耳の奥にある「内耳」が感知します。内耳はとても敏感なセンサーで、わずかな気圧の低下でも「異常事態」として脳に警報を送ります。警報を受けた脳は体を守ろうと交感神経を緊張モードに切り替え、これが自律神経の乱れにつながります。内耳には平衡感覚をつかさどる前庭神経もあるため、気圧の変化でめまいも起きやすくなります。
●湿度の変化
湿度が高いと汗が蒸発しにくく、体に熱がこもって体温調節がうまくいかなくなりがちです。汗を出して体温を調節するのも自律神経の働き。体温調節が必要な状態が続くと、自律神経に負担がかかってしまいます。
気圧の変化だけでなく、湿度の急激な変化も自律神経の大きな負担になります。だからこそ、台風や季節の変わり目といった“変化が激しい時期”ほど注意が必要なのです。
もしかして私も?「気象病セルフチェック」
当てはまるものをチェックしてみましょう。
□ 天気が崩れる前に、頭痛やめまいを感じることがある
□ 雨の日や低気圧の日に、体調が悪くなりやすい
□ 朝、布団からなかなか起き上がれない
□ 季節の変わり目に、決まって不調が出る
□ 肩こりや首こりがひどい
□ だるさ・倦怠感が抜けない
□ 気分が落ち込みやすい、イライラしやすい
□ 寝つきが悪い、眠りが浅いと感じる
□ 天気の悪い日は気分まで沈む
□ 乗り物酔いをしやすい
◎判定の目安:3つ以上当てはまる人は「気象病」の可能性アリ
出典:久手堅 司『気象病ハンドブック:低気圧不調が和らぐヒントとセルフケア』(誠文堂新光社)より抜粋
スマホ姿勢が気象病を悪化させる!?
「背骨と自律神経」の意外な関係
Q. 同じ天気でも、不調が出る人と出ない人がいるのはなぜですか?
久手堅先生:気象の変化は誰にでも起こりますが、症状の出やすさには個人差があります。その差のひとつが「姿勢」です。
自律神経の神経線維は、脳から背骨(脊椎)の中を通って全身へと伸びています。つまり背骨は自律神経の“通り道”。そのため、姿勢の乱れは自律神経の働きにも影響します。
現代人に多いのが、スマートフォンやPCの使用による「首が前に出た姿勢(ストレートネック)」です。この姿勢が続くと、約5kgある頭の重さが首に通常の3倍以上の負荷をかけることになります。首や肩まわりが緊張して硬くなると血行が悪くなり、自律神経が乱れやすくなります。
さらに背骨まわりの筋肉が硬くなると、胸郭(肋骨まわり)の動きが制限されて呼吸が浅くなります。浅い呼吸が続くと交感神経が優位になりやすく、体が緊張状態から抜け出しにくくなるのです。
日頃から姿勢が崩れて体に負荷がかかっているところに、気象の変化という“追加のストレス”が加わることで、不調が強まると考えられます。気象病の対策として呼吸法やストレッチが有効なのは、この「姿勢・呼吸・自律神経」のつながりを整えることにつながるからです。
医師が教える!今日からできる気象病対策
【対策1】呼吸
●胸式の「3・3・5呼吸」(授業の合間やデスクワーク中に)
胸式呼吸は、息を吐くときに鎖骨と肋骨がしっかり下がるため、こり固まりやすい胸郭の動きがよくなります。
1.椅子に骨盤を立てて座り、足首・ひざは90度に曲げる。肋骨の下に手を添え、普段の呼吸で口から3秒かけて息を吐く。
2.肋骨を横に大きく広げるように、3秒かけて鼻からゆっくり息を吸う。肺が大きくふくらむのを感じて。
3. 5秒かけて、肋骨を押し下げるように口からゆっくり息を吐く。
●腹式の「3・3・5呼吸」(寝る前に)
腹式呼吸は副交感神経を優位に導くので、寝る前がおすすめです。
1. 仰向けになってひざを立て、おへそのあたりに手を添える。お腹をへこませながら、3秒かけて口から吐く。
