【マンモス復活できる?】絶滅した動物のクローン作成は可能ですか? #もやもや解決ゼミ

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映画『ジュラシック・パーク』も夢ではない⁈(pixta)

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今回は、「人類の夢」かもしれない「絶滅した動物を復活させることは可能か?」です。

映画『ジュラシック・パーク』では、「コハクに閉じ込められた蚊から恐竜のDNAを採取してクローンを作るという設定」でした。これは、あくまでもマイケル・クライトン作のSF小説のお話。恐竜でなくても、絶滅した動物をクローン技術で復活できれば、「絶滅種の動物園」だって夢ではないかもしれません。

今回は、クローン研究の第一人者である若山照彦先生にお答えいただきました。若山先生は、2008年に「16年間冷凍保存していたマウス」のクローン作成に成功していらっしゃいます。

マンモスの復活は難しい!

例えば、マンモスの復活を考えてみましょう。

画像:写真AC

マンモスのクローンを作るわけです。永久凍土の地層からマンモスの死骸が幾つも見つかっていますが、ここからDNAを採取しなければなりません。しかし、クローン作成に使えるに足る、状態が非常によく保存されたDNAを見つけるのが難しい。

永久凍土といっても、地表に出ていて見つけやすい死骸は毎日凍ったり溶けたり を繰り返すので、そのような環境ではDNAはボロボロになってしまいます。また、日中に浴びる太陽からの紫外線もDNAを傷つけます。

永久凍土の深いところに埋まっているマンモスが見つかればいいのですが、広大なシベリア平原のどこかに埋まっている見えないマンモスを探し出せる技術はありません。

また、たとえ状態の良いDNAが採取できたとしても、次の過程が問題です。

ゾウからたくさん卵子を取り出し、マンモスのDNAと入れ替えてクローンマンモスの胚を作り、これをゾウの子宮へ移植してクローンの胎児を育ててもらわないといけません。

これを借り腹といいますが、ゾウにマンモスのクローンを生んでもらうわけです。

でも、実はまだゾウの生殖そのものがほとんど分かっていないので、マンモスのクローンを作る前にゾウのことをよく知る必要があります。

例えばどうやってゾウから卵子を採取するのか、卵子はどんな培養液で培養するのか、クローン胚を子宮へ移植するための手術方法は?などです。そもそもゾウは数の少ない希少な動物なので、捕まえて詳細に調べることから難しいのです。

これはどんな研究でも同じことですが、新しい研究は何度も失敗を繰り返してようやく成功します。

マンモスのクローンに成功するまでどのくらい失敗を繰り返すのか予想はできませんが、恐らく千頭ぐらいのゾウが必要だと思います。

これは現実的な話ではありませんね。

また、時間の問題もあります。ゾウの妊娠期間は22カ月、約2年です。うまくクローン胚を子宮へ移植できたとしても、成功するか失敗するかは2年後にしか分かりません。

もし失敗したら原因を調査し新しい実験を行うのですが、その結果が出るのにはまた2年間待たなければなりません。2年ごとに1回しかできない実験を何度も繰り返すとしたら、成果が出るまで数十年どころでは済まないかもしれません。

さらにお金の問題も出てきます。

ゾウ1頭の飼育だけでも膨大な費用が掛かるのに、千頭のゾウを数十年間飼い続けることが必要です。もう想像すらできないくらいの飼育費が必要になるはずです。

つまり、マンモスをクローン技術で復活させることは、たとえ作製が可能なほど状態のいいマンモスのDNAが採取できたとしても、上記のような経済的な問題が立ちはだかるというわけです。

そこで、例えばアメリカでは、ゾウの遺伝子を操作してマンモスの毛を生やし、見た目がマンモスのゾウを作り出そうとしている研究者もいます。

なんとか「ニホンオオカミ」を復活できないか?

