磯村勇斗「進路のことで親と全然意見が合わず、葛藤の多かった時期」#18歳のころ

編集部:あこ

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著名人の方々に、自身の18歳のころを振り返っていただく連載企画“18歳のころ”。大人と子供の狭間でもある18歳は、未成年から成年年齢に変わる歳でもあり、多くの人が高校を卒業して新しい道を歩むタイミングでもあります。憧れのあの人の18歳のころを知ることで、これからの人生を送る上でのヒントを見つけられるかもしれません。

今回は映画『正欲』で、ある秘密を抱え、葛藤しながら生きる佐々木佳道という役柄を演じた磯村勇斗さんが登場。俳優という仕事を志し、葛藤していたという18歳の頃を振り返っていただきました。

▼白岩瑠姫さん、杉野遥亮さんが登場!
学生の君に伝えたい3つのこと

俳優・磯村勇斗の18歳のころ

18歳は親と意見が合わず葛藤の多かった時期

――18歳の頃を振り返って、印象に残っていることはありますか?

僕はその頃から役者をやりたくて、大学に行かずにどこかの事務所に入るなりして東京でお仕事をしたいと思っていたんですけど、親からはずっと『大学に行きなさい』と言われていたんですよ。親は役者をやることをそんなに応援していなくて、『どうせ辞めるだろう』とか、『芸能界は危ない世界だ』と思っていたので、全然意見が合わなくていろいろと喧嘩した、葛藤の多かった時期ですね。お互いのあいだを取って演技が学べる大学に入ったんですけど、とりあえず東京に出られたことだけが救いだったかもしれないです。

――大学生活はいかがでしたか?

いろんな県から同じ年の子たちが集まって、しかも同じ夢を持った子たちが集まるクラスだったので、それはそれで刺激的で頑張れそうだなと入学式のときは思いました。あと僕が18歳のときって、ちょうど3.11のあった年だったんです。ひとり暮らしだけでも不安だったのに東京に来ても余震があって、入学式も春じゃなくて夏手前くらいまで伸びちゃったし、いろんなことがぐちゃっと混ざったときだったんですよね。だから葛藤もしたし、悶々としていたし、不安もいっぱいだった、そんな年でしたね。

一緒に夢を見ていた仲間たちと仕事場で会えたのがすごく嬉しかった

――その当時、学びになったことや得たものはありましたか?

仲間との出会いがあったことはすごくよかったなと思っていて。僕は大学を途中で辞めている身で、そこからもう10年くらい経つんですけど、カメラ好きだった子が取材のときにカメラマンとして現場にいたりなど、あの当時一緒に夢を見ていた仲間たちが実際にそれをちゃんと手にして、仕事場で会えたというのがすごく嬉しかったんです。

――そうやって一緒にお仕事できることは、刺激になりますか?

なりますし、当時一緒に遊んでいた人たちとお互いに真面目に仕事をしているというのがすごく照れ臭かったですね。

――18歳の頃の自分に声をかけられるとしたら、何を言ってあげたいですか?

今がいいので、「そのままでいいよ」とは言ってあげたいかもしれないですね。あとは「バイトはよく考えて選んで」とも伝えたいです(笑)。

――磯村さんから18歳の読者へ、エールをお願いします!

僕が出演した『正欲』を見たときにも感じたことなんですけど、自分が今持っている価値観や考え、そして自分自身を大切にしてほしいです。それが一番の励みになるんじゃないかなと思っています。

誰もが持っているマイノリティな部分を認めてくれる映画

――11月10日に磯村さんが出演された映画『正欲』が公開されます。原作、脚本を読まれてどういったことを感じましたか?

まずは自分も持っているであろう、マイノリティの部分にフォーカスを当てて寄り添うというか、そこが主体になっていることが映画のテーマ性としてすごくいいなと思いました。自分の演じる佳道は人とは違う指向を持っていますが、きっと自分もそうだし、それぞれに人には言えないとか、隠している秘密みたいなものを絶対一個は持っているよなと思っていたので、それを認めてくれる映画になるんじゃないかなというところに僕は惹かれましたね。

――佳道はどういう人物だと思われましたか?

非常に孤独な人物だなと思いましたね。社会から孤立しているけれども、なんとか頑張って仮面をかぶって馴染もうとしていて、でも結果として死ぬという方向を選ぼうとしていて。この世の中で、その道を選ばなくても佳道と同じように考えてしまう人って多いと思うんですよ。そこの重さみたいなものは絶対に大事にしなきゃいけないし、その気持ちには寄り添えるんじゃないかなと思いました。何よりも(新垣結衣さん演じる)夏月という存在と出会ってからの変化はこの映画にとっても大事な部分になってくるので、そこは大切に演じていきたいなと思っていました。

――衣装合わせのときから役についてプロデューサーや監督と話し合いがあったそうですが、どういったことを話したのでしょうか。

今回、佳道の持つ指向が非常に難しいところで、そこをどう理解していくかは監督とプロデューサーと話していてもなかなか見つからなくて。「こういう感じかな」「こういった事象に近いのかな」といろいろ話したんですけど、結局ピンとくるものは衣装合わせのときには見つからず。クランクインまでにちょっと時間があったので、佳道の指向の部分に関してどういう目線で見ているのかな、どういうふうに手や肌で感じているのかなというのをひたすらボーっと体験してみて、そこから台本に書いてある感情に近いものを探っていきましたね。

――その感覚を探っていくことは、現場に入ってからも続いていくのでしょうか。

そうですね。クランクインが男3人で公園で水遊びをするシーンだったんですけど、そのときに「あ、このことかもしれない」とピンと来たんですよね。佳道の核となる部分を自分自身も体験できたというか、吹っ切れたというか。あれで軸が全部作れて、足りない部分が補えたという感覚がありましたね。そこで迷いがなくなったので、クランクインがあのシーンでよかったなとすごく思っています。

作品を観て改めて自分自身を認めてあげることの重要性を感じた

――今作では群像劇としてさまざまな人物が描かれていますが、完成作をご覧になって印象的なキャラクターはいますか?

