【お仕事図鑑】1,400年の歴史を持つ世界最古の社寺建築企業。金剛組の仕事とは? #株式会社金剛組
株式会社金剛組
1981年入社
工事部で(大阪)四天王寺境内整備工事、(京都)長岡天満宮造営工事等の 工事監理に携わり、2003年より営業部に配属され、(茨木)総持寺包丁式殿、 (寝屋川)成田山明王院新山門等 話題性のある建物を担当する。 2020年より大阪本店長に就任。
皆さんは、日本に「世界最古の企業」があるのをご存じでしょうか?
社寺建築の『株式会社金剛組』です。創業はなんと578年。飛鳥時代です。1,400年以上の歴史を持つ建設会社ですが、どのような仕事をしているのか知らないという大学生も多いでしょう。
今回は、世界最古の企業である「金剛組」の大阪本店長 阿部知己さんに、仕事や、その魅力について取材しました。
▼INDEX
1.「世界最古の企業」金剛組とは?
2.日本の建築のルーツに触れられる会社
3.自分の仕事が何百年も残り続ける
4.必要なのはやる気と向上心
「世界最古の企業」金剛組とは?
――まず金剛組がどのような会社なのか教えてください。
金剛組は社寺建築を請け負っている専業最大手の建築会社です。社寺建築といえば宮大工の仕事ですが、専属宮大工8組100名を抱え、全国の社寺建築を行っています。
――金剛組の社員と専属宮大工によりお寺・神社が建立されるのですね。
はい。専属宮大工は、金剛組の東阪加工センターで材木を加工しています。金剛組専属宮大工は全部で8組ありそれぞれを棟梁が率いています。金剛組が仕事を受け、その仕事を場所や建物の状態、作業内容に応じて、いずれかの組に割り振るという仕組みです。
金剛組の社員は、営業や現場の管理、設計などを担当します。私は現在大阪本店の経営を担っていますが、入社から22年間は現場監督を務め、そこから営業に回り、今に至ります。金剛組に入社した場合は、受注、いわゆる営業、設計、見積もりか、工事、CSといった生産の部署いずれかに入ることになります。もし宮大工になりたい場合は金剛組に入るのではなく、8人の棟梁が率いる組のいずれかに入り、見習いからスタートすることになりますね。
現在、専属宮大工の各組に弟子入りする導入機関として、宮大工育成の為の「金剛組匠育成塾」を開塾しています。
日本の建築のルーツに触れられる会社
――金剛組の強みはどんなことでしょうか?
100人規模の専属宮大工を擁するのは金剛組だけです。宮大工の数が少ない会社だと、タイミングが合わずお客様の期待に添えない、或いは工期が大幅に遅れるというケースがあります。しかし、金剛組の場合はいずれかの組が対応できるようマネージメントしています。常に動ける体制を整えることは、もしもの時の備えにもなります。これは金剛組の強みでもあります。
また、専属の8組もそれぞれ特徴や年齢層が異なります。その層が異なる8組を抱えることで、案件にふさわしい宮大工を配置することができます。これは専属宮大工を抱えている強みで他の会社では難しいかもしれません。
――歴史ある金剛組だからこそ、それだけの布陣が用意できるのかもしれませんね。
そうですね。金剛組は世界で一番古いといわれている会社です。かつては大阪・四天王寺様の境内に加工場がありました。戦火を免れた資料から、私たちは過去の技術を知ることができます。発見された技術は全国に広がっていますが、そのルーツは四天王寺様であり、金剛組です。
私たちは常に「原点である」ことを意識しています。金剛組で働くことで、「日本の建築のルーツ」に触れられます。そう考えてもらえれば、魅力的に思ってもらえるのではないでしょうか。
――高い技術は金剛組の魅力だといえますね。
技術だけでなく、「心」の部分を我々は大事にしています。お寺や神社は人に支えられています。神社仏閣に集まるお金は、地域の皆さんや参拝される方のお気持ちです。そのお気持ちを受け取って工事を行うからには、もちろん手は抜けないし、正直でないといけません。
よく「お天道様が見ている」といいます。常にまっすぐに正直に仕事をすることは金剛家の遺言でもあります。これは社員、宮大工、我々全員の頭に刻まれています。
「なぜ金剛組は長く続いているのか」と聞かれることがあります。四天王寺様は大阪の中心部にあり自然災害・戦火など被害が多かった為、その復興の過程で我々が必要とされ、同時に技術が受け継がれてきたのです。
また、日本人の神仏を敬う精神があり続けたからこそ、(神社やお寺を手掛ける技術を持つ)我々も常に必要とされてきたと思います。だからこそ、常に感謝の気持ちを持って取り組まないといけないのです。
自分の仕事が何百年も残り続ける
――金剛組で働くことの面白い点を教えてください。
例えば、生産部門では宮大工のマネージメントを行いますが、仕事はこれだけではありません。工事する建物の「歴史」や「背景」を調査、研究するのも大事な仕事です。実際に神社やお寺の内部を調査して、構造がどうなっているのか調べることもありますし、地域との結び付きを知るために、お祭りのお手伝いをして地域の方と交流することもあります。
※和宗総本山 四天王寺 金堂
金剛組は長い歴史の中で数えきれないほどの社寺建築を請け負ってきました。残念ながら過去の火災などで全ての資料は残っておらず、どの建物を金剛組が手掛けたのか全ては把握できていません。そんな中で、修復工事を請け負った建物の木材を調べると、「金剛組」の名前を見つけることが多々あります。自分の仕事ではありませんが、先人の仕事の形跡を見つけると、誇らしいというか、すごくうれしい気持ちになりますね。
――阿部さんが見つけた中で最も古いものはいつぐらいでしたか?
