「京都人」って一体誰? 実は超レアな存在だった #学窓ラボ
こんにちは、学窓ラボのふなっぴ(京大2年)です。
テレビやネット記事で、「京都人」という言葉を見かけることがあると思います。ですが、その表現は正しくない場合があるかもしれません。この記事では、京都人とは一体誰のことを指すのかについて、自分の経験や知識をもとにして、独自の見解で解説していきます。
京都人になれるのはごく限られた人だけ
まず、長い間京都に住んでいる人たちほとんどの共通認識に当てはまりそうなこととして、京都市ではない京都府の市町村に住んでいる人たちは京都人ではないでしょう。京都府に住んでいても京都市に行くときは「京都に行く」というくらいですからね。
では京都市に住んでいたら京都人になれるのかと言うとそういうわけでもなく、京都市の中でも、「洛中」と呼ばれる地域に住んでいる人だけが対象だということです。じゃあ洛中がどこなのかというと…それが不明瞭なのです。洛中の範囲がはっきりしない限りは、京都人が誰なのかも正確に定義できないまま。(洛中についての考察は後ほど)
ならば洛中に住んでさえいれば京都人になれるのかと言いますと…まだ壁があるんですよね。例えば、京都の大学に通うために洛中に下宿している人は、京都人には当てはまらないとのこと。どうも、洛中に先祖代々住んでいないと真の京都人としては認められないようです。中には16世紀まで家系図がさかのぼれてはじめて京都人と呼べるという人もいるくらいだとか…。なので、真の京都人と呼ばれるかどうかは、生まれる前から決まっているということになります。先祖ガチャですね。
テレビやネットでは京都市民=京都人という解釈で使われているように見受けられることがよくあります。しかし、これまでのことをまとめると、真の意味での京都人とは、「洛中に先祖代々住んでいる人」ということになり、この定義に当てはめれば、京都市民のうち京都人である人はごくわずかしかいないということになります。
私自身も京都市民ではありますが、洛中には住んでいないですし、親ももとは京都市の人間ではないので、京都人ではありません。なので、私の記事のタイトルに「京都人が教える!」というようなフレーズは書けないわけです。
洛中ってどこ?
じゃあ洛中はどこなのか、という話になりますが、これが人によって考え方が異なるのです。これのせいで京都人かどうかを正確にわけることが難しくなっています。
私はすごくざっくりした境界を「上中下の区が洛中、それ以外は洛外」だと思っています。
京都市は上京区、中京区、下京区、右京区、左京区、北区、南区、東山区、西京区、伏見区、山科区の11の区からなります。京都市の中心的存在は京都御所。昔の天皇のお家です。その御所があるのが上京区(この記事のサムネイル画像が京都御所です)。御所周辺には貴族など裕福な人が住んでいた…という話を聞いたことがあります。
中京区には長い歴史をもつ錦市場など、ザ・京都というような町並みが数多くあります。
下京区には祇園祭の山鉾の保存会が多数あります。祇園祭シーズンには山鉾が道に組み立てられ、多くの人で賑わいます。
このように、京都御所周辺の、「いかにも京都」という感じがするエリアを洛中だと捉えていいと思います。このようなエリアの区に、たまたま上中下とつくようです。
洛中の対義語が洛外です。洛外は洛中に比べると発展したのは割りと最近で、京都大学吉田キャンパスの位置する左京区は、大抵の場合洛外とみなされるようです。洛外は洛中に比べて自然豊か。特に左京区と右京区の北のほうは本当に山ですからね。
昔の地図から洛中洛外の境界を探そう
私の主観だけ述べても説得力に欠けると思うので、私の考えを裏付けるであろうものをお見せします。
(この地図は、時系列地形図閲覧サイト「今昔マップ on the web」(©谷 謙二)により作成したものです。)
左側の地図は明治時代の京都市の一部で、右側が同じ範囲の現代の地図です。明治の黒くなっている部分が市街地で、他の白いところは水田などです。
右の現代の地図に、左の明治の地図で黒くなっている部分を枠で囲ってみました。この範囲は明治時代の時点で発達しているので、洛中であると考えました。だいたい上京区、中京区、下京区が入っています(区の境目がわかりにくいですが…)。
ただし、中京区や下京区は西のほうが枠線に入っていなかったり、東山区の一部が枠内に入っているなど、完全に区で洛中か洛外かを決めるのは無理がありそうです。この地図には京都市全体が収まっているわけではないので、洛外の範囲はもっと広いです。洛中はなかなか狭いですね。
真の京都人は何人くらい?
京都市のデータによると、京都市全体の人口は約146万人。そのうち上京区は約7.6万人、中京区は約10.5万人、下京区は約7.7万人となっています。よって、京都市民のだいたい5人に1人が洛中に住んでいるということになります。
洛中に住んでいる人のうち、1%がその地に先祖代々(だいたい5世代以上)住んでいると仮定してみます。すると京都市民のうち真の京都人は500人に1人の0.2%。人数にするとおよそ2,500人です。京都大学の工学部の人数が約4,000人なので、だいぶ少ないと思いませんか?
非常にざっくりした計算なので、定義が変わればこの数字もそれなりに変動するとは思います。16世紀まで家系図が遡れる人、という定義ならば1,000人もいかないかもしれませんし、先祖代々の定義を緩めて(三世代くらい)10%と仮定すれば、だいたい京大の学部生+大学院生の合計と同じくらいになる(25,000人)など、幅は大きいです。
いずれにせよ、ここでいう真の京都人は京都市民の本当に一部でしかないということがおわかりいただけると思います。
(参考にしたサイト)
京都市:京都市の人口動態について
京都市統計ポータル/住民基本台帳人口
学生数|京都大学
3 家族と世帯|令和3年版高齢社会白書(全体版)‐内閣府
具体的に京都人とは?
洛中にある老舗の呉服屋、和菓子屋の人などですかね。20年ほど京都市に住んでいますが、日常生活でお目にかかったことは私はたぶんないです。私が洛外出身だというのもあるとは思いますが、同年代の京都人を見たことはないです。京都人のレア度をゲーム風に言うならSSRです。完全に偏見ですが、生粋の京都人ってみんななんとなく品が良さそうですよね。
ちなみに舞妓さんは京都市外から来た人がほとんどのようです。なので多くの舞妓さんは厳密には京都人ではないということになります。
まとめ
改めてまとめると、
「真の京都人とは、先祖代々洛中に住んでいる人のことを指す。洛中とは、だいたい上京区、中京区、下京区など、古くから栄えている京都御所周辺の地域を指す」
となります。
しかし、前述した通り、京都人と洛中の定義は人によって異なります。これは、私が20年間京都に住んで導き出した解釈です。これは完全な正解では決してありませんし、「この解釈は違う」と言う人も当然いると思います。あくまで京都出身大学生一個人の考えとして留めておいてください。
「京都人」という地域名+人という非常に単純な単語ですが、こんなに定義が難しいのはこの言葉くらいじゃないでしょうか。さすが昔の都だっただけありますね。いつか私なりの定義に当てはまる真の京都人に会って話してみたいです。
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