YOASOBIの仕掛け人に聞いた、学生時代と就活とYOASOBIプロジェクトに至るまでの話し。 「今不安を抱えているのであれば、“安心してください”と伝えたい。」

編集部:ろみ

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国民的音楽ユニット「YOASOBI」の生みの親である、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントの屋代陽平さん。YOASOBIプロジェクトのキーマンとも言える彼に直撃取材。学生時代の話やプロデューサーとしての仕事について聞きました。

大学時代にアニソンに出逢い、音楽業界に就職

――屋代さんが音楽業界に進もうと思ったきっかけを教えてください。

大学で所属していた軽音サークルのメンバーがみんなアニメオタクで、僕は当時『涼宮ハルヒの憂鬱』を知らなかったんですが、勧められるままに観たらどっぷりハマってしまったんです。以来、声優やアニソンが好きになってライブにもめちゃくちゃ行きました。今思うと、それが音楽業界で働くきっかけになっているとは思います。

ただ当時は、就活のために意図的にアニメを観たりライブに行ったりしていたわけではありません。純粋に好きなものやハマっていたものに、周囲の人よりも時間と熱量を注いでいただけ。結果的にそれが採用面接での会話のネタや、入社後にも仕事のアイデアなどで活きているとは思います。

――就活も最初から音楽業界一択だったのですか?

いえ、就活はまったく違う業界も受けていました。僕が大学3年生で就職活動を始めた頃はリーマンショックの影響を受けて不況でしたし、その後東日本大震災に見舞われ、どの企業も採用を控えるいわゆる就職氷河期だったんです。

そんな時代だったので、就職先としては銀行や証券会社・保険業界などが人気で、サイバーエージェントやグリーなど今でいうメガベンチャーを志望する学生も多くいました。むしろそれらの企業を受けないやつは“アホ”というくらいでしたから。

割合的には大体、採用試験を100社受けたとすると、そのうち5社くらいがエンタメ業界の会社というくらい。特に音楽業界と出版業界は不況中の不況だったので、「そんなところを目指すのはやめたほうがいい」と言われていました(苦笑)。

新規事業として、ゼロからYOASOBIプロジェクトを始動

――ソニー・ミュージックエンタテインメントでは、これまでどんなお仕事をされてきたのですか?

僕の仕事は、主に新規事業の開発や運営。YOASOBIのプロジェクトもまさにそのひとつで、入社4年目のタイミングでYOASOBIが誕生するきっかけとなった小説投稿サイト「monogatary.com」を立ち上げ、2019年11年に『タナトスの誘惑』という小説からYOASOBIの楽曲「夜に駆ける」をリリースしました。現在も、「monogatary.com」の運営や制作を行うとともに、YOASOBIのマネージメント及びレーベル事業も担当しています。

ーーYOASOBIは老若男女に大人気ですが、プロモーションをする上で特に注視している世代はあるのでしょうか?

全世代向けや一定の世代だけを狙って曲をプロモーションをすることはありません。ただ若い世代にとって、音楽って学校生活の中での話題になりますし、仲間内で曲が広がれば好きになってもらいやすいとは思います。さらに小さな子供の心に響いて毎日歌ったり踊ったりしてくれれば、親御さんはそれを無意識に目にするわけです。そういう意味では、学生やもっと下の世代に刺さる可能性の高いものを提供することで、彼らを媒体として他の世代にも広がっていくという事実はありますし、意識もしています。

例えばライブ会場で子供の耳を守るためにイヤーマフを貸し出したり、ファミリー席のチケットを販売したりして親子で一緒に来られるというメッセージを発信するなどの工夫をしていますね。

ですが一方で、40代の大人から「これって若い子向けのものだよね」と思われてしまえば、まずライブには行かないでしょうし、曲も聴いてもらえないかもしれません。そのため、幅広い年代の方々が「自分もハマっていいものかもしれない」と思うことができ、応援してもらえるプロモーション内容や方法も考えています。

――時代とともにアーティストのプロモーションでソーシャルメディアの役割がより重要になっているかと思いますが、YOASOBIに関してはどのようなSNS戦略を立てているのでしょうか?

YOASOBIの公式X(旧・Twitter)やInstagram、TikTokなどソーシャルメディアは僕が投稿・運営をしています。ユーザーの反応や世の中の動きなど、SNSで得られた必要な情報を二人に共有することはとても大事ですが、前提としてアーティストのプロモーションにおいては、SNSは主役ではないと考えています。シンプルに考えると、アーティストがいて、曲を聴いてくれるお客さんがいればプロモーションは完結するんです。SNSは、あくまでアーティストの曲や言葉を届きやすくするためのツールでしかない。何か仕掛けをするというよりも、アーティストが一所懸命に作った曲を、Xだったらこういう言葉で発信したほうが伝わりやすいかもしれない、Instagramなら別の言葉がいいかもしれないなど、適したプラットフォームで最適な方法をとりながら、愚直に届け続けるしかないと思っています。

好きなことは掘れば掘るほど未来に活きる

――最後に、これから就職活動をする学生に向けてメッセージをお願いします。

僕がこの会社で小説サイトを立ち上げられたのも、Ayaseと出会ってYOASOBIプロジェクトの実現に向けて情熱を注ぐことができたのも、学生時代に原点になったカルチャーに熱中し、その面白さを自分の言葉で人に伝えてきたからだと思っています。それは誰のためでもなく、自分のハマっていることをみんなに知ってもらいたいというピュアな思い。最初から好きなものを仕事にしようと考えていたわけではありません。

たまたま同じものを面白いと思う人たちが周囲に集まってきて、それぞれの得意分野で活躍することでYOASOBIのチームが作られているのです。

僕は学生が世の中に対して無知だとはまったく思いません。むしろ、学生の方がリアルな目線で世の中を捉えている場合だってあるはずです。ただ、彼らの目線からは5年後、10年後の未来が見えづらいのも事実。そこに今不安を抱えているのであれば、“安心してください”と伝えたいです。

あまり先のことばかりを考えても仕方がありません。それよりも、今身の回りにあることを真っ直ぐに突き詰めていけば、それが5年後、10年後何かに活きてくると思っています。特にエンターテインメント業界においては、好きなものは深く掘れば掘るほど価値が高くなるので、未来を不安に思わず、突き詰めていってください。

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文:安藤茉耶
写真:学生の窓口編集部

編集部:ろみ

編集部:ろみ

学生時代はスペイン語専攻。南米アルゼンチンに留学していたラテン系関西人。好きなものは海外の音楽・映像鑑賞とお酒です。ママになり、最近は子供が寝た後に海外ドラマや韓流ドラマを見るのが息抜きです。素敵な言葉や音楽、映像などのコンテンツは、自分自身を助け、励まし、成長させてくれるものだと思います。読者のみなさんに素敵なコンテンツに出会える機会をたくさんお届けしたいという想いで仕事をしています。

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