中村倫也「好きだったものを手放した後悔が、今いろんなことにしがみつく原動力」#学生の君に伝えたい3つのこと

人生の先輩である著名人の方々から、まだまだ自由に使える時間が多い大学生のみなさんに、“学生のうちにやっておいたほうがいい3つのこと”をアドバイスしてもらおうという連載「学生の君に伝えたい3つのこと」。
今回は映画『君のクイズ』に出演した中村倫也さんが登場。これまでに経験してきたことから、学生に向けて温かいアドバイスをくれました。
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学生の君に伝えたい3つのこと
中村倫也が<学生の君に伝えたい3つのこと>

1.世界は広いから、対人関係とかで気を揉みすぎない
──学生のうちにやっておいたほうがいいと思うことはありますか?
中村倫也:バンド。楽しそうじゃない(笑)。曲を作ったら大変だから、コピーバンドをやったらいいと思います。大学は学祭があると思うので、そういうイベントをちゃんと楽しむ。俺は高校の文化祭を途中で帰ってバイトに行っていたような人間だから(笑)、思い返したときに楽しめばよかったなとは思いますね。そして世界は広いから、対人関係とかで気を揉みすぎないということかな。
2.年齢関係なく、興味あることのオタクになったらいい
──学生のうちに見たり、聞いたりしておいたほうがいいと思うことは?
好きなものを見ておけばいいんじゃないかな。僕ね、勉強をほとんどしてないんですよ。人生で3ヶ月しか塾とやらに行ったことがなくて、だから偉そうなことは言えないんですけど、大人になって仕事とかでいろいろ調べたりするじゃないですか。そうするとね、例えば日本史や世界史、地政学ってこんなに楽しかったんだと思って。でもそれは僕にとって勉強とは違うんですよね。そうやって能動的に知りたいと思って大人になってから学んだこと、知ったことっていっぱいあって。
年齢関係なく、興味あることのオタクになったらいいんじゃないかなと思います。知りたいことに能動的に触れることは、何かのきっかけで将来役に立つかもしれないし、社会に出てからもそういう特定の分野への興味、趣味というのは会話の糸口になって、コミュニケーションの役にも立ったりするので。かたく考えず、学生のうちは好きだと思うことをやっていればいいんですよ。社会に出たら、いくらでもやりたくないことをやるんだから(笑)。

3.10年後、この経験が糧になったなと思えるといい
──これまで経験した中でやっておいてよかったことはありますか?
やりたくないことも含め、全部ですね。多くの人が言っているかもしれないですけど、簡単に手に入る成功体験よりも、死ぬほど努力して一歩届かなかった失敗のほうが得るものが大きい気がしています。そういう経験を得たときには落ち込むかもしれないけど、10年後、この経験が糧になったなと思えるといいですよね。
原作を読んで、シンプルに読者として楽しく、ハラハラしながら、わくわくした

──5月15日には中村さんが主演を務めた映画『君のクイズ』が公開されます。原作や脚本の印象を教えてください。
原作を読んで、シンプルに読者として楽しく、ハラハラしながら、わくわくしながら読んで。クイズというものは身近にありましたけれど、テレビに出ているようなクイズプレイヤーの人たちは物知りなんだと思っていたら、もちろん物知りだけど、競技としての戦略だったり、「こんなことを考えてるんだ」「こんなやり方があるんだ」とその思考を初めて知って、そこがまず面白くて。
そこから台本では“吉野組あるある”のト書きだけじゃどうなるのかがよくわからない映像表現もありましたけど(笑)、自分はある程度、吉野組をやっているんで「こういうことなのかな」「面白いこと考えるな」とか思いながら読んで。
原作はほとんど三島のモノローグで進むところが、映画となると絵が変わらないというところもあるし、観客への間口としても検証番組というスタイルをとっているんですけど、コンペをして原作者の小川(哲)さんも面白がってくれたみたいで、そのプランで映画化になって。それによってより(中村さん演じる)三島とか、(神木隆之介さん演じる)本庄、(ムロツヨシさん演じる)坂田だったり、人の物語にフォーカスが行きやすくなったかなと思いながら、現場に入りましたね。
──三島玲央という役柄については、どんな印象を持ちましたか?

