「合唱コンクールで指揮者を経験して音楽の仕事を意識する」Novel Core連載vol.1

SKY-HI 人生グラフvol.1「10年間の鬱屈した気持ちはこのために必要だった」SKY-HIが語る人生のターニングポイント【全5回連載】
新世代のラッパー / シンガーソングライターとして多彩な活動を続けるNovel Coreさんのキャリアや表現者としてのこだわりに迫る連載企画がスタート。第1回目は、音楽の目覚めからラップを始めるまでの道のりをお伺いしました。
合唱コンクールで指揮者を経験して音楽の仕事を意識する

――音楽を意識して聴くようになったのはいつくらいですか?
小学生からです。母親が学生時代にバンドをやっていたのもあって、音楽が身近な環境にあったんです。ボン・ジョヴィやレッド・ツェッペリンなど、王道のハードロックを中心に聴いていました。あと母親とカラオケに行くと、レベッカやBOØWYなど80年代に一世を風靡した第2次バンドブームのグループを歌うことが多くて、そこの影響も大きいです。
――Coreさんが生まれる前のアーティストばかりですね。
そうなんです。自分の世代だと修二と彰の「青春アミーゴ」とかが流行っていましたが、これも母親の影響なんですけど、さだまさしさんや玉置浩二さんなど、自分と世代が違う邦楽も好きで、感情豊かに歌い上げる方に惹かれました。
――初めて買ったCDは覚えていますか?
中学生になってからは、姉の影響でボーカロイドや歌い手にハマっていたので、初めて買ったのは「ぐるたみん」という歌い手のCDでした。ボカロPの方々の歌詞には聞いたことのないような言葉が溢れていて、四字熟語なんかがいっぱい出てくる歌詞が面白かったし、メロディーも当時の自分には新鮮でした。米津玄師さんもボカロP「ハチ」として活動していた頃から、めちゃめちゃ聴いていました。
――その頃から歌で表現したい欲求はあったのでしょうか。
まだ自分が歌うことは考えてなかったですけど、中学1年生の時に合唱コンクールで指揮者をやった経験から、音楽のお仕事をしてみたいと思いました。学校の音楽の授業も人一倍真面目に受けていたと思います。
――なぜ指揮者をやることになったのでしょうか。
最初は目立ちたいという理由だけだったんですけど、楽しくなってきちゃって、2年生の時もそのままの流れでやりました。自分で表現したいことが、ちゃんと音になって、表情として返ってくるのが楽しかったんですよね。

――クラシックも聴いていたそうですね。
クラシックも指揮者やったのがきっかけでハマって、ウィーン・フィル(ハーモニー管弦楽団)のニューイヤーコンサートを始め、いろんな楽団のコンサートを映像を介する形や、直接足を運んだりして観に行きました。
――本当にジャンルレスに音楽を聴かれるんですね。
育っていく過程で、いろんな音楽を聴いてきたので、どれか一つというよりも偏りなく聴きたいタイプだったのかなと思います。いろんなジャンルを聴いてきた土台があるので、音楽を始めてからも、自分が表現したいアプローチはイメージしやすいです。
――楽器をやろうとは思わなかったんですか?
めちゃめちゃ思いました。ドラムを習おうとした時期もあったし、ピアノも小さい頃、母親に「どうしてもやりたい」と言って1日体験させてもらったんです。すぐに「飽きた」って帰ってきたみたいですけどね(笑)。ギターも初心者のくせに、ジョン・ボン・ジョヴィとお揃いのタカミネの黒のエレアコを買って、Fで躓きました(笑)。
音楽を好きになるとカルチャーや裏にある歴史も掘り下げたくなる

