あまり知られていない「運航支援者」という重要な仕事。ANAエアポートサービスの若手社員に聞く“フライトの舞台裏”【ANAエアポートサービス株式会社】

編集部:ゆう

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プロフィール:桝尾健人:2015年入社

所属部署:ANAエアポートサービス株式会社 (ANAAS) オペレーションマネジメント部所属

業務内容:運航支援業務では目的地や航路上の気象状況や空港情報を確認し、安全かつ快適に運航できるよう地上から運航乗務員をサポート。さらに空港コントロール業務(国内際オペレーション統括)にて、羽田空港到着・出発便の安全運航と定時出発を目指し、空港内外の様々な部門と連携し、運航状況に応じた判断を行う。

「将来の“なりたい自分”がまだわからない」ーーそんな悩みを抱えるみなさんに、いろんな企業で活躍する先輩たちの姿を通してロールモデルを見つけてもらう企画「#お仕事図鑑」。

今回は「ANAグループ」で働く先輩社会人にインタビュー。

ANAエアポートサービス株式会社のオペレーションマネジメント部で運航支援者として働く桝尾健人さんに、日々の仕事内容や学生時代に取り組んだことについてお話を伺いました!

学生時代編弓道部で身につけたコミュニケーション能力とマネジメント能力

――桝尾さんはどんな学生時代を過ごしていたんですか?

大学では弓道部に入っていて、とにかく部活漬けの毎日でした。あまり褒められた学生ではなかったかもしれません(笑)。朝から大学に行って練習し、練習の合間に講義を受け、そのあとまた 弓道場に戻るといった生活でしたね。

――弓道部として結果も残されたのでしょうか?

もともとあまり弓道の有名な大学ではなく、関東の2部リーグに所属していましたが、私たちの代では悲願であった1部リーグへの昇格を果たしたほか、全国大会にも出場することができました。

――学生時代に一番頑張ったのは、やはり弓道ですか?

そうなります。部活というのは不思議なもので、今はもう卒業して何年も経ちますが、弓道部の同期は、今も友だちを超えた繋がりが続いています。みんなが本気でやっていたことなので、時に意見がぶつかったり、方向性に違いが表れたりもしたのですが、「結果を出さないといけない」という思いは形や表現の仕方は違えど一致していました。

だからこそ、どうすれば他のメンバーの考えを理解しつつ、自分の意見も言えるのかといったコミュニケーション能力や調整力も磨けました。チームマネジメントにあたった経験も今に活きていると思います。

ただ、当時の本人としてはがむしゃらで同期や先輩後輩にも様々な迷惑をかけたと思います。そういった数々の失敗も受け入れてくれ、自分の思い描いたことについてきてくれる周りの方にも恵まれました。

――具体的に、当時の経験は今の仕事にどう役立っていますか?

学生時代の4年間で多種多様な考え方や表現の仕方があることがわかりました。

今所属しているオペレーションマネジメント部という部署では我々の仲間だけでなく、会社や立場を越えて様々な方と関わっています。我々が大切にしたいものや達成しなければならないことがあるように、相手方にも我々と同じように様々な立場やいろんな考え方があります。

相手の考えや立場に敬意を払うこと、時には大胆に判断しなければならないこと等、部活での経験は、部署内の意見の相違を調整したり、解決したりするときなどに活きていると思います。

――何か就活前にやっておいたほうがいいことがあれば教えてください。

自己分析がとても大事だと思います。そもそもどういったことに興味があるのか、なぜ自分がその会社に入りたいか、その会社で何がしたいか、意外と自分でも気付いていない部分がたくさんあります。

私は飛行機がとても好きだったので、就活の時は「飛行機関係の仕事をしたいな」と一直線に考えがちでした。でも、なんで飛行機が好きなんだろう、なんで空港に勤めようと思ったんだろうと、改めて自己分析してみたことで、そのあたりの理由もわかりました。

――自己分析した結果、なぜANAを選ぶことにしたんですか?

