【第2回】「ただいること」が一番難しい。高田健太が語る、SNS時代のアイドルの在り方
音楽を「聴く」だけでなく、SNSや映像を通じてアーティストの姿や成長過程を楽しむ時代。アイドルに求められるものも、変化しているといいます。
K-POPアイドルとして活動してきた髙田健太さんは、現代のアイドルについて「ただいるべき存在」と語ります。
インタビュー第2回では、著書の執筆を通じて得た気づきから、アイドルとして自分らしくあり続ける難しさ、そして業界やファンとの関係性について伺いました。
※記事タイトルでは「高田」と表記していますが、正式な表記は「髙田」です。
1995年1月10日生まれ、群馬県出身。 2017年、韓国のサバイバルオーディション番組 『PRODUCE 101 Season2』に唯一の日本人練習生として出演。 同年、ボーイズグループ「JBJ」のメンバーとしてデビュー。 2018年からは「KENTA SANGGYUN」として活動。 音楽活動に加え、アート活動にも取り組み、 2021年には日韓で個展「MADE in KENTA」を開催。 2024年1月には初の著書 『日本人が韓国に渡ってK-POPアイドルになった話。』 (KADOKAWA)を出版した。
過去の記憶と向き合う中で気づいた、周囲からの愛情
――前回は、執筆のために過去のつらい経験を振り返ることの難しさについて伺いました。その作業をどのように乗り越えられたのでしょうか?
髙田健太さん: 正直、部屋で一人で書きながらボロボロ泣いた日もありました(笑)。
自分の記憶って都合よく書き換えられがちなので、当時、友人や家族からもらった手紙を読み返したり、オタ活をしていた頃のグッズを引っ張り出したりして、徹底的に客観的な情報を集め直したんです。
そうやって過去をひもといていくと、負の感情以上に「あ、自分はこんなにも愛をもらっていたんだ」「一人じゃなかったんだ」という温かい事実に触れることができて。それが大きな救いになりました。
それに、缶詰状態になって半年間向き合い続けた原稿を書き終えたとき、心底すっきりした自分がいたんです。
――ご自身の辛い記憶を掘り起こす長い孤独な作業の中で、心の支えになったものは何でしたか?
髙田健太さん: SNSなら投稿して1分後には「いいね」やコメントという形でフィードバックがもらえますけど、本を書く半年間はひたすら自分自身とだけ向き合う孤独な時間でした。
だからこそ、身近な人からのフィードバックが本当に心の支えになったんです。
一緒に走ってくれた担当編集者さんや、マネージャーさん、スタッフさん、そして家族。彼らが「間違っていないよ」と客観的なフィードバックを返し続けてくれたおかげで、迷わずに最後まで書き切ることができました。
――そうしたプロセスを経て完成した本が出版された後、ご自身の中で何か変化はありましたか?
髙田健太さん: 「えっ、こんな人まで読んでくれたの!?」というような思いがけない出会いや反響がたくさんありました。
誰かのためにと思って書いた本でしたけど、傷をさらして向き合った作業も含めて、最終的には自分自身が一番癒やされていたんだなと気づかされました。
お金を出して本を買っていただいているのに、僕自身が救われて感謝の気持ちが芽生えるなんて、本当にありがたいことですよね。
「ただいること」が一番難しい。SNS時代のアイドルとは
――書籍の中でも触れられていた「アイドル論」について伺います。出版から数年がたった現在、髙田さんが考える「アイドル」とは、どのような存在なのでしょうか?
髙田健太さん:僕が本を出してからの2年半だけでも、エンタメ業界のスピード感はさらに加速して、大きく変化しましたよね。
かつてはCDを買って音楽を聴く「聴く音楽」の時代でしたが、今はSNSや映像を通じてアーティストのリアルな背景やストーリーを見る「見せる音楽」の時代になりました。
最近オーディション番組が爆発的に流行っているのも、完成されたパフォーマンスだけでなく、「成長プロセスや人間ドラマ」そのものに強いニーズがあるからだと思うんです。
そうした完全な「ファンビジネス」の時代において、じゃあアイドルとは何か? と聞かれたら、今の僕の答えは「ただいるべき存在」なんです。
――「ただいるべき存在」…。シンプルですが、すごく奥が深い言葉ですね。
髙田健太さん: そうなんです。 「ただいる」って一見簡単そうに聞こえますけど、実は一番難しい。
変に作り込みすぎて偽物になってもダメだし、かといってプライベートやリアルを見せすぎても「これってアイドルがすることなの?」と言われてしまう。
過剰な演出で固められていた昔の時代と違って、現代のアイドルって、例えるなら「全裸の自分」でステージに立つようなものなんです。
嘘をついたり軸がぶれたりすると、SNS時代の今は一瞬で見破られて、飽きられてしまう。
だからこそ、何にも頼らずに自分自身で立ち続けるための「強靭な軸(体幹)」が求められる、すごく過酷な時代だなと思います。
アイドルを一人の人間として守るために必要なこと
――SNSの普及によってファンとの距離が近くなる一方、アイドルのメンタルヘルスや人権についても議論されています。こうした現状をどのように感じていますか?
髙田健太さん: アイドルはビジネスであり、お金を稼ぐプロである以上、当然相応の責任は発生します。ボランティアではないですから。
ただ、一人の人間として消費され、すり減って使い捨てられないための「業界全体の仕組み」が、今のファンビジネスにおいては圧倒的に足りていないと感じます。
特にアイドルを目指す子たちは、一般的な社会経験を積む前の若い時期から大人に囲まれて仕事を始めます。そうすると、身近な大人や会社の価値観だけが世界のすべての「正解」になってしまう。
でも、信じていた大人に裏切られたり、離脱されたりしたとき、彼らは心を病んで崩壊してしまうんです。
――そうした環境下で、アイドルとファンの関係性やファンダムの在り方はどうあるべきだとお考えですか?
髙田健太さん: レストランなら「料理」という目に見える商品が間にあるので、提供者と消費者の距離感を保ちやすいですよね。
でもアイドルって、提供しているのが「目に見えない人間性やストーリー」そのものだから、お互いの距離感がバグりやすいんです。
だからこそ、ファンとアイドルの間には深い「信頼関係」が必要だし、それ以前に業界全体が演者を一人の人間として守る姿勢を見せなきゃいけない。
誰か個人をたたいて終わるのではなく、まずは業界の問題を「目に見える形(可視化)」にして、変革していく時期に来ていると思います。
僕が本を書いたのも、そうした問題を可視化する第一歩でした。
――演者が守られ、ファンも安心して応援できる環境づくりが不可欠なんですね。
髙田健太さん:日本で言えば、=LOVEさんなどをプロデュースされている指原莉乃さんのように、ご自身が現場でもまれて演者の痛みを誰よりも知っている方がトップに立ち、適切な距離感で守ってくれる環境はすごく理想的だし、健康的ですよね。
演者自身が安心できるからこそ、ファンも心から安心して応援できる。
そして今、僕自身もこれまでの経験を踏まえて、新しい挑戦をスタートさせているんです。
アイドルとしての経験を通じて、業界の課題やファンとの関係性について語ってくれた髙田さん。最終回となる第3回では、現在取り組んでいる新たな挑戦や、これから進路・キャリアを選ぶ学生たちへのメッセージをお届けします。
(第3回へ続く)
⇒【第1回】「成功者」と呼ばれることへの違和感。髙田健太が自著『日本人が韓国に渡ってK-POPアイドルになった話。』に込めた思い
取材・文:出版甲子園実行委員会
編集:学生の窓口編集部






















