「世の中を変えるかもしれない情報」を発信。バイオベンチャー、ユーグレナの広報という仕事の醍醐味は? #株式会社ユーグレナ【お仕事図鑑】

編集部:ゆう

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北見裕介さん
株式会社ユーグレナ 広報宣伝部 部長

2019年に株式会社ユーグレナに入社。広報宣伝部の部長として広報戦略の考案や取材対応などの業務を担う。

株式会社ユーグレナは、「ユーグレナ(和名:ミドリムシ)」という小さな藻の一種を研究し、食品や化粧品、バイオ燃料などなどさまざまな形に応用したり、遺伝子解析サービスなどを行ったりしているバイオテクノロジー企業です。大学生の入りたい企業でも毎年のように上位に名前が入る人気企業でもあります。

今回は、この株式会社ユーグレナで広報業務を担当する北見裕介さんに、会社の魅力や自身の仕事の面白さなどを伺いました。

バイオテクノロジーでSDGsの達成に貢献する企業

――まずはユーグレナという企業について教えてください。

※ユーグレナクッキーを食べるバングラデシュの子どもたち

ユーグレナ社はSDGsの達成を本気で考えている企業です。代表の出雲充が大学1年生の夏休みにバングラデシュを訪れたのがきっかけで誕生しました。

当時、バングラデシュはアジア最貧国と言われていましたが、食べ物が不足しているのではなく、量はしっかりと食べているのにバランスが悪くて栄養不足に陥っていたのです。現状を目の当たりにした出雲が日本に帰って栄養不足を解決できる食品がないか探したところ、「ユーグレナ」という59種類もの豊富な栄養素を持つスーパーフードに出合いました。

ユーグレナでバングラデシュの栄養問題を解決しようと決意し、2005年に会社を立ち上げました。

――ユーグレナというのは藻の一種ですよね。

※ユーグレナ

皆さんも学校の授業で「ミドリムシ」というユーグレナの和名で習ったことがあるかと思いますが、ユーグレナは虫ではなくワカメなど海藻の仲間です。植物と動物の両方の性質を持ち、ビタミン、ミネラル、アミノ酸など人間に必要な栄養素がバランスよく含まれています。しかし、出雲がユーグレナと出合った頃は、屋外で大量培養する技術がなく、増やすのは不可能とされていましたが、仲間とともに研究を続けた結果、2005年12月に食用ユーグレナの屋外大量培養に成功しました。

※(株)ユーグレナ  バイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラント

ユーグレナの豊富な栄養素を生かした食品や化粧品以外に、バイオ燃料の原料の一部としても使われています。バイオ燃料は燃焼すると石油などの化石燃料と同じように二酸化炭素を排出しますが、ユーグレナは光合成をして成長するため、太陽の光を浴びると二酸化炭素を吸収し、酸素を吐き出します。そのため、二酸化炭素の排出量はプラスマイナスゼロになると考えられています。いわゆる「カーボンニュートラル」ですね。ユーグレナは、今世界中で問題となっている二酸化炭素の排出量問題の解決の一助となるのではと注目されています。

――サステナブルな社会を作るためにも期待されているのですね。

まさにそうですね。「サステナビリティ」というと環境問題のイメージが強いですが、それだけに限らないと考えています。

当社では、バイオ燃料の他にも、病気の発症リスクや体質などを知ることで自分の体と向き合い、“自らの健康を守るために病気の予防”をして“未来の自分を健康にする”ことを目指す遺伝子解析サービス、バングラデシュでのソーシャルビジネスなど、真のサステナビリティ、SDGs達成に向けた活動を行っています。

世の中を変える情報を自分の手で発信できる

――北見さんはどのような仕事を担っているのでしょうか?

私が所属する広報宣伝部は、いわゆる広報宣伝を担う部署です。例えば新しい商品ができた際、その商品を世間に発表したり、メディアに伝えて、テレビのニュースや新聞記事などで取り上げてもらったりします。その他、会社のWebサイトの作成や更新、SNSの発信など、社内の情報を社外に届ける業務をトータルで推進している部署ですね。

より細かく業務内容を説明すると、主にメディアとのやり取りが業務の中心です。情報を発信したり取材に対応したりですね。社長の出雲への取材だけでなく、研究開発部門やバイオ燃料部門など各事業を担っている部署の仲間(※ユーグレナ社では従業員のことを同じ志を持った「仲間」と呼んでいる。)が取材を受けることもあり、その取材のセッティングから当日の取材のアテンドも私たちの業務の1つです。メディアから発信される情報に誤りがないかなどの校正作業、リリースやSNSで発信する文章の作成や、映像・写真撮影の業務も担っています。

私はこうした業務に加えて「企画」を考えています。会社がどんなことをしているのか、新商品がどんなものなのかを「どのような形で発信するのか」ですね。

――広報の仕事の面白い点はなんでしょうか?