「エアライン」というものや、空港というフィールドに興味を持ったからです。

もともと高校生の時は航空管制官になりたいと思っていました。各空港の管制塔や航空交通管制部 で、無線を使って飛行機の乗員に飛行の指示や許可を出す取る仕事ですね。高校生の私には好きな英語を使って、飛行機に的確な指示をする姿にカッコよさを感じていました。

しかし、いざ就活を迎えたときに「なんで航空管制官になりたいのか」「なんで飛行機が好きなのか」を改めて考えてみたところ、「お客様を飛行機に乗せて目的地に運ぶこと」が自分の中ではとても意味のあることだと気づきました。

そうであれば、お客様や飛行機への関わり方として、航空管制官ではなく、エアラインの運航にという関わり方が自分の大切にしたいことにフィットしていると感じましたし、エアラインの最前線である空港で働くことに意味を感じ、ANAエアポートサービスにエントリーしました。

中でも我々ANAエアポートサービスは空港運営会社として、空港に必要な仕事がすべて一社に統合されています。こういったグループ独自の組織体制も空港でのオペレーションをシームレスに行える強みであるととらえ、魅力に感じていました。

社会人編あまり知られていない「運航支援者」という重要な仕事

――今のお仕事の内容について教えてください。

ANAエアポートサービスという会社のオペレーションマネジメント部に在籍し、運航支援業務やオペレーションサービスインチャージ業務を担っています。

運航支援者という仕事は、一言でいえば「潤滑剤」のような役割です。我々が運航している飛行機には、運航の指揮や判断をする権限を有する「機長 (Pilot In Command) 」がいますが、地上にも「運航管理者 (Dispatcher)」 という、機長とともに航空機の運航を管理・判断する共同責任を有する  “地上の機長”ともいえる方々がいます。

飛行機は、機長と運航管理者が互いに飛行の計画を承認し運航しているのですが、運航に関わる情報は膨大かつ多岐にわたります。また、計画外のことが発生したり、天気のように刻一刻と変化したりする事柄もあります。運航支援者は各空港において、情報を整理し両者に情報提供をするほか、飛行の計画やその承認の手伝いをしたり、気象情報をパイロットや運航管理者に伝達しています。

一方でオペレーションサービスインチャージとは、空港ハンドリング統括者として、遅延回復や機材不具合による使用機材の調整を、ANAの全運航を統括する「OMC (Operation Management Center)」と協力して調整するほか、各機能からの情報を精査し、飛行機の運航と羽田空港としてのオペレーション方針の立案・検討をしています。

また最近では、インストラクターとして、海外を含めたANA就航地の運航支援者の育成にも当たっています。

――この仕事ならではの特徴的な作業は何でしょう?

気象状況の把握は特徴的な作業だと思います。

自然はしばしば我々の運航に牙をむきます。そういった潜在的なリスクを事前に把握し、安全かつ円滑に運航を実施するには、気象状況の把握はとても重要です。

毎日天気図を見て情報提供をしたり、さまざまな部署へ向けて発信したりしているのですが、ANAは全世界に就航地があるので、日本やアジアだけでなくアメリカの天気やヨーロッパの天気なども確認しています。

もちろん飛行機は上空を飛ぶので、高度10km以上の天気を描いた高層天気図や、高層断面図を複数用いて、地球の大気の流れなども確認し気象を三次元的に把握しています。

私たちは社内のシステムを使って各国の気象図や衛星画像、レーダーなどを見て天気の推移を確認していますが、パイロットは常に様々な場所を飛び回っています。我々は空港で定点的に気象観測しているので、推移や予測などを詳細に実施しています。

我々は運航に関しての教育も受けていますので、気象の状況と結び付けて運航への影響予測なども重要な仕事の一つです。

――実はあまり知られていない仕事の「秘密」はありますか?

そもそも、運航支援者という存在そのものがあまり知られていないかと思います。様々な分野や業界で自動化が進んでいますが、我々のグループでは運航の方針決定や判断は人が責任をもって行っています。

入社前は航空業界に対して、なんでもシステム化してしまうようなイメージがありましたが、機械が得意なことは機械に任せる一方で、経験や感性、ひらめきなど、人が得意なことは人が行っているという、アナログで人間味があるところは、ある意味秘密なのではないかと思います。

――今の仕事のやりがいを、どういうときに感じていますか?

