AI時代に生き残る仕事とは?「あなたに頼みたい」と言われる「関係性労働」

ぎぎまき

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吉藤さんが2010年に開発した「OriHime」は高さ30cmもない小さい胴体。首を動かしたり手を上げ下げすることで周囲とコミュニケーションを取ることができる。

外出することが困難なパイロットたちが遠隔でロボットを操作し、接客する「分身ロボットカフェDAWN ver.β」。このカフェを運営し、分身ロボット「OriHime」を開発した吉藤オリィさん(株式会社オリィ研究所)は、かつて人と接するのが苦手でAIを研究していた過去を持ちます。AIを知る彼だからこそ語れる、これからの時代に求められる人材とは。吉藤さんの考えをお聞きしました。

「機能」だけで戦えば必ずAIに負ける

―― ロボットをつくりながらAIの研究もしていた吉藤さんは、これからの時代、どんな人材が求められていくとお考えですか。

いままでは「私はこんなことができます」と就職の面接でアピールするのが常でしたよね。それはつまり「私にはこういう機能が備わっている」というスキルやスペックの話です。

これからは機能だけで勝負しても、AIの進化には敵いません。では人間の聖域はどこになるのかというと、「あなただから頼みたい」といわれる人間味やアイデンティティのようなものを楽しむ時代になると私は考えています。肉体労働、頭脳労働の次に来る「関係性労働」ですね。

―― 「関係性労働」についてもう少し詳しく教えてください。

私たちが運営している分身ロボットカフェでの事例がわかりやすいかもしれません。OriHimeを操作しているのは、さまざまな事情で外出できないパイロットたちで、中には障害を抱えるまでCA(客室乗務員)だったという方もいます。

接客のプロですから言葉はスラスラと淀みなく出てくるし、サービス対応も完璧です。コミュニケーションが苦手な私からするとうらやましい限りですが、あまりに完璧すぎるとどうなるか。お客さんに「中に生身の人間がいる」と気づいてもらえないんです。録音音声やAIのように聞こえてしまうからでしょうね。

一方で、ちょっと関西弁でフランクに話したり、たまに言葉に詰まったりするパイロットの方が、お客さんは「あ、OriHimeの向こうに人がいる」と気づいてくれる。その人のアイデンティティを感じられる会話ができれば、人間味あるやりとりが生まれ、「あの人とまた話がしたい」という次のきっかけにもつながります。

完璧な機能よりも「人間味」が価値になる

――機能よりも、その人らしさが求められるようになると。

完璧に見えれば見えるほど「これAIじゃない?」って疑われる時代ですよね。機械的な機能に徹する仕事ほど、どんどんAIに取って代わられていくでしょう。

でも「あの美容師さんと話したい」「あのスナックのママに会いたい」という動機で人が動くことはあります。これがすでにある「関係性労働」です。機能や効率では測れない、一見ビジネスには無駄にも思えるその人にしかない人間味。AIには踏み込めないそうした人間の強みが見直されるのではないでしょうか。

そしてもう1つ、「いま」という言葉もキーワードになってくると思います。

―― 「いま」ですか?

スマホやパソコンで映画を見る、ゲームをする、SNSを見る、TVを観る、面白い文学を読む。これって全て過去にアクセスする行為です。家族や友だちと話すよりも長い時間を、私たちは過去の人間(アーカイブ)と対話している。人類史上最もリアルの人と会話していない時代だと思います。

それは、今の人間を必要としていない時代とも言えるし、今の人間から必要とされていない時代を生きているとも言えます。そして、若い人ほどそれを敏感に感じている。だからこそ、いまここに生きているリアルな人間同士の関わりが価値になるし、AIが進化するほど求められていく人間の聖域になると思います。

人生を変えるきっかけは「人」が運んでくる

―― 吉藤さんは高校卒業後、AIの研究をされていましたよね。

人間は怖いし喋るのも辛い。私は人の顔色を読み取りすぎてしまうので、「もう人間はいい、人工知能をやろう」と、高等専門学校に通って研究を始めました。友だちを作らずにひたすらパソコンに向かう日々でした。私の研究テーマは「孤独の解消」でしたが、結論を言うとAIに人は癒せない。AIを否定はしません。話し相手になるし、孤独で苦しむよりよっぽどいい。AIがいることで自己肯定できるなら、それは救いにもなります。

ですが、人生を変えるきっかけは、いつだって生身の人間が運んできます。
正解は人それぞれですが、私の人生において一つだけ真理だと思うのは、「自分の性格や人生は自分が決定しているのではなく、どういう人と出会ったかによって決まっていく」ということ。それは、都合のいいことを言ってくれるAIには難しいことなんです。

―― とはいえ、関係性を築くというコミュニケーションに自信のない人もいます。

私自身、不登校で引きこもっていたし、対人恐怖で人が怖い時期がありました。誰とも話さないから、日本語能力も衰えたほど。だから、その気持ちはよくわかります。私の場合は「生身の自分じゃない方法」で社会と関わることに決めました。

―― 「生身の自分じゃない」とは?

私の名前は「健太朗」 で、「健康で太く」育ってほしいという親の願いが込められています。でも実際の私はガリガリで病弱。自分の名前にはずっと違和感があったし、顔も嫌いでした。私という人間と私の名前、私の体も一致していない。そういう感覚を抱く人は、現代には少なくないかもしれません。

オンラインゲームで自分の好きな「アバター」を作った時に、アバターでいる方が本当の自分だと感じられたんです。オフラインでもその感覚のままでいたくて、私は「黒い白衣」を作って着るようになりました。

キャラクターメイキングをして、そこに自分のアイデンティティを一致させていく作業。結果、この黒い白衣を着ていれば自分に自信が持てるし、バカにされても悔しくない。自分の体が自分の居場所だと感じられるようになったのです。

―― アバターの自分をリアルにしていったんですね。

それに、黒い白衣は目立つのでいろんな人から話しかけられます。 自分から話しかけるのは無理だけど、相手に話してもらえる状況にかなり助けられました。そのおかげで大学3年生頃からコミュ障も改善され、人と話すのが苦手ではなくなったのです。 

生身でぶつかるのが怖ければツールを使えばいい。これは分身ロボット「OriHime」の開発にも通じる考え方です。障害があるなら、それをどう取り除くのかを考える。ツールやアバターを介することで、障害やコンプレックスがあるからこそ新しい発見や技術が生まれ、それが価値となります。

―― 若い世代にメッセージをお願いします。

いまの時代、生き方を選択できる自由もありますが、自分で選ばなきゃいけないという自己責任という恐怖もありますよね。何が正解なのかわかりにくい時代でもあります。

個人的に言えることは「このために生きている」という理由を見つけて、それを信じられる毎日はとても生きやすいということ。それを見つけるためにもリアルな人と積極的に関わってください。先程も言いましたが、人生を変えるきっかけはいつだって生身の人間が運んできます。人生はどういう人と出会ったかによって決まっていきますから。


取材・文:ぎぎまき
編集:マイナビ学生の窓口編集部
取材協力:株式会社オリィ研究所  https://orylab.com/

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ぎぎまき

本名です。TV制作会社AD、雑誌編集者、報道記者を経てフリーのライターに。メディアの道に入るきっかけをくれたのは犬。経営者からお笑い芸人まで人物インタビューを主に担当。

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