ではマンモスではなく、日本では絶滅してしまった「ニホンオオカミ」であればどうでしょうか。

日本には永久凍土がなく凍結死体は手に入りませんが、ニホンオオカミの場合は剥製が残っています。

もし、剥製からクローン作成に使えるDNAが採取できれば、オオカミはイヌの仲間なのでイヌの卵子や子宮を使ってオオカミをクローンとして復活させることができるかもしれません。ゾウと違って妊娠期間も短く、結果が得られるまで時間が短くて済みます。

ただし、日本の場合はイヌを科学的な実験に使うのは難しいし、そもそも剥製から利用可能なDNAを採取する技術についてもまだ確立していません。

でも「できない」というのはまだ技術が開発できていないからであって、開発できた瞬間から「できる」になります。いつになるかわかりませんが、ニホンオオカミがクローンで復活する日は来ると思っています。

クローン技術は畜産に役立つ!

クローン技術は医学分野でも役に立つと考えられていますが、私は農学系出身なので、クローン技術を農学系で役立てたいと思っています。

いろいろな応用方法はあるのですが、一番実現したいのは「和牛のクローン」です。

実は、「和牛」というのは、お父さんが和牛、お母さんが和牛でも、生まれてくる子牛が和牛になるとは限らないのです。おいしい肉質を持った子牛だけが和牛として認定されるため、出荷できる和牛の数が減ってしまうのです。

しかし、レストランで和牛のステーキを食べ比べ、おいしかったステーキのお肉の一部からクローン和牛を作ることができたら、そのクローン和牛のお肉は絶対においしくなります。

そして全国で200万頭ぐらい飼われているホルスタイン種を借り腹にしてクローン和牛を産ませれば、クローン和牛を大量に生産することでき、誰もが高級和牛のお肉を安く買えるようになります。

一方、クローン技術は家畜の品種改良にも役立ちます。

例えば「病気に強い」「暑さに強い」といった品種を生み出すために、野生種を確保して既存種と交配させる場合があります。

ただし、 野生種というのは捕まえるのが難しいだけでなく、数が少なく絶滅危惧種に指定され保護されている場合もあり、なかなか野生種を交配に利用することは難しいのです。

しかし、クローン技術は、なんと尿に含まれているわずかな細胞(膀胱の内側の細胞が剥がれ落ちたもの)からでもクローン動物を作れます。

この方法なら、野生種を捕まえなくても野生種のクローンが作れます。また、絶滅危惧種を大量に増やすこともできるようになります。

つまり、クローン技術とは、和牛を大量に生産するだけでなく、野生種が持つ貴重な遺伝資源を保存するためのものでもあるわけです。私は、次世代の畜産業はこのようなクローン技術を用いたものになると考えています。


◇けつろん!

まずクローンを作るうえで必須の、良質な試料(DNA)が手に入らない動物は、復活できません。

「それなら」というので、例えば「ゾウ」の遺伝子を組み替えて、毛をフサフサにしたり、牙を生やそうとしたりという試みはありますが、それはかつて地球上に存在したマンモスではありません。

また試料がうまく入手できたとしても、クローン胚を作り、育て、実際にクローン動物を作れるかは恐らく技術的な試行錯誤が必要で非常に難しいのです。その技術が確立されたとしても、コストは合うのかなど、経済的に可能かどうかも大きな問題になります。絶滅動物を人間の勝手な行為で復活させてもいいのか、という倫理的な問題もあります。

しかし、もしそれらの困難を乗り越えることができれば、近い将来、あるいは100年後かもしれませんが、「可能性はある」とのことです。

◇教えてくれた先生

若山照彦
Profile

『山梨大学 発生工学研究センター』 センター長・教授。
1990年、『茨城大学』農学部畜産学科卒。1992年、『茨城大学大学院』農学研究科畜産学専攻修士課程修了。1996年、『東京大学大学院』農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程修了、博士 (農学)。1998年、『ハワイ大学』助教授。1999年、『ロックフェラー大学』助教授。2001年、『アドバンスドセルテクノロジー社』主任研究員。2002年、『理化学研究所』発生再生科学総合研究センター チームリーダー。2012年、『山梨大学』生命環境学部 教授。2014年より現職。

文:高橋モータース@dcp
編集:学生の窓口編集部

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株式会社デジタル・コンテンツ・パブリッシング
編集プロダクション。コンテンツを制作する「よろず屋」です。取材をして原稿を書き、編集、校正を行って多くのWebメディアに納品しています。https://dcp.jp.net/

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