ANAのオペレーションに携われていること自体に、とても大きなやりがいを感じています。

自分が関わった便が目的地に無事に降りることができたときや、頑張って調整したことの結果が良い方向に進んだことなど、日々の小さな仕事のひとつひとつにやりがいを感じています。

飛行機が目的地に着くのは当たり前のことかもしれませんが、実は様々な人の努力や頑張りの集大成なのです。そういった、日々の運航に微力ながら参加できているということも私がやりがいを感じる根底にあるのではないかと思います。

一方で、ANAは国内線も国際線も運航しているので、他の国とのやりとりなどスケールの大きな事象に関わることもあります。

世界を股に掛けているというとオーバーかもしれませんが、大きなスケールの仕事に携われている こともやりがいですね。

――この仕事の面白いと思う点、魅力について教えてください。

私たちが担っている業務は、出発便にとって、空港から飛行機が出発する前段階の、総仕上げになるんです。

就航計画をはじめ、お客さまに関する情報や、機材の整備状況、気象状況等、本当に様々な情報が届きます。これらの情報は、お客様が弊社のチケットをご予約いただいたときから、我々のところに届くまで、一便の運航に関わってきた仲間たちの仕事の結果のすべてですし、その仕事も様々な方に支えられています。それを情報という形でまとめ、これから運航を担当するパイロットやCAを通じてお客様と関わっています。

もちろん到着でも、出発地や上空を飛んでいる機内からも様々な情報が伝達されてきます。お客様が飛行機を降り、空港を離れ目的地に向かわれるまで陰ながら関わっていることが我々の仕事の面白さだと思います。

実はお客様には見えないところで様々な調整等に奔走しています。便名は同じでも一便一便の状況は毎日変わるので、同じ1日というのがないのです。そういったところにも面白さや日々新鮮さを感じます。

――この仕事に求められるスキルは何でしょう?

エアラインの、特に運航系のスキルを入社前から持っているという方は少ないと思います。

技術、知識的なものは訓練を経て身につけられます。どちらかといえば、必要なことはマインド的な部分だと考えています。特に「妥協せずに突き詰める」ことや「常に自身を向上させる前向きさ」が大事なのかなと感じています。

私たちの仕事は運航の安全性、定時性、快適性、効率を担います。それらのいろんな要素をどう突き詰める一方で、どうバランスを取るか。多角的に事象を観察し、業務に当たることが重要になってくると思います。

また、我々の仕事は一人で成り立っているわけではありません。先の質問でもお話ししたように、調整の相手方にはそれぞれの立場や大事にしたいもの、考え方があります。そういったものに敬意を払うことや自分のなかでも相手の立場にたって物事を考えることも大切なマインドですし、求められるスキルだと思います。

――これまでで一番印象に残った仕事は何ですか?

印象深い仕事はたくさんあったのですが、夏の雷との戦いはどれも印象に残っています。特に2020年6月の雷に対する対応は自分の仕事を考えさせられる機会でした。

航空機は被雷しても安全に影響がない設計ですが、被雷後は特別点検等大きな影響が出ます。一方、搭載燃料には限度がありますので、いつまでも待機するわけにもいきません。また、機側にはお客様はもちろん、作業中の仲間がいます。安全確保のため地上退避を判断しなければならないなど、人命にかかわるオペレーションです。

そういった中でお客様や我々の仲間の安全を確保しながら、どうやって飛行機を出発・到着させるかがオペレーションの肝となります。

当日は遅番の運航支援統括で、強い雷雲が接近し居座るだろうと予測していました。そこで運航支援者たちとこれまでのデータや経験から、いくつかのシナリオを考え、想定事象とその対応について事前にインテンションを出し、社内外の各部署とも調整をしたうえで雷雲に臨みました。

振り返れば5時間にわたり空港周辺に強い雷雲が居座ったものの、出発到着ともに弊社の被雷機はゼロとすることができました。遅れての出発・到着となりお客様には大変ご迷惑をおかけすることとなりましたが、欠航などもなく、無事全便のお客様を目的地までお連れできたことにほっと胸をなでおろしました。