2.お腹がふくらむように、3秒かけて鼻から息を吸う。このとき肋骨は動かさない。
3.お腹をへこませながら、5秒かけて口から息を吐く。お腹と背中がくっつくイメージで。
1日3~4セットを目安に行いましょう。
【対策2】マッサージ&ストレッチ
●耳のマッサージ
耳には自律神経に関するツボが多く集まっています。耳を動かすと耳まわりや頭部の血行が促され、副交感神経の働きが高まります。また、左右の耳の穴を結ぶ線が水平でないと、首が傾いて姿勢がゆがんでいる可能性も。耳のマッサージには体の“横軸”を整える効果もあります。
1. 両耳を指でつまんで真横に引っ張り、10秒キープ。痛気持ちいいくらいの力加減で。
2. 右耳を斜め上、左耳を斜め下に引っ張って10秒。逆も同様に。
3.両耳をつかんで、前に10回、後ろに10回ぐるぐる回す。
4.両耳の付け根のきわを、指で軽く押しながらぐるっと1周する。
5. 両耳のフチを端から端まで、親指と人さし指でつまんでほぐす。1か所5秒が目安。
●背骨のゆがみをリセット「おじぎストレッチ」
1. 足を腰幅に開いて立ち、目線をまっすぐ正面に向けて背筋を伸ばす。
2. 息を吐きながら両腕の力を抜き、腕の重さを感じながら、首の上から背骨をひとつずつ順番に曲げるイメージで、おじぎするように前屈する。
3.指先が足先に届くところまで体を曲げ、首を中心に頭も丸めるイメージで10秒キープ。ももの裏やふくらはぎが伸びているのを感じられればOK。
4.軽く息を吐きながら、背骨をひとつずつ積み上げるように、ゆっくり上体を起こして元の姿勢に戻る。
【対策3】咀嚼(そしゃく)
●“噛む”ことで自律神経のバランスを整える
久手堅先生:噛むという動作は、一定のリズムを繰り返す「リズム運動」です。このリズミカルな刺激が脳の働きやホルモン分泌に影響し、交感神経と副交感神経のバランスを整える方向に働くと考えられています。
実際に、ガムを1回10分・1日3回、2週間噛み続けた試験では、リラックスに関する結果が報告されています(※)。授業の前や移動中など、手軽に取り入れられるのもうれしいポイントです。
さらに、ガムを舌で上あごに押し付けると背骨が伸びやすくなるので、噛むだけでなく、ガムを舌のトレーニングに使うのもおすすめです。
※出典:薬理と治療(2022年 50巻6号、1049-1054)

◇けつろん!
季節の変わり目の不調は「自律神経ケア」でやわらげよう
季節の変わり目のだるさや頭痛は、気圧・気温・湿度の急な変化に自律神経が対応しきれなくなることで起こる「気象病」かもしれません。特に秋は、気温が上下を繰り返す「気温ジェットコースター」の季節。スマホやPCによる姿勢の崩れも、不調を強める一因です。呼吸法や耳のマッサージ、おじぎストレッチ、そしてガムを“噛む”習慣など、すきま時間にできるケアを取り入れて、自律神経を整えながら秋を元気に乗り切りましょう。
※症状が重い場合や長く続く場合は、自己判断せず医療機関を受診しましょう。
◇教えてくれた先生
久手堅 司(くでけん つかさ)先生
せたがや内科・神経内科クリニック院長
医学博士。気圧予報・体調管理アプリ「頭痛―る」アドバイザー医師。「自律神経失調症外来」「気象病・天気病外来」など患者ニーズに応えた特殊外来を立ち上げ、7,000名を超える患者を診察。著書に『気象病ハンドブック―低気圧不調が和らぐヒントとセルフケア』(誠文堂新光社)、『自律神経 これ1冊ですべて整える』(東洋経済新報社)、『不調がデフォな私たちの背骨リセット』(主婦と生活社)など。メディア出演多数。X(旧Twitter)で毎日、気象病予報を発信中。
取材・文:sachi
編集:学生の窓口編集部


