※廃食油をまとめる小学生の様子を撮影する北見さん

ユーグレナ社の広報は、この藻類にはこんな良いことがある、この食品はどんな価値があるのかといった、「世の中を変えるかもしれない情報」を自身の手で世の中に発信できる。これは面白いしやりがいがあります。「売れそうな商品」を扱うのは面白いものですが、世の中を変える、社会や人の生活、さらには地球を良くする商品を扱うことは、他の会社ではなかなか味わえないと思います。

――反対に難しい点は?

自分の手で素晴らしいもの、未来を変える可能性があるものを発信できるチャンスは得られますが、一方で、それを台無しにする可能性も秘めていることです。どんなに良いものでも、発信の仕方を間違えると世の中に伝わりません。世界のヒーローに自分を置き換えるわけではないのですが、自分の一手によって世界が救えなくなる可能性もあるのです。そのプレッシャーはありますね。

私たちが発表する発見や開発物の後ろには、そこに携わった多くの研究者がいます。特にユーグレナのような微細藻類の研究は、世の中に発表する段階に至るまで5年、10年という長い年月と労力がかかっています。例えばバイオ燃料は、当社で研究をスタートさせて実際に車にバイオ燃料を導入して動かすまでに、10年以上の時間を要しました。発信する私たちにも一層の努力が求められるのです。

企業の精神や作り手の気持ちを代弁するのが広報の仕事

――これまでの仕事の中で特に印象深いものを教えてください。

※バイオ燃料導入イベントで司会をする北見さん

当社は2020年4月にバイオ燃料「サステオ」の供給を開始しましたが、当時は新型コロナウイルス感染症の感染拡大による緊急事態宣言下で、経営陣はおろか、当初から研究に携わってきた仲間でさえも発表会に行けないという事態に陥りました。その際、「発信の要」である私たちコーポレートコミュニケーション課が発表を担うことになりました。期せずして会社の重要な研究発表を自分の手で行うことになり、高い使命感を持って挑みました。プレッシャーは大きかったですが、やりがいを感じましたね。

※廃食油を集める小学生たち

また、当社のバイオ燃料事業の取り組みに協力してくれている小学校へ、広報用の撮影で訪れた際の出来事も印象的でした。当社のバイオ燃料「サステオ」は使用済み食用油と微細藻類ユーグレナなどが原料となっているのですが、小学生たちが各家庭から使用済みの食用油を学校に持ってきて、その回収をサポートしてくれています。この活動の様子を撮影していたとき、ある小学生が「昨日お母さんが揚げ物に使った油で車や飛行機を動かせるのはすごい!夢がある!」と言ってくれました。それを聞いたときに「私たちは夢を現実に変える会社なんだ」と感じて泣きそうになりましたね。

※廃食油を持ってきた小学生たち

SDGsは小中学校でも勉強が始まっていますが、なかなか実感してもらえず課題になっていると聞きます。そんな中で、未来を生きる若い世代がSDGsを身近に感じることに私たちの仕事が貢献できたのは、とてもうれしかったです。

――広報の仕事にはどのようなスキルが必要だと北見さんは考えていますか?

多くの人に伝える技術ではなく、“正しく”情報を伝える技術、意識が必要だと思います。正しいコミュニケーションが、会社と社会、会社と人(お客さま)をつなぐものだと考えています。

広報は話し好きな人が向いている仕事だとは思いません。会社が好き、事業が好き、会社のことを正しく理解しようとする気持ちを持つ人に向いていると思います。スペックだけでなく、なぜその商品・サービスが生まれたのか、その背景や思いも正しく汲み取り、研究者や開発者の思いや考えを代弁するのが広報の仕事。どんなに難しいことも粘り強く理解し、世間に発信しようとする姿勢が大事なのではないでしょうか。

――ちなみに仕事がないとき、オフの時間はどのように過ごしていますか?

いたって普通ですよ(笑)。ただ、東京に来てからまだ4年なので、よく都内のいろんなお店を見て回っています。「こんなレイアウトになっているんだ」、「ここに新しい店ができたんだ」とグルグル散策しています。新しいこと、新しいものが好きですね。日常の何気ない発見が興味を広げたりと仕事の活力になっています。特にスーパーマーケットは面白いです。なぜこの価格で販売できるだろうなど、商品を見ながらアレコレ考えている時間は楽しいです。

地球を救うという意思をユーグレナ社の仲間で共有

――設立から16年目を迎えましたが、ここまで会社が成長した要因や、ユーグレナの認知が高まったポイントはどんなことでしょうか?