また、帰ってきたパイロット達から「情報が的確で、進入可否判断やお客様へご案内で助かった」等、数々のお話を頂いたほか、OMCからも「進入中止の推奨や航空局との滑走路運用に関わる調整等、難しい判断であったと思うが、よく判断してくれた」とお話を頂き、当日対応した担当者全員に部内表彰まで頂きました。お客様の前に出ることはない我々だからこそ、仲間たちから「ありがとう」と言ってもらえた時は心からやりがいを感じる時です。

また、こういったイレギュラー事象への対応のときこそ、統括としてチームプレーとスタンドプレーのバランスをとることが必要であることを学びました。

運航は数えきれない仲間たちの仕事の上に成り立っている仕事です。自分の職責を全うし、他者の仕事に敬意を払いながら連携することが常に求められます。あまりに一方的な方針決定は、混乱を招き、ともに働く仲間の能力にも蓋をすることになるだけでなく、経験・成長機会を奪うことにもなります。

他方、事象の先頭に立ちながら状況を俯瞰し、音頭を取っていくことも重要です。お互いの顔色をうかがっているだけでは好機は生まれませんし、オペレーションは止まりません。これら二つのバランスをとることは非常に難しいのですが、事象を通じてどちらも重要な要素であるということに気づかされました。

また、私は当時5年目でしたが、こういった若手の仕事を信頼し一人のプロとして受け入れてくれるこのグループの雰囲気にも大変助けられました。

プライベート編プライベートは大型バイク「スーパースポーツ」でツーリング!

――オフタイムの過ごし方についても教えていただけますか?

バイクが趣味なので、ツーリングに行くことが多いですね。今はCBR1000RR、「スーパースポーツ」というジャンルの大型バイクに乗っています。羽田空港の近くに住んでいるのですが、見晴らしのいいベイサイドを走るのもすごく好きです。

――プライベートの中で仕事に活かされていることはありますか?

空港が好きなので、ツーリング先で各地の空港を回ったりもします。長期休暇を使って北海道をバイクで一周したこともありました。

実際にその土地に行くと、「ああ、こういう立地だから霧が出やすいんだ」ということもわかりますし、そうやって実体験したことは仕事でも活きていると思います。

――最後に、学生にメッセージをお願いします。

今回はANAグループに興味を持って頂き、本当にありがとうございます!

コロナ禍の影響で、特にエアラインを目指す学生の方には不安を感じさせたかもしれません。しかし、島国である日本にとって人や物の移動を支えるエアラインの仕事は欠かすことのできない仕事の一つです。

今回のコロナ禍では我々自身の仕事を見直しきっかけとなり、少しづつ新たなANAグループの姿へと進化しつつあります。また様々な方々のご支援やご理解によって少しづつ持ち直し、日々忙しさを感じながら業務に当たっています。

皆様が入社された折には、これまでとは一味違う新しいANAグループの姿をお見せできるのではないかと思います。大きな困難に立ち向かい挑戦する社風はこれまでも、これからも変わらず我々に流れています。

飛行機は本当にさまざまな職種の人が関わって飛んでいますし、そういう人たちの努力でANAは成り立っています。今回ご紹介した我々の周りの仕事以外でも様々なフィールドが広がっています。皆さんにも必ずフィットする場所がありますので、航空業界やエアラインに興味をお持ちの方はぜひ、調べてみていただきたいです。

今回のように各社、様々な機会で仕事のご紹介をしています。私も就活を通して「世の中にはこんな仕事があるのか」と学び、興味を持ったことがたくさんありました。我々ANAグループが皆様の今後の活躍の場となれば大変うれしく思います。願わくば、羽田空港で皆さんと一緒に働ける日を楽しみにしています。

記事内容及び社員の所属は取材当時のものです。

文:猿川佑
編集:学生の窓口編集部
取材協力:ANA

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学生に「一歩踏み出す勇気」を持っていただけるような記事を届けたいです。

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