――ヒップホップとの出会いを教えてください。
クラシックの指揮者をやりたくて、音楽大学に行きたいと思ったのですが、家計的に厳しそうということで諦めました。当時は本当に生活が切迫している状況だったので。でも、音楽の仕事をしたいという感情を持ち続けていて、高校生になるくらいのタイミングはYouTubeでいろんな音楽の動画を観ていたんですが、たまたま関連動画でヒップホップのインストが出てきたんです。他のジャンルのドラムをサンプリングして引っ張ってくるなど、いろんなジャンルが一つになっているのが面白くて、そこからハマりました。
――どういう流れでラップを始めたのでしょうか。
インストを聴いて音楽としてヒップホップが面白いなと思ったのと同時に、カルチャーがすごく気になって。音楽を好きになると、カルチャーや裏にある歴史も掘り下げたくなるタイプだったので、いろいろ聴いてみようと思って、色々聴きましたが当時のタイミング的にもドンピシャだったのがケンドリック・ラマー。自分の半径数メートルで起きた事実を歌うことで、その中に社会的な問題提起もあって。自分も当時からは社会に対して伝えたいメッセージがたくさんあったので、ケンドリックみたいになりたいなと。その流れでヒップホップの成り立ちを知りたかったので、1970年代のブロックパーティーの時代から遡って聴いて、ちょうど公開されたNWAの実録映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』(2015年)なんかも観て。
――日本よりも海外のヒップホップに惹かれたんですね。
最初はそうですね。次第に日本のラップも聴き始めて、ZeebraさんやRHYMESTERの世代のラップを聴いてかっこいいなと思って、自分もやってみたいと思うようになりました。ちょうどフリースタイルラップが流行り始めた時期で、MCバトルが勢いのあるタイミングだったので、フリースタイルでMCバトルだったら、自分も始められそうだなと思って、部屋で壁に向かってやるようになりました。いろんなジャンルを聴いてきたおかげで、自分的に「こういうラップをしたいんだろうな」というのは当時から何となくあったんです。今振り返ってみると本当に下手くそでした(笑)。でも最初から楽しくラップができましたね。
――ラップを始めた頃は、どういうスタイルだったのでしょうか。
海外のラップが大好きだったので、当時は英語でしか成立しないようなフロウに興味があったんです。だから日本語の発音を英語っぽくぼかしたり、バイリンガルラップっぽいものにチャレンジしたりした時期もあったんですけど、最終的には、ちゃんと日本語が美しく聴こえるラップのスタイルを身につけていきました。Zeebraさんたちはもちろん、僕が当時聴いていたTHE BLUE HERBだったり、Shing02さんだったり、あのラインの人たちのラップのかっこよさは、歌詞がすっと入ってくるところだと思うんです。「日本人のラップは、こういうスタイルがかっこいい」と刺激を受けたので、かなり意識していたかもしれません。
――2016年からMCバトルに参加するようになります。
家でラップしている段階で謎の自信がついてしまって。当時は「Core-Boy」という名前で「今MCバトルが流行ってるけど、俺が出たほうが絶対におもろい」みたいなことをツイートしまくって、それがラッパーの人たちに見つかってしまい、その界隈で話題になったんです。「Core-Boyって奴にバトルをさせたらおもろいんじゃない?」みたいな話になって、エントリーさせてもらったのが最初です。そこからは路上パフォーマンスでスキルを磨きました。
――MCバトルの初戦はどうでした?
1回戦でボロ負けでした(笑)。ラップの完成度うんぬん以前に、マイクコントロールの経験が全くなかったので、マイクが声を拾わなかったんです。声が全然聴こえないので、お客さんたちも「何て言ってるの?」みたいな感じでした。みんながマイクのヘッドを掴んでいる理由が初めて分かりました。
――2017年3月には「BAZOOKA!!! 第11回高校生RAP選手権」で準優勝、同年8月には「BAZOOKA!!! 第12回高校生RAP選手権」で優勝を果たします。
当時は「有名になること」への意欲だけが本当に強くて、バトルで名前を売って成り上がるルートがあったから、自分もそこにハマれるように、「とにかく勝つ!もしくは話題にする!」という感覚しかなくて、損得しか気にしてなかったです。他のことを考える余裕がなかったんだろうな、とも思います。

PROFILE
Novel Core
東京都出身、22歳。ラッパー、シンガーソングライター。
SKY-HI主宰のマネジメント / レーベル "BMSG" に第一弾アーティストとして所属。メジャー1stアルバム『A GREAT FOOL』とメジャー2ndアルバム『No Pressure』が2作連続、各チャートで日本1位を獲得。Zeppを中心とした大型のライブハウスを周遊する全国ツアーや、豊洲PITでの単独公演を全公演即ソールドアウトで成功させ、来年1月には日本武道館での単独公演が決定。
その存在感を確かなものにする一方で、FERRAGAMOやETROなど、トップメゾンのモデルに起用されるなど、ファッション業界からも注目を集める新世代アーティスト。
公式サイト:https://novelcore.jp/
Twitter:@iamnovelcore
Instagram:@iamnovelcore
TikTok:@iamnovelcore
YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/novelcore
取材・文/猪口貴裕
撮影/GENKI (IIZUMI OFFICE)