今回、みんなが魅力的に映っていたなと思います。これほど全キャラが立っている映画というのも少ないんじゃないかなと思うくらい、どの人物の物語にも感情移入ができるというか、見入ってしまったので、そこをうまく繋ぎ合わせた監督もすごいですし、キャスト陣みなさんが自分のパートを生き切ったということだとも思うんです。そこがすごくよかったし、温かったなという感覚になりましたね。みんなが愛おしくなりました。

――佳道という役を演じ、この作品に参加したからこそ感じられたこと、見えてきたことはありますか。

出来上がったものを見て、僕は改めて自分自身を認めてあげることの重要性を感じました。佳道は夏月と出会って救われていくというか、そこから人生が回転していくのでそういった人との出会いも大事ですけど、僕はまず自分の持っているものや感覚を大切にしてあげたいなと思いました。自分が自分の味方になってあげて、それができてようやく他人との関係を築けるのかなと思いました。

――そういった気づきから、ご自分の変化を感じることはありますか?

すごく人に会いたくなりましたね。そんな頻繁に人と会いたがる性格ではなかったのですが、最近は「じゃあ今日は人に会ってみるか」みたいに連絡するようになってきています。

――この作品は、理解できないことや相容れない考えに対峙したときにどうするかと考えるきっかけになると思うのですが、磯村さんは自分とは違う価値観や考え方に出会ったときにどう考えますか?

自分と意見が違っても、その人の言っていることを一回受け入れることが大切なので、そういう話し合いの仕方をしますし、周りは「え?何それ?お前の言ってることわかんない」ということがあっても「いや、それも個性だから」という感覚で人と接していて。そういうふうにお互いが持つものを尊重し合うべきだし、そこで違うと判断することは結局その人の物差しでしかなくて、それは時に個性を潰してしまったり、傷つける武器になってしまうと思うんです。なので、明らかにおかしい、絶対違うと思うことがあっても、一回聞く、受け入れることはクッションとしても大事な気はしますね。

――お仕事の中で監督やキャストの方と考えていることや意見が違うときも、それを一回聞いて考えるということでしょうか。

そうですね。相手の意見を聞いて、それはそれで理解ができれば「じゃあそうしましょう」と言えますけど、そこで「うーん、違うな」と思うことがあれば、その“違う”を埋めるディスカッションをするようにしていて。それは結果的に作品のためなので、押し付け合うとかではなく平和的に、でもしっかりやるようにしています。

きちんと伝えたほうが自分を守ることにも、お互いの学びにもなる

――周りと違う意見を持っているということを言えない、言いづらいという人も多いですが、磯村さんははっきりと言えるほうですか?

僕ははっきりと言えちゃう人なんですよ。自分は良かれと思って話したことが、相手にとってはものすごくイヤだと感じることもある。でもそれは、そう言われないと「この言葉が相手を傷つけてしまう」という気付きにならないと思うんですよね。自分がひどいことを言われたと思ったときも、「あなたはひどいことを言ってますよ」と相手に伝えたほうが自分を守ることになるし、お互いにとって学びになる気がするんです。もちろんその言い方も大事だとは思います。

――今までそれでぶつかったり、喧嘩になったりしたことはありますか?

ものすごく言い合う喧嘩になったこともあります。そこで自分が「傷つけちゃったんだな」「言い過ぎたな」というのを知って、僕もどんどん成長していった感じです。そういうときはちゃんと謝って、「こういうことがイヤなんだな」「これは大丈夫なのか」というお互いのすり合わせをして、どんどんマイルドになっていきました。まあ、うちのマネージャーとの話なんですけど(笑)。そういうことがあって、最初に出会ったときと今とで関係性は全く違いますし、結果的にそれがお互いにとってすごくよかったなと僕は思っています。

磯村勇斗さんから学生のみなさんに手書きのメッセージ!

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PROFILE

磯村勇斗

1992年9月11日生まれ。静岡県出身。2015年に「仮面ライダーゴースト」でアラン役を演じ人気を博す。その後NHK連続テレビ小説「ひよっこ」に出演。主な近年の映画出演作に『ヤクザと家族 The Family』(21)、『劇場版「きのう何食べた?」』、『前科者』(22)、『PLAN 75』、『ビリーバーズ』(初主演)、『さかなのこ』、『最後まで行く』(23)、『波紋』、『渇水』、『月』などがある。来年には主演映画『若き見知らぬ者たち』の公開が控えている。

映画『正欲』
11月10日(金)全国公開

横浜に暮らす検事の寺井啓喜は、息子が不登校になり、教育方針を巡って妻と度々衝突している。広島のショッピングモールで販売員として働く桐生夏月は、実家暮らしで代わり映えのしない日々を繰り返している。ある日、中学のときに転校していった佐々木佳道が地元に戻ってきたことを知る。ダンスサークルに所属し、準ミスターに選ばれるほどの容姿を持つ諸橋大也。学園祭でダイバーシティをテーマにしたイベントで、大也が所属するダンスサークルの出演を計画した神戸八重子はそんな大也を気にしていた。


取材・文/東海林その子
撮影/三橋優美子
ヘア&メイク:佐藤友勝
スタイリング:笠井時夢

編集部:あこ

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食べることと寝ることが大好き。休みの日は家にこもって、ひたすら映画やドラマを見たり、漫画や雑誌を読むのが幸せ。

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