すごくストイックなやつですよね。演出的なことについて吉野さんとはあまり喋らないんですけど、それこそ原作の三島は、物語がモノローグで書かれているので読者も事細かに機微がわかるんですよ。
だから最初に吉野さんに「この映画では、原作よりもうちょっと何を考えてるかがわからないやつってことでいいんですか」と聞いたら、「そうだと思います。クイズのためにいろんなことをそぎ落としてシンプルに、それこそ人生を捧げてる人だと思います」みたいなことを言われて、「あー、なるほどな」と思って。
そのストイックで分かりづらい部分と、とてもナイーブで柔らかい部分と、いろんなことがこの三島という人間の中にはあって、それらを丁寧に摘み取って、それぞれ存在させていかなきゃいけないな、みたいなことを考えました。
作業量は多いけど、やりがいのある、噛みごたえのある役作りだった
──クイズプレイヤーという役柄を演じる上で、勉強したことはありますか?
今回QuizKnockさんが監修で入ってくれているんですけれど、QuizKnockさんのYouTubeを観たり、それぞれの著作とかも読みました。
特に、伊沢(拓司)さんが書いていた「クイズ思考の解体」はすごくためになりましたね。この間、全然関係ない仕事でTBSに行ったら、向かいの楽屋が別の仕事で来ている伊沢さんで、ノックして「すいません、いいですか」と挨拶して。はじめましてだったんですけど、「すごく勉強させてもらいました」ということを伝えたかったんですよ。
そしたらこの映画を観てくれていて、「ありがとうございました」と言ってもらえたんで、「あ、クイズプレイヤーお墨付き」と思いましたし(笑)、楽しんでもらえたならよかったなと。
それこそ競技クイズ大会の映像とかもYouTubeで見漁ったんですけど、回答の仕方にも人間が出ているんですよね。「やたら押していくな、この人」という人もいれば、堅実に押す人も、ポイントの状況によってリスクを冒して押していく人もいて。そういう様からその人の機微を見て取れるし、クイズを解くに当たっての考え方や仕組み、戦略、それぞれの個性がすごく勉強になりましたね。
──映画の中でも、三島や本庄のボタンの押し方やクイズの答え方、そのあとのリアクションにもそれぞれの違いが出ていますよね。

解答席に立ったときは、いつもの彼らとは違うじゃないですか。勝負だし、緊張感のある中でどういう動きになるのか、どういう思考が巡っているのか、正解や不正解でどんなリアクションをとるのかというのは、刻一刻とポイントが競り合っていく中でそれぞれの人間が出るというか。
三島は質実剛健で積み重ねのタイプで、クイズに正解することにある程度特化して、テレビをあんまり意識していない。本庄はちゃんと客を楽しませつつ、クイズに答えていくので、そういう差もありますし、クイズ大会の映像を見て一人ひとりの機微が見て取れると感じたように、ふとしたニュアンスを役作りプラスアルファとして出せたらいいなと思っていたら、りゅう(神木さん)もいろいろ準備していましたね。
非常に作業量は多いけど、やりがいのある、噛みごたえのある役作りだったなと思います。
見抜かれるかどうかは別として、役者もその回答に人生が出る
──神木さん、ムロさんとの共演はいかがでしたか?
ムロさんは本当に人を食った芝居が上手で、僕は今回がムロツヨシ史上一番のハマり役と宣伝していこうと思っているんですけど(笑)、大いに信頼できる二人との共演は、それぞれがちゃんと緊張感を持ちつつ、的確な矢印を真ん中の僕に飛ばしてくれたことがすごくありがたいし、さすがだなと思ったし、楽しかったです。
ムロさんもりゅうもそれぞれに対峙するシーンがあって、ひとりで台本を読んだり、イメージしていたものを明らかに超越するものになったんで、それを感じられたときは役者としてすごくいい日だったなと思えて。二人とも真ん中(主演)もやる人だから、真ん中をどれだけ動かせるかって両サイドが大事なんだとやっぱりわかるんだと思うんですよね。別に僕のためというわけじゃないですけど、僕自身のことを分かってくれていて、役者、仕事としてもものづくりを分かっている二人が好きにやってくれたんで、楽しいことがいっぱいありました。