まず、「世界を救う」という大きな意識を、会社全体で共有しながら業務に取り組んでいることが挙げられると思います。

SDGsの達成は誰かが強引に推し進めれば成功するというものではありません。SDGsは多様性を許容しつつも地球を大事にするという考えです。

この考えは、当社の創業の意図でもあり、創業15年目を迎えた2020年に改めてここに立ち戻りました。当社がありたい姿として、ユーグレナ・フィロソフィーを「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」を掲げ、事業を通して「Sustainability(サステナビリティ)」が当たり前になっている世界の実現を目指しています。

社長など経営陣だけが高い目標を掲げていても意味はありません。会社として高い目標設定を設定し、社内で共有することで、仲間全体が「未来のためにユーグレナ社にできることは何なのか」を考えるようになります。

加えて、高いレベルの目標を設定することは「地球を救うにはもっと頑張らないといけない」という意識も芽生えます。この視座の高い意識が、目標達成への高いモチベーションにつながっています。

――SDGsの達成という簡単ではない目標があるからこそ、一丸となって頑張れるのですね。

実例を知ることも重要です。例えば、私たちはバングラデシュの学校で給食としてユーグレナ入りのクッキーを配り、栄養問題の改善に取り組んでいます。この活動はただ栄養問題の改善だけが目的ではありません。学校に行けばクッキーがもらえるとなると、親は子どもを学校に行かせます。学校に行って学ぶ子どもが増えると、識字率も上がり計算力も身に付きます。クッキーを配ることが、実はバングラデシュの社会に貢献しているのです。

このように、私たちの活動が社会に貢献していると実感し、仲間全体がこの意識を共有しながら働くことも、ここまで会社が成長してきた要因なのかなと思います。

食品からバイオ燃料まで多様な仕事に触れられる

――ユーグレナという企業の魅力を教えてください

繰り返しになりますが、食品や化粧品などのヘルスケアからバイオ燃料、また、バイオマスプラスチックと当社は非常に幅広い事業を展開しています。この多様性は当社の特徴なのではないでしょうか。

例えば、ユーグレナは農業にも利用できることが分かっています。ユーグレナは、59種類もの豊富な栄養素が摂取できますが、土に混ぜることで同じように豊富な栄養素を土に含ませることができ、作物が育ちやすい環境を作ることができる可能性があります。

――人だけでなく土にも良い影響を与えることができるのですね。

佐賀県に「サステナブルテック・ファーム」という研究農場を作り、そこでトマトや小松菜、トウガラシなどを実験的に作っています。自分たちの農場で作ったたくさんの野菜は東京の本社にも届けられ、仲間に配られることもあるのですが、野菜だらけの自分のデスクを見て、たまに「うちは一体なんの会社なんだと」思うときがありますね(笑)。さらに最近は飼料の研究もしていて、三重県で「多気サステナブルサーモン」というブランドも立ち上げました。

ユーグレナを基軸にさまざまな分野に業務を拡大している企業で、思いがけない経験ができます。これは当社ならではの魅力ですね。

そのとき好きなことに休まず一生懸命に取り組む

――北見さんが学生時代に頑張ったことはなんですか?

頑張ったのは勉強とテニスサークルでの活動です。大学の授業は一度も欠席していませんし、テニスサークルでもずっとボールを打ち合っていました。私は浪人して大学に入ったのですが、そもそも大学に行けるとは思っていなかったので、とにかく大学が楽しくて仕方ありませんでした。

またアルバイトも頑張りましたね。当時はパソコンが家になかったので、パソコンの技術を学ぼうとパソコンを扱っている通信販売の会社でアルバイトをしました。そこで物を売る楽しさに気づきました。お惣菜、雑貨、健康器具などネットショッピングで販売し、自分が担当して売ったものが人の役に立っていることを実感しました。

――そのときの経験は仕事でも生かせていますか?

役立っていることしかありませんね。アルバイトで学んだメルマガの書き方、写真の撮り方、授業で習った地方創生や自治体の在り方など。もちろん今は最新情報にアップデートされてはいますが、基礎の部分は変わっていません。あのとき大学に行ってよかったなと思っています。

よく若い世代へのアドバイスとして、「いっぱい勉強する」「いっぱい遊ぶ」と言う人がいます。それはなぜかというと、何が役立つか分からないからで、そのとき学べることはとことん学ぶ、とことん得ておく方がいいからそうしたアドバイスをするのです。

私も同じように、学生の皆さんには目の前にあることや興味のあるものを、とにかく休まず、さぼらずに楽しんでもらいたいです。24時間を満足に使いきった!と思える生き方をしてほしいです。

――最後に学生にメッセージをお願いします。

まずはこの記事を読もうとした自分を褒めてほしいです。就活を考えて、単に勉強になると思ったから、など目的はさまざまかもしれませんが、「自分の意思」で「一歩進もうと思った」ことが重要です。

社会人になっても、何か新しいことをするための「まず一歩」を踏み出すのは簡単なことではありません。何か変化をつけていく、新しいことにチャレンジしていくという姿勢をこれからも大事にしてほしいです。

 ――ありがとうございました! 

※記事内容及び社員の所属は取材当時のものです。

編集後記

ヘルスケアやバイオ燃料、バイオマスプラスチックに陸上養殖と幅広い業務でサステナブルな社会作りに貢献する株式会社ユーグレナ。さまざまな側面を持つ企業だけに、情報を発信する広報の仕事は大きなやりがいがあるようです。もしかすると、店先に並ぶ野菜や魚が「ユーグレナブランド」ということもこの先あるかもしれませんね。

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文:高橋モータース@dcp

編集:学生の窓口編集部

取材協力:株式会社ユーグレナ
https://www.euglena.jp/

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学生に「一歩踏み出す勇気」を持っていただけるような記事を届けたいです。

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