実際に私が見た中では500年前が最も古いですね。それだけ古い時代の工事の足跡が今も残っているのです。そう考えると、我々の仕事もこれから数百年も残り続けるのだなと実感します。
――「歴史に残る仕事ができる」のも金剛組の魅力ですね。
そうだと思います。作業をしている中で、どのように行ったのか全く分からない木材の組み方を発見することがあります。ベテランの宮大工の棟梁でも、バラバラにしてみないと分からないという代物です。そのひとつひとつが先人からのメッセージなのではと思っています。「解読できるもんならやってみろ」と……(笑)。
必要なのはやる気と向上心
――金剛組で働く上で、どんなスキルが必要でしょうか?
技術や知識も大事ですが、何よりやる気と向上心が必要な世界です。思い切って飛び込んでもらいたいです。現場を経験すれば工事の進め方、建物の構造、デザイン、お客さまごとにどんなものが求められているのか、どんなものを提供すればいいのかは学べます。もちろん、図面を引く技術など、専門的な知識があると役立ちます。
――社員には「お寺や神社が好き」という人が多いですか?
※総持寺 包丁式殿
休みの日にお寺の写真を撮りに行くなど「その世界が好き」という社員が多いですね。とにかくお寺が好きという社員は、泥だらけになるような古いお寺の調査でも喜んで取り組んでいます。やる気もそうですが、好きであることが第一だと思います。
とはいえ、最初からみんな好きというわけではないようです。入ってから好きになった人も多いですね。私も建築は好きでしたが、お寺や神社は興味がある程度でした。それでも、この世界に入り、いろんな経験を積むことで、社寺建築の奥深さにはまり込んでしまいました。
――これからどんな人に入ってもらいたいですか?
金剛組は堅い名前のせいなのか、お客様から「敷居が高い」と言われます。若いみなさんも「入るのが難しい会社」と思われているかもしれません。私たちは大きく手を広げているのですが……(笑)。会社自体は明るく、肩の凝らない組織です。昔は「経営は経営者の仕事で、社員は気にしないでいい」という風潮でしたが、今はそうではなく、若い社員も会社の一員として働いているという実感が持てる体制になっています。
お寺や神社は地域の重要な存在であり、また「安らぎを得られる場所」でもあります。観光の目的となっているところも多々ありますね。金剛組の仕事は、そうした日本人にとって欠かせない伝統的建造物に関われます。自分が「あの神社を建てた」「このお寺を修復した」と胸を張って自慢できる、他では味わえない経験ができる仕事だと思います。興味のある人はぜひ思い切ってこの世界に飛び込んでもらいたいですね
――ありがとうございました!
※記事内容及び社員の所属は取材当時のものです。
編集後記
1,400年という世界最古の歴史を持つ、社寺建築のトップランナーである金剛組。確かに「私があの神社を建てる仕事をした」「このお寺を修復した」というのは、他の会社ではまず言えないせりふです。これから何百年、もしかすると1,000年を超えて残るような仕事ができるのも金剛組の魅力です。「歴史に残る仕事がしたい」という人は、ぜひ門を叩いてみては?
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編集:学生の窓口編集部
取材協力:株式会社 金剛組
https://www.kongogumi.co.jp/