──作中で「クイズプレイヤーはその回答に人生が出る」というセリフがありましたが、中村さんがお仕事とされている演技においても、同じことが言えると思いますか?
そういうものです。特に舞台を観ていたらすごくわかります。「こいつ、こういうやつなんだな」って。同業者だからというのもあるかもしれないですし、人によってはそんなことないと思うかもしれないですけど、僕はすごく出ると思いますね。
でもきっとアーティストとか、壺を作る人でも、曲を作る人でも、ライターさんでも、宣伝担当でも、マネージャーでも、どの立場でもやっぱり人って出るんじゃないですかね。
それを見抜かれるかどうかは別として。役者はまあ、どうしようもなく出ますよね。まずこの面がね、生きてきたもの、そのまんまじゃないですか。だからイヤですよね(笑)。でもしょうがない、それでやっていくしかないですからね。
成功も失敗も、褒められたことも罵倒されたことも、すごく血肉になっている。
──経験が仕事に生きていると実感できることもありますか?
実感できますね。仕事に関していえば、本当に若い頃から「これだけボーダレスにいろんなことをやっていいの?」と思うくらい、いろんなことをやってきたんで、その経験は成功も失敗も、褒められたことも激しく罵倒されたことも全部含めて、すごく血肉になっているなと思いますし。
でも、それもどう噛み砕いて、自分の人生の道を舗装する材料に使えるかどうかなんだとは思うんですけどね。僕と同じ境遇でも、まったく違う人生を歩いている人もきっといるだろうし、やっぱりどんなものも食べ方なんじゃないですかね。
──映画では三島がクイズに魅了されるきっかけも描かれていましたが、中村さんが学生時代に熱中したことは?
高1まではサッカーをずっとやっていて、四六時中、七曜日サッカー漬けでしたね。辞めて、高2から養成所に入って高3の夏からこの仕事を始めたんですけど、その頃はレンタルビデオショップで年間300本くらい、いろんな作品を借りて観ていましたね。でもそれは熱中というか、一個一個が趣味の延長で好きでやっていたことでしたね。
──では、今までで一番夢中になったことはなんですか?
サッカーです。小5のときは、朝5時からサッカーしていました(笑)。冬の朝5時とか、友だちを誘っても誰も来ないんですよ。サッカーをしてから学校に行きたいくらい、サッカーをしていましたね。
──今振り返ってみて、それだけ頑張った経験があってよかったと思いますか?
頑張ったというよりも楽しくてやっていたんです。高校は強豪校に入ったんですけど、そのときに「俺はレギュラー争いとか、勝った・負けた、プロになるどうこうよりも、みんなで協力して、サッカーというツールで目標に向かって頑張ることが楽しかったんだな」「俺が好きなのは趣味のサッカーだな」と気づいて辞めたんですよ。
サッカーは大好きだけど、ガチもんのサッカーをやる気にはなれない挫折というのを経験したんです。だから頑張ってよかったというよりも、好きだったものを手放した後悔が、今いろんなことにしがみつく原動力にはなっています。
物心ついてからずっと当たり前にあったものを自分で辞めると決断を下した、自分の心が辛かったんですよ。あんな思いはもうしたくないから、次に始めたことは中途半端に投げ出しちゃダメだなと思って、役者で食えなくてもなんとかやれていたところはあって。だからそういう意味でもやっぱり失敗というか、喪失のほうが得るもの大きいなと、僕は思います。

中村 倫也さんから学生のみなさんに手書きのメッセージ!
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PROFILE

中村 倫也(なかむら ともや)
1986年12月24日生まれ、東京都出身。TopCoat所属。2005年に俳優デビュー。2014年の初主演舞台『ヒストリーボーイズ』で第22回読売演劇大賞優秀男優賞を受賞する。近年の出演作には、ドラマ『Shrinkー精神科医ヨワイー』、『DOPE 麻薬取締部特捜課』、『DREAM STAGE』、映画『ミッシング』、『ラストマイル』、『あの人が消えた』、『ペリリュー ー楽園のゲルニカー』(声の出演)、Prime Video『ベストフレンドハウス2』などがある。5月15日には主演映画『君のクイズ』の公開が控えている。
映画『君のクイズ』5月15日(金)全国公開

■キャスト
中村倫也 神木隆之介
森川葵 水沢林太郎 福澤重文 吉住 白宮みずほ 大西利空 坂東工
ユースケ・サンタマリア / 堀田真由 ・ ムロツヨシ
■原作:小川哲『君のクイズ』(朝日文庫/朝日新聞出版刊)
■監督:吉野耕平(『ハケンアニメ!』『沈黙の艦隊』)
■脚本:おかざきさとこ 吉野耕平
■音楽:Yaffle 斎木達彦
■クイズ監修:QuizKnock
■プロデューサー:大脇拓郎 谷戸豊 田中誠一
■制作プロダクション:ジャンゴフィルム
©2026 映画『君のクイズ』製作委員会
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取材・文/東海林その子
撮影/米玉利朋子
■ヘアメイク:Emiy (Three Gateee LLC.)
■スタイリスト:松本ユウスケ(anahoc)



























